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会社設立の基礎知識

中小企業向け賃上げ税制における「教育訓練費」は?範囲や上乗せ要件を解説

公開日:

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

賃上げ促進税制は、税制改正により税額控除率が増加され、従来に比べ適用要件も拡充されました。特に中小企業向け賃上げ税制では、上乗せ要件を満たすことで最大45%(令和6年時点)という高い控除率の適用を受けられます。そこでここでは、賃上げ税制の上乗せ措置のうち、特に教育訓練費に着目し、その範囲や要件を分かりやすく解説します。

教育訓練費の上乗せについて

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

賃上げ税制には、制度を適用するために通常要件と2つの上乗せ要件が設定されています。上乗せ要件に該当すると、賃上げ税制の税額控除率がさらに増加します。

その上乗せ要件のうち1つが、教育訓練費増加要件です。中小企業向け賃上げ税制の教育訓練費増加要件は、「教育訓練費の金額が前の事業年度と比較して5%以上増加していること」です。

要件を満たすと、税額控除率を10%上乗せ可能です。そこへ、通常要件ともう1つの上乗せ要件を加えれば、最大45%の税額控除を受けられます。

ただし、税額控除の金額は法人税額、もしくは所得税額の20%が上限とされているため注意が必要です。

参考:「賃上げ促進税制」パンフレット(暫定版)

賃上げ税制における教育訓練費の対象

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

中小企業向け賃上げ税制においては、教育訓練費の対象を法人、または個人の国内雇用者と定めています。

そのため、次のリストに該当する場合は国内雇用者ではないと見なされ、対象からはずれます。

【教育訓練費の対象外】

  1. その法人の役員、または個人事業主
  2. 従業員と兼任している役員
  3. その法人の役員、また個人事業主と特別な関係にある人物
  4. 内定者など入社する予定がある人物

「特別な関係にある人物」には、次のようなケースが該当します。

【役員・個人事業主と特別な関係にある人物】

  1. 役員の親族
  2. 実質的に結婚しているのと同じ状況にある人物
  3. 役員から生活費の援助を受けている人物
  4. ②または③と生計を共にしている親族

また、国内雇用者とは、「国内の事業所で作成された賃金台帳に記載されている人物」を指します。

長期間の海外出張などを行っていたとしても、その期間に国内の賃金台帳に名前が記載されており、給与が支払われていれば国内雇用者と見なされます。

参考:賃上げ促進税制 – 中小企業庁

賃上げ税制における教育訓練費の範囲

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

賃上げ税制における教育訓練費の範囲には明確な規定があります。

税額控除を適切に受けるためにも、事前に範囲をしっかりと把握した上で教育訓練を行いましょう。

会社自らが教育訓練を行う場合の費用

賃上げ税制の上乗せ要件では、会社自らが執り行う教育訓練の場合、次のような費用がその範囲です。

①法人などが国内の従業員に対し、外部から講師や指導員を招いて、講義や指導を実施するための費用
このときの外部講師は、教育訓練を行う会社の役員や従業員以外でなくてはなりません。また、外部講師と契約し、教育訓練を継続的に行う場合は、その費用も該当します。

②外部講師に支払う報酬・料金・謝礼金などの費用
教育訓練のため会社が負担した外部講師の交通費・旅費・宿泊費・食費なども該当します。

③法人などが国内の従業員に対し、施設や設備などを借りて教育訓練を自ら実施するための費用
その法人の子会社や関連会社など、グループ企業が所有する施設や設備を借りる場合も含まれます。
また、通常は施設や設備を生産・製造といった企業活動に用いていたとしても、教育訓練のために借りた場合は費用の対象とされます。

④施設や備品、コンテンツなどを借りたり使ったりするための費用
使用料・利用料・賃借料・レンタル料・リース料など、施設や備品を借りたり使ったりする際に支払われるものを指します。
また、これらは実際の使用期間ではなく、契約期間でも費用として認められます。

⑤教育訓練などの計画や内容を作成するため、外部の専門家に依頼する費用
教育訓練は事前に計画を立てたり、訓練内容を固める必要があります。外部の専門家に依頼する際には、その際の依頼費用が教育訓練費用の範囲として該当します。

外部に委託し教育訓練を実施させる場合の費用

賃上げ税制の上乗せ要件において、企業や会社の外部に教育訓練の実施を委託する場合は、研修委託費として次のような費用がその範囲に入ります。

①法人などが国内雇用者に対し、必要な技術や知識を習得・向上させるため、ほかの機関に教育訓練の実施を委託する費用
ほかの機関とは、民間の教育会社・公共職業訓練機関・商工会議所といった、教育訓練をビジネスとして行っている外部の業者などを指します。
また、教育訓練を行うその法人の子会社や関連会社など、グループ企業の業者も含まれます。

②教育訓練などのため、ほかの機関に払う講師の人件費、施設を使った料金などの委託費用
教育訓練のためなどを目的として、ほかの機関に講師に依頼したり、施設をつかったりすることがあります。その際の人件費や利用費などは教育訓練費に該当します。

参考:賃上げ促進税制 – 中小企業庁

外部が行う教育訓練に参加させる場合の費用

会社の外部が行う教育訓練に従業員を参加させる場合、賃上げ税制の上乗せ要件には次のような範囲の費用が認められます。

①法人などが国内雇用者に対し、必要な技術や知識を習得・向上させるため、他社の実施する教育訓練にその雇用者を参加させる費用
この場合の教育訓練は、例えば研修講座・講習会・研修セミナー・技術指導などが該当します。
また、従業員が費用の一部を負担する場合、会社の教育訓練費からその分を差し引きます。

②ほかの機関が実施する教育訓練の授業料・受講料・受験手数料などの費用

教育訓練には通信教育も含まれており、資格試験や検定試験が行われる場合は、受験手数料も費用として認められます。
会社や企業が従業員を国内外の大学院コースなどに参加させる場合は、授業料や教科書代を教育訓練費として扱えます。
ただし、所得税法上、学資金など給与に該当するものは費用から除外されます。

賃上げ税制が適用されない教育訓練費

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

教育訓練費の増加要件では、適用される費用と適用されない費用が明確に分けられています。

賃上げ税制を利用する場合には、上乗せ要件の教育訓練費として認められる費用とともに、認められない費用も確認しておきましょう。

適用外の費用は次の通りです。

  1. 法人などがその従業員や役員に支払う教育訓練中の人件費や報奨金など
  2. 教育訓練などに関わる交通費・旅費・宿泊費・居住費・食事費用
  3. 福利厚生など、実際には教育訓練ではないものを目的として実施した場合の費用
  4. その法人の施設を利用した場合の光熱費や管理費といった費用
  5. その法人の施設の取得にかかる費用
  6. 教材の購入や製作にかかる費用
  7. 教育訓練に直接関わっていない大学などへの寄付金や保険料

⑤の施設の取得にかかる費用は、減価償却費も含めて対象外です。

⑥の教材の購入や製作にかかる費用には、ソフトウェアコンテンツの開発費も含まれており、いずれも教育訓練費の対象ではありません。

教育訓練費の明細書を作成・保存する際に必要な記載事項

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

教育訓練費の明細書は、税務申告の際に添付こそ不要ですが、作成・保存が義務づけられています。

記載事項については次の4点が必要です。

  1. 実施した年月(日は任意)
  2. テーマなど内容と実施期間
  3. 受講者の氏名
  4. 費用の支払証明

上記が記載されていれば明細書の書き方は自由です。

②の実施期間は「3日間」や「1週間」など日数を記載します。

④の支払証明は、金額と費用を払った年月日とその内容、相手先の氏名・名称が明記された領収書の写しなどを指します。

教育訓練費の賃上げ税制には税理士のアドバイスが分かりやすい!

教育訓練費の上乗せ要件を含め、賃上げ税制のシステムは複雑で、内容を読んでもすぐには頭に入ってこない場合もあることでしょう。

また、近年、賃上げ税制は改正が重ねられているため、適切に節税を行うためには最新の情報を正しく取得しておく必要があります。

こうしたことから、賃上げ税制の適用を考えているのであれば、税制などに詳しい税理士にまず相談することをおすすめします。

私ども小谷野税理士法人では、法人向けの会計や税務について、相談から代行サービスまでを一貫して承っています。

中小企業向け賃上げ税制を始め、さまざまな税の悩みへと真摯に対応し、アドバイスさせていただきます。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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