確定申告の経験がないと、「レシートない」と直前になり焦る事態が発生するかも知れません。結論、確定申告ではレシートを必要とせず、税務調査で必要になるのが特徴です。法律で保管期間が決まっており、自分で管理する必要があります。本記事では、確定申告における領収書やレシートの必要性やもらえないケースと対処法、紛失したときの対処法、保管方法を解説します。
目次
確定申告でレシートない場合はどうする?
確定申告におけるレシートの必要性に関して、押さえておきたいのは以下の点です。
- そもそもレシートを提出する必要がない
- レシートは税務調査で必要となる
ここから、詳細に見ていきましょう。
そもそもレシートを提出する必要がない
確定申告で「レシートない」と慌てるケースもあるかも知れませんが、確定申告ではレシートの提出が義務付けられていません。
一方で、領収書などは保管期間が定められており、丁寧に扱う必要がある点は押さえておくとよいでしょう。経費に関するもののみではなく、医療費控除を申請する場合も同様に、レシートや領収書の提出は必要ありません。
なお、医療費控除に関しては、健康保険組合から送られる「医療費のお知らせ」で申請できます。確定申告や医療費控除の書類に関しては、国税庁のホームページからダウンロードするか税務署で入手できます。
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レシートは税務調査で必要となる
確定申告では必要ないものの、レシートは税務調査において必要です。任意調査の場合、一般的に過去3年分の帳簿が対象となり、請求書や領収書などがチェックされるためです。
仮にレシートがない場合、帳簿につけられている数字が怪しまれるのは避けられないといえます。脱税していると捉えられると、追加で税金を課されるなどペナルティを受ける点は要注意です。
青色申告をしている場合、税金の優遇措置を受けられなくなるなど、事業活動に大きな影響を及ぼすリスクがあります。レシートなどの保管は面倒に感じるかも知れませんが、個人事業主にとって重要な作業の一つです。
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レシートや領収証をもらえないケースと対処法
レシートや領収証は必ずもらえるものではなく、以下のケースではもらえないのが特徴です。
- フリマアプリの支出
- 公共交通機関での移動
- 自動販売機の利用
- 割り勘による支出
- 祝儀や香典など冠婚葬祭費
それぞれの対処法と合わせて、ここから具体的に解説します。
フリマアプリの支出
フリマアプリの支出に関して、原則としてレシートなどをもらえないことから、出金伝票を起こし自分で対処する必要があります。
なお、フリマアプリによっては領収書が発行されないものの購入明細書を自分で印刷できる場合があります。
支出の証拠として明細書を印刷しておく、クレジットカード払いの場合は利用明細書を印刷しておくのも良いでしょう。
公共交通機関での移動
バスや電車など、公共交通機関を利用するとき、基本的に領収書は発行されません。
一方で、以下の条件を満たす場合は、領収証をもらう必要がない点を知っておくとよいでしょう。
- 金額が30,000円未満である場合
- 領収書の発行が難しい場合
会社によっては領収書の発行に応じてもらえることから、以下の対処法をとるのがポイントです。
- 運転手や職員の方に申請する
- 会社に申請する
Suicaを利用した場合、券売機の画面上で領収書を発行できます。領収書を発行してもらえない場合は、出金伝票を起票する必要があります。
自動販売機の利用
自動販売機を利用した場合、領収書は発行してもらえません。以下の通り、業務上必要だと認められるものに関しては、出金伝票を起こすと経費として認められます。
- 夏の営業で水分補給のために利用
- 事務所に来た取引先に提供するために利用
- 仕入税額控除(仕入れや経費にかかった消費税を控除する仕組み)を利用
出金伝票に記載する項目は以下の通りです。
- 支払い先:自動販売機
- 金額:価格と本数
- 概要:理由
- 取引年月日:購入した日付
個人的に自動販売機を利用した場合、経費として認められません。
割り勘による支出
飲食店などで割り勘で支払った場合、基本的に領収書を発行してもらえません。他の経費同様に出金伝票を起票するのがポイントであるものの、割り勘した相手から以下の領収書をもらえると理想的です。
- 領収書原本のコピー
- 割り勘した旨
出金伝票を起票する場合、店名や取引先名などを記載する必要があります。
祝儀や香典など冠婚葬祭費
祝儀や香典など、冠婚葬祭に関する費用に関しては領収書を発行してもらえず、出金伝票を起票する必要があります。冠婚葬祭費の出金伝票を起票するとき、以下の書類を添付するのがポイントです。
- 結婚式:招待状、席次表、ご祝儀袋の表書きのコピーなど
- 葬儀:案内状、香典に対するお礼状のコピーなど
結婚式や葬儀に参列するために交通機関を利用した場合、経費として計上できます。結婚式のプレゼントや香典などと同様に、出金伝票を起票して対処するとよいでしょう。
レシートや領収書を紛失したときの対処法
レシートや領収書を紛失したとき、以下の方法で対処するのがポイントです。
- 振込明細で代用
- 確認メールやスクショ画面で代用
- クレジットカードの明細で代用
- 出金伝票で代用
- 再発行の依頼
それぞれについて詳しく解説します。
振込明細で代用
レシートを紛失したときは、振込明細で代用するとよいでしょう。銀行の振込を利用したときは振込明細が発行され、支払いの裏付けとしての利用が認められているためです。
預金口座から振り込んだ場合、預金通帳を提示すると代用できます。
確認メールやスクショ画面で代用
通信販売などインターネット上で支払いをした場合は、以下の通りメールの履歴やスクショ画面などで代用できます。
- 支払い完了メール
- ファイル形式の領収書やメール本文
- 取引のスクショ画面
購入商品や代金などが明確に分かるメールやスクショ画面の場合、領収書の代わりとして認めてもらえます。
クレジットカードの明細で代用
レシートを紛失したときは、クレジットカードの明細で代用できるケースがあります。クレジットカードを代用する場合、以下の情報が記載されてあるのがポイントです。
- 利用した店名
- 購入した人
- 購入商品
- 金額
- 利用日時など
クレジットカードを利用するときにもらう「クレジット売上票」を保管しておくと、いざというときに活用できます。
出金伝票で代用
レシートを紛失したときの対処法の一つは、出金伝票を起票することです。出金伝票とは、取引相手ではなく自分で起票するのが特徴で、税務署から信頼性を疑われやすいといえます。
税務調査に入られたとき、今までの取引実績などを考慮したうえで却下される可能性がある点は注意が必要です。どうしようもない場合に選択すべき手段で、頻繁に利用するのは避けるのが賢明です。
再発行の依頼
レシートを紛失した場合、取引相手に領収書の再発行を依頼するとよいでしょう。一般的に、領収書の再発行は望ましいとされてはいないものの、取引相手によっては応じてもらえるケースがあるためです。
法律上、領収書の発行は義務付けられているものの、再発行に応じる必要はないとされています。利用する側がお客の立場で、取引上優位になりやすいことから、まずは確認するのがポイントです。
一方で、領収書の再発行には応じないと決めている取引先の場合、他の手段を採用する必要があります。
レシートや領収書の適切な保管方法
税務調査が実施されるとき、レシートや領収書の提示を求められることから、以下の通り管理が求められます。
- 紙の場合
- データの場合
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
紙の場合
紙のレシートや領収書を保管する場合、以下の通り量に応じて適切な方法を選択するとよいでしょう。
- 封筒に入れる:量が少ないときに向いている
- ファイリングする:量が多いときに向いている
レシートの量が少ない場合、保管専用の封筒を作ると楽に保管しやすいでしょう。レシートを入れる封筒を月ごとに分けるのがポイントです。ファイリングする方法と比べると、レシートを見返すときに手間がかかりやすいのがデメリットだといえます。
レシートの量が多い場合は、無地の紙にレシートを貼付し、ファイリングするのが望ましいです。一目で必要なレシートを確認できることから、税務調査でもすぐに取り出せるのがメリットです。
一方で、封筒に入れるケースと比較すると、ファイリングに時間や手間がかかりやすいのがデメリットだといえます。
データの場合
レシートをメールなどの電子取引データで受け取った場合、以下の要件を満たしたうえで保管する必要があります。
- 改ざん防止措置:タイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムの採用など
- 検索機能の確保:日付や金額、取引先などで検索できるように設定する
- ディスプレイやプリンターの備え付け:自社開発の場合は、概要記載の書類を備え付ける
電子取引データとは、具体的に以下の通りです。
- クラウドサービス上でやり取りしたデータ
- EDI(電子データ)取引など
電子取引データに該当するのは、インターネット上でやり取りしたデータすべてです。
レシートや領収書の保管期間とは
レシートや領収書の保管期間は法律で決まっており、具体的には以下の表の通りです。
青色申告の個人事業主 |
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白色申告の個人事業主 |
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青色申告、白色申告に関係なく、以下の条件に該当する場合はレシートを7年間保管する必要があります。
- 消費税の課税事業者:仕入税額控除の要件に該当する領収書など
- 適格請求書発行事業者:適格請求書のコピーやデータなど
レシートは安易に廃棄せず、指定されてある期間保管するのがポイントです。
【税理士監修】インボイスの領収書の書き方は?見本やテンプレート、登録番号なしの場合は?
確定申告でレシートない場合の相談は税理士へ
ここまで、確定申告でレシートがない場合の対処方法や必要性、保管方法などを解説しました。確定申告では領収書やレシートの提出が必要ないものの、税務調査で求められることから、適切に保管するのがポイントです。
レシートをもらえないケースでは、出金伝票を起票して対処するなどの対応が求められます。
一方で、事業を進めながら支出やレシートなどの管理について、大変に感じているケースもあるでしょう。
自分一人で抱え込まずに、状況に応じてプロの力を頼るのが賢明です。
小谷野税理士法人では、実績のある税理士が確定申告のサポートなどを行っているため、まずはお気軽にお問い合わせください。