経営状況の著しい悪化や後継者が見つからないなどの理由で廃業を決断したとき、会社を解散させるためにはどうしたらいいのでしょうか。会社解散のための手続きは法律で定められており、要件を満たさなければ自由に解散することはできません。本記事では、会社の解散に関する手続き、かかる期間、費用などについて詳しく解説します。
目次
会社を解散するための7つの要件
会社の解散とは、法的に会社が消滅することです。会社を解散するためには、会社法で定められた以下の要件に該当する必要があります。
<会社を解散するための7つの要件>
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併による会社の消滅
- 破産手続き開始の決定
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社のみなし解散
このうちのどれかに該当しなければ、会社の解散はできません。
定款で定めた存続期間の満了
会社の定款には、その会社の存続期間が明記されることがあります。この存続期間が満了すると会社は自動的に解散します。
定款で定めた解散事由の発生
定款には特定の事由が発生した場合に、会社を解散する旨が記載されることがあります。
例えば「特定のプロジェクトの完了」や「主要な契約の満了」、また「経営者の年齢が一定以上を超える」「従業員数が一定以下になる」などです。その条件に該当した場合、会社は解散します。
株主総会の決議
株主総会での解散決議は、会社の解散において一般的といえるでしょう。株主総会を招集し、そこで特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が成立すれば、会社は正式に解散手続きを進めることができます。
合併による会社の消滅
複数の会社がひとつになる合併には、「吸収合併」と「新設合併」の2つがあります。吸収合併はひとつの会社に別の会社が吸収され、吸収された会社の全ての権利は存続する会社に引き継がれます。新設合併は、新設した会社に他のすべての会社が吸収されます。
どちらの合併でも吸収される会社は消滅します。自社が消滅会社となる場合には、会社は解散となります。
破産手続き開始の決定
負債を抱えた会社が裁判所に破産申立てを行い、裁判所によって破産手続きが開始されると、その会社は解散となります。この場合、裁判所が選任した破産管財人が会社の解散手続きを行うことになります。
裁判所による解散命令
違法行為や公共の利益に反する行為を継続した場合、裁判所が会社の解散命令を下すことがあります。解散命令が下された会社は、速やかに解散の手続きを行わなければなりません。
休眠会社のみなし解散
休眠会社とは、特定の期間事業活動を行なっていない会社のことです。最後の登記から12年以上登記簿に変更がないまま経過すると、法務局から通知が出されます。通知を受けた会社は、決められた期間内に必要な登記を行うか、事業を廃止していない旨の届出をしなければなりません。期限内にこれらを行わなければ解散したとみなされます。
会社解散手続きの流れ
会社の解散手続きには、さまざまな事柄があります。ここからは、会社解散手続きについて解説していきます。手続きは、概ね以下のような流れに沿って行われます。
<会社解散手続きの流れ>
- 株主総会での解散決議
- 解散、清算人就任の登記
- 財産目録と賃借対照表の作成・承認
- 債権者保護手続き
- 解散事業年度の確定申告書の提出
- 資産の現金化、債務弁済、残余財産の確定・分配
- 清算確定申告書の提出
- 決算報告書の作成・承認
- 清算結了登記
- 各機関に対する解散の届出
1.株主総会での解散決議
会社を解散するためには、まず株主総会で解散の決議を行います。この解散決議は、株主の過半数が出席し、3分の2以上の賛成を得なければならない特別決議でなければなりません。
2.解散、清算人就任の登記
株主総会で解散を決議した後は、2週間以内に解散登記と清算人就任登記を行います。清算人が正式に就任することで会社の解散が法的に確定し、次の清算手続きに進む準備が整います。
3.財産目録と貸借対照表の作成・承認
清算人は、会社の財産を評価し、財産目録と貸借対照表を作成します。作成した財産目録と賃借対照表は、株主総会で承認を得なければなりません。
4.債権者保護手続き
清算人は、官報公告と個別の催告を通じて会社の解散を通知します。これにより、債権者は限られた期間内に債権回収の機会を得ることができます。これを債権者保護手続きといいます。
5.解散事業年度の確定申告書の提出
解散した会社は、解散事業年度の確定申告書を解散から2ヶ月以内に税務署に提出しなければなりません。確定申告の対象は解散事業年度の開始日から解散日までです。
6.資産の現金化、債務弁済、残余財産の確定・分配
清算人は会社の売掛金や貸付金などを回収、不動産などの資産は現金化し、債権者に債務の弁済をします。残余財産が確定したら、株主に分配します。
7.清算確定申告書の提出
残余財産の確定後、税務署に清算確定申告書を提出します。提出期限は、残余財産確定日の翌日から1ヶ月以内です。
8.決算報告書の作成・承認
清算確定申告書を提出したら、清算人は清算手続きの結果をまとめた決算報告書を作成します。その後、株主総会を招集し、決算報告書は承認を受けます。
9.清算結了登記
決算報告書が株主総会で承認されたら、2週間以内に法務局で清算結了の登記を行います。
10.各機関に対する解散の届出
最後に、税務署、社会保険事務所、労働基準監督署、地方自治体などの公的機関に清算結了の届出をします。これにより、正式に会社解散の手続きが終了します。
会社の解散手続きにかかる期間
会社の解散手続きには、最低でも2ヵ月以上の期間が必要になります。
まず、解散を決議する株主総会を開催した後、解散登記を行います。提出書類の準備などのため、通常ここまでに1〜2週間かかります。
その後、清算人が財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を得ます。そのうえで債権者保護手続きを行いますが、債権者保護手続きでは債権者が債権を申し出ることのできる期間は2ヵ月間以上と定められています。
清算中の会計処理や税務申告、関係各所への届出まで含めると、さらに3〜6ヵ月かかることが一般的です。
会社の解散手続きにかかる費用
会社の解散手続きのなかには、費用がかかるものもあります。また、解散する会社の規模や専門家に依頼するかどうかによって、解散手続き全体でかかる費用は変わってきます。
登録免許税
会社の解散手続きを行う際には、法務局に登記を行う必要があります。この際に支払うのが登録免許税です。
具体的には、解散及び清算人選任の登記に39,000円、清算結了の登記に2,000円、合計で41,000円を登録免許税として支払います。
官報公告費用
会社の解散手続きにおいては、官報に公告を掲載することが法的に義務付けられています。掲載費用には約32,000円かかります。
その他の諸費用
解散手続きには、他にも登記事項証明書の取得費用(数千円)などがかかります。また、株主総会の開催費用もあり、これは規模や場所によって金額が決まります。
専門家への依頼費用
会社の解散手続きには法的な知識が必要なので、税理士、弁護士、司法書士などの専門家へ手続きを依頼することが一般的です。
依頼費用は10万円から数十万円程度が相場ですが、依頼する業務の範囲によって費用は変わってきます。
解散手続きのご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
会社の解散手続きをスムーズに行うポイント
解散手続きを迅速かつ適切に行うことができれば、債権者とのトラブルといった会社解散に伴うリスクを抑えることができます。
ここからは、会社の解散手続きをスムーズに行うためのポイントや注意点をお伝えします。
解散前に事前準備を行う
会社を解散するならば、事前準備は必須です。
解散手続きでは多くの書類を作成し、法務局などへ届け出なければなりません。こうした法的な書類には厳格なルールがあり、不備があると受け付けてもらえず、何度もやり直すことになります。
また、債権者への迅速な通知も重要です。これを怠ると後々トラブルに発展する可能性があります。
従業員への対応も忘れてはいけません。会社を解散するということは、従業員の雇用を終了することでもあります。解雇に関する手続きや退職金などの補償は迅速に行われなければなりません。
こうしたさまざまなことを適切に進めるためには、早めに準備しておくことが大切です。
官報公告の期間内に清算事務を終了させる
官報公告の期間内に清算事務を終了できると、解散手続き自体がスムーズに終わるでしょう。
債権者保護のため、官報公告では債権者が申し出をするための期間を2ヵ月以上設けなければなりません。この期間中に債権の回収や債権者に対する支払いなどの清算事務を進めておかなければ、清算結了が遅れることになります。
会社の解散手続きをスムーズに終わらせるためには、公告期間中の2ヵ月間に清算事務をどこまで終えられるかがポイントになります。
会社の解散における手続きの注意点
会社を解散する際には多くの手続きが必要になりますが、とくに注意すべき点を解説します。
会社解散には複雑な清算手続きが必要
会社を解散するためには、必ず清算手続きをしなければなりません。
解散の登記と同時に、清算人就任登記も行います。清算人は会社解散後の清算手続きを行う人で、代表取締役や取締役がなることが多いですが、外部から選ぶこともあります。清算人は、会社の債権回収、債務整理、財産分配などを行い、会社の清算事務を滞りなく終わらせる責任があります。
法的には、法務局に解散の登記を行った時点で会社は解散となりますが、清算人によって清算手続きが完了するまでは、会社は存続しているのです。
解散年度分の確定申告が必要
会社を解散しても、解散年度分は確定申告をしなければなりません。解散年度分は通常の確定申告とは異なる部分もあるため、手続きが複雑になる可能性があります。適切な確定申告を行うためには、専門の会計士や税理士に相談することをおすすめします。
会社の解散手続きには専門家の協力を仰ぎましょう
会社を解散するためには、株主総会での決議を経て、解散の登記、債権者保護手続き、債務整理や残余財産の分配、決算報告書の作成、清算結了登記といった、数々の清算手続きを行わなければなりません。これには大変な手間と労力がかかります。
会社の解散をお考えの場合は、早い段階から専門家へ相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けながら手続きを進めることで、スムーズな解散手続きが可能になるでしょう。