フリーランスエンジニア(個人事業主)として活動する中で、どのような費用が経費として認められるのか疑問に感じている方も多いでしょう。適切な経費の計上は、課税所得を減らし、結果的に税金の軽減に繋がる場合もあるため、経費として計上できるかどうかの判断基準は学んでおく必要があります。本記事では、フリーランスエンジニアにおける経費の具体例と判断基準、経費計上で注意すべきポイントを詳しく解説します。
目次
個人事業主として働くエンジニアは経費を計上できる?
フリーランスエンジニアの場合、業務に直接関連する支出であれば経費として計上できます。経費とは事業の運営に必要な支出を指し、適切な計上によって税負担の軽減が望めますが、すべての支出が経費として認められるわけではありません。
経費として認められるものと認められないものは、どのように異なるのでしょう。
経費として認められる支出
経費として認められる支出の具体例を以下に示します。
勘定項目 | 内容 |
地代家賃 | 自宅を事業用に使用する場合の家賃 業務に使用する面積や使用頻度に応じて按分して計上 |
水道光熱費 | 事業用として自宅を使用する際の水道光熱費 家賃と同様に事業使用部分に限定して計上 |
外注費 | 業務を遂行するために外部のエンジニアやデザイナーに依頼した際の支払い費用 |
消耗品費 | パソコンやモニターなどのハードウェア、開発に必要なソフトウェアやライセンス費用、プリンターのインクや用紙など、日常的に使用する消耗品などの購入費用(1台あたり10万円以上のパソコンなどは固定資産) |
事務用品費 | ペン、ノート、ファイルなどの事務用品の購入費用 |
通信費 | インターネット料金や携帯電話代などの通信に関連する費用、定期的に支払うクラウドサービスやソフトウェアの利用料 |
研修費 | 業務関連の書籍の購入費やスキルアップのためのセミナー参加費用 |
会議費 | クライアントやチームとの会議の際にかかる飲食費用など |
広告宣伝費 | ウェブサイト制作費やオンライン広告費など、ビジネスを宣伝するための費用 |
接待交際費 | ビジネス関係の構築や維持を目的とした接待や贈答品などの費用 |
旅費交通費 | クライアントとの打ち合わせや業務に関連した移動にかかる交通費 |
保険料 | 事業用の保険料(賠償責任保険など) |
事業を運営するために支払った支出は経費として計上できます。
自宅を作業場として一部使用している場合、「地代家賃」や「水道光熱費」も経費に計上できますが、按分計算が必要です。按分計算とは、事業に使用する面積や使用時間を基に、全体の費用から事業に関連する部分を算出する方法ですが、計算の根拠は自分自身で決めて問題ありません。
例えば、自宅の総面積80㎡のうち、業務用のスペースとして10㎡(約12.5%)を使用しており、業務に使用するのは1日のうち8時間(約33.3%)とした場合、事業に関連する家賃の割合は以下のように計算できるでしょう。
面積按分: 10㎡ ÷ 80㎡ = 12.5% 使用時間按分: 8時間 ÷ 24時間 = 33.3% 合計按分 12.5% × 33.3% = 約4.2% |
したがって、毎月の家賃が10万円であれば、按分後の経費は約4,200円(10万円 x 4.2%)となります。あくまで一例ですが、参考にしてみてください。
ただし、合理性を欠いた計算や過度に有利な按分は税務上認められない可能性が高いでしょう。また税務調査の際に説明を求められる可能性があるため、按分の根拠は記録しておく必要があります。
経費として認められない支出
次に、経費として認められない支出の具体例を以下に示します。
勘定項目 | 内容 |
地代家賃 | 自宅のうち事業として使用していない部分の家賃や住宅ローンの費用 |
水道光熱費 | 事業に使用していない部分の水道光熱費 |
通信費 | 業務に関係しない私的なインターネットや電話代 |
会議費 | 家族や友人とのプライベートな食事や飲み会費用 |
交際費 | ビジネスに関係しない個人的な交際や贈答品の費用 |
旅費交通費 | 私的な旅行や業務に関係のない移動にかかる交通費 |
保険料 | 事業に関連しない個人用の生命保険や医療保険の支払い |
経費として認められないものは、私的な目的で使用される支出です。
先ほどの地代家賃や水道光熱費も事業使用部分のみが対象であり、プライベートで使用している部分は経費として計上できません。他の勘定科目についても、使途が私的な目的であれば、経費として計上するのは難しいでしょう。
個人事業主が知っておくべき経費率
「経費率」を把握しておくことも、個人事業主にとっては重要です。経費率とは、「経費 ÷ 売上 × 100」で計算される売上に対する経費の割合を指し、事業の効率や利益率を把握するための指標です。
例えば、売上が100万円、経費が60万円の場合、経費率は以下のように計算されます。
60万円 ÷ 100万円 × 100 = 60%
経費率が高い場合、利益が少ないため事業の継続が難しくなりそうであると予測でき、経費率が低い場合は、効率的な運営ができていると判断できます。
個人事業主として働くエンジニアの経費率
フリーランスエンジニアの経費率は、国税庁の目安では約50%が適正とされています。
これは、エンジニアリング業務には高額なハードウェアやソフトウェアの購入費用、通信費、スキルアップのための研修費など、さまざまな経費が必要となるためですが、実際の経費率は、エンジニア個々の働き方や業務内容によって異なるため一概には言えません。
とはいえ、経費率が50%を超える場合や極端に低い場合は、税務署から説明を求められる可能性があるため、経費率の把握・維持を意識しておくと良いでしょう。
個人事業主として働くエンジニアが経費計上で注意すべき3つのポイント
フリーランスエンジニアとして適切に経費計上するためには、以下3つのポイントに注意しましょう。
- 経費の証憑をしっかりと保管する
- 事業との関連性を明確にする
- 経費の分類を適切に行う
1. 経費の証憑をしっかりと保管する
経費を計上する際には、領収書や請求書といった証憑をしっかりと保管しましょう。
税務調査が行われた際、証憑がない経費は認められない可能性が高いため、すべての経費に対する証拠書類を確実に残しておきましょう。
電子化された領収書も問題なく有効ですが、適切なフォルダで整理して保管するなど、すぐ確認できる状態にしておくことが望ましいです。
2. 事業との関連性を明確にする
支出が事業に直接関連していることを明確にしましょう。業務とプライベートの支出を区別するための具体的な方法として以下が考えられます。
- 事業用と個人用の銀行口座やクレジットカードを分ける
- 自宅の一部を業務専用スペースとして確保する
- 領収書や請求書を業務用と個人用で分けて保管する
- 経費管理ソフトを活用して支出を整理する
また、領収書や請求書に具体的にどの業務に関連した支出なのかを記録しておくと、税務調査が行われた際に事業との関連性を説明しやすくなるでしょう。
3. 経費の分類を適切に行う
経費は正確に分類しましょう。経費の分類が曖昧だと、税務調査で指摘される可能性があり、後から修正申告が必要になる場合もあります。
会計ソフトの利用、税理士などの専門家に依頼するのも有効です。経費を適切に分類・記録することで、申告時のミスを防ぎ、スムーズな税務処理が可能になるでしょう。
経費でお悩みのフリーランスエンジニアは専門家に相談を
これまで説明してきたように、経費の計上において、適切な分類や証憑の保管、また経費率の維持など、フリーランスエンジニアが税務処理で直面する問題は多く、判断が難しい場合があります。特に事業との関連性が曖昧な支出や按分計算は注意が必要です。
こういった経費処理に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。小谷野税理士法人では、フリーランスエンジニアの方の税務相談を受け付けております。お気軽に小谷野税理士法人に相談してみてください。