法人として事業を行う場合、個人事業主とはまた異なる税金が発生します。今回の記事では、法人にかかる6つの税金をテーマに解説します。各税金の概要や、赤字の場合の納税額などを中心に紹介します。法人成りを検討したい所得の目安にも触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
法人の税金は最低いくらから?
法人にかかる税金は全部で5つあります。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税
- 法人住民税
法人税から特別法人事業税までの4つは、損失の場合は支払う必要がありません。法人住民税だけは、黒字・赤字に関係なく均等割の納付が発生します。
ここでは、各税金の概要や計算式などについて解説します。
法人税
法人税とは、個人事業主で言う所得税のことです。
法人税の税率は、全部で3つの税率しかありません。そのため、個人事業主に課せられる超過累進課税に比べるとかなり算出しやすいでしょう。以下は普通法人の税率です。
区分 適用関係(開始事業年度) 平28.4.1以後 平30.4.1以後 平31.4.1以後 令4.4.1以後 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15% 15% 15% 15% 適用除外事業者 15% 15% 19% 19% 年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20% 23.20%
法人税は、所得に対して課せられる税金のため、損失の場合は納める必要がありません。
中小企業の法人税の計算式は下記の通りです。
- 年800万円以下の課税所得部分×15%
- 年800万円超の課税所得部分×23.20%
自社の正確な納税額は、必ず税理士に計算を依頼することをおすすめします。
地方法人税
地方法人税は、法人税と混同されがちですが、別の税金です。法人税は、会社の所得に対して課される国税であり、国の財政収入となります。一方、地方法人税は、地方自治体の財政支援を目的とした国税であり、その税収は地方交付税の財源となります。
また、法人税と地方法人税では、税率や計算方法も異なります。地方法人税の税率は一律で、法人税額に10.3%の税率を乗じて計算されます。
法人事業税
法人事業税とは、事務所等のある都道府県に対して納める地方税のことです。
法人は事業を行うにあたって、道路や上下水道などをはじめとする様々な行政サービスを利用しています。
その維持費の一部を法人事業税として納税するのです。
法人事業税も、法人税と同じように所得に対してかかる税金です。そのため、資本金1億円以上の企業を除き、赤字の場合には納税の必要はありません。資本金が1億円を超えている、あるいは電気やガスを供給する業種などの場合は赤字でも納税する必要があるため注意しましょう。
法人事業税の計算式は下記の通りです。
課税所得×法人事業税率=法人事業税額 |
法人事業税は、事業や固定資産の価額、事務所等の数、そして納税先の都道府県などによって税率が異なります。算出する際には、都道府県のホームページをよく確認しましょう。
特別法人事業税
特別法人事業税とは、法人事業税に対してかけられる国税のことです。地方法人課税における税収の偏りを補うために、2019年(令和元年)に創設されました。
特別法人事業税の計算式は下記の通りです。
法人事業税×特別法人事業税の税率=特別法人事業税額 |
2024年(令和6年)現在の普通法人の税率は37%です。しかし、法人の種類や事業年度などによって税率が異なったり変更されることも多いため、納税額は税理士に確認しましょう。
消費税
消費税は、商品やサービスなどに課せられる税金のことです。法人の場合は法人税や法人事業税と同じ時期に納めます。
消費税の計算式は、原則課税と簡易課税によって異なります。
原則課税
売上にかかる消費税-仕入等にかかる消費税=消費税額 |
簡易課税
売上にかかる消費税-(売上にかかる消費税×みなし仕入率)=消費税額 |
原則課税を計算する場合は、売上と仕入一つ一つのほかに、経費や固定資産なども関係します。そのため、経理業務の負担は大きいことがデメリットです。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、納税義務が発生します。
簡易課税の場合は、仕入に対する消費税を管理する必要がありません。ただし、簡易課税を選択した場合、その後2年間は変更できないことがデメリットです。
消費税は、設立2期間の事業年度開始の日の資本金が1,000万円以下の場合、最長2年間の納税が免除されます。
ですが、免除されないケースもあるため注意しましょう。
詳しくは【税理士監修】法人成り後にかかるランニングコストとは?種類と費用の目安を解説(※チェック依頼中)を参考にしてください。
法人の消費税には、インボイスや事業承継なども関係しています。算出の際は税理士に依頼することをおすすめします。
法人住民税
法人住民税は、これまでに解説した4つの税金とは異なり、損失の場合でも均等割を納税する必要があります。
法人住民税とは、個人にかかる住民税に似た税金のことです。地域社会の維持を目的にしているため、地方自治体に納めます。
法人住民税は「均等割」と「法人税割」という2つの計算式によって算出し、最後に合計します。
各計算式の概要は、下記の通りです。
- 均等割…資本金の金額や従業員数などによって決まる。
- 法人税割…法人税の税額をベースにして算出される。
【均等割】
資本金等の額
都道府県民税均等割
市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1千万円以下
2万円
12万円
5万円
1千万円超1億円以下
5万円
15万円
13万円
1億円超10億円以下
13万円
40万円
16万円
10億円超50億円以下
54万円
175万円
41万円
50億円超
80万円
300万円
41万円
均等割は、都道府県民税均等割と市町村民税均等割を足して算出します。
例えば、資本金1千万円以下、従業員数50人以下の場合、計算式は下記の通りです。
都道府県民税2万円+市町村民税5万円=7万円 |
そのため、損失の場合でも最低でも7万円は確保しておく必要があります。
一方、法人税割は法人税にかかる税金のため、損失の場合は免除されます。
法人税割の計算式に必要な税率は、各自治体によって異なります。算出の際にはよく確認しましょう。
法人成りを検討する所得はいくら?
個人事業主から法人成り(法人化)を行う場合、検討するべきタイミングは事業所得が年間800万円を超えたときです。
法人税の税率は、事業所得が年間800万円を超えると一律23.20%になります。それ以上は増えません。
一方、個人事業主には超過累進課税が適用されるため、900万円を超えると税率が33%に上がります。
ただし、法人成りするためには煩雑な手続きが必要というデメリットもあります。また、個人事業主には必要ないランニングコストも継続してかかるようになります。
そのため、所得税の節税だけではなく、多角的にしっかり検討したうえで判断することをおすすめします。
参考:超過累進税率とは|総務省
法人の税金は税理士への依頼がベスト
法人には、一般的には今回解説した6つの税金の納税義務があります。そのため、損失の場合でも法人住民税の均等割にかかる7万円は最低限必要です。
法人に課せられる税金の税率は、業界や自治体、事業所得などによって異なります。納税額を正確に算出するためにも、ぜひ税理士への依頼も検討してみてください。
自社の納税額をしっかり把握することは、節税対策の大切な第一歩でもあります。
また、小谷野税理士法人には、税務関連の手続き代行も依頼できます。そのため、会社設立前から顧問契約しておくのもおすすめです。
小谷野税理士法人は、現在1,000を超える顧問社数の実績があります。全国どこでも対応可能なので、ぜひ一度ご相談ください。