青色申告者がバイトをした際、貰ったバイト代は「事業主借」で仕訳します。確定申告の際は事業所得の他に給与所得も記入しなければならないので注意しましょう。逆に青色申告者がバイトを雇ってバイト代を支払う際、バイトが他人か家族かで税務処理方法が変わります。この記事では、青色申告者がバイトした際・雇った際のそれぞれの税務処理を解説します。
目次
個人事業主がアルバイト代を得て青色申告する際の注意点3つ
個人事業主は、自分の事業の他にバイトをしても、青色申告が可能です。ここでは、「バイト先からの給料があるときに青色申告する場合」の注意点を3点解説します。
なお、この記事でいう青色申告者は「事業所得がある人」として解説しています。不動産所得や山林所得で青色申告している場合はご注意ください。
事業用口座に振り込まれたアルバイトの収入は「事業主借」で仕訳
事業用の口座に入金されたバイト代は、「事業主借」の勘定科目を使って仕訳します。事業主借にすることで、入金されたお金が事業の売上とは関係ないものであると示せます。
なお、私用の口座に入金されたバイト代は、事業の帳簿に記載する必要はありません。ただし確定申告は必要です。
個人事業の儲けは「事業所得」、アルバイトの収入は「給与所得」
一般的なバイト代は、個人事業で得る儲けと「所得と種類」が異なります。確定申告の際、個人事業で得る儲けは「事業所得」、バイトで得たお金は「給与所得」に記入しましょう。
所得の種類 | 青色申告の適用 | |
個人事業で得た儲け | 事業所得 | ○ |
バイトで得たお金 | 給与所得 | × |
青色申告の承認を受けていれば、最大65万円の青色申告特別控除が確定申告の際に適用できます。しかし適用できる所得は、不動産所得、山林所得、そして事業所得のみです。
バイトで得るお金は給与所得であって事業所得ではないので、青色申告の対象にはなりません。
参考:青色申告制度|国税庁
アルバイトの収入が「事業所得」になるケースもあるので注意
バイト代は一般的に給与所得ですが、例外的に事業所得になるケースもあります。自分が得たお金が給与所得なのか、それとも事業所得なのか、下記の表で確認しましょう。
給与所得 | 事業所得 | |
契約の形態 | 雇用契約 | 業務委託契約 請負契約 |
労働の対価 | 労働時間 | 作業の結果 |
経費 | 計上できない | 計上できる |
貰うお金の名称 | 給与 | 報酬 |
貰っているバイト代が事業所得に該当する場合は、バイトで得た事業所得と個人事業で得た事業所得を合わせて申告します。合わせた金額から青色申告特別控除を差し引きましょう。
青色申告者がアルバイト代を確定申告する流れ
ここでは、青色申告者がバイト代を確定申告する流れを4段階で解説します。
- 源泉徴収票をバイト先から受け取る
- e-taxで青色申告決算書を作成し「事業所得」を入力
- 所得税の確定申告書作成時にバイトで得た「給与所得」を入力
- 青色申告特別控除額などの控除が反映されているか確認し提出
①源泉徴収票をアルバイト先から受け取る
源泉徴収票とは給与や源泉徴収の額が書いてある書類のことで、12月〜1月ごろにバイト先から発行されます。
源泉徴収票は確定申告で提出しませんが、確定申告書を作る際に必要です。源泉徴収票が手元にない場合は、バイト先に発行や再発行を依頼しましょう。
源泉徴収票について詳しくは下記の記事をご確認ください。
【個人事業主】バイト先で源泉徴収票が出ない場合は確定申告はどうなる?
②e-taxで青色申告決算書を作成し「事業所得」を入力
確定申告書はe-taxで作ると簡単です。複雑な計算を自動でやってくれるからです。なお、この章では、e-tax画面の固有名詞には【】を付けて解説します。
参考:e-Taxとはどのようなものですか。| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム
はじめに【作成する申告書を選択します】と表示されます。青色申告者は【決算書・収支内訳書(+所得税)】を選びましょう。まず青色申告決算書を作成し、その後で所得税の確定申告書を作る流れです。
青色申告決算書には、個人事業の事業所得を入力します。青色申告決算書や確定申告書の書き方の詳細は、下記の記事をご確認ください。
個人事業主の青色申告とは?いくらから必要?メリット・デメリットや帳簿の書き方などについて解説!
③所得税の確定申告書作成時にアルバイトで得た「給与所得」を入力
青色申告決算書を作成したら、引き続き所得税の確定申告書を作成する画面になります。
序盤に【収入金額・所得金額の入力】の画面が来るので、ここで源泉徴収票を使います。
【給与所得】の【入力する】をクリックしましょう。
給与が年末調整済みか年末調整済みではないかによって、入力する場所が異なります。下記の国税庁のサイトの「見分け方」を見てから入力しましょう。
参考:年末調整済みと年末調整済みでない源泉徴収票の見分け方|国税庁
源泉徴収票を見ながら、バイトの所得などを入力していきます。何をどこに入力すべきかは、e-taxで分かりやすく説明されています。
給与所得だけの人は「年末調整済みの給与所得」は確定申告しませんが、事業所得がある人は「年末調整済みの給与所得」も確定申告が必要です。また、バイト先が複数ある場合はすべての源泉徴収票を集めて全部入力しましょう。
④青色申告特別控除額などの控除が反映されているか確認し提出
所得の入力を終えたら、所得控除や税額控除を入力する画面が来ます。最大65万円の青色申告特別控除や基礎控除が自動入力されているか確認しましょう。その他、医療費控除や寄附金控除など活用したい控除があれば入力します。
還付金を受け取る口座や住所、マイナンバーなど入力し、内容に誤りがないか確認したあとe-taxで提出しましょう。これで所得税の確定申告は終了です。
確定申告についての全体的な流れは、下記の記事をご確認ください。
【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
青色申告者がアルバイトを雇った場合の税務処理
ここまでは、個人事業主がバイトの賃金を受け取った場合の税務処理を解説をしました。ここからは逆に、個人事業主がバイトを雇って賃金を支払った場合の税務処理について解説します。
青色申告者がバイトに賃金を支払う際の税務処理は、バイトが他人か、生計を一にする家族かで異なります。
アルバイトが他人なら、給料は「給与賃金」か「外注費」で仕訳
バイトする人が生計を一にしない他人である場合、支払った賃金は「給与賃金」か「外注費」のどちらかで仕訳します。
「給与賃金」は、雇用契約に基づいて雇用している従業員に支払う給与です。ただし個人事業主が従業員を雇う場合、社会保険の加入手続きなど様々な手続きが必要な可能性があります。詳しくは下記の記事をご確認ください。
従業員を雇用した場合の税金は?必要な手続きや確定申告の疑問を解説
一方「外注費」は、業務委託契約に基づいて外部の事業者やフリーランスに支払う報酬です。こちらは社会保険の対象外です。
給与賃金と外注費の違いについて、詳しい判断基準は下記の記事をご確認ください。
アルバイトが家族なら、給料を経費にするための事前手続きが必要
基本的に、個人事業主が生計を一にする家族(配偶者など)にバイト代を支払っても、そのお金は経費として計上できません。家族に過度な給料を支払って事業所得を減らし納税額を減らそうとする行為を防ぐためです。
しかし、雇う家族が「青色事業専従者」として税務署に認められれば、その家族に支払ったお金を経費として計上できます。
家族を青色事業専従者にするための条件や手続き、手続き期限など詳しくは下記の記事をご確認ください。
なお、手続きが間に合わず家族が青色事業専従者に該当しない場合、家族に支払ったお金はプライベートな出費として扱われます。よって、事業の帳簿には記載しないか、記載するとしても「事業主貸」と記録しましょう。経費ではないので事業所得からは控除されません。
アルバイトの税務処理に悩む青色申告者は専門家に相談を
この記事では、青色申告者がバイトしたとき/雇ったときの税務処理について解説しました。
青色申告者がバイトをして給料を得たとき、確定申告が複雑になります。確定申告が不安な方は税理士などの専門家に相談し、間違った申告によるペナルティを避けましょう。
また青色申告者がバイトを雇ったときも、税務処理が複雑になります。特に給与賃金を支払う際には源泉徴収が必要になるケースもあり、慣れていないと困難に感じるでしょう。
税額の計算や源泉所得税の納付など、煩雑な税務手続きはぜひ税理士にご依頼ください。