商品を輸入するとき、正しい仕訳方法について押さえておく必要があります。結論、基本的には取引相手の国で商品を船積みするタイミングでの仕訳がポイントです。国内取引とは異なり、仕訳するタイミングは早くなります。今回は、商品を輸入するときの仕訳方法や必要な税金、手続きの流れ、注意点を解説します。最後まで読めば、輸入するときの仕訳に関する疑問点を解消できるでしょう。
目次
輸入で商品を仕入れるときの仕訳方法
商品を輸入するとき、以下の通りタイミングによって仕訳の方法は異なるのが特徴です。
- 注文するとき
- 海外で船に積むとき
- 通関を通るとき
- 支払うとき
ここから、具体的に解説します。
注文するとき
海外の商品を注文するタイミングでは、仕訳処理する必要がありません。現段階では、具体的にモノやサービスなどが移行していないためです。
海外で船に積むとき
取引相手の国で商品が船に積まれるとき、仕入として計上するのがポイントです。会計処理をするうえでは、所有リスクと経済価値の移転時に対応する必要があると定められているためです。
輸入においては、船積み時が適切なタイミングであると考えられており、以下の通り仕訳をするとよいでしょう。
例)10万円の商品を船積みする場合
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 10万円 | 買掛金 | 10万円 |
通関を通るとき
海外から商品を輸入する場合、通関で税金を納め、輸入許可書を発行してもらう必要があります。税関に納めるのは関税や輸入消費税で、具体的な仕訳方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仕入(関税が該当) | 50,000円 | 買掛金 | 10万円 |
仮払消費税等(輸入消費税が該当) | 50,000円 |
計上するとき、関税は「仕入」とする一方、輸入消費税は「仮払消費税等」とするのが特徴です。後述する通り、それぞれの違いを理解しておくとよいでしょう。
支払うとき
海外から輸入する商品の代金を支払うときは、消費税や関税などを除く点がポイントです。通関を通るタイミングでは、消費税や関税などを納付しているためです。
輸入する商品代金を支払うときの、具体的な仕訳方法は以下に示します。
例)普通預金口座を通して、10万円の商品代金を支払う場合
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 10万円 | 普通預金 | 10万円 |
船積み時に計上した商品代金と、通関時に計上した買掛金の振替処理をする段階だと理解しておくとよいでしょう。
輸入で商品を仕入れるときに必要な税金とは
輸入で商品を仕入れるとき、以下の税金を納める必要があります。
関税 |
|
輸入消費税 |
|
その他税金 | 特定の品目を輸入するとき、税金を支払う必要がある 例)タバコ税、酒税 |
輸入消費税とは?計算方法や関税との違い、免税・非課税になる条件などを解説!
輸入で商品を仕入れるときの流れ
輸入商品を仕入れるとき、以下の流れで手続きをするのが特徴です。
- 商品の注文:海外のネットショップや越境ECなどで、希望する商品を注文する
- インボイス(荷送人が荷受人に対して作成する明細書のこと)の受取:取引相手の国から商品が輸出されたタイミングで送付される
- 商品の到着:発送先や輸送手段、物流会社などによって到着日数は異なる。船便は2ヵ月、航空便の場合1週間から2週間が目安
- 輸入申告書の提出:窓口の端末を利用すると、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)による手続きもできる
- 関税や消費税の納税:CIF価格が関税の課税標準である。税関検査に関する費用は荷受人が支払う
- 輸入許可通知書の発行:関税などを納めると輸入許可通知書を発行してもらえる
- 運送手配:宅配便の利用など、運送手段を担当の方と相談できる
- 貨物受取:輸入許可証の提示や荷渡指図書、保管料の支払いなどによって輸入品を取得できる
一般的には、通関業者や代行業者の利用によって、やるべきことを簡略化する傾向にあります。利用する通関業者などによって費用や実績などが異なることから、複数の事業者をチェックしたうえで選ぶのがポイントです。
初めて輸入する場合、通関業者に委任状を提出する必要があります。
参考:「輸入通関手続きを輸入者本人が行う場合と通関業者に委託する場合の留意点:日本」ジェトロ(日本貿易振興機構)
輸入で商品を仕入れるときの注意点
輸入によって商品を仕入れるとき、以下の点を押さえておくとよいでしょう。
- 計上するタイミング
- 関税と輸入消費税の計上方法
それぞれについて、詳しく解説します。
計上するタイミング
輸入によって商品を仕入れるとき、原則として仕入計上のタイミングは「商品代金を支払う義務が発生したとき」です。
以下の通り、輸入における仕入れ計上のタイミングとして、さまざまなものがあげられます。
- 取引相手が商品を工場などから出荷するとき
- 通関手続きを終えたあと、取引相手が商品を船などに積載するとき
- 商品を輸入通関するとき
- 商品を検収するとき
基本的には、取引相手となる国で、商品を船などに積載するタイミングが適していると理解しておくとよいでしょう。
国内での取引の場合、商品を受け取ったときに仕入れ計上するのが基本です。決算日に商品が輸送中となっている場合、「未着品」として処理する傾向にあります。
輸入取引においては国内取引と仕訳の方法が異なるのが特徴で、正しく理解しておく必要があります。
関税と輸入消費税の計上方法
商品を輸入するときは、関税と輸入消費税を適切に計上する必要があります。
どちらも輸入者側が支払う税金である一方、関税と輸入消費税は仕訳の方法が異なるためです。
関税と輸入消費税を仕訳するときのポイントは、具体的に以下の通りです。
関税 |
|
輸入消費税 |
|
個人使用を目的とする場合と、商業使用を目的とする場合を分ける基準は具体的に以下の通りです。
- 送り先が個人名or会社名のどちらにになっているか
- 何度も同じ商品を購入していないか
- 購入額に違和感がないか
- 適切な数量であるか
輸入時にかかる費用と適用する勘定科目に関しては、具体的に以下の通りです。
費用 | 勘定科目 |
商品 | 仕入高 |
関税 | 仕入高 |
保険 | 仕入高 |
運賃 | 仕入高 |
輸入消費税 | 仮払消費税等(仕入高) |
燃料 | 仕入高 |
輸入ビジネスの税務に関する相談は税理士へ
商品を輸入するときの仕訳方法や必要な税金、手続きの流れ、注意点を解説しました。
国内で取引する場合とは異なり、海外から商品を輸入するときは仕訳のタイミングが早くなるのが特徴です。正しい仕訳の方法を押さえておくと、安心して輸入ビジネスを継続できます。
一方で、仕訳を始めとする税務全般に苦手意識を持っている方もいるでしょう。税務に関しては高度な専門知識が求められることから、プロに依頼するのが望ましいです。