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フリーキャッシュフローとは?マイナスの要因や影響、分析方法まとめ

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フリーキャッシュフローとは?マイナスの要因や影響、分析方法まとめ

フリーキャッシュフロー(FCF)は、企業が自由に使える現金の量を表す指標です。この数字がマイナスになると、企業の成長や安定性が悪化している可能性があります。過剰な設備投資、売上の減少、コストの増加など、さまざまな要因がFCFを圧迫します。この記事では、フリーキャッシュフローがマイナスに転じる原因とその影響、そして企業が直面する財務課題を分析し、理解を深める方法を詳しく解説します。

フリーキャッシュフローとは?

フリーキャッシュフローのイメージ

フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow、略してFCF)は、企業が本業であげた収益から、設備投資など事業を維持するために必要な支出を差し引いた後に残るキャッシュフローのことです。つまり、会社が自由に使えるお金の額です。借入金の返済・配当・内部留保・新規事業への投資などに使用されます。

フリーキャッシュフローのプラス・マイナスについて

フリーキャッシュフローには、「プラスの状態」と「マイナスの状態」があります。それぞれ、事業においてどのような関わりがあるのでしょうか。ここからは、フリーキャッシュフローのプラス・マイナスと事業の関係について解説します。

フリーキャッシュフローがプラスの場合

フリーキャッシュフローがプラスの状態は、企業が安定して利益を上げ、設備投資後も余裕のある資金を保有していることを意味します。企業が効率的に運営されており、市場での競争力が高い状態です。

プラスのフリーキャッシュフローは、企業が追加の借入をせずに済むだけでなく、配当の支払い・株式の買い戻し・新規事業への投資・財務構造の改善などに利用できます。そのため、FCFは投資家にとっても魅力的な指標です。また、経営の自由度が高まり、市場の変動に対する耐性も強くなります。

フリーキャッシュフローがマイナスの場合

フリーキャッシュフローがマイナスになると、企業は運転資金や投資資金のために外部からの資金調達が必要になることがあります。過剰な設備投資・売上の減少・コストの増加・不採算事業への投資などが要因で生じることが多いです。

マイナスのフリーキャッシュフローは、信用格付けの低下や配当の減少、さらには事業活動の制限を招く可能性があります。しかし、必ずしもネガティブな状況を意味するわけではなく、企業が将来の成長のために積極的な投資を行っている場合もあります。重要なのは、その投資が適切に管理され、計画的に行われているかどうかです。

キャッシュフローは3種類ある

フリーキャッシュフローのイメージ

キャッシュフローは、企業の財務状況を示す3つの種類から成り立っています。それぞれは、企業の運営や投資、資金調達の効率を測る指標です。

営業CF(営業キャッシュフロー)

営業CFとは、営業活動によるキャッシュフロー(Operating Cash Flow、OCF)のことです。企業の日常業務から生じる現金の流れを指します。商品やサービスの売上から得られる収入と、運営に必要な経費の支払いなどの支出です。

営業CFがプラスであれば、企業はその本業で安定して現金を生み出していると言えます。企業の基本的な収益性と効率性を反映しており、健全な運営が行われていることの証となるのです。

営業CFがマイナスになるのは、企業の本業が十分な収益を生み出せていない場合です。例えば、売上の減少、コストの増加、あるいは収益性の低い商品やサービスによるものかもしれません。長期にわたって営業CFがマイナスであると、企業の持続可能性が危ぶまれます。

投資CF(投資キャッシュフロー)

投資CFとは、投資活動によるキャッシュフロー(Investing Cash Flow、ICF)のことで、企業の長期投資に関わる現金の流れを示します。新しい設備の購入、事業の拡大、または新技術への投資などが、その一例です。

投資CFがプラスの場合、企業が資産を売却して現金を得ていることを意味します。逆に、マイナスであれば、将来の成長のために投資を行っていることを示します。

投資CFがマイナスであることは、企業が新しい設備や技術、あるいは事業拡大に向けて積極的に投資している状態です。短期的には現金の流出を意味しますが、長期的には企業の成長と収益性の向上につながることが期待されます。

財務CF(財務キャッシュフロー)

財務CFとは、財務活動によるキャッシュフロー(Financing Cash Flow、FCF)のことで、企業の資金調達と返済活動に関連する現金の流れを示します。新たな借入れや株式の発行、配当の支払い、借入金の返済などによるお金の動きです。

財務CFがプラスであれば、企業が資金を調達していることを意味し、マイナスであれば、資金を返済していることを示します。

財務CFがマイナスである場合、企業が借入金の返済や配当の支払いなどで現金を支出している状態です。過去の資金調達に対する責任を果たしている場合や、財務構造の健全化に努めている場合が考えられます。ただし、過度な返済は運転資金に影響を与える可能性があるため、バランスが重要です。

フリーキャッシュフローの計算方法

フリーキャッシュフローのイメージ

フリーキャッシュフローのイメージ

フリーキャッシュフローは、運転資本と資本支出を差し引いた後の営業キャッシュフローを用いて計算されます。また、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を評価する「ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)」という手法もあります。

フリーキャッシュフローの求め方

FCFを求めるには、まず営業キャッシュフローを確認します。営業キャッシュフローは、営業活動から生じる現金流入と流出の差額から求めます。

次に、運転資本の変動を考慮し、必要な資本支出である投資キャッシュフローを差し引きます。企業がその期間に行った有形固定資産への設備投資額(CAPEX)で、新しい設備の購入や既存設備の改善に関連するものなどです。通常、企業の財務諸表に記載されています。

フリーキャッシュフローの計算式は以下の通りです。

フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー

例えば、企業が営業活動で1,000万円の収益を生み出し、200万円の設備投資を行った場合、キャッシュフローは以下の通りです。

フリーキャッシュフロー = 1,000万円 + △200万円 = 800万円

この800万円が、その期間に企業が自由に使える現金の量を示します。

ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)

ディスカウントキャッシュフロー法は、将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、企業や投資案件の価値を評価する手法です。将来のお金が現在よりも価値が低いという考え(タイムバリュー・オブ・マネー)に基づいています。

キャッシュフローの現在価値 = 将来のキャッシュフロー /( 1 + 金利 )× 年数

将来予想されるフリーキャッシュフローを適切な割引率で割り引きます。割引率は、投資のリスクを反映したもので、通常は資本コストや希望リターン率で決定されます。株主や投資家が、その企業に投資する価値があるかどうかを判断する際に、この計算を用いることが一般的です。

フリーキャッシュフローがマイナスになる要因と改善方法

フリーキャッシュフローがマイナスになる要因はいくつかあります。ここでは、代表的な要因として、以下の5つを解説します。

売上が減少する

市場の需要が下がったり、競争が激化したりすると、売上が減少することがあります。その結果、営業CFが減り、フリーキャッシュフローがマイナスに転じることがあります。これは、外部環境の変化による影響が大きいです。

売上の減少によりフリーキャッシュフローがマイナスである場合、新しい顧客を獲得したり、新しい市場に進出したりして売上を増やすことで、FCFの改善が見込めます。また、価格戦略を見直すことも有効です。

コストが増加する

原材料の価格上昇や人件費の増加など、コストが予想以上に増えると、利益が圧迫されフリーキャッシュフローが低下します。特に、コスト管理が不十分な場合に顕著です。

無駄な経費を削減し、効率化を図ることで、フリーキャッシュフローをプラスに転じさせることが期待できます。原材料のコストダウンや、生産プロセスの改善など、コストを削減できないか検討してみましょう。

過剰な設備投資を行っている

企業が将来の成長を見込んで大規模な設備投資を行うと、短期的には大きなキャッシュアウトが発生し、フリーキャッシュフローがマイナスになることがあります。これは、現在の収益では投資額をカバーできない場合によく見られます。

フリーキャッシュフローをプラスにするためには、必要以上の設備投資を控え、投資の効率化を図る必要があります。特に、設備投資が高額になりがちな業種では、投資の回収期間やリターンを慎重に評価することが大切です。

債務返済の額が大きい

借入金の返済スケジュールが厳しく、大量のキャッシュを一度に支払う必要がある場合、フリーキャッシュフローがマイナスになることがあります。これは、財務戦略の問題が原因で起こることが多いです。

借入金の条件を見直し、金利の低い借入れに切り替えたり、返済スケジュールを調整することで、キャッシュフローの改善が見込めます。

不採算事業へ投資している

収益性の低い事業やプロジェクトへの投資が続くと、フリーキャッシュフローがマイナスになるリスクが高まります。これは、戦略的な誤算や市場分析の失敗が原因で起こり得ます。

採算が取れない事業やプロジェクトは見直し、必要であれば撤退を検討しましょう。限られたリソースを効果的に配分することが重要です。

フリーキャッシュフローから読み解く経営状況

フリーキャッシュフローのイメージ

フリーキャッシュフローのイメージ

フリーキャッシュフローがプラスであっても、必ずしも業績が良いとは限りません。反対に、フリーキャッシュフローがマイナスの場合でも、経営が上手くいっているケースも多いのです。ここでは、フリーキャッシュフローと経営状況の関係について深掘りします。

フリーキャッシュフローがプラスで業績が安定しているケース

フリーキャッシュフローがプラスである企業は、一般的に経営が安定しており、健全な財務状態にあると考えられます。

  • (+)​営業CF:プラス
  • ​(ー)​投資CF:​ある​程度マイナス
  • ​(ー)​財務CF:​適度に​マイナス

営業CFがプラスであることは、企業が主要な事業から安定した収益を上げている証拠です。一方で、投資CFがマイナスであっても、企業が将来の成長のために資産を購入したり、新しいプロジェクトに投資したりしていることを意味します。

そして、財務CFが適度にマイナスであれば、企業は借入金の返済を行いつつも、適切なレベルで新たな投資を行っていると判断できます。3つのキャッシュフローのバランスが取れている状態は、企業が現在の運営を維持しつつ、未来への投資も行っている健全な状態と言えるでしょう。

フリーキャッシュフローがプラスでも業績がひっ迫しているケース

FCFがプラスでも、企業の財務状況が厳しい場合も考えられます。例えば、以下のケースを考えてみましょう。

  • (ー)営業CF:マイナス △150万円
  • (+)投資CF:プラス +200万円
  • (+)FCF:プラス +50万円(△150万円+200万円)
  • (ー)財務CF:マイナス △100万円

上記の場合、フリーキャッシュフローは50万円のプラスを示していますが、営業CFがマイナスです。この状態は「本業から十分な利益を生み出せていない状態」であると考えられます。売上不足や高コストが原因かもしれません。

一方で、投資CFがプラスの場合、資産売却などによる一時的な現金流入があったことを意味します。しかし、これは持続可能な収益源ではありません。さらに、財務CFがマイナスであると、借入金の返済などで現金が流出していると考えられます。

これらの状況が重なると、FCFがプラスであっても、企業は資金繰りに苦しむことになり、経営の安定性が損なわれる可能性があります。そのため、FCFだけでなく、各キャッシュフローの背景を理解することが重要です。

過大投資をしていると考えられるケース

過大投資は、企業が将来の成長を見込んで行う戦略ですが、リスクも伴います。営業CFがプラスであっても、投資CFがそれを大きく上回るマイナスである場合、企業は収益を上回る額を投資に充てていると言えるでしょう。例えば、以下のケースが考えられます。

  • (+)営業CF:プラス 100万円
  • (ー)投資CF:マイナス △300万円
  • (ー)FCF:マイナス △200万円(100万円+△300万円)
  • (+)財務CF:プラス 100万円

営業CFが100万円のプラスであるにも関わらず、投資CFが300万円のマイナスであれば、FCFは200万円のマイナスとなり、財務状況に警鐘を鳴らします。

さらに、財務CFが100万円のプラスである場合、新たな資金調達を示しており、過大投資の裏付けとなる可能性があります。

このような状況は、企業が過度にリスクを取っている可能性があるため、慎重な分析と評価が必要です。適切なバランスを見極めることが、企業の持続可能な成長には必要でしょう。

成長が見込みにくいケース

企業の成長が見込みにくい状況においても、FCFの分析から読み取れます。例えば、以下のようなケースです。

  • (+)営業CF:プラス 100万円
  • (0)投資CF:ゼロ  0円
  • (+)FCF:プラス 100万円(100万円+0円)
  • (ー)財務CF:マイナス △300万円

営業CFがプラスである一方で、投資CFがゼロ、つまり新たな投資が行われていない場合、企業が成長のための投資を行っていないことを示しています。さらに、財務CFが大幅にマイナスであると、借入金の返済などで現金が流出しており、新しい投資に向けた資金が不足している状態です。

このような状況では、フリーキャッシュフローがプラスであっても、企業の将来的な成長は限られていると考えられます。特に、営業CFのプラスが財務CFのマイナスをカバーできていない場合、企業は資金繰りに苦しみ、成長機会を逃す可能性が高まります。

「FCFがプラスかマイナスか」だけでなく、その背後にある各キャッシュフローの動向を詳細に分析することが重要です。

フリーキャッシュフローがマイナスの場合に起こりうる影響

フリーキャッシュフローがマイナスの場合、企業にはさまざまな影響が起こり得ます。

  • 追加資金が必要となる

フリーキャッシュフローがマイナスであると、企業は運転資金や投資資金を確保するために、追加の資金調達を行う必要が出てきます。新たな借入れや株式の発行なども含まれます。

  • 信用度が低下する

継続的にフリーキャッシュフローがマイナスであると、企業の信用に悪影響を及ぼす可能性があります。将来の借入れコストが増加するリスクも考慮しなければなりません。

  • 配当を減少または停止せざるを得ない

利益の再投資や借入金の返済にキャッシュを使用する必要があるため、株主への配当が減少したり、一時的に停止されることがあります。

  • 事業活動が制限される

フリーキャッシュフローがマイナスであると、新規事業への投資や研究開発費用の削減など、事業活動が制限される可能性があります。

  • 財務リスクが増大する

フリーキャッシュフローがマイナスの状態が続くと、財務リスクが増大し、最悪の場合、企業の存続自体が危ぶまれることもあります。

企業の将来の成長と持続可能性に影響を与えるため、経営者はFCFを慎重に管理し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。また、投資家やクレジットアナリストも、企業の財務健全性を評価する際にフリーキャッシュフローを重視する傾向にあります。

フリーキャッシュフローを分析し経営改善に活用しよう

フリーキャッシュフローがマイナスであることは、必ずしも企業の経営状態が悪いわけではありません。重要なのは、営業・投資・財務の各キャッシュフローを総合的に分析し、企業の健全性を正確に評価することです。

計算方法や分析手法を理解することで、より効果的な財務戦略を立てられるでしょう。

経営改善の一環としてフリーキャッシュフローを活用したい方や、さらに詳しいアドバイスやサポートが必要な場合は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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