税務調査の流れのうち、調査員が事業所や自宅にやってきて帳簿などを調べる行為を「実地調査」と呼びます。実地調査に必要な時間は、個人なら1日、法人なら2日程度が一般的です。また、行われる時間帯は10時ごろから16時ごろまでが基本です。この記事では、税務調査に要する時間や、行われる時間帯や時期について、個人・法人のケース別に解説します。
目次
税務調査とは、税金の申告内容が正確か調べること
税務調査とは、税金の申告内容が正確か確認するため、税務署や自治体などの税務機関が行う調査です。税務調査の流れなど詳しくは下記の記事をご確認ください。
税務調査とは?いつ・どこまで調べられるのか?大まかな流れや査察調査(国税調査)との違いなども解説
実地調査にかかる時間は個人なら1日、法人なら2日が目安
税務調査の流れの中で、調査員が事業所や自宅にやってきて帳簿や書類を調べるのが「実地調査」です。実地調査当日は調査官に対応する必要があるため、業務に支障が出ると想定しておきましょう。では、調査は何日かかるのでしょうか。
実地調査の所要時間は個人なら1日、法人なら2日が一般的
前提として、実地調査を行う日数に決まりはありません。調査の進捗や、納税者の協力度、対象の規模や内容によって所要時間が変わります。ここでは、一般的なケースを解説します。
個人事業主の所得税や、相続税・贈与税といった個人が対象の調査は、1日で終わることが一般的です。個人の場合は法人と比べて規模が小さいため、法人よりも調査が短くなる傾向があります。
法人だと2日間かかるケースが一般的ですが、中には1日で終わったり3日間かかったりするケースもあります。大規模な法人や、金融業など複雑な取引が多い法人の場合は5日間以上かかることもあるので注意しましょう。
実地調査の後は税務署内で調査が続き、必要に応じて反面調査が行われます。調査結果が出るまでの期間は、通常は長くても3ヵ月以内です。ただし、悪質な案件の場合は証拠収集などが行われるため、3ヵ月以上かかることもあります。
事前通知で、目安の所要時間がわかることも
実地調査が来る前に、通常は税務署から電話などで通知が来ます。事前通知では、実地調査の日程や対象範囲などが知らされます。
この通知を受けた際に、目安の所要日数を聞いてみましょう。担当の調査官にもよりますが、「1日で終わる見込みです」などと目安の日数を聞けるケースもあります。
ただし、国税庁のサイトでは「所要時間などを事前に伝えるのは難しい」という旨を公表しています。教えてくれたらラッキー、くらいに捉えて一応聞いてみましょう。
実地調査の時間帯は10〜16時が基本で、時間外は相談が必要
通常の実地調査は平日の9〜10時ごろ始まり、16〜17時ごろ終わります。間にお昼休憩を1時間挟むのが通例です。時間外や土日祝日には基本的に行いません。
自分の仕事の都合で17時以降など時間外の調査をお願いしたい場合は、事前に税務署への相談が必要です。税務署によっては対応してくれるケースもあります。しかし調査官の勤務時間外となるため、対応できないケースもあります。
土日祝日に行うのは、かなり例外的です。どうしてもという場合は税務署に事情を説明し、妥協点を協議してみましょう。協力的な姿勢を見せることが大切です。
税務調査を短時間で終わらせるための準備3つ
税務調査は、準備次第で早く終わらせられます。早く終わらせたい方は、事前通知の後すぐに以下3点の準備をするのがおすすめです。
- 調査対象期間は基本的に過去3年分だが、一応7年分の資料を準備する
- 税理士に依頼する
- 修正申告を行う
以下、1点ずつ解説します。
調査対象期間は基本的に過去3年分だが、一応7年分の資料を準備する
実地調査では、帳簿などの確認が行われます。事前通知で調査対象を知らされるので、該当する書類を準備しておきましょう。
このとき、最低でも過去3年分、できれば過去7年分の資料を準備するのがポイントです。
一般的に確認されるのは過去3年分の資料ですが、問題が見つかった場合は最長7年分遡ります。このとき3年分の資料しか準備してないと、資料探しに時間がかかり調査が長引いてしまいます。事前準備の時間に余裕があれば、7年分の資料を準備しましょう。
税務調査の対象年数について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
税務調査の時効はどのくらい?無申告や脱税の場合の対象年数やペナルティを解説
≪相続税の税務調査≫時期や調査割合、何年遡って調べられる?体験事例もご紹介
税理士に依頼する
事前通知があったら、税理士に連絡するのも一つの手段です。税理士が関与していると、調査がスムーズに進む傾向があります。理由は2つあります。
1つ目の理由は、税理士がいると書類や資料の事前準備が適切にできるからです。税理士は税の知識があるため、調査官がどんな資料を必要としているかを事前に予測し指南できます。当日になって求められた資料を探さなくても良くなるため、無駄な時間を省けます。
2つ目の理由は、調査当日は税理士が調査官に対応してくれるからです。税理士は調査官の質問の意図や背景を理解し、端的に答えられます。また、追徴課税の減額交渉といった一般人には難しいテクニックも、税理士にお願いできます。
もちろん、税理士がいなくても税務調査は可能です。しかし書類の準備が不十分だったり、調査官からの質問にすぐに答えられなかったりすると、調査が長引きます。
本文中に出てきた「追徴課税」や、税理士の立ち会いについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。
税務調査に税理士の立会は必要?どこまで調べる?税理士に任せるメリット・デメリットや費用相場について解説!
修正申告を行う
事前通知後に修正申告すると、実地での調査時間を短縮できる可能性があります。「修正申告」とは、提出済みの申告内容の誤りを納税者が修正する手続きのことです。
修正申告によって問題のある内容が調査前に訂正されると、調査官が指摘する事項が少なくなり、調査が短くなることがあります。例えば経費の不正計上が発覚した場合、経費を自主的に修正すれば、調査官がその部分を深掘りする必要がなくなります。
ただし、修正した点と税務署が把握している問題点が異なっている場合は、時間短縮に繋がらないので注意しましょう。提出済みの申告内容を見ても自分だけでは問題が分からないときは、修正申告を税理士に依頼するのも一つの方法です。
修正申告とは?税務調査で修正申告が発生するのはどんな時なのか詳しく解説
税務調査の時期はいつ?個人だと夏〜秋に行うケースが多い
税務調査が多く行われる時期があります。ここでは一般的なケースを解説しますが、税務署側に確証があれば時期を外れて調査されることもあるので注意しましょう。
個人事業主やフリーランスは7月〜11月が多い
個人事業主やフリーランスの場合、7月から11月の間に税務調査が行われるケースが多いです。3月までの確定申告を受け4月から6月にかけて事務処理や選定作業を行い、7月以降に本格的な調査が開始されます。
なお、12月や年末年始の調査は避けられる傾向があります。年末調整の対応など、税務署の業務が集中するためです。
法人は決算の4〜9ヵ月後が多い
法人の場合、税務調査が多く行われる時期は決算期によって異なります。一般的には決算の4ヵ月〜9ヵ月後に調査が行われることが多いです。例えば3月決算の法人の場合、7月から12月の間に税務調査が行われる可能性が高くなります。
ただし、法人の業種や規模などによって調査のタイミングが異なるので注意しましょう。大規模な法人や複雑な取引を行う法人に対しては、入念な準備が必要なため、調査が遅れることもあります。
相続税は申告後1〜2年後の8〜11月が多い
相続税の税務調査は、申告後1〜2年経ってから実施されるケースが多いです。また、時期としては8月から11月に行われる傾向があります。税務署の人事異動が7月に行われるため、引継ぎが落ち着く8月ごろから調査がスタートする流れです。
相続税の税務調査の時期について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
相続税の税務調査の時期はいつ?調査期間・範囲や調査が来るのが多いタイミングを解説!
その他、税務調査が入る確率などについて詳しくは下記の記事をご確認ください。
【税理士監修】税務調査が入る確率は?10〜20年は来ないって本当?売上1,000万円弱の申告は注意!
税務調査を短時間で済ませたい方は税理士へご相談ください
この記事では、税務調査にかかる時間や、行われる時間帯について解説しました。実地調査にかかる時間は、個人なら1日、法人なら2日が一般的です。また、実地調査が行われる時間帯は10時ごろから16時ごろまでが基本です。
税務調査が決まったら時間が取られることは避けられませんが、短時間で終わらせる努力はできます。業務への支障を最低限に済ませるためにも、事前準備を入念に行い、調査を長引かせないよう心掛けましょう。
税務調査を最短で済ませたい方は、税理士へご相談ください。書類準備や修正申告のサポートをし、調査が短時間で済むよう尽力します。また、調査当日は税理士が調査官に対応するため、その間ご相談者様は自身のお仕事に専念できるケースもあります。