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補助金活用で利用できる圧縮記帳とは?条件や方式・対象を解説!

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補助金活用で利用できる圧縮記帳とは?条件や方式・対象を解説!

国や地方自治体からの補助金を受給するとき、状況に応じて圧縮記帳を利用すると効果的です。圧縮記帳を利用すると、補助金に対する税金の支払いを遅らせられ、資金繰りを改善できる可能性があるためです。今回は、圧縮記帳の特徴や条件、申告方法、メリットとデメリットなどを解説します。最後まで読めば、補助金の申請時に圧縮記帳を利用すべきなのかが理解できます。

関連記事:新規事業に活用可能な注目の補助金・助成金をご紹介!

補助金活用で利用できる圧縮記帳とは

融資のイメージ

基本的な情報として、まず押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 特徴
  • 併用できる制度
  • 適用条件
  • 申告方法

ここから、具体的に解説します。

特徴

圧縮記帳とは、国や地方自治体などより受給する補助金や給付金を対象に、課税の繰り延べが目的の会計処理です。補助金や助成金を受給した分、該当年度により多くの税金が課せられると、補助金などの恩恵を実感しにくいと言えます。

利用によって納税するタイミングを遅らせられ、収支に与える影響を抑えやすくなるのが魅力です。タイミングを遅らせられる一方で、納税額は同じである点や、次年度以降の納税額が増える点は押さえておく必要があります。

関連記事:助成金と補助金の違いとは?知っておきたいポイントを解説

併用できる制度

圧縮記帳と併用できるのは「少額減価償却資産の特例」です。少額減価償却資産の特例とは、取得価額30万円未満の固定資産を年度取得300万円まで、損金算入できる制度を示します。

以下の通り、法人税法上の圧縮記帳に限定されている点には注意が必要です。

  • 国庫補助金
  • 工事負担金など

特例を併用すると、取得した年度の納税額をさらに軽減できるのがメリットです。特例を申請できるのは、具体的に以下の条件を満たす方です。

  • その年の3月15日までに青色申告書を提出
  • 資本金か出資金の額が1億円以下の法人など
  • 常時雇用するスタッフが1,000人以下の個人

特例を利用するには、確定申告書に必要事項を記載する必要があります。

関連記事:【2024年】東京の個人事業主が申請できる補助金・助成金とは?

参考:「少額減価償却資産の特例」中小企業庁

適用条件

圧縮記帳をするには、以下の条件を満たすのがポイントです。

要件

概要

清算中ではない

法人が清算中(借金返済や倒産会社の財産処分)の場合は対象外

特定の機関が交付する補助金や助成金などである

  • 地方公共団体
  • 日本たばこ産業株式会社
  • 指定周波数変更対策機関
  • 社会保険診療報酬支払基金など

返還不要が確定している

受給した事業年度の末日までに、補助金を国に返還する必要がない

会計処理上も対応している

法人税計算の基礎となる会計処理をするときも、圧縮記帳を適用している

確定申告で正しく申告する

確定申告書に後述の別表13を添付する

特定の方法で計上する

以下より選択する

  • 圧縮限度額以下の額を積立金として処理する
  • 圧縮限度額内で、帳簿価額を損金処理によって減額する

親会社と子会社が連結している場合、圧縮記帳をする前に確認しておくのがポイントです。

関連記事:経産省の提供する補助金とは?補助金のポイントや一般的な流れなども解説!

申告方法

圧縮記帳を適用するには、以下の通り圧縮記帳に関する「別表13(損金算入の明細書)」を税務署に提出する必要があります。内容によって、提出する別表が異なるため注意しましょう。

別表13の種類

概要

(1)

賦課金などで取得したものの明細書

(2)

災害時保険金などで取得したものの明細書

(3)

交換によって取得したものの明細書

(4)

収用換地に関する明細書

(5)

特定資産の買換に関する明細書

(6)

特定の交換分合(土地の権利交換)に関する明細書

(7)

特定普通財産と隣接する土地の交換などに関する明細書

(8)

賦課金で取得した試験研究用資産に関する明細書

(9)

転廃業助成金などで取得したものに関する明細書

各明細書は国税庁の公式サイトや税務署で入手できます。

参考:「令和5年4月から令和6年3月の間に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」国税庁

圧縮記帳の方式2つ

圧縮記帳の方法として、以下の2つがあげられます。

  • 直接減額方式
  • 積立金方式

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

直接減額方式

直接減額方式の特徴としてあげられるものは、具体的に以下の通りです。

  • 補助金を圧縮損として計上すると、取得価額を直接減らせる
  • 補助金と圧縮損が相殺される
  • 手軽な方法で、中小企業で適用される傾向にある
  • 基本的に、大企業や上場企業においては適用されていない

例えば、200万円の補助金をもとに、機械装置を400万円で購入した場合、仕訳方法は以下の通りです。

借方

貸方

摘要

預金

200万円

国庫補助金収入

200万円

補助金の受給・固定資産取得したとき

機械装置

400万円

預金

400万円

固定資産圧縮損

200万円

機械装置

200万円

減価償却費

40万円

減価償却累計額

40万円

1年目から5年目までの減価償却費の処理

※機械装置の減価償却期間は5年

補助金を圧縮損として処理すると、取得価額を下げられ、取得年度の納税額の削減につながります。

積立金方式

圧縮記帳方式の1つは積立金方式で、特徴は以下の通りです。

  • 直接圧縮せず、「圧縮積立金」により、法人税の申告書で所得を調整する方法
  • 取得時ではなく、決算時に積み立てる
  • 損金として算入する額は直接減額方式と同じ
  • 本来の取得価額で減価償却する
  • 会計上の利益が増える一方、税務上は課税されない

会計上は積立金方式を選択する方が望ましいとされています。建物の取得価額は減額の対象外で、貸借対照表を正しく管理できないためです。

前述の例(200万円の国庫補助金をもとに、機械装置を400万円で購入)をもとに、仕訳方法を以下に示します。

借方

貸方

摘要

預金

200万円

補助金

200万円

補助金受給、取得したとき

機械装置

400万円

預金

400万円

繰越利益剰余金

200万円

圧縮積立金

200万円

減価償却費

80万円

減価償却累計

80万円

1年目から5年目までの減価償却費と取崩しの処理

圧縮積立金

40万円

繰越利益剰余金

40万円

圧縮記帳の対象と限度額

圧縮記帳には対象と限度額があり、以下の表にまとめました。

圧縮記帳の対象

概要

国庫補助金

  • 交付目的に合致するものを取得した場合に適用され、事業年度内に返還を要しないという確定が必要
  • 取得に使った補助金の額が限度※取得年度と受給年度が異なる場合も対象

【対象補助金の一部】

  • IT導入補助金:生産性向上を目的とするITツール導入をサポートするための補助金
  • 既存建築物省エネ推進事業:建築物ストックの省エネルギー改修促進を目的とし、一部費用をサポートしてもらえる制度
  • 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者などが経営計画を策定したあと、販路開拓を支援するための補助金
  • ものづくり補助金:生産性向上に関するサービス開発や、生産過程の見直しなどをサポートする補助金

工事負担金

  • 電気やガスなど、公益事業会社が建設資金として、サービス利用者から受け取るお金のこと
  • 取得価額より、サービス利用者から受け取ったお金の価額を控除した額が圧縮限度額
  • 会計上利益としないものとされている一方で、利益とするのが妥当という考え方もある
  • 税法上は企業の利益とみなされ、圧縮記帳においては課税しないのが特徴

保険差益

  • 固定資産が滅失・損壊したときに受け取る保険金で、発生日から3年以内に支払い確定したもの
  • 圧縮限度額

【保険差益額×(代替資産の取得などにかかった保険金÷(保険額-滅失額))

※保険差益額=(保険金-滅失経費)‐被害に遭った固定資産帳簿価額】

交換差益

交換によって取得したときに発生する利益のこと

取得資産の価額より、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額と譲渡経費の額を足したものを引くと限度額を算出できる

圧縮記帳のメリット

パソコン

圧縮記帳にはメリットがあるのが特徴で、詳しくは以下の表の通りです。

今年度の課税所得の減額

単年に発生する高額な税金を複数月に分散させられる

モチベーションの維持

申請した補助金を事業に活かし、投資や事業拡大などの意欲を維持しやすい

圧縮記帳は免税を目的とするものではないものの、実施すると今年度にかかるはずの高額な税金の負担を軽減できます。企業の経営状況によっては、補助金にかかる税金の影響で資金繰りが悪化するケースもあるでしょう。

本来であれば単年にかかるはずの税負担を避けられると、事業を安定させやすくなるといえます。補助金申請に対してポジティブな印象を抱けると、前向きな行動を促しやすくなる点もメリットの1つです。

圧縮記帳のデメリット

圧縮記帳にはメリットがある一方で、以下の通りデメリットもあるのが特徴です。

納税額の増加

圧縮記帳した翌年度以降、課税所得が増える

管理の手間が発生する

圧縮記帳できない資産と区別する必要がある

今年度の課税所得を減額できるのがメリットであるものの、翌年度以降には税負担が増える点は注意が必要です。

圧縮記帳とは、あくまでも税金の繰り延べを目的とすると認識しておくのがポイントです。会計処理において、圧縮損の計上や申請のための明細書作成などが発生し、時間や労力を奪われやすいといえます。

圧縮記帳は任意となっており、メリットとデメリットの両方を知ったうえで選択すると後悔を防げるでしょう。

圧縮記帳の相談は税理士へ

確定申告のやり直し

圧縮記帳の条件や申告方法、方式、メリットとデメリットなどを解説しました。納税額の減免ではなく、繰り延べを目的とするのが圧縮記帳で、うまく活用すると資金繰りによい影響が期待できます。

一方で、補助金などを受けた翌年度以降の税負担が大きくなることから、慎重に判断するのが望ましいです。圧縮記帳の対象となる補助金は限られていることから、よくわからないとお悩みの方もいるでしょう。

圧縮記帳の対象となる補助金や適用などに関する相談はプロに依頼するのが賢明です。

小谷野税理士法人では、どのような些細なお悩みでも、専門の税理士によるアドバイスをさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。

関連記事:補助金申請は税理士に相談したほうがいい?依頼のメリットやコストについて

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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