1日単位など短期間のみ働ける単発バイトは、その手軽さもあって人気なアルバイトです。単発バイトを利用すれば、より多様な働き方が実現します。その一方で、気になるのが確定申告ではないでしょうか。そこで、この記事ではそもそも単発バイトには確定申告が必要なのかどうか、また、必要な場合の申告書の書き方などをここでは説明します。
目次
そもそも単発バイトとは?短期や派遣との違い
アルバイトの業務形態には単発バイト・短期バイト・派遣などの種類があります。それぞれアルバイト期間や給与の支払い方法などが異なるため、まずは違いを把握しておきましょう。
単発バイトの特徴
単発バイトは短くて1日、長くても1週間ほどで終わるアルバイトを指します。業務が完了もしくはあらかじめ定められていた契約期間に達したら、そこでアルバイト期間も終わります。
また、単発バイトの場合は、企業や会社が直接雇用をします。働く側からすると、単発バイトは1日のみや半日のみでも働くことができるため、スケジュール調整がしやすいという特徴があります。そのため、学生や主婦も時間の隙間を利用して働けます。
求人の募集側からすると、ピンポイントで人員を投入できるなど、特にイベントを始めとした急募での人員確保には便利な業務形態です。
短期バイトの特徴
単発バイトと短期バイトは業務形態が似通っており、現在のところ両者に明確な違いは定義されていません。しかし、短期バイトの場合は数日から3ヵ月程度と、単発バイトより長いアルバイト期間であることが一般的です。
また、アルバイト期間にもよりますが、多くの場合、短期バイトも単発バイト同様に企業や会社が自ら求人募集を行い、直接雇用しています。
派遣の特徴
単発バイトや短期バイトが企業や会社からの直接雇用であるのに対し、派遣は派遣会社を通じた間接雇用です。
一般的に派遣会社のサイトなどに登録することで、派遣先を選んだり、紹介されたりするマッチングが行われます。
勤務場所や仕事内容は企業や会社が決定していても、給与は派遣会社から受け取ります。
また、派遣は労働者派遣法により業務期間が法的に定められています。派遣の場合、アルバイト期間は単発バイトや短期バイトより長く、31日以上が原則です。
単発バイトのような1日だけの日雇い労働や、契約が30日以内の短期バイトは禁止されています。
ただし、労働者派遣法は間接雇用を行う派遣にのみ適用されるため、単発バイトや短期バイトのように企業や会社の直接雇用での労働であれば、30日以内のアルバイトに何ら問題はありません。
さらには、直接雇用による単発バイトや短期バイトはアルバイト期間に制限ありませんが、派遣は労働者派遣法により派遣期間に制限が設けられています。
そのため、同じ派遣先の同じ組織で業務に就ける期間は、3年までと制限されています。派遣期間が終わってからも同じ派遣先で働くためには、派遣から直接雇用での正規雇用としての登用が必要です。
単発バイトの確定申告は契約形態で違いがある
単発バイトの確定申告を行う際には、契約形態や所得の違いなどを把握しておきましょう。それぞれの違いを把握しておくことで、確定申告書への記入をスムーズに行えます。
雇用契約と業務委託契約の違いとは?
求人への応募と面接を経て、アルバイトする側と企業や会社の間では契約が交わされます。その際の契約形態は、雇用契約と業務委託契約とに分けられます。
雇用契約は法律で定義されており、労働基準法では雇用主は従業員に対し、社会保険や労働保険などによる保護を義務づけています。
一方の業務委託契約は、企業などが自社では対応できない業務を、フリーランスなどの個人に委託するための契約です。
業務委託契約は雇用契約とは異なり、法律で定義されているものではなく、請負契約・委任契約・準委任契約の3つをまとめた総称です。
請負契約は、企業や会社からの依頼を受け、完成品を納めることを約束する契約です。完成品は成果物とも呼ばれ、業務の種類や内容によりさまざまなものが該当します。
例えば、デザイナーであればデザイン、建築工事であれば建築物が成果物です。
対して、委任契約は法律行為を委託するもので、業務の遂行や過程に対して報酬が支払われます。
そして準委任契約は、法律行為以外の委託を依頼するものであり、成果物が存在しない場合など、委任契約よりも広い範囲を対象としているのが特徴です。
給与所得と事業所得と雑所得の違い
確定申告する際には、種類ごとに分かれた区分にそれぞれの所得を記入しなくてはなりません。
所得の種類は全部で10種類あり、単発バイトが確定申告する場合は、給与所得・事業所得・雑所得に該当します。
単発バイトが雇用契約であれば、企業や会社から給与が支払われます。その場合は給与所得を確定申告書に記入する必要があります。
事業所得は開業している個人事業主などが、業務委託契約で単発バイトなどを行った際に申告する所得区分です。
ただし、個人事業主であっても雇用契約で単発バイトをした場合は、事業所得に加えて給与所得を確定申告書に記入しなくてはなりません。
フリーランスや副業での単発バイトは、業務委託契約であれば雑所得として確定申告します。ただし、雇用契約による単発バイトであった場合、雑所得とともに給与所得も記入し確定申告します。
年収と所得の違い
ここまで給与所得・事業所得・雑所得所得などの所得について説明してきましたが、所得と年収は異なることについても明確にしておかなくてはなりません。
まず、確定申告書などで単に収入と書かれている場合には年収を指します。年収とは1年間の収入のことであり、給与や報酬から社会保険料・税金などが差し引かれる前の金額を指します。
一方の所得とは収入から経費を差し引いた額を言います。確定申告では、この所得にかかる所得税の申告を行います。
所得税と住民税の違い
単発バイトで得た所得には、所得税や住民税が課せられます。
所得は前述した通り、1年間に得た所得にかかる税金で、国に納める国税であるために税務署が管轄しています。
一方の住民税は地方税であり、都道府県や市町村などの地方自治体に納めます。
雇用契約の単発バイトで確定申告の必要性を判断する基準
単発バイトが雇用契約の場合、確定申告の必要があるかどうかを判断できる目安を説明します。年収の金額と源泉徴収がその判断の基準です。
不要:年収103万円以下
確定申告は原則的には必要な手続きですが、年収103万円以下であれば申告は不要です。
収入に対しては、一定の金額を差し引くことで税金の負担を軽くする控除という制度が設けられています。
単発バイトを雇用契約で行った場合には、その年収に給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円の合計103万円の控除が適用されます。
給与所得控除は給与に対する控除です。また、基礎控除とは所得2,400万円以下の納税者のすべてに適用される控除です。
年収が103万円以下の場合、この2つの控除を差し引いた後には0円となり、確定申告そのものが必要ありません。
ただし、年収が103万円以下でも源泉徴収が行われているのであれば、確定申告によって還付を受けられる可能性があります。
源泉徴収とは、企業や会社が給与から税金や保険料などを天引きし、納税者に代わって納付する仕組みを言います。還付とは、本来の税金よりも多い額を徴収した際、納税者にその分を返金することです。
必要:年収103万円超×源泉徴収なしのケース
年収が103万円を超えていて、源泉徴収が行われていない場合には確定申告が必要です。
単発バイトの場合、日給9,300円未満であれば源泉徴収は不要です。企業や会社から源泉徴収をされていない場合、納税者本人が確定申告によって所得税の申告と納税を行わなければなりません。
また、確定申告により医療費や保険料に控除の適用される可能性もあります。節税につなげられる可能性があるため確定申告しましょう。
必要:年収103万円超×複数の勤務先から源泉徴収があるケース
短期バイトの日給が9,300円以上の場合、企業や会社では源泉徴収が行われます。
年末調整が行われた場合、企業や会社が給与に対する税金を精算をするため、納税者による確定申告は不要です。
しかし、年収が103万円を超えていて、複数の勤務先からの源泉徴収票が2枚以上ある場合は確定申告を行いましょう。それぞれの勤務先での納税額を合計し、申告する必要があるためです。
また、複数の収入があり、源泉徴収されている勤務先と源泉徴収されていない勤務先がある場合もやはり確定申告しなければなりません。
業務委託契約の単発バイトで確定申告の必要性を判断する基準
業務委託契約による単発バイトの場合、その所得額や、給与所得の有無が確定申告の必要性を判断する基準です。
確定申告が必要か不要かをそれぞれのパターン別に説明します。
不要:雑所得が所得20万円以下×給与所得がある
給与所得があり、収入から経費を差し引いた雑所得が1年間で20万円以下の場合には、確定申告が不要です。
企業や会社に雇用され、源泉徴収済みの給与を受け取っているということは、そちらが本業で雑所得は副業に該当すると見なされます。
副業の場合、雑所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。その理由は煩雑さを避けるためです。
ただし、ふるさと納税や医療費控除など控除の適用を望むのであれば、確定申告を行いましょう。
必要:雑所得が所得20万円超×給与所得がある
前述した通り、給与所得がある場合、雑所得が20万円を超えるかどうかが確定申告の要不要を判断する基準です。
企業や会社から給与を受け取っており、かつ雑所得が1年間で20万円を超えるようであれば、確定申告は必要です。
確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があるほか、その反対に所得が増加したことで納税義務が発生する場合もあります。
必要:雑所得だけの場合
給与所得を得ておらず、雑所得のみの場合は、確定申告が必要になる可能性があります。
原則的に、1年間の所得額2,400万円以下で、さらにその所得が基礎控除額の48万円以下であれば確定申告はいりません。
しかし、雑所得のみ場合は年末調整が行われていないため、確定申告を行い、所得税の金額を精算が必要でしょう。
また、確定申告には住民税の申告も関わってきます。確定申告を行えば、住民税の申告も同時に完了します。確定申告をしない場合には、市区町村へと住民税の申告義務が発生します。
単発バイトが給与所得の場合の住民税は、企業や会社が給与から天引きし特別徴収で納税しています。
一方、単発バイトが雑所得の場合には給与から住民税が天引きされることはないため、自分で納付する必要があります。これを普通徴収と呼びます。
単発バイトの確定申告書の書き方
単発バイトを確定申告する際は、所得の区分により収入や所得の記入欄が異なります。企業や会社から給与を受け取っている場合は源泉徴収票を用意し、そこに記載されている内容を確定申告書の所得区分・給与の欄などに転記していきます。
源泉徴収票の支払金額は確定申告書の収入金額等の欄に、源泉徴収票の給与所得控除後の金額は確定申告書の所得金額等の欄に該当します。
同様に、事業所得の場合は事業・営業などの欄に収入と所得をそれぞれ記入します。確定申告書の雑所得の欄は3つに分かれていますが、単発バイトの場合は業務が記入箇所です。
単発バイトで確定申告しないとどうなる?
単発バイトはアルバイト期間が短く、加えて確定申告の手続きが煩雑なこともあり、申告が面倒に感じられることもあるでしょう。
しかし、確定申告の義務があるにも関わらず、これを適切に行わない場合には、延滞税や加算税と言ったペナルティが課せられる可能性があります。
延滞税や加算税が課せられると、本来納めるべき額以上の税金が発生してしまうため、確定申告の義務がある際には必ず申告を行いましょう。
税理士からアドバイスを受ければ単発バイトの確定申告もスムーズ!
単発バイトは契約形態や所得区分、年収や所得、本業か副業かなどで確定申告書の書き方が変わり複雑です。複数の仕事を持っていたり、業務に集中したりする際でも、確定申告書の作成に時間がかかり、より忙しくなってしまうこともあるでしょう。
また、確定申告の期間は1ヵ月間と限られています。期限内にしっかりと確定申告するためにも、単発バイトの申告書作成は税理士を利用してみてはいかがでしょうか。
小谷野税理士法人では、個人に向けた確定申告の代行サービスを用意しています。また、確定申告以外にもさまざまな税務へのアドバイスを行っています。
確定申告と税金についてのお悩みがあれば気軽にご相談ください。