自己資金と資本金には明確な違いがあります。この違いを正確に理解することで、適切な事業運営が可能になります。この記事では、自己資本と資本金の基礎について解説します。また、自己資金として認められるお金・認められないお金についても理解を深めましょう。
目次
自己資金と資本金の違い
自己資金とは、企業や事業を始める際に経営者自身が用意する資金のことです。主に現金や預貯金、個人の資産(不動産や株式など)が該当します。
これに対して資本金は、法人を設立する際に登記上明記される金額であり、株主や投資家が出資したお金を指します。バランスシートにも記載され、企業の信用力や規模を表す指標となります。
自己資金の使い道は?
自己資金は個人の預貯金や退職金、資産売却で得たお金、贈与された返済義務のないお金など、個人の持ち物であるため、自由度の高い使い方をできるのが特徴です。
使い道は幅広いものの、一般的には会社の設立費用や運営・投資・研究開発などに使用されます。
資本金の使い道は?
資本金は、事業を開始してから利益が出るまでの運転資金として使われるものです。一般的に、事業開始から3ヵ月は利益が出なくても事業を継続できるだけの金額が目安とされます。
資本金の使い道は、製品開発や設備投資、マーケティング、人材採用など、多岐にわたります。資本金が多いほど企業としての安定性があるとみなされるため、社会的な信用度が上がります。金融機関・取引先への印象も良くなります。
自己資金として認められるお金
自己資金は個人の持ち物であるため、自由度の高い使い方ができると解説しました。では、実際にどのようなお金が自己資金として認められるのか、一つずつ確認していきましょう。
自分の預金通帳に貯めたお金
自己資金として一番にあげられるのは、自身の預金通帳に貯めたお金です。お金の流れがすべて預金通帳に記載されているため、事業に向けてコツコツお金を貯めた記録が残せます。計画的に準備してきたことが証明できるため、金融機関からの評価も高くなるでしょう。
返済義務がない贈与されたお金
親兄弟や祖父母、友人などから事業を開始するための資金援助を受けた場合、自己資金として認められるかは金融機関によって判断が分かれます。
しかし、贈与や援助を受ける理由や用途・お金の流れを明確にしておくことで、自己資金として認められる可能性が高まります。
親族からの援助は贈与税がかかる場合もあるため、受け取る金額には注意しましょう。
自身の退職金
退職金を元手に新たな事業を始める方も多いでしょう。退職金は源泉徴収などで証明することで、自己資金として認められます。退職金の一部は税制上の優遇措置が受けられる場合もあります。しかし、すべての退職金を事業に投入するのではなく、生活費や予備資金として一部を手元に残しておくことも、事業計画をするうえで重要です。
動産・不動産を売却して得たお金
自己資金には、土地や株式・不動産などの資産を売却して得たお金も含まれます。これらの資産を現金化することで、まとまった資金を調達でき事業の安定性も増します。
ただし、資産を売却することで税金が発生する場合もあるため、事前に資金計画を立てましょう。
みなし自己資金
みなし自己資金とは、事業を始めるためにすでに使った費用のことを指します。店舗や事務所の保証金・敷金、設備や備品などに使った金額は、みなし自己資金として認められやすいです。融資を受ける際、契約書や領収書などの提示が必要になる場合があるため、紛失しないようにしっかり保管しておきましょう。
第三者割当増資
すでに株式会社を運営している場合に、第三者に対して新たに株式を発行し資金を調達する方法です。企業の新規事業や設備投資、研究開発などに活用されることが多いのが特徴です。企業の資本力が強化されるため、投資家にとっても魅力的な投資先と印象づけることができます。
自己資金として認められないお金
自己資金として認められないお金の例として、銀行や金融機関からの借り入れ、投資家からの出資、補助金や助成金があげられます。これらのお金は資本金として判断されることが多いため、正確に区別できるように確認しましょう。
見せ金や証明できない資金
見せ金やタンス預金、出どころ不明の預貯金などは自己資金として認められません。
見せ金とは、実際には使われないが一時的に帳簿上や銀行口座に存在するように見せかけたお金のことです。融資を受ける際に信頼性を高めるために行われますが、逆に不正行為と判断される可能性もあります。
タンス預金や出どころ不明の預貯金など、お金の流れが説明できない場合も自己資金とは認められません。お金の流れは通帳に残しましょう。
返済義務のある借入金や人から借りたお金
金融機関から借入れた資金など、返済義務のあるお金は自己資金として認められません。親族や友人からの資金提供を受けた場合も、返済する必要がある場合は自己資金には当たらないため注意しましょう。
自己資金であることを証明する方法
自己資金としての出どころを証明するためには、通帳の原本と領収書が必要です。
通帳の写しの場合、データ改ざんや加工を疑われる可能性もあるため、原本であることが重要です。いつからどれくらいのペースでお金を貯めていたのかも確認してもらえるため、計画性などの高い評価につながるでしょう。
事業を始めるにあたって支払ったお金がある場合、その領収書を提出することでみなし自己資金として認められます。ただし、事業計画書に記載し且つ支払った費用に限られるため注意しましょう。
自己資金が足りない場合の対策
事業を開始または拡大する際、自己資金が不足している場合は以下の対策を検討しましょう。
銀行や信用金庫からの融資
事業計画を作成し金融機関に提出することで、必要な資金を調達できる可能性が高まります。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達
彼らは通常、新興企業や革新的な事業に対して資金を提供し、その見返りとして株式を取得します。
近年では、クラウドファンディングで多数の人から少額ずつ資金を集める方法も一般的です。
政府や自治体が提供する助成金や補助金を活用
返済不要であることが多く、とくにスタートアップや中小企業に対する支援が充実しています。
関連記事:新規事業を開業する資金の融資は自己資金なしでも受けられる?知っておきたいポイントを解説!
開業資金の調達は専門家に相談
自己資金と資本金の違いを理解することは、起業や事業運営をするうえでとても重要です。自己資金は個人が自由に使えるお金であり、資本金は事業を開始してから利益が出るまでの運転資金です。
自己資金が足りない場合は銀行融資やベンチャーキャピタル、クラウドファンディング、政府の助成金などの資金調達方法を模索する必要があります。
どの方法が良いかは、自身の事業計画や返済方法・期間によっても異なるため、コンサルタントや専門家への相談をすることをおすすめします。
会社設立における資金調達や融資に関するご相談も、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。