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効果的な事業承継とは?税制デメリットへの対処法

公開日:

効果的な事業承継とは?税制デメリットへの対処法

事業承継は企業が長期的に事業を継続する上での選択肢の1つですが、税制への理解と対策が欠かせません。現行の税制には多くのメリットがある一方で、デメリットも複数存在します。本記事では事業承継の基本的な手順から、法人・個人における事業承継税制の詳細、税制上のデメリットと回避方法について解説します。

事業承継の基本と現行の税制

建物の減価償却費

事業承継と聞くと複雑に思ってしまう方も一定数いますが、一般的に次の3つのステップで進めます。

項目

内容

計画策定

・後継者を決め、引退時期を決める

・専門家と相談しながら承継方針を立てる

評価実施

・事業価値の評価

・後継者の適性評価

・資金計画(相続税対策など)

承継実行

・株式や資産の移転手続き

・経営権の移譲

・関係者への引き継ぎ

事業承継には、税制面での課題が多く存在します。特に「事業承継税制」と呼ばれる制度は、承継の際に注目すべき点です。
次に、事業承継税制の具体的な適用条件や注意点について、詳しく見てみましょう。

参考:第2章 事業の承継|経済産業省 中小企業庁

【法人】事業承継税制

「法人版事業承継税制」とは非上場会社の株式を対象とし、贈与税や相続税の猶予・免除によって中小企業の円滑な世代交代を支援する制度です。中小企業の円滑な世代交代を支援するために設けられました。

制度

説明

贈与税の納税猶予

・一定条件を満たせば贈与税の納税が猶予される(後継者が先代から株式を贈与された場合)

・条件を満たし続ければ、納税が免除されることもある。

相続時の税制優遇

・先代が死亡し、後継者が株式を相続する場合に適用

・一定条件を満たせば、相続税の一部または全部が猶予され、最終的に免除されることもある

適用期間

・特例措置は、2027年12月31日までに承継が完了する場合に適用される

適用期間が決まっている特例措置のため、利用を検討する際には最新情報を確認しましょう。

参考:法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定 | 中小企業庁

参考:法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類

参考:法人版事業承継税制|国税庁

【個人】事業承継税制

「個人版事業承継税制」とは、個人事業主が事業を承継する際に適用される税制上の優遇措置です。
個人事業主が事業を次世代に引き継ぐ際に、贈与税や相続税の猶予・免除を通じて支援してくれます。

ただし、青色申告の事業主のみが対象であるため注意しましょう。具体的な手続きとして、事前申告が欠かせません。また、継続的な報告義務があります。

制度

説明

贈与税の納税猶予

・個人事業主が事業を後継者に贈与する際、一定条件を満たせば贈与税の納税が猶予される。

・条件を満たし続ければ、納税が免除されることもある。

相続時の税制優遇

・個人事業主が死亡し、事業を後継者が相続する場合に適用。

・一定条件を満たせば相続税の納税が猶予され、最終的に免除されることもある。

適用条件

・「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定を受けている

適用期間

・特例措置は2028年12月31日までに承継が完了する場合に適用

個人版事業承継税制は適用条件を満たさない場合、猶予された税額が一括で課される可能性があるため、注意しましょう。

参考:個人版事業承継税制)|国税庁

参考:個人版事業承継税制の前提となる認定 | 中小企業庁

関連記事:事業承継とは?中小企業の経営者が知っておくべき基礎知識と成功のポイントを解説!

事業承継の税制における主なデメリット

税理士を変更するデメリットのイメージ

業承継税制には、主に3つのデメリットが存在します。ここでご紹介するデメリットを理解することで、より良い事業承継計画を立てられます。

資本税の課題

事業承継税制における資本税には、以下の課題があります。

課題やリスク

要点

承継による税負担

・適切なタイミングで所得を認識しないと、後継者に予想外の税負担が発生する可能性がある

・高い税率が適用されると、納税負担が大きくなる

資産評価

以上の課題を事前に理解して対策を講じれば、資本税の影響を最小限に抑えられます。詳しく見てみましょう。

資本課税の負担

事業承継時に発生する課税は、後継者にとって負担です。特に、相続や贈与による資産移転に際して課される税金は多額になることが多く、後継者は納税資金を確保しなければなりません。納税資金の確保が難しくなると、事業の運営にも影響を及ぼす可能性があります​​。

資産価値の変動リスク

資産価値が変動するリスクも無視できません。資産価値が大幅に変動する場合、事前の税額見積もりが困難になるほか、市場の変動が激しい時期には税負担の予測が特に難しくなります。したがって予期せぬ税負担が発生し、事業承継の計画に狂いが生じかねません​ 。

納税資金の確保

納税資金を確保するために、事業資金を一時的に流用せざるを得ない場合もあります。状況によってはキャッシュフローに直接的な影響を与え、事業の運営に支障をきたすかもしれません。

さらに、資産評価においても正確さが求められます。評価が不適切であれば、税務上の問題が生じ、後日税務調査で指摘を受けるリスクも考慮しなければなりません。

評価に誤りがあると追加の税負担や罰金が課される可能性もあるため、専門家の助言を受けて適正な評価を行うことが重要です​。

以上のリスクを理解し、適切に対策を講じることで、事業承継をスムーズに進められます。迷う場合は 専門家の助言を受けながら、計画的に事業承継を進めましょう。

参考:法人版事業承継税制|国税庁

所得税の課題

事業承継税制を活用する際、所得税に関する課題も存在します。

課題やリスク

要点

承継時の所得認識と税率

・適切なタイミングで所得を認識しないと、後継者に予想外の税負担が発生する可能性がある

・所得に対する税率は、後継者の納税負担に直接影響を与える

・高い税率が適用されると納税負担が大きくなり、事業資金に影響を与える可能性がある

繰延べ税金資産の影響

・適切に活用することで事業承継時の税負担を軽減できる

・活用には正確な会計処理と適切な計画が必要

・過大に計上されている場合、後々の税務調査で問題となるリスクがある

適切な所得認識と税率の設定を怠ると、後継者が高額な税金を支払うことになります。最終的に、事業の運営が困難になる可能性も考慮しなければなりません。

繰延べ税金資産を効果的に活用することで、事業承継時の税負担を抑えられますが、過大計上といったリスクも伴います。

参考:中小企業経営者が知っておくべき事業承継税制のポイント①事業承継税制の適用を受けることをお勧めする会社 |東京商工会議所

関連記事:中小企業の事業継承|種類や活用できる支援施策まとめ

相続税と贈与税の影響

事業承継税制における、相続税と贈与税の影響についても考慮が必要です。

課題やリスク

要点

納税猶予の条件と複雑さ

・事業承継税制の利用条件が複雑

・さまざまな条件を満たさなければならない(後継者が事業を継続する、一定の雇用を維持するなど)

・条件を満たさないと猶予された税金を一括で支払う義務が生じる

事業承継税制によるリスクと対策

・税制が変更されると、事業承継税制の適用条件やメリットが変わる可能性あり

・当初計画していた税負担軽減策が無効になるリスクがある

・税制変更に備え、最新の情報を収集するなど柔軟な対応が求められる


事業承継税の利用条件の1つである納税猶予の条件を正確に理解し、対応することが求められます。
しかし条件を満たすためには、事業の継続や雇用の維持など、さまざまな条件を満たさなければなりません。求められている条件を守らないと、猶予されていた税金を一括で支払う必要が出てきます。

また税制が変わる可能性もあるため最新の情報を常に把握し、税理士など専門家と協力して対策を立てることが大切です​。

参考: 中小企業経営者が知っておくべき事業承継税制のポイント①事業承継税制の適用を受けることをお勧めする会社 |東京商工会議所

事業承継の税制における制度のメリット

税理士に丸投げするデメリットのイメージ

前述にてデメリットを解説しましたが、事業承継の税制には多くのメリットもあります。特に、事業承継時の税負担を軽減できる制度が多くある点が特徴です。
この章で御紹介する制度の中で、自社に適用できそうな内容があれば、税理士などと連携のうえ、情報収集することをおすすめします。

相続税の納税猶予が最長20年間認められる

相続税の納税猶予制度とは、農地などを相続する場合に納税が最長20年間猶予される制度です。猶予期間中に農業を継続すれば、最終的に納税が免除されることもあります。

​ 相続時の税負担を軽減できる

相続時に一括で課税される相続時精算課税制度を利用することで、相続時の税負担を軽減できます。本制度は、特に大規模な資産移転時に有効です。

事業承継時の納税猶予特例措置を利用できる

事業承継税制の特例措置では、納税猶予の対象範囲や期間が拡大されています。この特例措置を利用することで、事業承継に伴う税負担を大幅に軽減できます。

相続税の課税価格が軽減される特例を利用できる

非上場株式の相続に際して特定の条件を満たす場合、評価額が軽減される特例があります。本制度を活用すれば後継者の納税負担が軽減され、よりスムーズな事業承継が可能です​。

一定額までの贈与が非課税となり、生前の事業承継がしやすい

生前贈与が一定額まで非課税となる制度を利用することで、計画的な事業承継が可能となり、相続時の負担を軽減できます。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

関連記事:経営承継円滑化法とは?法律の概要や支援について

税制から見る事業継承の事例

事業承継は、中小企業や個人事業主にとって課題です。特に、以下のような企業や事業主にとっては、より深刻な問題となりかねません。
以下に具体的な事例を紹介しながら、それぞれの課題と対策について詳しく解説します。

事例1: 製造業の中小企業の事業承継

製造業の中小企業では、特に技術継承や設備投資が重要です。熟練した技術者の退職に伴い、技術やノウハウの継承が困難になることがあります。

また、設備の更新や新規投資が必要な場合、資金確保が課題です。製造業の中小企業における技術継承と設備投資についての課題と対策を以下に示しました。

課題

対策

技術継承

・熟練技術者から若手への計画的な技術教育プログラムを導入する

・マニュアルや動画による技術の標準化を進める

設備投資

・設備投資に必要な資金を確保するため、事業承継税制を利用して納税猶予を受ける

・銀行からの融資やファンドの利用を検討する

技術継承と設備投資に関する対策を講じることで、製造業の中小企業が直面する具体的な課題に対処できるでしょう。

事例2: サービス業の個人事業主

サービス業の個人事業主では、顧客との信頼関係が事業の成否を左右します。後継者が顧客との関係をスムーズに引き継ぐことが欠かせません。

また事業主が1人で経営している場合、事業の引き継ぎがスムーズに行われないとサービスの質が低下するリスクがあります。

サービス業の個人事業主が陥りがちな顧客との関係の引き継ぎについての課題と対策を以下に示しました。

課題

対策

顧客関係の引き継ぎ

・後継者が顧客との関係を円滑に引き継ぐよう後継者を紹介し、顧客との信頼関係を築く時間を確保する

・定期的なミーティングやイベントを通じて、後継者を顧客に紹介する

経営の引き継ぎ

・後継者に対する経営教育プログラムを実施し、経営スキルを育成する

・外部の経営コンサルタントとともに、経営体制の整備を進める

以上の対策を講じることで、スムーズな事業承継へつながるでしょう。

事例3: 家族経営の中小企業

家族経営の中小企業では、後継者の選定や家族内の調整が大きな課題となります。複数の家族メンバーが後継者候補となる場合、選定に伴う対立や不和が生じることも考慮しなければなりません。

後継者の選定と家族内調整についての課題と対策を以下に示しましたので、参考にしてみてください。

課題

対策

後継者の選定

・家族内で透明な選定プロセスを設け、公平に後継者を選定する

・第三者の専門家を介して選定プロセスを進め、客観性を確保する

家族内調整

・家族間の対立を避けるため定期的なファミリーミーティングを開催し、家族全員が事業承継に関与する機会を提供する

・専門家の助言を受けながら、家族内の調整を進める

これらのポイントを踏まえ、事業承継の計画を早期に立て、専門家の助言を受けながら進めましょう。

実務での対策

事業承継時の税負担を軽減するためには、適切な財務戦略と法的な対策が必要です。財務戦略では、早期の贈与や生命保険の活用、資産の分割などを計画し、税負担を分散させなければなりません。

法的な対策としては、贈与契約書や株式譲渡契約書の作成、必要な申告書の提出などの手続きが欠かせません。

非上場会社の株式を対象とする法人版事業承継税制では、贈与税や相続税の猶予と免除によって、中小企業の円滑な世代交代を支援します。

一方の個人版事業承継税制は、個人事業主が事業を次世代に引き継ぐ際に、贈与税や相続税の猶予を免除します。

M&Aや事業撤退の選択肢

事業承継の方法は多岐にわたるため、必ずしも親族内での承継に限りません。現行事業の存続と発展を図りつつ、事業主は退任後の生活資金を確保するために、M&A(企業買収・合併)を活用して第三者に事業を引き継ぐことも1つの方法です。

また、事業主の意向や市場の状況を踏まえた慎重な判断のうえ、事業の縮小や撤退を検討する場合もあります。

関連記事:事業承継補助金・引き継ぎ補助金とは?対象経費や対象者について解説

デメリットを回避する方法

事業承継は経営資源の有効活用や事業の永続的な発展など多くのメリットがある一方、承継に伴う多額の税金や後継者への権限移譲に伴うトラブルなどのデメリットもあります。

デメリットを回避するためには、事前の十分な準備と計画が欠かせません。そのため、早期の贈与、生命保険の活用、資産の分割などの対策に加え、税制改正に備えた最新情報の把握が大切です。

税理士など専門家主催の相談サービスやセミナーなどを活用すれば、情報をより素早く取得できます。

専門家のアドバイスが欲しいという方は「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

【事業承継の疑問を解決】 よくある質問

税理士変更での利用者登録番号について

ここでは、事業継承についてよくある質問をご紹介します。

Q1.事業承継税制の適用を受けるにはどのような条件が必要ですか?

事業承継税制の適用を受けるためには、以下のような条件を満たさなければなりません。

  • 事業を継続する意思があること
  • 一定期間にわたり雇用を維持すること
  • 納税猶予のための申請を行うこと

これらの条件を満たせば、相続税の納付が猶予される可能性があります。

Q2.承継時の税負担を軽減するにはどうすればいいですか?

承継時の税負担を軽減するためには、早期の贈与や生命保険の活用、資産の分割などが有効です。

税負担を軽減するためにも、事業承継を検討してる方は、事前に計画を立てたうえで早めの対策を講じましょう。

参考: 中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充 (事業承継税制)|中小企業庁

Q3.個人事業主でも贈与税・相続税の納税猶予を受けられますか?

個人版事業承継税制を利用することで、事業用資産の承継に伴う税負担の軽減が可能です。個人事業主でも、青色申告を行う事業者かつ「経営承継円滑化法」の認定を受けた後継者が一定の条件を満たせば、贈与税・相続税の納税猶予を受けられます。

具体的な要件として、以下を満たす必要があります。

  • 事業継続と雇用維持
  • 適切な申請と承認

ただし、個人事業の承継では課税資産の範囲などの扱いが法人と異なるため、専門家に適切なアドバイスを求めながら、事前に十分な準備を行いましょう。

事業承継は容易ではありませんが、丁寧に取り組めば、事業の永続的な発展につながります。

参考:個人版事業承継税制)|国税庁

関連記事:事業継承に活用したい!事業承継・引継ぎ補助金の全容について徹底解説

事業承継デメリット対策は税理士に聞いてスムーズに行おう

事業承継税制にはメリットもありますが、一方でデメリットもあるため、注意が必要です。デメリットを回避しながら事業承継を成功させるためには、税制改正に備えて最新情報を把握しながらの対応が求められます。

そのため税理士などの専門家の助言を受け、適切な税務計画を立てましょう。デメリットを回避し、安心して次世代への事業承継を進める一助となるでしょう。

小谷野税理士法人には、公認会計士や税理士など経験豊富な専門家が在籍しています。一人ひとりの状況に合わせて、資産評価や税金対策、資金計画などのサポートをいたします。

事業継承についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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