新しく会社を立ち上げる場合、かかる費用は様々あります。なるべく出費を抑えたい場合、起業から最大2年間の消費税免除を利用するのがおすすめです。免除を受けたい場合、いくつかの条件を満たす必要があります。今回は消費税免除の条件や注意点、課税事業者のメリット・デメリットについて解説します。
目次
会社設立で消費税が免除される条件
会社を立ち上げてから、消費税が免除されるのは設立から最大2年間です。2年目に関しては1年目からさらに条件が追加されるため、別で解説していきます。
1年目の免除条件
立ち上げから1年目の法人の消費税が免除される条件は「期首の資本金が1,000万円未満」です。1年目の条件はこれだけで、資本金を999万円以下で設定さえすれば免税されます。設立したばかりでも設定額が1,000万円以上の場合は、1年目から納税義務が発生するためご注意ください。
資本金として計上せず、赤字が発生した場合の保険として取っておく「資本準備金」に関しては、免除の条件に含みません。そのため資本金を900万円、資本準備金を100万円とすれば合計で1,000万円になったとしても消費税免除の対象となります。
2年目の免除条件
以前までは1年目の条件さえ満たせば2年間免税されていましたが、平成23年(2011年)に法律が改正されてからは、2年目に新しく以下の条件が追加されました。
- 1年のうち半年(6ヵ月)間の課税売上高が1,000万円を超える場合
- 給与等の支払い(人件費)が1,000万円を超える場合
事業を始めてから6ヵ月間で課税売上高または給与等の支払いが1,000万円超になった場合は、2年目でも消費税の支払い義務が発生します。ですが、事業開始1年目が7ヵ月以下だった場合は特例が発生し、課税の対象になりません。
例えば事業開始が12月1日だった場合、年度末である来年の3月31日までの間は4ヵ月です。特例を利用すれば、仮に課税売上高が1,000万円を超えてしまったとしても納税義務は発生しません。
もし半年間で安定した売上が見込める場合は、最初から事業開始のタイミングを考えて設定しておくと節税につながるでしょう。
会社設立で消費税が免除されない条件
特定新規設立法人などに該当しない会社を立ち上げた際に課税事業者になる条件は単純で、免税の条件である逆を行えば課税対象になります。
- 期首の会社の資本金が1,000万円以上
- 1年のうち半年(6ヵ月)間の課税売上高が1,000万円を超える場合 かつ 給与等の支払い(人件費)が1,000万円を超える場合
以上のいずれかの条件を満たしている場合、初年度もしくは2年目から課税事務者となり消費税の支払い義務が発生するでしょう。設立時から課税事業者になりたい場合は、資本金の額を高く設定しなければならないため、ある程度の準備が必要でしょう。
消費税の免税事業者であるメリット
免税事業者になるメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 消費税を納税しなくてよい
- 会計処理が簡単
- インボイスに対応する手続きが不要
まず大前提として、免税事業者のため消費税を納税しなくてよいという点が最大のメリットでしょう。本来利益である額を納税してしまうと、会社の売上が減ってしまいます。
消費税の申告や計算などの事務的な負担、インボイス制度による書類作成などの事務手続きも必要ありません。その分他の作業に専念できるため、人件費削減にもつながるでしょう。
消費税の免税事業者であるデメリット
免税事業者であるデメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 取引するうえで不利になる場合がある
- インボイス制度に必要な適格請求書を発行できない
- 消費税の還付が受けられない
インボイス制度が導入されたことにより、免税事業者であることで課税事業者にデメリットが生じるようになりました。そのため、取引をするうえで他の課税事業者と比較して不利になる可能性があります。
今まで取引していた企業から値下げを要求されたり、課税事業者に変更を提案されたりといったケースもあります。
急に取引を中止されたなど、あまりにも不当な対応をされた場合は独占禁止法に抵触する可能性があるため、その場合は公益通報者保護制度相談ダイヤルに相談しましょう。
消費税の課税事業者になるメリット
課税事業者になるメリットは、以下の点が挙げられます。
- インボイス制度に必要な適格請求書を発行できる
- 輸出取引にかかる消費税が免税される
メリットとして、インボイス制度に必要な適格請求書を発行できる点が挙げられます。これによって課税事業者との取引がスムーズになるでしょう。課税事業者には手続きを行えば任意でもなれます。
元々免税事業者だった企業がインボイス制度を機に課税事業者へと変わる場合、一定期間の軽減措置が利用できます。「2割特例」を利用すれば、3年間売上に係る消費税の2割を納付すれば良いという制度です。
参考:2割特例 特設ページ
消費税の課税事業者になるデメリット
課税事業者になるデメリットは、以下の点が挙げられます。
- 売上が減少する
- 消費税を納税しなければならない
- 適格請求書を作成・交付やシステム導入などの手間が増える
最大のデメリットとして、売上分を消費税として納税しなければならないため、その分の利益が減る点です。それに加えて消費税の計算や確定申告・インボイス制度に必要な書類の作成などの手間が一気に増えます。
売上が減ってしまった分、利益を増やすべく取引先の新規開拓をする必要があるでしょう。自社が課税事業者のため、免税事業者との取引では仕入れの税金控除が適用されない点にご注意ください。
よくある質問
会社設立時の消費税の免除について、よくある質問をいくつか紹介します。
会社設立後でも消費税は免除される?
免除されます。新しく会社を設立した場合、免除を受けるための申請や書類は必要なく、自動的に2年間の免除が適用されます。ですが、上記で説明した通り免除を受ける条件を満たしていることが前提のため、無条件ではありませんのでご注意ください。
インボイス制度による影響はある?
インボイス制度は、仕入れの際に発生する消費税の控除に関する新しいシステムです。簡単に説明すると、免税事業者と課税事業者が取引した場合、課税事業者側の仕入れ分の税負担が増えてしまいます。
会社設立時は自動的に免税事業者になるケースが多いため、免税事業者だからと取引を断られたり、値引きを迫られたりする可能性があるでしょう。そのためインボイス制度導入後は、会社設立すぐ課税事業者になる企業も増加傾向にあります。
【税理士監修】インボイスで変わる!法人が免税事業者と取引をする際の注意点
会社設立にお悩みの方は税理士に相談も
今回は会社設立時の消費税免除について解説しました。金額の設定に注意さえすれば、基本的には免除の対象になるでしょう。2年目に関しては、初年度からある程度の収入が見込める場合、設立のタイミングを考えた上で設定するのがおすすめです。
インボイス制度が導入されたことで、課税事業者への影響も出てきました。免税事業者のままでいるか課税事業者になるべきかは非常に難しい問題です。取引先との関係によっても変わるため、タイミングなども含め慎重に検討しましょう。
小谷野税理士法人では、手数料0円で会社設立のサポートを行っています。そのほか、融資や補助金の申請に関するアドバイスもいたします。