会社設立に際して発生する費用の1つに登録免許税があります。登録免許税とは登記や登録、許認可等において課される税金であり、登記等の種類によって税率が定められています。会社設立登記をスムーズに行うためには、登録免許税の計算方法や納付方法等の確認が欠かせません。今回は会社設立時に発生する登録免許税について詳しく解説します。
目次
会社設立時にかかる登録免許税とは
登録免許税とは、登記や許認可等の手続きに際して課される税金のことです。会社設立時だけでなく、不動産の取得や動産・債権等の譲渡など、あらゆる登記において登録免許税は課されます。
なお、会社設立に必要な法人登記(会社設立登記)とは、法人の登記事項を法務局に登録し、一般に広く開示できるようにするための手続きです。法人登記の申請方法や必要書類については以下の記事をご覧ください。
関連記事:会社設立登記(法人登記)とは?申請の方法や必要な費用などをご紹介
会社設立時にかかる登録免許税の計算方法
登録免許税の計算式は以下の通りです。
登録免許税の額=課税標準額 × 税率
登録免許税の課税標準や税率は登記の種類ごとに定められています。また、会社設立時にかかる登録免許税には最低課税額が課されています。すなわち「課税標準額 × 税率」で求めた税額と最低課税額のうち、いずれか高い方の登録免許税が課される仕組みです。
以下は会社設立時にかかる登録免許税の課税標準・税率・最低課税額をまとめた表です。
設立する会社の種類 | 課税標準 | 税率 | 最低課税額 |
株式会社 | 資本金の額 | 1,000分の7 | 15万円 |
合同会社 | 資本金の額 | 1,000分の7 | 6万円 |
合名会社または合資会社 | 申請件数 | 1件につき6万円 | - |
登録免許税を納付する方法
会社設立にかかる登録免許税の納付方法は3種類です。以下よりそれぞれ詳しく解説します。
収入印紙を使って納付する
登録免許税の金額分の収入印紙を購入して「登録免許税納付用台紙」に貼付し、登記申請書類とあわせて提出する方法です。収入印紙の購入、台紙への貼付および書類の提出をもって登録免許税を納付したとみなされます。
「登録免許税納付用台紙」に決まったフォーマットはありません。A4サイズの台紙に貼り付けて提出します。
現金で納付する
登録免許税を現金で納付する場合の流れは以下の通りです。
- 登録免許税納付用の納付書を使い、法務局が指定する口座宛に振り込みをする
- 金融機関から発行される領収書と領収書の控えを登録免許税納付用台紙へ貼り付ける
- 2の登録免許税納付用台紙を、その他の必要書類とあわせて法務局に提出する
法務局の窓口で納付するわけではない点にご注意ください。
インターネットバンキング・ATMで納付する
オンラインで会社設立の登記申請をする場合、インターネットバンキングやATMを用いた納付も可能です。インターネットバンキング・ATMによる納付方法を電子納付といいます。
インターネットバンキングを用いて納付する場合、事前に各金融機関での手続きが必要です。ATMを利用する場合は電子納付に対応しているATMを利用する必要があります。
電子納付の詳しいやり方については法務省の公式サイトをご確認ください。
会社設立時の登録免許税を半額に抑える方法
会社設立時にかかる登録免許税は「特定創業支援事業」という制度の活用によって半額に抑えられます。
特定創業支援等事業とは、国の認定を受けた市区町村が実施する創業者の支援を目的とした事業です。創業支援等事業者とともに、個別相談支援や創業塾、創業セミナー等を実施しています。特定創業支援事業セミナー等を受けると、自治体によって支援事業を受けた旨の証明書が発行されます。この証明書を法務局に提出することで、登録免許税が半額になる仕組みです。
「創業支援等事業計画」として認定されている数は、令和6年6月25日時点で1,347件(1,506市区町村)です。ただし、認定を受けていない市区町村では特定創業支援事業を受けられず、登録免許税の軽減措置も適用対象外となります。
特定創業支援等事業を受けて登録免許税の軽減措置を適用したいと考えている場合、事前に認定を受けている自治体の確認をしましょう。
参考:中小企業庁「産業競争力強化法に基づく認定を受けた 市区町村別の創業支援等事業計画の概要」
特定創業支援等事業については以下の記事でも詳しく解説しています。
会社設立時の登録免許税を経費として計上する方法・仕訳例
会社設立時の登録免許税は「創立費」という勘定科目で計上が可能です。
会社設立にかかった登録免許税15万円を現金で支払った場合、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
創立費 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 |
「創立費」は登録免許税だけでなく、会社設立にかかった費用全般に用いる勘定科目です。会社設立登記にかかる登録免許税に限らず、定款認証手数料や、法人登記の代行依頼をした司法書士への報酬なども全て創立費として計上します。
なお創立費は繰延資産のため、上記の仕訳だけでは経費にはなりません。経費として計上するためには決算整理仕訳として費用化の処理が必要です。
創立費15万円を全額償却する場合、以下の仕訳を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
創立費償却 | 150,000円 | 創立費 | 150,000円 |
創立費は会計基準では償却期間が5年間と定められていますが、税務上は任意のタイミングでの償却が認められています。そのため、創業直後で赤字の段階では償却せず、利益が出てから償却とするという処理も可能です。
なお、営業開始後に発生する登録免許税は「租税公課」科目を用いて計上します。
会社設立時の登録免許税を納める際の注意点
収入印紙に割印をしてはいけない
登録免許税を収入印紙で納付する際、割印をしないようご注意ください。割印をしてしまうと、その収入印紙は使用できなくなります。なお汚れている収入印紙も使用できません。
収入印紙の貼り直しは受理されない恐れがある
収入印紙を貼付した後に剥がし、再度貼り直しをした場合、当該収入印紙を用いた登記申請は受理されない恐れがあります。一度貼った収入印紙を剥がす際、破れてしまう可能性が高いです。そして割印をしたものや汚れたものと同様に、破れてしまった収入印紙も使用できません。
収入印紙を誤って貼付してしまった場合、印紙税の過誤納金として還付を受けられる可能性があります。収入印紙の貼り間違えをしてしまった場合は、無理にはがそうとせず還付手続きをしましょう。
収入印紙の還付手続きの流れは以下の通りです。
- 「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」を作成する
- 1の申請書と印紙税が過誤納となった事実を証するために必要な文書を納税地の所轄税務署長に提出する
- 税務署による審査が行われる
- 銀行口座への振り込みまたは郵便局を通じての送金によって還付される
登記申請は登記内容の変更時にも必要
会社設立時だけでなく、登記内容の変更が発生した際も登記申請を行う必要があります。登記事項の内容を変更する手続きを変更登記といいます。変更登記の際も登録免許税の納付が必要なため、事前に必ず金額を確認しましょう。
変更登記の期限は登記事項の変更が生じてから2週間以内です。期限を過ぎてしまうと、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。
変更登記が必要になるケースの具体例や変更登記の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社の変更登記は自分でできる?手続き方法や費用を解説
登録免許税のまとめ
会社設立を含む登記申請の際には登録免許税の納付が必要です。会社設立に際してかかる登録免許税の額は、「課税標準額 × 税率」で求めた税額と最低課税額のうち、いずれか高い方となります。
会社設立にかかる登録免許税の納付方法は、収入印紙を使う方法・現金納付・電子納付の3種類です。収入印紙を使う方法の場合は、割印をしてはいけない・貼り直しをした場合は受理されない恐れがある等の注意点に気を付けましょう。
会社設立登記では、登録免許税の納付以外にもやるべき作業が多く存在します。少しでもミスや漏れがあると手続きをやり直す必要性が生じてしまい、想定以上の時間や労力を要する恐れがあります。
会社設立をスムーズに進めるためには、会社設立に関する豊富な経験やノウハウを有する専門家のサポートを受けるのが安心です。