貯蓄型保険に加入すると、1年間に支払った保険料から計算された金額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税を節税できます。また、満期時に受け取る保険金は一時所得として取り扱われ、一時所得には特別控除が適用されるため、保険金受け取りにも税負担が軽減されます。本記事では、貯蓄型保険の税金対策について詳しく解説をしていきます。
目次
貯蓄型保険の種類と特徴
貯蓄型保険は、将来の資産形成をサポートしながら税金対策もできる保険商品です。主要な貯蓄型保険の種類によって特徴や税務上のメリットが異なります。どの貯蓄型保険が適しているのか理解を深めましょう。
死亡保険(終身保険)
終身保険は被保険者が死亡したときに死亡保険金が支払われる保険です。亡くなるまで一生涯保障を受けられるため、終身保険とも呼ばれています。契約時に保険料が固定され、保障期間が一生涯続くため満期保険金はありません。しかし解約返戻金があり、解約時には一定の金額が戻ってきます。
生命保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の控除が受けられます。さらに相続時には相続税の非課税枠が適用されます。
養老保険
養老保険は、満期時に被保険者が生存していた場合には満期保険金が支払われ、保険期間中に被保険者が亡くなった場合には死亡保険金が支払われる保険です。
この保険は資産形成と保障が一体となっているのが特徴です。満期時には貯蓄としての資金を得られる一方、万一の際には死亡保障によって金銭面で家族をサポートします。
養老保険に関しても、契約期間中に支払った保険料は生命保険料控除の対象です。満期保険金を受け取る際には一時所得として課税されますが、50万円の特別控除が適用されるため税負担も軽減されます。
学資保険
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に積み立てるための保険商品です。まとまったお金が必要になるタイミングで給付金を受け取り、教育費として活用できます。
保険契約者兼被保険者である親が死亡したり高度障害状態となったりした場合には、以降の保険料の払込みが免除されます。また、予定通り教育資金や満期保険金を受け取れるのが特徴です。
学資保険料は生命保険料控除の対象となり、教育費としての支出は非課税となります。
個人年金保険
個人年金保険は、老後の生活資金を確保するための貯蓄型保険です。払込んだ保険料は保険会社によって運用されます。金融の知識がない場合でも、大きなリスクを取らずに老後の生活費用を確保できます。
受取方法は一時金や年金などライフスタイルに合わせて選択可能です。
払込んだ保険料は、個人年金保険料控除が適用されるため所得控除が受けられます。
本人が年金として受け取る場合は雑所得として扱われます。年金受取開始後に年金受取人が亡くなった場合は相続税、保険料負担者ではない配偶者や子どもが取得した年金受給権は贈与税の対象になります。
変額保険
変額保険は投資性の高さが特徴で、運用実績に応じて死亡保険金や解約返戻金の受取額が変動する保険です。投資信託のように運用しながら保障を受けたい方に適しています。運用成果によって支払額が変わるため、高いリターンを期待できる一方でリスクも伴います。
払込んだ保険料は生命保険料控除の対象です。死亡保険金や解約返戻金を受け取る際には一時所得として課税対象となりますが、一定の特別控除があります。
貯蓄型保険の満期保険金に税金はかかる?
貯蓄型保険を受け取る際は、主に所得税・住民税・相続税が関与します。しかし、満期保険金を受け取った際にどの税金が発生するかは契約者や契約内容、被保険者、受取人によって異なります。
それぞれの税金について見ていきましょう。
契約者・被保険者・受取人とは?
保険契約において、契約者・被保険者・受取人それぞれ対象となる税金の種類は異なります。
契約者
保険契約を締結し、保険料を支払う人物です。契約者が支払う年間で支払う保険料は控除対象になります。
被保険者
保険の対象となる人物であり、保険内容に該当する状況となった場合に保険金が支払われます。
受取人
保険金や満期保険金を受け取る人物です。相続税や贈与税などの対象となります。
養老保険・学資保険の満期保険金にかかる税金
養老保険の満期保険金は、誰が受け取るかによって税金の種類が異なります。
契約者が自分で満期保険金を受け取る場合は所得税と住民税、本人以外が受け取る場合は贈与税の対象になります。
学資保険の場合、契約者と教育資金の受取人が同一人物であれば、所得税と住民税の課税対象となります。子ども自身や母親が教育資金を受け取る場合は、贈与税の対象です。
契約者が死亡もしくは高度障害状態となった場合に支払われる教育資金や満期保険金は、相続税の課税対象となります。
保険期間5年以内は源泉分離課税の対象
養老保険や学資保険の保険期間が5年以内の場合、満期保険金は源泉分離課税の対象です。20.315%の課税となり、税金が差し引かれた金額が保険金として振り込まれます。これによって確定申告の手間が省けます。
個人年金保険の場合
個人年金保険に対する税金の取り扱いは、契約者と受取人の関係によって異なります。契約者と受取人が同一人物の場合、受け取る年金は雑所得として課税されます。
一方、契約者と受取人が異なる場合や受取人が死亡保険金を受け取る場合には、所得税や相続税の対象となります。
契約者と受取人が同じ場合
契約者と受取人が同じ場合、個人年金保険金は雑所得として申告します。しかし、一括で受け取る場合は一時所得に該当します。
年金の受け取りが開始される年から、その年の総所得金額に加算されます。所得に応じた税金が発生するため、確定申告が必要です。保険金が高額となる場合は、課税所得が増えるため注意が必要です。
契約者と受取人が異なる場合
受取人が生存している場合、初年度は贈与税の対象となり、2年目以降は所得税の対象となります。受取開始後に受取人が亡くなった場合は受取人が変更され、相続税の対象となります。こちらも2年目以降は所得税の対象となります。
「年金受給権の評価額」を含めた贈与税が110万円を超える場合、贈与税の申告が必要です。
所得税とは?
所得税は、個人が得た所得に対して課される税金です。払込期間中に支払った保険料と受け取った保険金との差額が所得税の対象となります。
満期保険金の所得が20万円超なら確定申告が必要
貯蓄型保険の満期保険金を受け取る際、所得が20万円を超えると確定申告が必要です。他の所得と合算して計算します。
一時所得
満期保険金や解約返戻金などを一括で受け取ると、一時所得に分類されます。
一時所得の計算式は以下の通りです。
一時所得の課税価格=総収入金額(一時金)ー必要経費(払込んだ保険料)ー特別控除(50万円) |
上記の計算式で算出した一時所得の半分が課税対象となります。計算が少し複雑なので、注意しましょう。
雑所得
満期保険金等を年金として受け取る場合は、雑所得として扱われます。この際、受け取った年金の全額がその年の所得に含まれ、他の所得と合算して総合課税の対象となります。
総合課税の対象となる場合、所得税率は他の所得と合計した金額に基づいて決定される累進課税が適用されます。
関連記事:【節税の基礎知識】所得税や消費税の節税方法やポイントを紹介!
契約形態によって変わる課税対象額の計算方法
契約者と受取人が同一であれば所得税が課されますが、異なる場合には贈与税や相続税が適用されることがあります。
以下より課税対象額の計算方法と税対策のポイントを紹介します。
契約者と受取人が同じ場合(一時所得)
契約者が保険料を払い込んでその保険金を自分で受け取る場合、一時所得として扱われます。
例えば、契約者Aさんが毎年10万円の保険料を10年間払い込み、合計100万円を支払ったとします。この場合、満期保険金額が200万円とすると、一時所得の対象となる金額は以下の計算で求められます。
一時所得 = (受取保険金額 – 支払保険料総額 – 50万円) /÷2 |
具体的には、(200万円 – 100万円 – 50万円) ÷2 = 25万円
また、一時所得には他の所得と合わせた総合課税が適用されるため、その点も考慮する必要があります。
契約者と受取人が異なる場合(贈与税)
契約者と受取人が異なる場合には、贈与税が課されます。この場合、保険金は受取人への贈与とみなされるため、贈与税の計算が必要です。
契約者Bさんが年間20万円を5年間払い込み、合計100万円の保険料を支払ったとします。受取人Cさんが受け取る保険金額が300万円の場合、贈与税の計算は次の通りです。
贈与税 = 受取保険金額 – 基礎控除額(110万円) |
具体的には、300万円 – 110万円 = 190万円
この190万円が贈与税の課税対象となります。
贈与税の税率は一律ではなく、課税額に応じて10%から55%の範囲で異なる税率が適用されるため注意が必要です。
また、贈与があった年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を税務署に提出し、納税する必要があります。
貯蓄型保険の解約返戻金にかかる税金は?
貯蓄型保険を解約した際に受け取る解約返戻金が、それまでに払込んだ保険料合計額よりも多かった場合には、その差益に対して所得税がかかります。
解約返戻金300万円で払込保険料が合計240万円だった場合、以下の計算式で所得税を求めます。
一時所得の金額=300万円ー240万円ー50万円=10万円 |
一時所得はその金額の2分の1を他の所得と合算して総合課税されるため、上記の課税対象額は10万円の2分の1で5万円となります。
所得税率は他の所得によって変わりますが、20%だと仮定すると解約返戻金に対する所得税は1万円です。
解約返戻金が払込保険料の合計よりも少なかった場合や差益が50万円以下だった場合、税金はかかりません。
関連記事:保険は節税になる?ならない?賢い選択で節約しながらリスク管理をしよう
まとめ
貯蓄型保険は、貯蓄と保障のどちらも受けられる汎用性の高い保険商品です。しかし、契約者・被保険者・受取人が誰かによって課税対象となる税金の種類が異なります。
節税効果を最大化するためには、保険契約の内容や受取人の設定、保険商品の組み合わせなどを考慮する必要があります。
「小谷野税理士法人」では、お客様一人一人のライフプランに合わせて、適切な税務サポートをご提供します。ぜひご相談ください。