個人事業主が所得税の納付期限に遅れた場合、延滞税などのペナルティを課される可能性があります。期限までの納付に間に合わない場合、延納制度の利用を始めとする対処法をとるのがポイントです。今回は、個人事業主が所得税の納付期限に遅れると発生するリスク、対処方法、納税する税金の種類、給付期限などを解説します。最後まで読めば、所得税の納付期限に関する疑問を解消できるでしょう。
目次
個人事業主が支払う税金と納付期限とは
個人事業主が支払う税金は主に4種類あり、それぞれの概要や納付期限は以下の表の通りです。
個人事業主が納める税金の種類 | 概要 | 納付期限 |
所得税 |
| 原則として3月15日 |
住民税 |
| 一括納付か以下の期間内の4回払い
|
個人事業税 |
| 原則として以下の期限内
|
消費税 |
| 原則として3月31日 |
各税金によって、納付期限は異なるのが特徴です。「税金を納めないと」と思いながら生活していると、精神的にもストレスを抱える可能性があります。優先順位を高く設定し、個人事業主はなるべく早い納税が望ましいです。
参考:「所得税のしくみ」国税庁
参考:「個人住民税」総務省
参考:「消費税のしくみ」国税庁
個人事業主の税金はいくら?税理士はいらない?税金の種類やシミュレーションなども含めて解説!
個人事業主が所得税の支払い期限に遅れるとどうなる?
所得税の支払い期限までに納税できない場合、個人事業主は以下のリスクを背負います。
- 督促状が郵送される
- 延滞税が発生する
- 延滞処分手続きが発生する
ここから詳しく見ていきましょう。
督促状が郵送される
個人事業主が所得税の支払い期限に遅れると、税務署から督促状が郵送されてきます。督促状とは、自発的な納税や円滑な納税の推進を目的に導入されているのが特徴で、納税期限経過から50日以内に発送されます。
原則として、督促状は普通郵便で送られ、書留や内容証明などは利用されません。督促状の発送から10日経過すると、延滞処分手続きが発生したり徴収権の時効が進んだりします。督促状を受け取ったあとは、なるべく早く対処するのが望ましいです。
延滞税が発生する
個人事業主が所得税の支払い期限に遅れると、延滞税が発生する点に注意しましょう。延滞税とは、納付期限の翌日から納付までの期間に課せられる税金のことで、具体的には以下のケースも該当します。
- 期限後申告書や修正申告書の提出後、納税し終わっていない
- 更正処分か決定処分を受けたあと、納税し終わっていない
延滞税で課せられる税率は以下の通りです。
- 納付期限の翌日から2ヵ月以内に完納:原則年率7.3%※延滞税特例基準割合+1%と比較し低い方を適用
- 納付期限の翌日から2ヵ月経過以降に完納:原則年率14.6%※特例基準割合+7.3%のいずれか低い方を適用
令和3年1月1日以降、延滞税の税率が改正されています。延滞税を自分で計算したい場合、国税庁の公式サイトで必要事項を入力すると、簡単に算出できます。
延滞処分手続きが発生する
個人事業主が確定申告の支払い期限に遅れると、延滞処分手続きをとられる可能性がある点に注意が必要です。延滞処分手続きとしてあげられるのは「財産の差押え」で、督促状の郵送・財産調査後に執行されるケースがあります。差押えの対象となるものは、具体的には以下の通りです。
- 不動産
- 預貯金
- 生命保険など
差押えられた財産は自分で管理できなくなり、競売を経て未払いの税金に当てられます。法律において、生活や事業を営むうえで欠かせない衣類や寝具、道具などは対象外となる配慮がされています。
差押えに対処するには、なるべく早く納税したり、税務署に相談したりするのがポイントです。
【税理士監修】確定申告してない人が多い?その割合や無申告のペナルティを紹介!
個人事業主が所得税の支払い期限に遅れたときの対処法4つ
支払い期限までに所得税を納められない場合、以下の対処法をとるとよいでしょう。
- 延納制度を利用する
- 減免制度を利用する
- 納税の猶予を利用する
- 換価の猶予を利用する
それぞれについて、詳しく解説します。
延納制度を利用する
個人事業主が所得税の支払い期限までに納税できない場合、延納制度を利用するとよいでしょう。延納制度には2つの種類があり、以下の通り納付期限を延長できるためです。
延納制度の種類 | 概要 |
所得税などの延納 |
|
贈与税の延納 |
|
令和3年1月1日以降の期間において、延納利子税が7.3%未満の場合、以下の計算式で求めた割合が適用されます。
6.6%✕延納特例基準割合÷7.3%
税務署から利子税に関する納付書が届けられることから、なるべく早く対応する必要があります。
参考:「税金納付」国税庁
減免制度を利用する
個人事業主が所得税の支払いに遅れる場合、減免制度を利用するとよいでしょう。災害で被害にあった方に限られるものの、所得税と復興特別所得税の軽減か、免除を受けられるためです。
利用できる制度は以下の2つで、所得金額1,000万円以下の場合、有利な方を選択できるのが特徴です。
減免制度の種類 | 概要 |
雑損控除による所得控除 |
|
災害減免法による税額控除 |
【軽減額】
|
状況によって、どちらを選択すると有利になるのかは異なります。具体的な金額を算出したうえで判断するとよいでしょう。
参考:「Ⅲ‐1 所得税及び復興特別所得税の軽減又は免除」国税庁
納税の猶予を利用する
個人事業主が納税期限に遅れる場合、納税の猶予を利用するのが一つの方法です。条件を満たす場合、以下の通り納期限から1年以内の期間に渡り、所得税の納付が猶予されるためです。
延納するときの対処法 | 概要 |
納税の猶予 |
|
換価の猶予を利用する
個人事業主が納税期限に遅れる場合、換価の猶予を利用するとよいでしょう。以下の通り、差押えとなった財産の換価(売却)を延長できるためです。
延納するときの対処法 | 概要 |
換価の猶予 |
|
申請に通ると換価の猶予許可通知書が郵送され、記載されている分割納付計画書に従い納税する流れです。
個人事業主が所得税の支払い期限に遅れたときの納税方法
所得税の支払い期限に遅れた場合、延滞税を課されるケースもあり、個人事業主は以下の方法での納税が求められます。
支払い期限に遅れたときの納税方法 | 概要 |
ダイレクト納付 |
|
インターネットバンキング・ATM |
|
クレジットカード |
|
スマホアプリ |
|
コンビニ |
|
納付書+現金 |
|
納税方法としてクレジットカードやスマホアプリを選ぶ場合、ポイント還元されるのがメリットです。ただし、ポイント還元以上に手数料が発生する可能性があるため注意しましょう。
結果として節税につながることから、条件を満たす方は積極的に利用するのが一つの方法です。
参考:「振替納付日について/期限内に納付できなかった場合は」国税庁
個人事業主が確定申告の内容を間違ったときの対処法
確定申告において記載内容を間違った場合、個人事業主は以下の対処法をとるとよいでしょう。
確定申告内容を間違ったときの対処法 | 概要 |
修正申告 |
|
更正の請求 |
|
修正や更生するうえで必要な書類は、国税庁の公式サイトで入手できます。
参考:「申告と納税」国税庁
【税理士監修】確定申告が間違っていたときの修正申告のやり方・流れ
正確・迅速な確定申告のご相談は税理士へ
ここまで、個人事業主が所得税の納付期限に遅れると発生するリスクや対処法、納税する税金の種類などを解説してきました。
期限までに所得税を納められないと、延滞税や延滞処分手続きなどが発生し、事業を続けるうえで痛手となる可能性があります。
やむを得ない事情により、期限までに納税できない場合でも、税務署による救済措置が用意されています。期限までに所得税を納税できないと諦めるまえに、早めに相談するのがポイントです。納税のスケジュール管理や、確定申告の手続きなどを苦手としている個人事業主もいるでしょう。