会社を立ち上げる際に準備しておきたい資本金ですが、まず1番初めに金額の設定に悩む方が多いかと思います。「100万円だと多い?少ない?」「とりあえずこれくらい?」と安易に設定すると、実は企業の信用に関わる可能性があることをご存知でしょうか。今回は起業後に後悔しないように、知っておきたい資本金の目安や100万円に設定するメリット・デメリットについて解説します。
目次
そもそも資本金とは?
会社を運営するうえで必要な元手になるお金のことを言います。会社を開業する際であれば、経営者である自分自身であらかじめ準備しておくお金です。
開業の際に必要な備品や、商品の仕入れ代など事業に必要なものを購入するために使用します。売上が出る前は資本金を元に利益を増やし、事業を運営していきます。そのため、飲食店などは特に前もってお金を準備しておくと安心でしょう。
【税理士監修】会社設立時の資本金とは?その意義や設定方法と法的な注意点を解説
資本金の目安は100~500万円
元手の資金は、一般的に「会社を立ち上げる際に必要な初期費用+事業を数ヵ月運営可能な資金」が必要だと言われています。そのため、最低でも資本金を100万円程度は準備しておくのが好ましいでしょう。
以前の商法では、元手の資金は「株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上」と定められていました。そのため、300万円程度を目安として準備している会社もあるようです。
飲食店などの店舗や設備といった初期費用がかかる業種の場合、元金が高くなりやすいです。逆にデザイン業やコンサル業など自宅で仕事ができる業種などは原価がほぼかからず、元手も最低限で済む場合があります。
2024年7月登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額 (株式会社)
資本金階級 | 件数(総数8,686件) | 割合(%) |
100万円未満 | 1,486 | 17.1 |
100万円以上 | 3,408 | 39.2 |
300万円以上 | 1,185 | 13.6 |
500万円以上 | 2,076 | 23.9 |
1000万円以上 | 343 | 3.9 |
2000万円以上 | 107 | 1.2 |
5000万円以上 | 57 | 0.6 |
1億円以上 | 20 | 0.2 |
10億円以上 | 4 | 0.04 |
※設立合計:8,686件、総金額397億2,694万円
新設された株式会社のうち、100万円以上300万円未満の件数は全体の40%あります。業種によって用意しておく金額に多少の差はありますが、100万円〜500万円程度に設定している企業が多いようです。
参考:登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額(2024年)
資本金100万円で会社設立するメリット
資本金は高ければ高いほどいいということではなく、企業に見合った金額設定が大切です。ここでは、金額を100万円に設定した場合に得られるメリットについて解説します。
資本金の準備が比較的簡単
100万円に設定する代表的なメリットとして、資金をすぐに用意しやすい点が挙げられます。いきなり元手資金300万円や1,000万円を用意するとなると、会社開業までに時間がかかってしまう可能性もあるでしょう。
個人事業主などの元々個人で仕事をしている場合、安定した収入を元手に起業するケースもあります。その場合、手元の資金である100万円を利用してスムーズに起業が可能です。
最大で2年間消費税が免税される
資本金の設定を1,000万円未満に設定すると、最大2年間消費税が免税されます。基本的に消費税の納税義務の判定はは前々事業年度分の課税売上高を基準に行います。新しく立ち上げたばかりの会社の場合、前々事業年度がないため納税義務はありません。
ただし、資本金が事業年度開始の日の時点で1,000万円以上の場合は免税はなく、1期目から納税義務が発生するためご注意ください。
資本金100万円で会社設立するデメリット
設定額100万円は、元手の資金の中でも比較的少額だと言われていますが、それによって考えられるデメリットについて解説します。
社会的信用度が低い可能性がある
代表的なデメリットは、社会的な信用が得られにくい場合がある点です。元手の資金をある程度用意していれば、取引を断られるといった極端なケースは少ないでしょう。ですが、資本金が50万円以下の場合、怪しい企業と疑われる可能性は否定できません。
資金不足で事業が続けられなくなる
資本金は開業直後に必要な備品や、商品の仕入れ代・家賃などの事業に必要なものに対して使用するお金です。そのため、元手の資金を少額で設定すると、事業の運転資金が徐々に不足し、継続も厳しくなるでしょう。
飲食店などのサービス業の場合、事業開始直後は売上が安定せず、支出が多くなる可能性が高いため、ご注意ください。
資本金が少なく金融機関から融資を受けられない
企業の立ち上げから数年経ち、実績のある状態での融資は通りやすいですが、開業直後は資本金が信用を計る材料になります。そのため、設定額によっては融資を断られる可能性もあります。
中小企業の場合、業種にもよりますが100万円から500万円程度の金額を設定する傾向があります。開業前にある程度のまとまった金額は用意しておきましょう。
資本金の金額の決め方
資本金の設定金額は自由です。ですが、金額によって手数料や税金が発生する場合もあります。ここでは設定金額に悩む場合、基準になる決め方の一例を紹介します。
初期費用と運営に必要な金額を確認する
まず会社開業時に必要な初期費用・数ヵ月分の事業にかかる資金を確認しましょう。資本金を元手に運営しなければならないため、元手の資金が少額であれば運営が厳しくなります。
テナントが必要であればその家賃・光熱費、運営に必要なパソコンやデスク、プリンターなど具体的な金額をイメージすることで設定しやすくなります。数ヵ月売上がゼロでも事業が回る想定の金額を設定していると安心です。
資本金額が多い・少ない場合の注意点を確認する
開業後すぐに融資を検討している場合、元手の資金額が50万円未満と少額に設定した場合、社会的信用が得られず断られるといったパターンがあります。元手の資金は会社の信用に関わる場合があるのです。
それとは逆に資本金の額を1,000万円以上の高額に設定した場合、社会的な信用は得られるものの初年度から消費税の納税義務が発生します。こういった注意点を確認しておかなければ、後々後悔することになるため設定金額には注意しましょう。
補助金や助成金を確認する
創業促進補助金や小規模事業者持続化補助金など、会社開業時に使用できる補助金・助成金があります。補助金の中には資本金の額によって受けられない場合や、支給額が変わる場合があるため、申請を検討しているなら先に確認しておきましょう。
よくある質問
最後に会社を立ち上げる際の資本金について、よくある質問を紹介します。
資本金1円でも起業できる?
資本金1円でも起業自体はできますが、事業を運営するのは難しいでしょう。株式会社の立ち上げ自体別途費用がかかるため、最低でも20万円以上は必要です。さらにオフィスを借りる場合、家賃に加えて光熱費などの初期費用もかかります。
元手の資金は開業時にどれだけお金を用意できたかを確認できる数字のため、会社の信用度に繋がります。そのため、元手の資金が1円だと銀行口座の開設を断られるといった弊害が出る可能性もあります。
資本金は会社設立後に増減できる?
資本金は開業後でも増資・減資可能です。開業時に少ない元金だった場合、増資で会社の信用度が上がる反面、税金の負担が増える場合があります。
開業時に額が大きすぎたため、事業規模に見合った金額に設定し直す場合などは減資を行う選択肢もあります。
減資を行うと税金の負担を軽減できるといったメリットがありますが、会社の信用度が低下したり融資を受ける際に不利になったりするデメリットも持ち合わせています。リスクも踏まえたうえで検討しましょう。
資本金や会社設立にお悩みの方は税理士に相談も
法律が改正されたことで、元々「株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上」であった元金を自由に設定できるようになりました。ですが、そのせいで設定金額に悩む方も増えています。
ただ金額が高いからいいと言う訳ではなく、初年度から納税義務が発生したり助成金が受けられないなどの注意点もあります。少額すぎる場合も問題です。
資本金は開業直後から運営で使用する大切な資金です。自由に決められるからこそ、様々なリスクを踏まえた上で慎重に決める必要があるでしょう。元金の設定金額でお悩みの際には、一度税理士に相談するのもおすすめします。