投資には株式投資・不動産投資、仮想通貨やFXなど複数の種類があります。投資の種類ごとに認められる経費には違いがあるため、それぞれに合った確定申告が必要です。
確定申告で経費として認められると、節税できる可能性が高まります。適切な確定申告を行うためにも、ここでは投資の種類ごとの経費と確定申告書の書き方を説明します。
目次
確定申告では投資の経費も計上を認められている
投資で利益を得るために使った支出は、投資の種類によっては経費として計上できます。また、その経費を節税につなげるためには確定申告が必要です。
確定申告すると節税できる可能性がある
投資は確定申告が必要な場合と、必要ではない場合とがあります。まず、投資によって利益を得た場合には、原則として確定申告は必要です。
しかし、給与所得があり、その金額が2,000万円以下で、投資で得た利益が20万円以下であれば確定申告の義務は生じません。
さらには、給与所得がなく、投資で得た利益が48万円以下の場合も、基礎控除48万円が差し引かれることから確定申告は不要です。
基礎控除は所得の合計が2,500万円以下のときに誰もが受けられる所得控除です。この基礎控除を差し引いたときに所得0円であれば、確定申告を行わなくても良いとされています。
加えて、投資で源泉徴収ありの特定口座を使っていても確定申告は不要です。投資に関わる口座には特定口座と一般口座とがあります。さらに、特定口座は源泉徴収ありと源泉徴収なしの2つに分かれています。
源泉徴収ありの特定口座は、あらかじめ税金が徴収されるため確定申告は不要です。一方、源泉徴収なしの特定口座と一般口座の場合には、自ら確定申告をしなくてはなりません。
投資で損失が出た際にも、原則として確定申告の必要はありません。
しかし、確定申告をしなくても良い場合であっても、あえて申告をすることで、損益通算や繰越控除が適用されて節税につながる可能性があります。
損益通算は投資により損失が出た場合、利益から差し引くことで所得を下げ、税金を低く抑えられる制度です。
繰越控除とは、損失をその年だけでは控除しきれなかった際、翌年から最長3年間、損失を繰り越して利益から控除できるものです。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
パソコンは減価償却で経費計上
経費を計上する際に注意したいのが減価償却です。原則的に経費の精算は、実際に発生した事業年度内に処理をします。
法人は事業年度を自由に決められますが、フリーランスや個人事業主の場合は毎年1月1日から12月31日までの1年間が事業年度と定められています。
減価償却とは、何年にも渡って使い続け、時間経過とともに資産価値が失われていく1台10万円以上の固定資産を購入した際、数年間に分割して経費計上することを指します。
例えば1台10万円以上のパソコンなどが固定資産に該当します。数年にわたり経費として計上することで、その間は税金が抑えられ続けます。
減価償却が可能なものとしては、パソコンやプリンターなどの有形固定資産のほか、ソフトウェアなどの無形固定資産も該当します。
ただし、減価償却は購入したものや内容に対しそれぞれ異なる耐用年数が設けられています。耐用年数とは、その品物を使用できる基準期間を定めたものです。
パソコン(サーバー用を除く)であれば耐用年数は4年、プリンターとソフトウェアは基本的に5年です。その他の耐用年数については、国税庁が公開している耐用年数表で確かめてみてください。
主な投資において確定申告で認められる経費
投資に複数の種類があるように、発生する経費もさまざまです。ここでは、株式投資や不動産投資などの主な投資で、確定申告の際に認められている経費をまとめています。
株式投資の経費
株式投資における投資の対象は、株式会社が資金を集めるために発行している株です。株を購入したときの価格よりも高く売却できれば株式投資の利益につながります。その際の収入は、譲渡所得に該当します。
そして、この譲渡所得の計算式には、経費を差し引くことにより算出されるものではないという特徴があります。譲渡所得を計算する際、収入から差し引かれるのは経費ではなく、株の譲渡にかかった費用の取得費や手数料の譲渡費用です。
つまり、譲渡所得で確定申告を行うと、事業所得や雑所得では経費として扱うことができるパソコンや電気料金・通信費などの計上が難しくなります。
しかし、近年の法改正により、保有している期間が1年以内の株の譲渡であれば、一定の要件を満たせば事業所得か雑所得で株式投資の確定申告が可能となりました。
事業所得や雑所得では経費の計上が認められているため、前述したパソコンや電気料金・通信費なども必要経費として申告できるでしょう。
参考:措置法第37の10《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》関係|国税庁
不動産投資の経費
土地や建物に投資する不動産投資の収入は、確定申告の際に不動産所得として扱われます。不動産投資の場合、その投資の対象となった土地や建物などを購入した際に借りた、借入金の元本返済については経費計上できません。
しかし、土地や建物のローンの金利であれば経費として申告可能です。不動産所得がマイナスで、損益通算する際は土地にかかる利息は経費計上できないため注意しましょう。
また、地震保険や火災保険など保険の加入料も経費として認められています。その他、不動産の管理費及び管理会社への委託料金、賃貸のための仲介手数料や広告宣伝費なども経費計上を行えます。
仮想通貨の経費
仮想通貨は暗号資産とも呼ばれるインターネット上で取り引き可能な資産です。日本円やドルなど、国により価値が保証されている法定通貨ではなく、現金のような実物はありません。ネット上にのみ存在していることからデジタル資産と言われることもあります。
また、仮想通貨で得た収入は雑所得に該当します。雑所得であるため、仮想通貨の場合は、使用するパソコンとパソコン周辺機器などを経費として計上可能です。
さらにはそのパソコンを使用するための電気料金、通信費、株式投資について学ぶための教材やセミナーの費用なども経費の範囲です。
仮想通貨に関するセミナーを受けるためにかかった交通費や宿泊費も、基本的には経費に該当します。ただし、プライベートと混同している場合には、認められない可能性もあります。
FX(外国為替取引)の経費
FX(外国為替取引)は、日本円とアメリカドルなど異なる通貨を交換することを指します。海外旅行に出発する際、他国の通貨に両替することも外国為替取引に該当します。
取引の際、通貨を交換する比率(為替相場)は常に変動しています。そして、そのとき発生する差益を目的に取引を行うことをFX(= Foreign Echange)と呼びます。
FXは雑所得として確定申告が可能なため、パソコンとパソコン周辺機器・電気料金・通信費などを経費にできます。それ以外のFXの経費としては、金融機関からの借金をFXの証拠金として使った分なども該当します。
FXでは事前に現金を口座に入れ、それを担保としてレバレッジをかけた取引が可能です。レバレッジとは「てこの原理」を意味し、実際の資金以上の高額取引する際に利用します。そして、そのとき口座に振り込む現金は証拠金と呼ばれます。
投資の確定申告で認められない経費
どの投資においても、プライベートで使用している分は経費として認められません。自宅を仕事場として使用している場合も、プライベートと兼用している電気料金や通信費などをそのまま経費として申告してしまうと、その後に税務調査が入る可能性があります。
電気料金や通信費は生活に使用している分と、投資のために使用している分を明確に分けて経費計上する必要があります。区分が難しいケースでは、電気料金や通信費の場合には、時間で投資に使った分の割合を算出できるでしょう。
投資家のための確定申告書の書き方
投資の種類が異なれば、所得の区分も違ってきます。投資家が確定申告を行う際、それぞれの投資でどんな書類が必要か、どのように申告を行えば良いのかを説明します。
確定申告の必要書類
確定申告に必要な書類は、確定申告書や本人確認書類などの基本的なもののほか、投資の種類ごとに異なる書類が必要です。
確定申告における各投資ごとの必要書類は次の通りです。
【株式投資】
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 特定口座年間取引報告書など、株取引の金額が確認できるもの
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
【不動産投資】
- 青色申告決算書(不動産所得用)(青色申告の場合)
- 収支内訳書(不動産所得用)(白色申告の場合)
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
【仮想通貨】
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
【FX(外国為替取引)】
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書や先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書、収支内訳書は、収入や経費を記載し、それを計算するための書類です。
書類はそれぞれ国税庁の公式サイトからダウンロード可能です。
参考:「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の記載例|国税庁
確定申告書の記入方法
投資家が確定申告書を作成する際、給与所得がある場合はまずその金額を記入しましょう。その後、投資の種類と所得の区分に応じ、申告書へと投資の収入や所得を書き込んでいきます。
【株式投資】
株式投資の場合は、譲渡所得や事業所得、雑所得に該当しますが一般的には譲渡所得で確定申告を行います。
まず、株で利益があった際には、年間取引報告書を手元に取り寄せ、そこに記載された内容をもとに株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を作成します。
次に確定申告の第三表(分離課税用)へと、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書から収入や所得を書き写します。
株で損失があった際には、これらに加え、所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添付します。
これにより繰越控除や損益通算などの控除が適用されます。
【不動産投資】
不動産投資の所得区分は不動産所得です。そのため、確定申告を行う際には青色申告のための青色申告決算書も、白色申告のための収支内訳書も、それぞれ不動産所得用の書類を使用します。
そして、その青色申告決算書や収支内訳書の内容に基づき、確定申告書を作成します。
【仮想通貨】
確定申告の際、仮想通貨などの暗号資産は基本的に雑所得に区分されます。計算書を作成している場合は、その内容を参考に、雑所得の業務・その他の欄に収入を記入します。
仮想通貨については計算書の作成は任意であり、確定申告書への添付は不要です。
【FX(外国為替取引)】
FXで得た収入を確定申告する際は、まず事前に年間取引報告書をFX会社の公式HPなどからダウンロードします。次に、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を、その年間取引報告書に記載された内容をもとに作成します。
FXは事業所得用・譲渡所得用・雑所得用から選ぶことができますが、青色申告をせず経費を計上するのであれば雑所得を選択します。
確定申告書では第三表(分離課税用)の先物取引の欄に収入や所得を記入します。
また、株式投資と同様に、FXで損失が出た場合、繰越控除を活用するのであれば、所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)の添付が必要です。
参考:【確定申告書等作成コーナー】-暗号資産の取引に係る収入がある場合
投資に関する経費計上と確定申告は税金の専門家に依頼を
投資の確定申告は、その投資の種類ごとに経費にできるものとできないもの、必要書類や申告書の記入方法も異なります。投資の種類によっては、損失が発生したに添付する書類が増えることもあります。
このように投資の確定申告は複雑な面があり、税金対策をしたくても投資家にとっては負担が多くなりがちです。適切な手続きを行い節税につなげるためにも、投資の確定申告は税金の知識を持つプロに任せてみてはいかがでしょうか。
小谷野税理士法人では、経費の計上を含め、個人向けの確定申告業務にも対応しています。
会計や税務以外の問題についても、いつでもご相談ください。