会計処理するときのみでなく、法律を守るうえでも請求書の整理や管理は必要です。請求書を適切に保管すると、税務調査や確定申告などにおいてスムーズに対応しやすいでしょう。今回は、請求書の整理や管理の必要性、保管期間と方法、ポイント、請求書管理システムの特徴や選び方を解説します。最後まで読めば、請求書の整理や管理に関する疑問点を解消できるでしょう。
目次
請求書の整理・管理の必要性とは
支払の重複や未払いを防ぐうえで、請求書は取引証拠として適切な整理・管理が求められる書類です。確定申告において請求書の提出は不要である一方、税法上で保管期間が定められています。
税務調査に入られた場合、請求書の提示を求められる可能性があり、すぐに取り出せる状態に整理しておくのが理想的です。電子データの請求書を保管する場合、以下の点をファイルに入力する必要があることには注意が必要です。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
請求書は正しく整理・管理すると、事業活動においてプラスに働くでしょう。
参考:「電子取引データ」国税庁
請求書の保管期間
請求書の保管期間は法律で定められており、具体的には以下の通りです。
- 法人:7年
- 個人事業主:5年
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法人:7年
法人の場合、「法人税の確定申告書」の提出期限の翌日から、7年間の保管が義務付けられています。請求書を始め、以下の書類を保管する必要があります。
- 棚卸表
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 注文書
- 契約書
- 領収書など
以下の状況に該当する場合、請求書などの書類を十年間保管するのがポイントです。
- 青色申告書を提出しておらず、災害損失金額が発生
- 青色申告書を提出した事業年度で、欠損金額が発生
決算日の翌日から2ヵ月以内が法人の確定申告の時期で、期限内に手続きをする必要があります。
【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
個人事業主:5年
個人事業主の場合、確定申告期限の翌日から5年が請求書の保管期間です。保管する必要のある書類と、それぞれの保管期間は以下の表の通りです。
青色申告 |
|
白色申告 |
|
消費税の課税事業者で、仕入額控除を目的とする請求書の場合、7年間の保管が義務です。
青色申告のメリット5つ|デメリットや適用をおすすめできる人とは?
請求書の整理・管理のポイント
請求書を整理したり管理したりするにあたって、買い手と売り手によって押さえるべき点があります。以下の表の通り、ポイントを押さえておくと、請求書のスムーズな整理、管理を実現できるでしょう。
買い手側 |
|
売り手側 |
|
請求書の保管方法2つ
請求書を保管する方法として、以下の2つがあげられます。
- 月別に保管する
- 取引先別に保管する
ここから具体的に解説します。
月別に保管する
請求書の保管方法の一つとして、月ごとに分けるものがあげられます。請求書を月ごとに分けるメリットは、請求書の仕分や管理に時間や労力などを必要としにくい点です。
請求書の量に応じて変わるものの、封筒やファイルなどにまとめて入れると、保管に必要な作業を終えられるためです。
一方で、請求書の量が多い場合、取引先の請求書を探すときに時間がかかりやすい点はデメリットです。月別に保管する方法は、取引先が限られている事業者に向いています。
取引先別に保管する
請求書の保管方法として、取引先別に管理するものがあげられます。取引先別に管理するメリットは、取引先ごとの売上と支払の推移を把握できる点です。
一方で、月ごとの売上や支払額を一目でチェックしにくい点がデメリットです。取引先が多くなるほどに、整理や管理に労力がかかることから、後述するシステムの導入を検討するとよいでしょう。
請求書管理システム導入のメリット
請求書を効率的に整理したり管理したりするには、以下の通りシステムを導入するのも一つの方法です。
- 生産性をあげられる
- コスト削減できる
- 情報を一元管理できる
ここから詳しく見ていきましょう。
生産性をあげられる
請求書管理システムを導入すると、業務の効率化につながり生産性を高める効果が期待できます。請求書の作成から送付まで、システム上で完結させられるためです。
エクセルに手入力しているケースと比べると、人的ミスを減らしやすい点もメリットです。システムによって、自動で請求書の作成からチェックまで行ってもらえるのが特徴で、予期せぬミスを防げる可能性があります。
請求書の作成にかかる時間を短縮できると、より重要な業務に割く時間を増やせるでしょう。請求書の作成に関して、創造性よりも正確性が求められることから、システムに任せるのは賢明な判断です。
コスト削減できる
請求書の発行方法などにもよるものの、請求書管理システム導入によって、具体的に以下のコストを削減できるでしょう。
- インク代
- 郵送費
- 封筒代
- コピー用紙代
- 人件費
電子データとして請求書を発行すると、事務用品の購入に必要な費用や、選ぶための時間などを削減できます。システムの導入によって生産性をあげられると、人件費の削減効果が期待できます。
事業者にとって、人件費の占める割合は大きくなりやすいもので、システム導入は収支改善するうえでプラスに働くでしょう。
情報を一元管理できる
請求書管理システムのメリットの一つは、情報の一元管理を実現できる点です。以下の通り、情報を一元管理すると事業所内での情報共有がスムーズになり、生産性をあげる効果が期待できます。
- 社内承認のプロセス
- 入金確認
- 入金後の残高を消す作業など
エクセルで請求書を作成する場合、ファイルを開く手間や時間がかかるでしょう。
一方、請求書管理システムで一元管理すると、作成した請求書を簡単に検索し、チェックできる点もメリットです。
請求書管理システムを選ぶ方法
各社から請求書管理システムが提供されており、どれにすればよいのか迷うケースもあるでしょう。以下の点を比較検討すると、より適切なものを選べるでしょう。
- コスト
- サポート
- 機能
それぞれについて、詳細に解説します。
コスト
請求書管理システムを選ぶときは、コストを比較するのがポイントです。同じタイプであっても、提供されているシステムによって料金が異なるためです。
月額料金に加えて、請求書の枚数に応じた金額を加える費用形態が、請求書管理システムでは採用される傾向にあります。
一方で、毎月一定数までは無料で請求書を発行できるケースもあり、コストを抑えたうえで運用しやすいでしょう。システムを購入するときのコストにあわせ、維持管理にいくらかかるのかもチェックしておくのがポイントです。
サポート
請求書管理システムを選ぶときのポイントの一つは、サポート面です。初めて利用するときは特に、操作や万が一のときの対処に関して、疑問や不安などを感じやすいものです。
サポート体制が整っているシステムを選ぶと、安心して運用しやすいでしょう。請求書管理システムの中には、取引先に対する案内などを実施しているケースもあり、よりスムーズに移行できる可能性があります。
サポートを利用できる時間や連絡手段、監視体制などをチェックしておくのがポイントです。
機能
請求書管理システムを選ぶときは、機能面を比較検討するとよいでしょう。機能面が充実すると、コストが増加する傾向にあるためです。
以下の表の通り、取引件数に応じて必要な機能を選ぶのが一つの方法です。
取引数が限られる場合 | 請求書の作成と発行の機能のみでもよい |
百件以上の取引数がある場合 | 一社ごとに効率的に請求書を送れるものを選ぶ |
データを活用したい場合 | 営業管理や支払管理などの機能があるものを選ぶ |
一般的な請求書管理システムには、以下の機能が備わっています。
- 作成・発行:請求金額の計算や請求書の自動作成など
- 受取・保存:請求書の受取やクラウド上での管理
- 帳票作成:領収書や納品書などの作成
- 申請・承認:申請書の申請と承認の設定
- メール送信・郵送代行:メールか郵送で送付方法を選択
便利な機能が複数あり、使いこなせるとより業務を効率化できるでしょう。
請求書の整理に関して悩んだときは税理士へ
ここまで、請求書の整理・管理の必要性、保管期間と方法、請求書管理システムの選び方などを解説しました。請求書の整理や管理は面倒に感じるものかも知れませんが、法律で保管期間が決まっていることから、事業をするうえで重要な書類です。
取引先とのトラブルや税務調査の対策をするうえでも、適切な方法で整理したり管理したりするのがポイントです。
一方で、請求書の整理を始め、税務全般がよくわからなかったり苦手意識があったりする方もいるでしょう。
税務の専門家である税理士に頼むと、有益なアドバイスをもらえます。小谷野税理士法人では、実績のある税理士によるさまざまな税務のサポートをさせて頂いています。まずはお気軽にお問い合わせください。