法人が納める税金には主に12種類あります。個人事業主よりも多いため、法人成りをした初年度は納税し忘れるのではないかと不安な方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、法人の税金を納めるタイミングを「事業年度終了から2カ月以内」「毎月もしくは半年ごと」「その都度」の3つに分けて解説します。また、各税金の納め方も併せて紹介するので、しっかり把握しておきましょう。
目次
法人の税金は主に12種類
法人に課せられる税金は主に12種類あります。納税するタイミングは大きく3つに分かれています。
それぞれのタイミングは下記の通りです。
事業年度終了から2カ月以内 | 毎月もしくは半年ごと | その都度 |
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本記事では、上記の表に沿って各税金を納めるタイミングと納税方法について解説します。
法人成りまたは会社設立を検討している方は、1年間の納税のタイミングを覚えておきましょう。
法人の税金の納め方
近年は、税務署の窓口での直接納付以外にも様々な納税方法があります。主な納付方法は、下記の通りです。
- 税務署の窓口での直接納付
- 金融機関の窓口での直接納付
- コンビニエンスストアでの納付
- クレジットカードでの納付
- スマートフォンのアプリでの納付
- 電子納税
ここでは、各納付方法のメリット・デメリットについて解説します。
参考:G-2 国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)|国税庁
参考:国税の納付方法|財務省
税務署の窓口での直接納付
所轄の税務署の窓口で、現金を直接納める方法です。確定申告で申告した納税額を納付書に記入し、現金と一緒に提出します。
【メリット】
- 事前に準備する必要がない。
- 納付額の制限がない。
- 手数料がかからない。
【デメリット】
- 税務署へ出向く必要がある。
- 窓口が開いている時間帯しか利用できない。
- 混み合っている可能性がある。
- クレジットカードや電子マネーが使えない。
税務署の場合、混雑する日や時間帯などはできるだけ避けることをおすすめします。
参考:G-2-8 現金に納付書を添えて納付(金融機関又は税務署の窓口)|国税庁
金融機関の窓口での直接納付
金融機関の窓口でも税金は納められます。税務署の場合と同じく、現金と納付書を一緒に納めてください。
納付書は金融機関にも備えてありますが、在庫が切れてしまっている場合もあります。できるだけ自分で準備して行くようにしましょう。
参考:G-2-8 現金に納付書を添えて納付(金融機関又は税務署の窓口)|国税庁
コンビニ納付
税金はコンビニエンスストアでも納付可能です。あらかじめQRコードやバーコード付納付書を準備し、レジで現金を納付します。
【メリット】
- 近所のコンビニエンスストアで納税できる。
- 手数料がかからない。
【デメリット】
- 事前にQRコードなどを準備する必要がある。
- 利用できるコンビニエンスストアが限られている。
- 納付額は30万円以下に限られる。
- クレジットカードや電子マネーが使えない。
納付額の上限が30万円までの場合におすすめできる納税方法です。
クレジットカード納付
インターネット上から、クレジットカードで税金を納付することもできます。国税庁から委託された「国税クレジットカードお支払サイト」を利用します。
クレジットカード納付では、現在29種類の税金を納められます。
【メリット】
- 大半の税金を納められる。
- 24時間納税できる。
- クレジットカードのポイントが貯まる。
【デメリット】
- 利用できるのは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、TS CUBIC CARDのみ。
- 手数料がかかる。
- 領収書が発行されない。
クレジットカードによる納付は、領収書が発行されません。そのため、納税額は明細書で確認する必要があります。
スマホアプリ納付
2022年(令和4年)12月からは、スマートフォンのアプリを利用した納税も可能になりました。
国税庁から指定された「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスし、氏名や納付額などを入力します。
【メリット】
- 24時間どこでも納税できる。
- 手数料がかからない。
【デメリット】
- 納付額は30万円以下に限られる。
- 利用するためには残高のチャージが必要。
- 領収書が発行されない。
スマートフォンからの納税は、手軽に済ませたい方におすすめです。
電子納税
電子納税とは、オンライン上のシステムを利用して納税を行うことです。電子納税には、ダイレクト納付とインターネットバンキングという2種類の方法があります。
【メリット】
- 24時間納税できる。
【デメリット】
- e-Taxの利用前には手続きが必要。
- 最初はe-Taxを「使いにくい」と感じる場合もある。
- 領収書が発行されない。
電子納税は、原則手数料がかかりません。
ですが、一部のインターネットバンキングやATMなどでは必要になるケースもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
参考:電子納税 | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)|国税庁
参考:G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続|国税庁
参考:G-2-3 インターネットバンキング等からの納付手続|国税庁
年度終了から2カ月以内に納めるべき6つの税金
法人は、事業年度の終了後2カ月以内に6つの税金を納める必要があります。
- 法人税
- 法人事業税
- 法人住民税
- 地方法人税
- 特別法人事業税
- 消費税
例えば、事業年度の終了日が9月30日の場合、11月30日までの2カ月間で上記のすべてを納税しなければなりません。
法人は決算月を自由に決められるため、キャッシュが潤沢な時期を選ぶようにしましょう。
法人税
法人税は課税所得に対してかかる税金のことです。
法人税は、本記事で解説したすべての方法で納税可能です。
参考:国税の納付方法|財務省
法人事業税
法人事業税とは、事務所等のある都道府県に対して納める税金です。
納税先の都道府県などによって税率が異なるため、計算は税理士へ依頼することをおすすめします。
法人住民税
法人住民税は、個人が納める住民税に似た税金のことです。「均等割」と「法人税割」という計算方法で行い、最後にこの2つを足して納税します。
- 均等割…資本金の金額や従業員数などによって算出される。
- 法人税割…法人税の税額をベースにして算出される。
法人税をはじめとする他の税金とは異なり、赤字の場合でも納税義務があります。
法人住民税は、自治体によって納付方法が定められています。主な方法は下記の通りです。
- 市役所等や金融機関の窓口での納付
- eLTAX電子納税
eLTAX電子納税は、電子申告を行った場合に選べます。クレジットカードやインターネットバンキングなど、比較的納税方法が幅広いことがメリットです。
ただし、領収書の発行ができないというデメリットもあるため、注意しましょう。
地方法人税
地方法人税とは、国が各自治体に配布する地方交付税の財源になる税金のことです。本記事で解説した納税方法をすべて利用できます。
参考:地 方 法 人 税 が 創 設 さ れ ま し た|国税庁
参考:地方法人税法|e-GOV
特別法人事業税
特別法人事業税とは、法人事業税に対してかけられる税金のことです。法人事業税と一緒に納付します。
消費税
消費税は、消費税やサービスなどにかかる税金のことです。法人の場合、消費税の計算式には原則課税が適用されることが一般的です。
消費税も、本記事で解説したすべての方法をご利用いただけます。
毎月もしくは半年ごとに納めるべき2つの税金
毎月もしくは半年ごとに納税する税金には、源泉所得税と住民税の2つがあります。
源泉所得税
源泉所得税とは、給与や報酬などから所得税を天引きという形で徴収し、従業員に代わって会社が国に納める税金のことです。
よく所得税とどう違うのか悩む方がいますが、実は同じものを指しています。誰が納税するのかによって、呼び方が異なります。
- 源泉所得税:給与・報酬などを支払う者が、従業員に代わって納税する。
- 申告所得税:納税者本人が自分で確定申告を行い、納税する。
源泉所得税は、給与・報酬などが発生した月に納めることが一般的です。ですが、要件を満たしている場合は、半年に一度の支払いにすることもできます。
源泉所得税は、本記事で解説したどの方法でも納められます。
参考:e-Taxを利用して源泉所得税が納付できます! |国税庁
住民税(特別徴収)
従業員の住民税は会社があらかじめ天引きし、代わりに市町村へ納めます。この方法を特別徴収と言います。一部の例外を除き、会社や従業員などの都合で普通徴収に変更することはできません。
天引きした住民税は、翌月10日までに各従業員の市町村へ納付する必要があります。住民税は、金融機関の窓口、金融機関、そして電子納税などの方法が一般的です。
参考:個人住民税の特別徴収(給与天引き)を徹底しています。|千葉県
その都度納めるそのほかの税金
税金の中には、取引があったときのみ納めるものもあります。ここではその都度納める税金について解説します。
登録免許税
登録免許税とは、会社の登記を変更するために必要な税金のことです。会社設立時や項目の変更時など、1件につき約3~6万円ほどかかります。
登録免許税の納付方法は下記の4通りです。
- 収入印紙の貼付
- 銀行等または郵便局での現金納付
- クレジットカード
- 電子納税
収入印紙は、全国の郵便局やコンビニエンスストアなどで販売しています。剥がれるとトラブルになるため、しっかりと貼付して提出しましょう。
参考:【令和6年1月より運用開始】登録免許税の納付について|特許庁
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書などを作成する際にかかる税金のことです。他の税金とは異なり、原則収入印紙を購入して貼付することで納税が完了します。
参考:印紙税の手引|国税庁
固定資産税
固定資産とは、会社が所有している土地や建物、事業用の機械などのことです。これらに対してかかる税金を固定資産税と言います。
会社を経営するうえで対象となる固定資産は下記の通りです。
固定資産の種類
例
土地
田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地
家屋
住宅、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物
償却資産
会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など
固定資産税の納税額の通知は4~6月に届くことが一般的です。納付期間は6月・9月・12月・2月の年4回ですが、1度に全額納めることもできます。
自動車税・軽自動車税
事業で使用している自動車がある場合は、自動車税も納める必要があります。4月1日に会社名義の自動車がある方が対象です。
自動車にかかる税金は、排気量によってその種類や納税先が異なります。
排気量 | 660cc以下 | 660ccを超える |
税金の種類 | 軽自動車税 | 自動車税 |
納付先 | 市区町村 | 都道府県 |
自動車税・軽自動車税の納付期限は毎年5月31日です。納税通知書が届き次第、速やかに納めることをおすすめします。
参考:自動車税の種別割の納付の方法はどのようなものがありますか。|千葉県
納税は税理士に依頼するのもおすすめ
本記事で解説したように、法人が納めるべき税金は主に12種類ありますが、納付するタイミングや納税方法が少しずつ異なります。
そのため確定申告や実際の納税など、納税に関する業務を税理士に一任することもおすすめです。
小谷野税理士法人でも、会社設立から月次決算書、税務申告まで様々な相談や代行を承っています。ぜひ一度お気軽に問い合わせください。