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会社設立の基礎知識

個人事業主が住所変更のときに税務署で行う手続きを解説

公開日:

個人事業主が住所変更のときに税務署で行う手続きを解説

個人事業主が仕事場所を移したら、税務署に「開業届」を再提出するといった各種手続きが必要です。この記事では、個人事業主の方向けに、自宅や仕事場を移転する際に税務署へ提出すべき書類を解説します。提出を怠ると、重要な通知が受け取れないなどの弊害が生じます。また、税務署以外での手続きや、引越し費用が経費にできるか否かも解説するので、参考にしてください。

税務署に個人事業主が住所変更の際に行う手続き・必要書類

税務署

個人事業主が仕事場所を変えるとき、税務署に提出すべき書類をパターン別にまとめました。

凡例:○=提出が必要、△=状況に応じて提出、×=提出不要

 

住所変更パターン

①開業届

②振替納税の手続き

③所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書

仕事場の移転なし

仕事場はそのまま、自宅のみ引越し

仕事場の移転あり

所轄の税務署が変わらない

×

所轄の税務署が変わる

④国外に1年以上移住

×

×

参考:個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁

以下、表中の番号順に手続きを説明します。

①開業届(=個人事業の開業・廃業等届出書)の再提出

仕事場の住所が変わった方は、個人事業の開始時にも提出した「開業届」を再提出します。ちなみに、開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業・廃業以外に、仕事場の移転や増設もこの書類で手続きできます。

対象

仕事場を変更した人全員

提出期限

仕事場の変更から1ヵ月以内

提出方法

・e-Tax

・書面(持参or送付)

提出先

住所を変更するの所轄の税務署

添付書類

書面提出なら、申請者の本人確認書類が必要(コピー可)

開業届の真ん中あたりに、移転前後の住所をそれぞれ記載する欄があります。

参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

参考:個人事業の開業・廃業等届出書(PDF)|国税庁

②振替納税の手続き

口座引き落としで納税している方に必要な手続きです。納税地を変更したことで所轄の税務署が変わった場合、以下3つのいずれかの手続きを行なってください。

  • 所在地を変更したの所轄税務署に「預貯金口座振替依頼書」を提出
  • 所在地を変更したの所轄税務署に③の「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出
  • 所得税か消費税を確定申告する際、申告書の「振替継続希望」の欄に○をして提出

なお、仕事場が変わっても所轄の税務署が変わらない場合、この手続きは不要です。

参考:申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付|国税庁

③所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書の提出

国税関連の郵便物を、変更した後の所在地で受け取りたい方だけ行う手続きです。

一般的には、確定申告の際に変更した後の所在地を書いて提出すると、郵便物が変更した後の所在地に届きます。しかし、確定申告を待たずに年の途中から受取先を変えたい場合は、この書類を提出しましょう。

対象

税務署などからの郵便物の送付先を、年の途中から変更した後の所在地にしたい人

提出期限

なし

提出方法

・e-Tax

・書面(持参or送付)

提出先

住所変更したの所轄の税務署

参考:所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁

④日本国外に1年以上移住する際の手続き

国外で個人事業を営む場合、日本での納税は不要です。よって、日本での個人事業を終了する手続きをします。出国前に、以下の書類を所轄税務署に提出しましょう。

  • ①の「開業届」(廃業の旨を書く)
  • 国外転出までの分の確定申告書と納税
  • 青色申告している場合:所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 消費税の課税事業者の場合:事業廃止届出書
  • 移住後も日本で所得が発生する場合:所得税・消費税の納税管理人の選任届出書

なお、国外滞在が1年未満の場合は日本で納税します。滞在日数によっては滞在先の国でも税金が掛かるため、帰国後に外国税額の控除を受ける手続きが必要です。詳しくは税理士や所轄の税務署にお問い合わせください。

 

参考:給与所得者の方で国外転出を予定されている方へ|東京国税局

参考:所得税の青色申告の取りやめ手続|国税庁

参考:事業廃止届出手続|国税庁

参考:所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続|国税庁

税務署以外に個人事業主が住所変更の際に行う手続き

個人事業主が自宅や仕事場を変更すると、銀行口座やライフラインの変更手続きなど、あらゆる手続きに追われます。

ここでは、手続きの中でも事業の継続にあたって特に重要なもの4点を解説します。4点とは、都道府県への申告と、年金・健康保険・労働保険それぞれの手続きです。

凡例:○=手続きが必要、△=状況に応じて手続き、×=手続き不要

 

住所変更パターン

①都道府県税事務所

②年金

③健康保険

④労働保険

仕事場の移転なし

仕事場はそのまま、自宅のみ引越し

×

国民健康保険:○

社会保険の健康保険:△

×

仕事場の移転あり

手続き先の管轄内での移転

国民年金:自宅が引っ越さなければ×

厚生年金:○

国民健康保険:自宅が引っ越さなければ×

社会保険の健康保険:△

手続き先の管轄外への移転

○(両方の都道府県で必要)

国民年金:自宅が引っ越さなければ×

厚生年金:○

国民健康保険:自宅が引っ越さなければ×

社会保険の健康保険:△

以下、1点ずつ解説します。

①都道府県税事務所へ提出する書類

まずは、事業税を納める都道府県の税事務所に提出する書類です。移転したのが自宅か仕事場かで、対応が異なります。

【自宅の住所を変更したケース】

都道府県への手続きは不要です。

【仕事場の所在地を変更したケース】

東京都の場合、仕事場の住所変更の日から10日以内に「事業開始等申告書」を所管の都税事務所に提出しましょう。

東京都から他の道府県に仕事場を移す場合は、両方の都道府県で手続きをします。都の税事務所には「事務所の廃止届」を、新しい住所の道府県税事務所には「事業開始届」を提出しましょう。

なお、この手続きは、都道府県によって異なります。該当の都道府県税事務所のHPをご確認ください。

参考:個人事業税|東京都主税局

②年金の手続きは、役所か年金事務所へ書類を提出

年金の手続きは、移転したのが自宅か仕事場か、さらに国民年金か厚生年金かで対応が異なります。

【自宅の住所を変更したケース】

マイナンバーと基礎年金番号が結び付いていない方のみ、住所変更届が必要です。

 

国民年金

厚生年金

住所変更届の提出先

区市町村の役所

仕事場の所在地を管轄する年金事務所または事務センター

提出方法

区市町村による

・窓口持参なら年金事務所へ

・郵送なら事務センターへ

一方、マイナンバーと基礎年金番号が結び付いている方なら住所変更届は原則不要です。マイナンバーが結び付いているか否かは「ねんきんネット」や年金事務所で確認できます。

参考:国民年金第1号被保険者の住所・氏名変更手続き||日本年金機構

参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届|日本年金機構

【仕事場の所在地のみ変更したケース】

国民年金の方は、仕事場が移転しても自宅の住所が変わらない場合、住所変更手続きは必要ありません。

しかし厚生年金の場合、仕事場が移転したら「適用事業所の所在地を変更する手続き」をします。仕事場の移転先が、これまでの年金事務所が管轄する範囲内か範囲外かで手続き内容が変わります。詳しくは日本年金機構のHPをご確認ください。

参考:適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き|日本年金機構
参考:適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き|日本年金機構

③健康保険は、役所か健康保険組合などで手続き

健康保険の手続きも、移転したのが自宅か仕事場か、さらに国民健康保険か否かで対応が異なります。

【国民健康保険の加入者】

自宅の住所が変わった場合、国民健康保険の手続きが必要です。なお市町村を跨ぐ場合は、引越し前の区市町村の役所で「資格喪失手続き」を、引越し後の区市町村の役所で「加入手続き」を行ってください。

仕事場の所在地のみ変更した際は、国民健康保険の手続きは不要です。

【社会保険の健康保険の加入者】

加入している健康保険の保険者によって手続きが異なります。詳しくは保険者のHPでご確認ください。

なお、保険者とは、医療保険の実施主体のことです。例えば、健康保険組合・全国健康保険協会(協会けんぽ)・共済組合などがあります。

④労働保険は、労働基準監督署とハローワークで届出

労働保険とは、労災保険と雇用保険の2つの保険の総称です。移転したのが自宅か仕事場かで、対応が異なります。

【自宅の住所を変更したケース】

労働保険の手続きは不要です。

【仕事場の所在地を変更したケース】

まず、労災保険の届出をします。

提出先

移転後の所在地を管轄する労働基準監督署

提出書類

労働保険名称・所在地等変更届

提出期限

移転日の翌日から起算して10日以内

その後、雇用保険の届出をします。

提出先

移転後の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)

提出書類

雇用保険事業主事業所各種変更届

提出期限

移転日の翌日から起算して10日以内

農林漁業や建設業といった「二元適用事業」の場合は、ハローワークにも「労働保険名称・所在地等変更届」を提出してください。

参考:適用事業所に関するQ&A|東京労働局

個人事業主は、引越し費用を経費にできる

引っ越し

個人事業主が仕事場の住所を変更する際、事業に関連する部分は、引越し費用も経費にできます。

事業に関連する引越し費用とは、以下のものが挙げられます。

住所変更パターン

経費にできる引越し費用

事務所の移転

全額

自宅兼事務所から専用の事務所へ移転

全額

自宅兼事務所から自宅兼事務所へ移転

事務所の割合だけ

自宅兼事務所から新しい自宅兼事務所へ移転する場合は要注意です。まず、全体の面積のうち、仕事場として使用する面積の割合だけを計上します。仕事場の面積が全体の20%なら、引越し費用の20%が経費になるでしょう。

一方、事業に関連しない引越し費用は経費にできません。例えば、純粋な自宅の引越し、
仕事に関係ない調度品やペットの移動費用などは経費にならないので注意しましょう。

個人事業主は経費をどこまで切れる?経費にできるものや上限・メリットなどぶっちゃけ紹介!

税務署への住所変更手続きで困ったら税理士に相談を

この記事では、個人事業主が住所を変更する際に必要な手続きを一部ご紹介しました。必要な手続きは多岐に渡りますが、税務署に対する手続きは税理士がアドバイスできます。

また、税理士であれば引っ越しの際に経費できる費用についてもご提案可能です。事業を円滑に進めるためにも、専門家への相談をぜひご検討ください。

個人事業主が住所変更する際のお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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