水商売で働いていると、確定申告をした方が良いのか、しなくても良いのか、迷ってしまうという方も多いことでしょう。しかし、水商売でも確定申告をすることで得をする場合があります。反対に、確定申告をしないと損をすることもあるのです。この記事では、水商売やナイトワークで働く方で確定申告をする必要がある人や、確定申告をするメリットや方法について、分かりやすく解説します。
目次
水商売で確定申告をする必要がある人は?
水商売で働く人の中でも、確定申告をする必要がある場合と、しなくても良い場合があります。ここでは、確定申告が必要なケースと不要なケースについて紹介します。
そもそも確定申告とは?
まず、確定申告とは何かを簡単に説明しましょう。
確定申告とは1年間の所得に対する計算をして、納税することです。確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間に行わなければなりません。
水商売で確定申告が必要なケース
水商売で確定申告が必要なケースは、以下のような場合です。
- 店舗と労働契約を締結せず、一年間の雑所得が20万円以上ある場合
副業でホステスとして働く場合など、事業規模ではない副収入で得た報酬は、一般的に「雑所得」という所得に分類されます。雑所得とは、他の所得区分(給与所得、事業所得、不動産所得など)に該当しない所得のことで、フリーマーケットでの売上や講演料などが該当します。副業で得た雑所得が年間20万円を超える場合、税法上、所得税の計算に含める必要があるため、確定申告が必要です。申告を怠った場合、ペナルティが課される可能性があります。
- 店舗と労働契約を締結せず、個人事業主として働いている場合
水商売で店舗と労働契約を締結せず、個人事業主として働く場合、確定申告が必要となるケースがあります。例えば、キャバクラ嬢などがこのタイプに該当することが多いです。個人事業主として働く場合、年間所得が48万円を超えると確定申告が必要です。さらに、仕事に関連する必要経費(例えば、仕事で使用するドレスやタクシー代など)を収入から差し引くことで、実際の所得額を減らし、税負担を軽減することが可能です。なお、経費を収入から差し引きたい場合は、確定申告をしなければなりません。
- 水商売の給与が2,000万円を超える場合
水商売で店舗と労働契約を締結して働く場合、通常は会社が源泉徴収を行い、年末調整を通じて税金を処理します。そのため、一般的には確定申告は不要です。しかし、年間の給与が2,000万円を超える場合は、確定申告が必要となります。これは高額所得者に対する税務上の規定です。また、年度の途中で退職し、年末調整を受けていない場合も確定申告が必要です。
水商売で確定申告が不要なケース
水商売で確定申告が不要なケースは、以下のような場合です。
- 店舗と労働契約を締結せず、副業所得が20万円以下の場合
水商売で店舗と労働契約を締結せず、副業として働いている場合、年間の副業所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。所得税法に基づく規定で、副業所得が少額である場合、申告の義務が免除されます。ただし、他の所得と合算して20万円を超える場合や、住民税の申告が必要な場合もあるため、注意が必要です。
- 年末調整が完了している場合
水商売で働いている場合でも、年末調整が完了している場合は確定申告が不要です。年末調整とは、会社が従業員の年間所得税を計算し、過不足を調整する手続きです。会社が年間の税額を計算するため、追加の確定申告を行う必要がありません。ただし、副業所得がある場合や特定の控除を受けたい場合は、確定申告が必要になることもあります。
水商売で確定申告をするメリットは?
水商売で確定申告をする必要がある人は、確定申告をしなければなりませんが、確定申告にはメリットもあります。水商売で確定申告をする主なメリットは、以下の3つです。
払いすぎた税金が戻ってくる
確定申告をすると、払いすぎた税金が戻ってくるケースがあります。特に、事業所得の予定申告を行う場合に有効です。
事業所得の予定申告とは、年間の収入や経費を見積もって、あらかじめ税金を納める手続きです。事業を行う個人事業主が対象で、年に数回に分けて納税することで、一度に大きな金額を支払う負担を軽減する目的があります。予定申告を行うことで、収入や経費の変動に応じて税額を調整しやすくなりますが、年間の収入や経費を見積もって申告するため、実際の収入や経費が異なることがあります。
この場合、確定申告で正確な所得を申告することで、払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。例えば、予想よりも経費が多かった場合、その分の税金が還付されることがあるのです。確定申告で税金の過不足を調整し、経済的な負担を軽減することにつながります。
損失を繰り越しできる
確定申告をすると、損失を繰り越しできるメリットがあります。特に青色申告を行う場合、欠損金の「繰越控除」が適用されます。これは、事業で損失が出た場合、その損失を翌年以降の所得から差し引くことができる制度です。
例えば、ある年に、ドレスの購入など業務に必要な経費が多く損失が出た場合、翌年の所得からその損失分を控除することが可能です。損金を繰り越すことで、翌年の税負担を軽減でき、節税にもつながります。青色申告を適切に行うことで、長期的な税務戦略を立てやすくなります。
ただし、青色申告を行うには、事業開始から2ヶ月以内に税務署へ提出しなければなりません。また、帳簿をつける必要があり手間がかかる面もありますが、賢く節税するにはおすすめの申告方法です。
バレにくい申告方法がある
水商売を副業としている人もいることでしょう。副業は会社に内緒にしている人も多いかもしれません。会社にバレると、解雇や減給などのリスクがあります。
会社にバレないように確定申告をするには、住民税欄の書き方にポイントがあります。住民税には「特別徴収」という制度があり、会社が従業員の給与から住民税を天引きし、自治体に納付する方法です。副業などで所得が増えると、その分住民税も増加するため、特別徴収の場合に会社の経理担当者が住民税の増加に気づき、副業の存在を疑うことがあります。一方、「自分で納付」にすると、住民税の通知が自宅に届き、会社に知られるリスクを減らせます。
確定申告書の住民税欄で「自分で納付」に◯をすることで、住民税の通知が自宅に届き、会社に知られるリスクを減らせます。住民税の納付方法を「自分で納付」にしないで申告した場合、会社にバレる可能性があるため、注意しましょう。
水商売で確定申告をするときの注意点
水商売で確定申告をするにはさまざまなメリットがある一方、いくつかの注意点もあります。確定申告をする際のポイントを把握しておくことで、予期せぬトラブルを回避できるでしょう。
無申告が発覚すると重い罰金が課せられる
水商売で得られる収入は不安定だったり、現金で受け取ったりすることも多いです。そのため、税金の申告を忘れたり、面倒だと思って放置したりする人もいるかもしれません。しかし、これはとても危険なことです。税金の申告をしないことは「無申告」と呼ばれ、法律に違反する行為です。無申告が発覚すると、重い罰金が課せられます。
罰金の額は、無申告の金額や期間、理由などによって変わりますが、最大で「納税する金額の30%」です。無申告をすると、本来払わなければいけない税金に加えて、罰金も払わなければなりません。
高額なプレゼントは贈与税の対象になる
水商売では、お客さんから高額なプレゼントをもらうこともあるでしょう。たとえば、ブランドバッグやジュエリー、車や家などです。これらのプレゼントをもらうことは嬉しいものですが、税務上は贈与とみなされます。贈与とは、お金や物を無償で受け取ることであり、受け取った物品の金額によっては、贈与税という税金がかかります。
贈与税は贈与の金額や贈与者との関係などによって変わりますが、基本的には「贈与の金額の10%から55%」です。たとえば、お客さんから200万円のブランドバッグをもらった場合、贈与税は9万円です。
贈与税の申告は、確定申告と同様に翌年の3月15日までが申告、納付期限です。
住民税が増える可能性がある
水商売で副業として働いている人は、本業の会社から源泉徴収されている住民税を払っているかもしれません。住民税とは、市町村と都道府県に払う税金のことです。住民税は、所得や家族構成などによって変わりますが、基本的には「所得の10%程度」です。たとえば、所得が500万円だとすると、住民税は500万円の10%で「50万円」です。
住民税は本業と副業の所得を合わせて計算されます。副業の所得を確定申告で申告しないと、住民税の計算が正しくなりません。副業の所得が多いほど、住民税も増えます。たとえば、本業の所得が500万円で副業の所得が300万円だとすると、合計の所得は800万円です。この場合、住民税は800万円の10%で「80万円」です。
確定申告をすることで、副業の収入を申告しない場合の50万円よりも30万円多くなります。しかし、これが本来支払うべき住民税です。確定申告をしないと、住民税の計算が間違っていることが発覚する可能性がありますが、これは無申告や脱税と同じで、罰金が課せられる可能性があります。
水商売で確定申告をするときのポイント
確定申告は複雑で難しく、面倒だと感じる方も多いかもしれません。しかし、水商売で確定申告をする必要がある方や、した方がお得な方は少なくないでしょう。ここからは、確定申告をするときのポイントを解説します。
領収書や源泉徴収票などの証明書類を用意する
確定申告をする際、所得や控除などを証明する書類が必要です。たとえば、生命保険料の控除証明書、住宅ローンの明細書などです。
これらの書類は、税務署に提出するものです。税務署は、あなたの申告内容をこれらの書類で確認します。書類がないと申告内容が正しいかどうか判断できないため、問い合わせがあるか、税務調査を受ける可能性があります。
確定申告をするときには、必要な書類を事前に用意しておきましょう。書類は、5年、7年間保管する必要があり、整理して分類しておくと申告のときに便利です。また、コピーしておくと紛失や破損のリスクを減らせるでしょう。
青色申告か白色申告かを選択する
確定申告をするときには「青色申告」か「白色申告」かを選択する必要があります。青色申告とは、収入と支出を正確に記録することで、税金の優遇措置を受けられる制度です。白色申告とは、収入と支出を記録しなくても、税金の計算ができる制度です。青色申告と白色申告の違いは、以下の表の通りです。
青色申告 | 白色申告 |
簿記の知識が必要 | 簿記の知識が不要 |
所得税の青色申告承認申請書の提出が必要 | 申請が不要 |
青色申告特別控除額を最大65万円受けられる | 青色申告専用控除が受けられない |
損失があった場合、繰り越しできる | 損失があっても、繰り越しできない |
青色申告は税金の優遇措置が多いですが、記帳の手間がかかります。白色申告は記帳の手間が少ないですが、税金の優遇措置が少ないです。確定申告をするときには、自分に合った申告方法を選択しましょう。
確定申告の期限や場所を確認する
確定申告をするときには、期限や場所を確認することが大切です。確定申告の期限は、毎年3月15日までです。この期間に、税務署に申告書を提出する必要があります。期限を過ぎてしまうと、期限後申告となり、延滞税が課せられる可能性があります。
確定申告を提出する場所は、あなたの住所や収入の種類によって変わります。基本的には、あなたの住所の管轄内の税務署に申告します。また申告書の提出だけでなく、納付も期限内に完了しましょう。
確定申告が難しい場合は税理士に依頼する
確定申告をするときには、自分で申告書を作成して提出できますが、税法や計算方法が複雑で難しいことも多いです。自分で申告するのが不安な場合は、税理士に依頼することがおすすめです。
税理士に依頼すると、あなたの代わりに申告書を作成して税務署に提出してくれます。税理士に依頼すると、以下のメリットがあります。
- 税金の計算や申告の手続きが正確にできる
- 税金の節税や優遇措置を最大限に活用できる
- 税務調査や納税相談などのアフターケアが受けられる
税理士に依頼すると、依頼料がかかります。依頼料は税理士や申告内容によって変わりますが、副業の場合は一般的には1万円から5万円程度です。依頼料は、経費として税金から差し引くことが可能です。確定申告が難しい場合は、税理士に依頼することを検討してみましょう。
水商売でも確定申告できちんと納税しよう
この記事では、水商売で確定申告をする必要がある人やメリットがある人、確定申告をする方法について解説しました。確定申告は、難しくて面倒なイメージがあるかもしれませんが、確定申告を行うことでメリットが得られるケースもあります。また、確定申告を怠ると重い罰則が課せられる可能性があります。
もし、確定申告が難しいと感じたり不安があったりする場合は、税務に関する専門家である税理士に相談することがおすすめです。税理士に相談することで確定申告がスムーズにできるだけでなく、安心感や信頼感も得られます。水商売の方で確定申告に不安がある方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。