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医療法人の社団と財団とは?選び方や組織の違いなどについて解説

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医療法人の社団と財団とは?選び方や組織の違いなどについて解説

医療法人には「社団」と「財団」の2種類があります。社団は人の集まり、財団は財産の集まりであるという点は他の法人と同じです。しかし、医療法人の場合はそれ以外にも様々な違いがあります。そこで今回の記事では、運転資金や組織などの詳しい違いについて解説します。将来法人化を視野に入れている医療従事者の方はぜひ参考にしてください。

病院と診療所の違い

病院の病床

最初に病院と診療所の違いについて解説します。

医療法によって医療行為を行う施設は、「病院」と「診療所」に分類されています。それぞれの違いは下記の通りです。

医療法の名称

病院

診療所

開業時の手続き

都道府県知事の認可が必要

各種届出のみ

入院患者のベッド数

20床以上

病床を有さないもの

又は19床以下

分院の設立

できる(法人)

できない(個人事業主)

入院患者のベッド数が20床以上の医療施設は病院に分類されます。そのため、開設する際には診療所よりも厳しい審査や基準に合格する必要があります。また開設後の手続きも煩雑です。

入院患者のベッド数が19床以下の医療施設は、診療所に分類されます。病院に比べ、開業時の手続きや条件などのハードルが低いことがメリットですが、分院の設立はできません。しかし、法人化すれば分院の設立が可能です。そのため、いずれ他の場所にも開設したいと考えている場合は法人化が必須です。

ちなみに、「医院」や「クリニック」という名称は、医療法でいう診療所のことです。地域密着型の経営を行っていることが多いため、より親しみやすさを感じられる名称を使っています。機能や条件などは診療所と同じです。

なお、診療所は「病院」という名称は使うことができないので注意が必要です。

参考:医療法第1条の5第1項|e-GOV

参考:医療法第1条の5第2項|e-GOV

参考:医療施設の類型|厚生労働省

社団と財団の違い

医療従事者のチーム

医療法人はさらに「社団医療法人」と「財団医療法人」の2種類に分類されます。大まかな違いは一般的な法人と似ています。

社団医療法人とは、同じ目的の「人」が集まって設立される医療法人のことです。一方、財団医療法人とは無償で寄附する「財産」に基づいて設立される医療法人のことです。

参考:医療法人の基礎知識|厚生労働省

社団と財団どちらを選ぶ?

医療法人を設立する際に、社団と財団のどちらにするのか決める必要があります。結論から言うと、社団医療法人が一般的です。

2023年(令和5年)3月時点での、社団医療法人と財団医療法人の数は下記の通りです。

  • 社団医療法人:57,643法人
  • 財団医療法人:362法人

このように、医療法人のほとんどは社団医療法人で占められています。

社団医療法人に比べて財団医療法人が極端に少ないのは、開設するための負担が大きいことが原因です。医療施設を開設するためには土地や不動産、人材、それに数多くの医療機器などが必要です。しかし財団医療法人の場合、こういった多額の運営資金を無償の寄附からまかなわなければなりません。

さらに、これらは「寄附」であるため返還義務がありません。そのため、社団医療法人は年々増加しているのに対し、財団医療法人は30年前から変わっていないのです。

これから病院を開設するという方も、社団医療法人が一般的な選択肢といえるでしょう。

社団医療法人の運転資金は?

株式会社における資本金のように、社団医療法人も設立時には運営資金を準備する必要があります。

自己資金や拠出者から調達するこれらのお金は基金と呼ばれます。基金は医療法によって返還義務が定められています。その点が寄附によって賄われる財団とは異なります。

社団医療法人を新たに開設する際は、2ヵ月以上の運転資金を有している必要があります。

参考:医療法施行規則第30条の37及び第30条の38|e-GOV

参考:平成19年医政発第0330049号|厚生労働省

組織の違い

医療チームのイメージ

ここでは社団医療法人と財団医療法人の組織の違いについて解説します。詳しくは下段で紹介しますが、大きく分けると下記の通りです。

組織

社団医療法人

財団医療法人

議決機関

社員総会

評議員会

業務執行機関

理事会

理事会

監査機関

監事

監事

組織を構成する機関は似ていますが、設立の際に必要な人数や注意点などがそれぞれ異なります。

参考:医療法第46条の2第1項|e-GOV

社団医療法人

社団医療法人は株式会社と仕組みが似ており、社員総会、理事会、監事という3つの機関によって成り立っています。

社員総会

社員総会は社員で構成される社団医療法人の最高意思決定機関です。

ただし、医療法人における社員は株式会社の従業員とは役割が異なります。株主に近く、重要な内容を決議する権限を持っています。また理事を兼務することもできます。設立の際には3名以上必要です。

理事会

理事会は主に業務執行の決定を行う機関です。

具体的な業務内容は各社団医療法人の定款によって異なりますが、事業計画や予算案、決算などの決定を行うことが一般的です。

監事

監事はその監視役です。そのため、社員や理事を兼ねることが医療法で禁止されています。

設立時に最低1名必要です。よって社団医療法人を設立する際に必要な人数は、社員を理事が兼ねる場合は合計4名です。

参考:医療法第46条の3第1項、第2項|e-GOV

参考:医療法第46条の5第8項|e-GOV

財団医療法人

財団医療法人は、評議員会、理事会、そして監事という3つの機関によって成り立っています。

評議会

評議員会とは、財団医療法人の最高意思決定機関です。主に、事業計画や決算などの審議や決定を行っています。また、理事長の諮問機関でもあります。設立時に4名必要です。

理事会

理事会とは、財団医療法人において実質的な運営を行う機関です。社団医療法人とは異なり、評議員と理事の兼務はできません。設立時に3名必要です。

監事

監事は、社団医療法人と同じく監視役です。設立時には1名必要です。財団医療法人は各業務を兼務できないため、設立時には最低でも8名必要です。

医療法人の「持分」とは?

国や自治体における医療法人の情報で、「持分あり」「持分なし」という言葉をよく見かけることが多いと思います。医療法人における「持分」とは、主に財産権の有無のことを指します。

「持分あり」の場合、出資者は引退や解散などの際に財産の返還を受けられます。

一方、「持分なし」の場合は、解散などの際に財産の返還を受け取ることができません。これらの財産はすべて国のものになります。

現在、社団医療法人も財団医療法人もどちらも「持分なし」に定められています。2007年(平成19年)4月1日の医療法改正によって変わりました。そのため、現在は持分ありの医療法人の設立はできません。

参考:平成19年医政発第0330049号|厚生労働省

プロの税理士へのご相談もおすすめ

医療法人を設立する際、大半の方は社団医療法人を選ぶことが一般的です。財団医療法人に比べて、設立時に必要となる運転資金や人数などの負担が少ないためです。

ですが、ある程度負担を抑えられるとはいえ、医療法人化にはやはり煩雑な手続きが必要です。また、会社の法人化とは異なり、医療法人化は県知事の許可が必要なため年に1~2回とタイミングが決められています。

そのため医療法人を設立する際には、できるだけ税理士へ依頼することをおすすめします。

特に今後分院や事業承継なども予定している方は、長くつきあっていける税理士を探しておくことで手続きがスムーズになります。

小谷野税理士法人でも、医療法人の手続きが可能です。ぜひ気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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