自宅を事業としても使用している個人事業主やフリーランスの方は、家賃を経費計上すれば節税に繋がります。家賃の何割まで経費計上できるかは、自宅を事業用として使用しているスペースと時間が関係しています。この記事では、家事按分の具体的な事例やルールについて詳しく解説します。
目次
家事按分とは
家事按分とは、自宅を事業と私生活の両方に使用している場合に、事業で使用している部分のみ経費計上する方法を指します。家事按分は正確に計上し、合理的な根拠に基づいて申請する必要があります。正しい計算方法を理解しておけば、偽りのない経費計上が可能です。
関連記事:家事按分とは?家賃や光熱費を経費計上する際の条件やポイントを解説!
家賃を経費にする方法
自宅を事業にも使用している個人事業主やフリーランスの方にとって、家賃の経費化は節税効果が期待できます。ただし、経費を正確に計上するためには、家事按分を適切に行う必要があります。
家事按分の方法
一般的な家事按分の方法として、面積按分法と時間按分法が挙げられます。
面積按分法では、事業で使う部屋の面積が全体の面積に対して占める割合を計算し、その割合に基づいて家賃を按分します。面積按分法は簡単なため、多くの個人事業主やフリーランスの方が採用しています。
一方、時間按分法では、事業に使用する時間を基準に家賃を按分します。例えば、1日のうち8時間を事業に使用する場合、家賃の3分の1を経費として計上できます。
家賃を家事按分する方法
家賃を家事按分する際は、自宅の総面積を把握しておきましょう。事業用として使用している自宅の面積を自宅全体の面積で割った割合が按分比率です。按分比率を家賃に掛けて、経費計上する金額を算出します。
例えば、総面積が100平方メートルで、事業に使用する部屋が20平方メートルの場合、按分比率は20%です。毎月の家賃が10万円の場合、20,000円を経費として計上できます。
関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説
家賃を経費にするメリット
家賃を家事按分すれば、多くのメリットを得られます。家事按分では光熱費、インターネットなどの費用も経費として計上が可能です。
家事按分は、納税額の減額に繋がるため覚えておきましょう。
家賃を経費にできないケース
自宅を事業に使用していても、家賃の全額を経費にはできません。
過度な金額の申請は、税務署に疑問視される可能性があるため注意しましょう。この章では、家賃を経費として計上できないケースについて、詳しく解説します。
家事按分の根拠が明確でない場合
家賃やその他の生活費を経費計上するためには、明確な根拠が必要です。
図面を使用して事業用スペースを示したり、事業用のスペースを実際にどのように使用しているかを写真で残したり、客観的な証拠を残しておく必要があります。
事業用部分が少ない場合
自宅の総面積のうち、事業用として使用しているスペースが1割以下の場合、家事按分ができない可能性があります。
事業用スペースの面積が少なくても家事按分をしたい方は、自宅の一部が明確に事業用であると証明しましょう。事業専用の机や書類、設備などを配置し、生活スペースと区別する方法が有効です。
親族などに支払う家賃
税務署は親族間の取引を厳しくチェックするため、家賃を親族に支払っている方は注意が必要です。
家賃が相場より高額である場合や、実際は支払っていないのに経費計上する場合は家事按分が認められません。第三者に支払う家賃と同等の条件である旨を証明する書類や契約書を準備し、リスクを避けましょう。
関連記事:個人事業主は経費をどこまで切れる?経費にできるものや上限・メリットなどぶっちゃけ紹介!
家賃を経費として計上するときの計算方法
実際に家事按分をする際は、どのように計算すれば良いのでしょうか?事前に計算方法を理解しておけば、スムーズな申請につながるはずです。この章では、家事按分の具体的な計算方法について解説します。
使用する時間で計算
家事按分では、自宅を業務に使用した時間に基づいて経費を計算する方法が一般的です。以下の手順で行います。まず、業務に使用した時間を24時間で割ります。次に、その比率を月々の家賃に掛けて、業務に使用した時間分の家賃を算出します。
計算式は以下の通りです。
(業務使用時間/24時間×家賃)
例えば、1日のうち8時間を事業に使用し、家賃が10万円の場合、8時間/24時間(0.333)となるため、以下の計算式で算出します。
8時間/24時間=0.333
10万円×0.333=33,300円
月々の家賃である10万円のうち、33,300円が経費として認められます。
使用する面積で計算
もう1つの方法が、使用する面積に基づく計算方法です。私生活と事業用、それぞれの面積比をもとに、経費として計上できる金額を算出します。
計算式は以下の通りです。
(事業使用面積/家全体の面積)×月額家賃
例えば、家全体の面積が100平方メートル、事業用として使用している面積は20平方メートル、月々の家賃が10万円の場合、以下の計算式で算出します。
計算式:
10万円×(20平方メートル / 100平方メートル) = 20,000円
月々の家賃である10万円のうち、20,000円が経費として認められます。
年間の家賃をまとめて家事按分も可能
1年間の家賃をまとめて家事按分し、経費として計上可能です。ただし、自宅を事業用として使用している割合を考慮して計算する必要があります。計算式は以下の通りです。
計算式:
(年間の家賃 ÷ 12ヶ月)×業務使用割合
年間の家賃が120万円で、業務使用割合が20%の場合は、以下の計算式で算出します。
(120万円 ÷ 12ヶ月)×0.2=20,000円
この場合、20,000円が月々の経費として認められます。
持ち家は減価償却費として計上できる
持ち家の場合、減価償却費として経費計上が可能です。減価償却費は、建物の取得価額と耐用年数に基づいて計算します。
計算式は以下の通りです。
(建物の取得価額 / 耐用年数) ×業務使用割合
例えば、建物の取得価額が3,000万円で、耐用年数が30年、業務使用割合が20%の場合、以下の計算式で算出します。
(3,000万円 / 30年) × 0.2=20万円
この場合、20万円を年間の経費として計上可能です。持ち家の減価償却費は長期間にわたる計算が必要なため、税理士をはじめとした専門家に相談するのもおすすめです。
関連記事:節税の相談は税理士がベスト?プロのアドバイスで賢い節税を!
個人事業主が家賃を経費として計上する際の注意点
個人事業主やフリーランスの方が家賃や生活費を経費計上する場合、いくつかの注意点があります。注意すべきポイントを理解し経費申請を行えば、税にまつわるリスクを軽減できるでしょう。
契約書などの資料を保管しておく
家賃を家事按分する際、契約書や支払明細などの資料を必ず保管しておきましょう。万が一、税務調査が行われた場合、経費計上すべき正当な理由を証明できます。賃貸契約書や家賃の支払い領収書、振込明細などを保管しておく必要があります。
敷金は経費にならない
賃貸物件に引っ越す際に支払う敷金は、原則として経費計上できません。敷金は保証金としての役割を持つため、賃貸契約が終了した際に返還される可能性があるためです。しかし、賃貸契約終了時に敷金が返還されず、その事実を証明できる場合、経費計上が可能です。
社宅の契約は事業主名義にする
社宅の場合、賃貸契約は必ず事業主名義にしておきましょう。家事按分はあくまで個人事業主やフリーランスの方向けの制度です。そのため、契約が法人名義の場合は経費計上が難しくなる傾向があります。
持ち家は住宅ローン控除が適用されない可能性がある
住宅ローン控除は居住用部分に適用されるため、事業用として使用している部分は対象外となる可能性があります。家事按分よりも住宅ローン控除を優先する場合、どの範囲まで家賃を経費計上するかを検討しましょう。
持ち家のローンの元本部分は経費として計上できない
持ち家のローン返済を経費計上する場合、利子部分のみ経費として認められます。元本部分の返済はあくまで借金の返済にすぎず、資産の購入に該当するため経費計上ができません。経費計上を正確に行うために、ローン返済の明細を記帳しておきましょう。
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家賃以外で家事按分できるもの
家事按分では、家賃以外にも経費計上できる費用があります。例えば、電気やガス、水道をはじめとした光熱費や一部の家具などが含まれます。これらの費用を経費として計上すれば、節税効果が期待できるでしょう。
光熱費
自宅を事業にも使用している場合、水道代や電気代などの光熱費も経費として認められます。光熱費を経費として計上するためには、業務中に使用した電気やガスの割合を以下の方法で算出します。
使用時間で算出:
1日の中で業務に費やす時間とプライベートに使う時間の割合を計算し、その比率で光熱費を算出します。
使用スペースで算出:
自宅の中で業務に使用しているスペースの面積比率に基づき、光熱費を算出します。
通信費
携帯やインターネットなどの通信費も、業務に使用している分のみ経費計上が可能です。具体的には、以下の方法で算出します。
使用時間で算出:
1日のうち8時間を業務に費やしている場合、30日間の通信費のうち240時間分を経費計上できます。
利用量で算出:
通話時間やインターネットのデータ使用量などを記録し、事業使用分を算出します。例えば、月間データ使用量が100GBで、そのうち業務で使用するデータ量が60GBの場合、通信費の60%を経費計上できます。
自動車関連費用
事業に自動車を使用している場合、自動車にまつわる経費を以下の方法で算出します。
ガソリン:
移動距離を事業とプライベートに分け、その比率で算出します。
自動車保険料:
保険料の一部を事業使用分として算出します。
駐車場代やメンテナンス費用:事業での使用頻度や時間に応じて算出します。
家賃の経費計上に関するQ&A
自宅を事業としても使用している個人事業主やフリーランスの方にとって、家賃の経費計上は重要です。実際に家事按分を行う際、さまざまな疑問がある方も多いのではないでしょうか?この章では、よくあるQ&Aについて解説します。
領収書なしで家賃を経費にできる?
家賃を経費計上する際、領収書以外の証拠でも認められる場合があります。具体的には、賃貸契約書や家賃の振込履歴などが挙げられます。銀行振込の明細書を保管しておきましょう。
夫名義で支払っている家賃は経費にしてもいい?
夫名義で支払っている家賃も、事業に使用している部分については経費計上が可能です。後々の夫婦間のトラブルや誤解を防ぐために、あらかじめ夫婦間で家事按分に関する合意書を作成するのもおすすめです。
家賃はいくらまで経費にできる?金額の目安や根拠は?
家賃を経費計上する際の金額の目安や基準については、以下のポイントを参考にしてください。
按分率の基準:
自宅の50%を事業に使用している場合、家賃の50%を経費計上するのが一般的です。
使用時間の基準:
自宅を事業として使用する時間が長い場合、按分率も高くなります。具体的な使用時間を記録しておきましょう。
家賃の按分割合で困ったら専門家に相談
家賃の一部が経費として認められるには、明確な裏付けが必要です。生活費も同様に家事按分が可能なため、それぞれの項目ごとに割合を算出しておきましょう。確定申告の際の経費計上に困った場合、税理士に相談するのがおすすめです。家事按分の計上で疑問がある方や、申告にあたってスムーズに申請したい方は、小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。