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デジタル課税とはどのような制度?制度内容やメリット・デメリットを解説

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外資系企業のイメージ

近年、導入が検討されているデジタル課税という制度がどのようなものなのかご存じでしょうか。本記事では、デジタル課税の制度内容や導入が検討される理由、導入によるメリットとデメリットについて解説しています。また、デジタル課税と共に検討されているグローバル・ミニマム課税の概要も併せて紹介しています。デジタル課税について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。

デジタル課税の制度内容

デジタル課税

デジタル課税とは、インターネットを媒介したサービスを提供することにより、多くの利益を得ている多国籍企業に対して課税する制度のことを指します。

この制度は、2021年に経済協力開発機構によってまとめられたしくみで、BEPS包摂的枠組加盟国の140ヵ国のうち136ヵ国もの国から賛同を得ています。この制度に賛同している国だけで、世界のGDPの90%を有しているのもポイントです。

デジタル課税しくみ

デジタル課税は、多くの利益を得ている多国籍企業に対して課税できる権利の一部分を、事業によって利益を得ている国に移す仕組みになっています。この仕組みでは、収益の10%を超える残余利益のうち25%分を提供するサービスを消費している国に対して分配します。

例えば売上が1,500万円、事業に必要な経費が600万円の場合、1,500万円-600万円で利益は900万円です。

残余利益は利益-売上×10%で求められるため、900万円-1,500万円×10%となり750万円であると分かります。

このうちの25%分は750万円×25%で求められるため、187万5,000円をサービスを消費している国に分配することになるのです。

この仕組みにより、多国籍企業の利益のうち1,250億米ドルを超える額がサービスを消費している国に再分配されると考えられています。再分配された利益は、その国のルールにより課税されることになっています。

参考:国際社会がデジタル時代の画期的な租税条約を締結|OECD

デジタル課税の導入が進められる理由

これまでは外国の企業が国外で事業を展開する場合、サービスを提供する国に事業の拠点を置いて活動するケースがほとんどでした。このように、サービスを提供する国に事業の拠点を置いているケースでは、事業の拠点がある国に法人税を納めなくてはなりません。

しかし、近年は固定の拠点を持たずにインターネットサービスによって利益を得ている企業が増えています。このような企業は、サービスを提供する国に拠点がないため、適切な納税がされないという点を多くの国が問題視しているのです。

現状では、サービスを提供する国に事業の拠点を持たない外国の企業に対して税金を課すことが難しい実情があります。企業側もこの点を利用して、税率の低い国に拠点を構え、インターネットサービスを世界に向けて提供することで租税回避を行っているのです。

このような租税回避の動きを止めて適切に納税させるため、BEPSというプロジェクトがOECDとG20によって立ち上げられたのです。

デジタル課税の対象となる企業

デジタル課税の対象となる企業は、Apple、Google、旧Facebook、Microsoft、Amazonといった大手のIT企業やその他の一般企業です。これらの大手IT企業を総称してGAFAM(ガーファム)と呼びます。GAFAMとはそれぞれの企業の頭文字を取って作られた呼称です。

具体的な対象となる基準は、世界全体の売上高が200億ユーロを超えており、利益率が10%を超えている企業となっています。対象企業は世界全体でおよそ100社です。この基準は、実際にデジタル課税が始まった後に順次見直される予定です。なお、見直し後の基準は100億ユーロと言われています。

デジタル課税のメリットとデメリット

グローバル企業のイメージ

デジタル課税を導入すると、法人税の税収が増加すると言われています。

すでに解説しましたが、デジタル課税では多くの利益を得ている多国籍企業の収益の10%を超える残余利益のうち、25%分を提供するサービスを消費している国に対して分配します。その後、分配された利益はその国のルールに従って課税されるため、結果として法人税の税収が増加すると考えられているのです。

私たちが暮らす日本の市場には、AmazonやAppleなど多くの多国籍企業が参入しています。日本ではこのような多国籍企業のサービスを多く利用しているため、デジタル課税が導入されれば利益が分配されることになります。分配された利益は日本の法人税の決まりに沿って課税されるため、法人税収が上がり財政状態が回復するのではと期待されています。

デジタル課税により税収が上がる点は、デジタル課税導入の大きなメリットと言えるでしょう。

一方、企業側では情報管理がより重要になるのではないかという点が懸念されています。日本にもデジタル課税の対象となる多国籍企業は存在しており、デジタル課税が開始されると利益がどの国で発生したのか、最終的な消費はどこで行われたのかといった情報の提供が求められます。また、デジタル課税の対象とならない場合でも、対象企業と取引を行っている場合は消費者の情報提供を求められる可能性もあります。

企業側は情報提供を行ったり、情報を求められたりした場合にすみやかに対処できるよう、これまで以上に情報管理を徹底する必要があります。その点においてはデジタル課税導入のデメリットと言えるでしょう。

デジタル課税と共に検討されているグローバル・ミニマム課税とは

外資系企業で働く人のイメージ

デジタル課税について調べていると、グローバル・ミニマム課税というワードを目にする機会が多くあります。このグローバル・ミニマム課税もデジタル課税と同様にOECDとG20によるBEPSというプロジェクトで合意を得た新たな制度です。

グローバル・ミニマム課税では、対象の企業に対して最低15%の法人税を課すことになります。企業の子会社を法人税率が低い国に置いている場合は、親会社に対して最低税率の15%と実際に負担している税率の差を上乗せした税金を納めなくてはなりません。

この制度が実施されれば、世界全体で1,500億米ドルの税収が得られると言われています。グローバル・ミニマム課税の対象となるのは、1年間の収入が7.5億ユーロ以上の多国籍企業です。

参考:国際社会がデジタル時代の画期的な租税条約を締結|OECD

参考:6 グローバル・ミニマム課税への対応|国税庁

デジタル課税の制度内容や導入による影響を理解しよう

デジタル課税が導入されると、これまで税率の低い国に拠点を構え、インターネットを媒介したサービスを世界に向けて提供することで租税回避を行っていた多国籍企業に対して適切な税を課せられるようになります。

この制度により日本でも法人税の税収が上がることが期待されており、多国籍企業の利益のうち1,250億米ドルを超える額がサービスを消費している国に再分配される予定です。

デジタル課税の導入はまだ行われていませんが、現在、2025年の開始に向けて準備が進められているため今後の動向にも注目しましょう。

関連記事:【税理士監修】税金の種類とは?日本の税制一覧と今後の課題・国際比較も解説

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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