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家事按分とは?家賃や光熱費を経費計上する際の条件やポイントを解説!

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家事按分とは?家賃や光熱費を経費計上する際の条件やポイントを解説!

個人事業主で「自宅を事務所にしている」「自家用車を事業で使っている」など、事業とプライベートのどちらでも使うものは、確定申告の際に家事按分が必要です。しかし、家事按分できる費用には条件があります。白色申告と青色申告で異なるため、計上する上で難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、個人事業主が知っておきたい、家賃や光熱費を経費計上する際の条件やポイントを解説します。賢く節約しながら、事業を運営するための参考にしてください。

個人事業主の家事按分とは

家事按分における経費のイメージ

個人事業主にとって、自宅兼事務所での経費計上は重要です。自宅兼事務所の経費として計上できる費用には、どのようなものがあるのでしょうか。また、家賃や光熱費の全額を経費にできるのか、それとも一部しか計上できないのか、詳しく見ていきましょう。

自宅兼事務所の事業者が経費として計上できる費用

家事按分は、個人事業主やフリーランスの方が自宅を事業にも使用する際、生活費と事業費を適切に分けて経費計上する方法です。事業で使用する家賃や光熱費、自動車などにかかる費用の一部は経費として認められます。とはいえ、プライベートと事業で使用している場合、使用する費用が混在してしまうため、事業で使用する支出のみを一定の割合で算出します。この計算により、事業に必要な支出として経費計上が可能です。

例えば、自宅の一部を事業用に使っている場合、その面積や使用時間の割合に基づいて家賃を按分します。電気料金も、事業で使用する時間やコンセントの数に応じて按分できます。通信費も同様に、事業での使用割合に基づいて計算されます。

例えば、自宅兼事務所の家賃が月10万円で、全体の面積60平米のうちの30平米を事業用として使用している場合、家賃の半分(5万円)を事業経費として計上できます。計算式は以下の通りです。

経費計上額 = 家賃 × ( 事業用面積 ÷ 全体の用面積​ ) 

= 100,000円 × ( 30平米 ÷ 60平米 ​) = 50,000円

このように、家事按分は事業用として使用する割合に基づいて経費を計算します。ただし、按分比率については明確な基準がないため、事業主が合理的に説明できる範囲で計上しなければなりません。

また、車両費用についても家事按分が適用されます。例えば、車両費用が月に2万円かかるとして、その車を70%の時間事業に使用している場合、14,000円が事業経費として計上可能です。

経費計上額 = 車両費用 × 事業使用率

= 20,000円 × 70% = 14,000円

家事按分には明確な計算式が定められていないため、個々の事業主が合理的な基準を設けて計算する必要があります。税務調査時には、この按分の根拠を求められることもあるため、計算方法や按分率の決定には注意が必要です。

家事消費とは

家事按分と似ている言葉で「家事消費(または自家消費)」というものがあります。どちらも個人事業主の確定申告に関連する内容ですが、それぞれ別の意味を持ちます。

家事消費は、個人事業主が本来販売する予定だった商品や材料などの棚卸資産を、自分や家族のために使用した場合に、売上として帳簿に記載する勘定科目です。例えば、飲食店の経営者が売れ残りの食材を自宅で消費したり、商品を友人に定価より安く販売したりした場合、その差額を家事消費として計上します。

家事消費は、個人商店や小規模店舗でよく見られ、税務調査の際に注意が必要な内容の一つです。商品を自宅で使用するだけでなく、贈与や低額譲渡も含まれます。ただし、サービスの提供や減価償却資産の譲渡は家事消費の対象外です。

家事消費の金額は、原則として定価で計上する必要がありますが、特例として仕入金額または定価の70%のうち、いずれか高いほうの金額で計上することも可能です。この計上は売上に含まれるため、正確な記録と適切な計上が求められます。家事按分とは異なり、家事消費は商品の自家使用や贈与などに関連するため、両者を混同しないようにしましょう。

参考:確定申告書等作成コーナー 家事消費とは|国税庁

家事按分の要件

家事按分における経費のイメージ

家事按分には、白色申告者と青色申告者で異なる要件があります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

白色申告者の場合

白色申告者が家事按分を行う際には、以下の条件を満たす必要があります。

  • 家事関連費の主たる部分(50%以上)が業務の遂行上必要であること
  • 業務に必要な部分を明確に区分できること
  • 業務の割合が50%以下の場合でも、業務に必須でありその分を明確に分けられること

白色申告者は、業務で使用する割合が全体の50%を超える場合に限り、家事関連費を経費に計上できます。

ただし、業務で使用する割合が50%以下であっても、「自宅と事務所のスペースが完全に区切られている」「事業で使用する分の電気メーターが別でついている」など、その必要である部分を明確に区分できる場合は、経費算入が認められる場合があります。

青色申告者の場合

青色申告者は、家事按分の要件がやや緩和されています。以下の条件を満たせば、家事関連費を経費として計上できます。

  • 業務遂行上必要と合理的に認められる場合、すべての家事按分を経費として計上可能
  • 業務割合が50%以下であっても、業務の遂行上直接必要であったことが取引の記録等で明らかな場合

青色申告者は、業務で使用する割合に関わらず家事関連費を経費にできるため、白色申告者に比べて経費計上の幅が広がるとされています。家事按分においては、青色申告者の方が税務上のメリットを得やすいと言えるでしょう。

家事按分できる経費の種類

家事按分できる経費は家賃や光熱費、通信費が一般的ですが、水道代やガス代、自動車関連の費用も経費として認められる場合があります。ここでは、それぞれの費用について詳しく解説します。

家賃

家賃の家事按分は、事業で使用する部屋の面積比率に基づいて計算できます。事業で使用する部屋の面積は住居全体の面積に対する割合で計算し、その割合に応じた家賃が経費として計上可能です。例えば、自宅のうち20%を事業に使用している場合、家賃の20%を経費として認められます。

また、自宅での作業時間に基づいて使用比率を算出する手法もあります。この方法は、自宅を仕事場と居住空間の両方として利用している場合に適しており、1日のうち仕事に充てる時間に応じて、経費として認められる家賃の額を求めます。特に、ワンルームで業務を行っている方に有効です。

持ち家の場合、家賃に代わるものとして減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息部分が考慮されます。これらも事業で使用する部分の割合に応じて按分され、経費計上が可能です。

電気代

電気代の按分は、事業で使用する機器の数や使用時間に基づいて行われます。例えば、事業専用のコンピュータや照明がある場合、それらの使用にかかる電気代を全額経費として計上できます。また、事業と私用で共有する電気の場合は、使用時間の割合に応じて按分することが一般的です。

通信費

通信費には、インターネット料金や携帯電話料金が含まれます。事業での使用割合に応じて按分され、例えば、事業専用の電話回線やインターネット接続がある場合は、その費用を全額経費として計上できます。共用の通信手段の場合は、事業での使用時間やデータ使用量に基づいて按分します。

水道代

水道代は、事業での使用量が明確でない場合が多いため、按分比率を設定する際には慎重な判断が求められます。飲食店の経営者など、事業で水を多く使用する場合は、実際の使用量を基に按分します。一方で、事業での使用量が少ない場合は、合理的な割合を見積もって按分します。

ガス代

水道代と同様、ガス代も事業での使用量に基づいて按分します。料理教室や飲食店など、ガスを多用する事業では使用量が多く、事業で使った分はすべて計上することが可能です。一般的なオフィスワークなど、ガスをほとんど使用しない事業の場合は、按分される経費は少ない傾向にあります。

自動車関連費

自動車関連費は、車両の減価償却費・自動車税・保険料・ガソリン代などが含まれ、業務用の走行距離に基づいて按分されます。

例えば、総走行距離のうち業務で使用した割合が50%であれば、それに応じた経費を計上できます。ただし、業務専用車両の場合は、関連費用を全額経費として計上することが可能です。

家事按分できないケース

家事按分における経費のイメージ

家事按分は個人事業主にとって有効な節税手段ですが、適用できるケースは限られています。以下に、家事按分できない具体的なケースをいくつか挙げて解説します。

按分率が不適切な場合

家事按分を行う際には、合理的な按分率を設定する必要があります。実際に使用している分以上の按分率で計算している場合、税務調査で指摘される可能性があるため、注意が必要です。

事業で使用しているスペースや時間が少ないにも関わらず、高い按分率を適用している場合は、按分率が不適切であると見なされます。例えば、事業用に使用している面積が全体の10%にもかかわらず、50%を事業経費として計上してはいけません。

また、自宅で仕事をする場合、全体の稼働時間に占める割合に基づいて按分を行うべきですが、実際の使用時間とは無関係に高い割合で按分することも不適切です。例えば、週に数時間しか使用していないにも関わらず、全体の50%を事業経費として計上する場合などがこれに該当します。

さらに、按分率を設定する際には、客観的な根拠が必要です。事業で使用する電気の量や水道の使用量を具体的なデータに基づいて按分する必要がありますが、実際の使用量を計測せずに感覚的に按分率を決めてしまうと、税務調査で問題となる可能性があります。

業務とプライベートの区分が不明確な場合

家事按分を行うためには、業務とプライベートの費用を明確に区分けできている必要があります。リビングや寝室など、明確な間仕切りがなく、業務とプライベートが混在しているスペースで仕事をしている場合は、家事按分が認められないことがあります。

リビングは家族が共有する空間であり、業務専用とは明確に区別できません。そのため、リビングの面積を業務の家事按分に含めることは合理的ではなく、そもそも経費計上も困難です。

また、家族が常に利用することを考慮すると、リビングでの業務時間を正確に割り出すこともできず、経費としての按分は適切ではありません。

このような状況では、リビングでの光熱費を経費に計上しない方が賢明です。業務とプライベートの明確な区分が不可欠であり、その区分が曖昧な場合は家事按分を避けるべきでしょう。

生計を一にする家族に支払う家賃

自宅を事務所として使用している場合でも、生計を同一とする家族や親族に支払う家賃は、業務上の必要性が認められず、経費として計上できないことがあります。

これは、支払いが事業の範囲を超えた私的な支出と見なされ、家賃の支払いが事業遂行上必要であると客観的に認められないためです。同居や別居の実態は関係せず、同じ財布から生活費を共有している家族に家賃を支払っているケースが該当します。

持ち家の住宅ローンの元本

持ち家の住宅ローンの元本は、個人事業主の家事按分として経費に計上することは認められていません。これは、住宅ローンの元本が資産の取得に関連する支出であるためです。

住宅ローンの金利部分は、事業用として使用している家の部分については家事按分が可能です。しかし、元本は資産の購入や建設に関わるコストであり、これを経費として計上することは認められません。住宅ローンの元本は、事業のための経常的な支出ではなく、資産の取得に伴う一時的な支出と見なされるため、経費として認められる金利とは異なります。

また、住居の床面積の2分の1以上が居住用であれば、住宅ローン控除が受けられます。店舗併用住宅の場合、住居部分の床面積だけが控除の対象となります。ただし、事業共用割合が10%以下の場合は、その建物の全てが住宅用として使用しているとみなされ、住宅ローン控除の全額が適用されます。

家事按分のルールを正しく理解しよう

個人事業主にとって、家事按分は節税する上では欠かせません。しかし、明確な計算方法がないため、按分率の設定は個人の判断に委ねられている面もあります。

税務調査において按分が不適切と判断された場合には、必要経費の計上が過大であるとして、追加の税金が発生することから、特に注意が必要です。税務上の問題を避けるためにも、家事按分のルールを正しく理解し、適切に適用しましょう。

家事按分を行う際には、事業での使用割合を合理的かつ客観的に証明できるよう、適切な按分率を設定することが重要です。按分率の設定には注意が必要であり、必要に応じて専門家の意見を求めることも検討しましょう。

家事按分の計算に不安がある方や、自身の業務に最適な節税対策を詳しく知りたい個人事業主の方は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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