個人事業主として、業務でバイクを使用している方は多いのではないでしょうか。バイクは、購入した金額やその他の条件によって、経費を計上する方法が3パターンに分かれます。これら3つの計上パターンとその詳細、また減価償却やその他の経費など、バイクの経費に関する疑問点を網羅的に解説します。バイクの経費計上にお悩みの個人事業主の方は、本記事を参考にしてください。
目次
バイクは経費として計上できる?
業務用途でバイクを使用している場合、購入費用を経費として計上できます。ただし、個人的な目的(ツーリングで使用するため等)で購入した場合は、経費として認められないので注意してください。
経費として計上する方法は、バイクの購入金額等の条件によって以下の3パターンに分かれます。
条件 | 勘定科目 | 計上方法 |
購入金額が10万円以上 | 車両運搬具 | 減価償却 |
購入金額が10万円未満 | 消耗品費 | 一括計上 |
購入金額が10万円以上30万円未満 かつ 青色申告をしている | 車両運搬具 / 消耗品費 | 減価償却 / 一括計上 |
それぞれ詳しく解説します。
1.購入金額が10万円以上の場合は「減価償却」
購入金額が10万円以上のバイクは、資産として減価償却しましょう。
「減価償却」とは、長期間にわたって使用する資産の価値を分割して経費計上する方法です。資産は、購入した年だけでなく、その後も長期的に利益を生み出すため、その資産の耐用年数(使用できると見込まれる期間)にわたって経費を計上します。
減価償却は、このように税負担を分散できる一方で、計上処理(手続き)が複雑化することがデメリットと言えるでしょう。
具体的には、バイクの購入費用を一度に全額計上するのではなく、耐用年数にわたって少しずつ経費として計上します。バイクの法定耐用年数は「3年」と定められていますが、中古バイクの場合は「2年」です。
新車の場合
新しいバイク(法定耐用年数が3年)を購入した場合の減価償却の計算方法は以下の通りです。減価償却の計算方法は定額法と定率法がありますが、定額法で計算しています。
例)2021年8月に108万円の新車バイクを購入した場合
2021年度(8月~12月) | 15万300円(108万円×0.334×5/12) |
2022年度(1月~12月) | 36万720円(108万円×0.334×12/12) |
2023年度(1月~12月) | 36万720円(108万円×0.334×12/12) |
2024年度(1月~7月) | 20万8,259円(108万円ー87万1,740円ー1円) |
計上処理(仕訳)は以下の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | |
2021年8月 | 車両運搬具 | 108万円 | 現金 | 108万円 |
2021年度 | 減価償却費 | 15万300円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 15万300円 |
2022年度 | 減価償却費 | 36万720円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 36万720円 |
2023年度 | 減価償却費 | 36万720円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 36万720円 |
2024年7月 | 減価償却費 | 20万8,259円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 20万8,259円 |
中古車の場合
中古バイク(法定耐用年数が2年)を購入した場合の減価償却の計算方法は以下の通りです。
例)2021年8月に108万円の新車バイクを購入した場合
2021年度(8月~12月) | 22万5,000円(108万円×0.5×5/12) |
2022年度(1月~12月) | 54万円(108万円×0.5×12/12) |
2023年度(1月~12月) | 31万4,999円(108万円ー76万5,000円ー1円) |
※定額法で計算
計上処理(仕訳)は以下の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | |
2021年8月 | 車両運搬具 | 108万円 | 現金 | 108万円 |
2021年度 | 減価償却費 | 22万5,000円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 22万5,000円 |
2022年度 | 減価償却費 | 54万円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 54万円 |
2023年7月 | 減価償却費 | 31万4,999円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 31万4,999円 |
2.購入金額が10万円未満の場合は「一括計上」
1台あたりの購入金額が10万円未満のバイクは、消耗品として扱えるため、購入した年に一括で経費計上できます。減価償却のように、数年にわたって経費計上する必要がなく、処理が簡素に完結します。
計上処理(仕訳)は以下の通りです。
例)8万円のバイクを現金で購入した場合
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
消耗品費 | 8万円 | 現金 | 8万円 |
参考:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|国税
3.購入金額が10万円以上30万年未満の青色申告者は特例
青色申告者の場合、特例として、バイクの購入金額が10万円以上であっても、30万円未満であれば、減価償却だけでなく一括で経費計上することも可能です。
ただし、一括で計上する場合、経費にできるのは年間300万円までです。例えば20万円のバイクを購入する場合、15台まで(20万円 / 300万円 = 15台)であれば、同じ年に経費として一括計上できます。
参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
減価償却する場合
減価償却を選択した場合、計上処理(仕訳)は以下の通りです。
例)30万円の新車バイクを現金で購入した場合
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | |
購入時 | 車両運搬具 | 30万円 | 現金 | 30万円 |
1年目 | 減価償却費 | 10万円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 10万円 |
2年目 | 減価償却費 | 10万円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 10万円 |
3年目 | 減価償却費 | 9万9,999円 | 車両運搬具減価償却累計額 | 9万9,999円 |
一括計上する場合
一括計上を選択した場合、計上処理(仕訳)は以下が考えられます。
例)30万円のバイクを現金で購入した場合
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
消耗品費 | 30万円 | 現金 | 30万円 |
バイクに関連する必要経費
バイク関連の経費は、購入費以外にも、業務の遂行に直接関わる費用であれば、必要経費として計上できます。以下にいくつか例を挙げます。
項目 | 説明 |
自動車税 | バイクにかかる自動車税 |
自賠責保険料 | 法律で義務付けられている自賠責保険の保険料 |
任意保険料 | 任意で加入するバイクの保険料 |
ガソリン代 | 業務に使用するためのバイクの燃料費 |
オイル代 | バイクのエンジンオイル交換などにかかる費用 |
修理・メンテナンス代 | バイクの修理や定期的なメンテナンスにかかる費用 |
洗車代 | バイクの洗車にかかる費用 |
保管費用 | バイクを保管するためのガレージや倉庫の費用 |
防寒具・雨具費用 | 業務中の安全確保のために必要な防寒具や雨具の費用 |
付属品代 | 業務に必要なヘルメットなど付属品の費用 |
駐車場代 | バイクを駐車するための駐輪場の費用 |
リース料 | バイクをリースしている場合のリース費用 |
タイヤ交換費用 | バイクのタイヤ交換にかかる費用 |
バッテリー交換費用 | バイクのバッテリー交換にかかる費用 |
車検費用 | バイクの車検にかかる費用 |
ナビゲーションシステム費用 | 業務で使用するナビゲーションシステムの購入費用 |
通行料 | 高速道路や有料道路の通行料 |
これらを支払った証憑(領収書やレシート)は、しっかりと保管しておいてください。
バイクを経費にできるかお悩みの個人事業主の方はご相談を
バイクの経費計上に関するお悩みや疑問をお持ちの個人事業主の方は、専門家に相談することをおすすめめします。バイク関連の経費計上には、法的な要件や税務上の細かなルールがあり、正確な知識が必要です。
小谷野税理士法人では、バイクの減価償却や必要経費に関するご質問にお答えし、最適な経費計上方法をご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。