所得税の計算や年末調整の際に、配偶者の所得に応じて控除を受けられる制度があります。この制度を利用すると、税金の負担を軽減できますが、一方で注意すべきポイントもあります。この記事では、源泉控除対象配偶者について、メリットやデメリット、他の控除制度との違い、年末調整での申告方法や注意点と合わせて、詳しく解説していきます。源泉控除対象配偶者に関する疑問や不安を解消し、正しく税金を節約できるようになりましょう。
目次
源泉控除対象配偶者とは
まずは、源泉控除対象配偶者について解説します。その定義と条件について見ていきましょう。
源泉控除対象配偶者の定義と条件
まず、源泉控除対象配偶者とは、あなたの配偶者で、次の3つの条件をすべて満たす人のことです。
- あなたと生計を一にしていること(同居しているかどうかは関係ありません)
- その年の合計所得金額が95万円以下であること(給与収入のみなら年収150万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
ここでの合計所得金額とは、配偶者がその年に得たすべての所得(給与、事業、不動産、配当、退職など)を合計した金額のことです。
また、事業専従者とは、配偶者があなたの事業に従事している場合に該当する人のことで、白色申告者の場合は、その年に給与を受けていなくても事業専従者になります。 青色申告者の場合は、その年に給与を受けている場合にのみ事業専従者になります。
源泉控除対象配偶者のメリット
源泉控除対象配偶者に該当すると、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられます。 これらの控除は所得税を軽減するための制度で、税額を減らせます。
配偶者控除とは、配偶者の所得が48万円以下、あなたの合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられる控除で、控除額は、あなたの合計所得金額と配偶者の年齢によって次の表のとおりになります。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除とは、配偶者の年収が103万円(所得48万円)を超えても、所得から控除できる制度です。
控除額は、納税者本人のその年における合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて次の表のようになります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除または配偶者特別控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)が控除されます。
源泉控除対象配偶者のデメリット
源泉控除対象配偶者に該当すると所得税は軽減されますが、配偶者の所得が増えると控除額が減少したり、控除が受けられなくなったりする可能性があります。 103万円の壁や150万円の壁と呼ばれるものが該当します。
また、配偶者の所得が増えると、住民税や社会保険料などの負担も増加する可能性があります。 これを130万円の壁と呼ばれています。
これらの壁は、配偶者の所得や収入が増えることで、税金や社会保険料などの負担が増え、結果的に手取り収入が減るという逆効果をもたらす可能性があります。配偶者の所得が増える場合は控除額や税率などをしっかりと把握して、メリットとデメリットを比較検討することが重要です。
源泉控除対象配偶者や年末調整に関することでもっと詳しく知りたいことや相談したいことがあれば、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。
源泉控除対象配偶者と控除対象配偶者・同一生計配偶者の違い
控除対象配偶者とは
控除対象配偶者となる人の範囲は、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額、および控除対象配偶者の年齢により次の表のとおりです。
控除を受ける納税者本人 の合計所得金額 | 一般の控除対象配偶者 の控除額 | 老人控除対象配偶者 の控除額 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
引用:国税庁|配偶者控除とは
なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)が控除できます。
同一生計配偶者とは
「同一生計配偶者」とは、次の3つの条件をすべて満たす配偶者のことです。
- あなたと同じ財源で生活していること(同居しているかどうかは関係ありません)
- その年の合計所得金額が48万円以下であること(給与収入のみなら年収103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
「同一生計配偶者」に該当すると、次のメリットがあります。
- 配偶者が障害者の場合、障害者控除を受けられる
- 住民税の非課税限度額が高くなる(住民税を免除されるハードルが下がる)
- 市区町村民税の均等割が軽減される
自身が同一生計配偶者に該当するか否かを確認したうえで、上記のメリットが得られるかを考えてみてください。
参考:国税庁|同一生計配偶者
源泉控除対象配偶者になるケース・ならないケースを事例で紹介
源泉控除対象配偶者になるかどうかは、配偶者の年収が150万円以下(所得95万円以下)であるかどうかが重要なポイントです。しかし、f配偶者がフリーランスや不動産所得などがある場合、所得の計算方法が異なります。す。そのため、配偶者の年収が150万円を超えていても、源泉控除対象配偶者になる場合があります。
反対に、配偶者の年収が150万円以下であっても源泉控除対象配偶者にならない場合があります。ここでは、それぞれのケースを事例で紹介します。
源泉控除対象配偶者になるケース
まず、源泉控除対象配偶者になるケースについて、2つの事例から見てみましょう。
事例1:配偶者の年収が103万円以下である場合
Aさんは、給与所得者で年収は500万円です。BさんはAさんの配偶者で、パートタイムで働いています。Bさんの年収は100万円で、所得控除や特定の控除を受けられません。
この場合、Bさんは源泉控除対象配偶者の条件を満たします。したがって、Aさんは年末調整でBさんを源泉控除対象配偶者として申告でき、Aさんの給与から差し引かれる税金が減ります。
事例2:配偶者の年収が103万円を超える場合
Cさんは、給与所得者で年収は600万円です。DさんはCさんの配偶者で、フリーランスで働いています。Dさんの年収は120万円ですが、経費が80万円あります。
この場合、Dさんの年収から経費を差し引くと所得は40万円です。したがって、Dさんは源泉控除対象配偶者の条件を満たし、Cさんは年末調整でDさんを源泉控除対象配偶者として申告ができます。その結果、Cさんの給与から差し引かれる税金が減ります。
源泉控除対象配偶者にならないケース
次に、源泉控除対象配偶者にならないケースについて、2つの事例を見てみましょう。
事例3:配偶者の年収が103万円を超える場合
Eさんは、給与所得者で年収は700万円です。FさんはEさんの配偶者で、正社員として働いています。Fさんの年収が160万円場合、Fさんは源泉控除対象配偶者の条件を満たしません。したがって、Eさんは年末調整でFさんを源泉控除対象配偶者として申告できず、Eさんの給与から差し引かれる税金は変わりません。
事例4:配偶者が扶養親族に該当しない場合
Gさんは、給与所得者で年収は800万円です。HさんはGさんの配偶者で、海外で働いています。Hさんの年収は50万円で、HさんとGさんは同居していません。
この場合、Hさんは扶養親族に該当しないため、Hさんは源泉控除対象配偶者の条件を満たしません。したがって、Gさんは年末調整でHさんを源泉控除対象配偶者として申告できず、Gさんの給与から差し引かれる税金は変わりません。
年末調整での源泉控除対象配偶者の申告方法と注意点
最後に、年末調整での源泉控除対象配偶者の申告方法について解説します。注意点についても触れているので、参考にしてみてください。
年末調整で必要な書類と提出期限
年末調整で必要な書類は、以下のとおりです。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 配偶者の所得に関する証明書(源泉徴収票、給与明細、確定申告書など)
- 特定の控除が適用される場合は、その控除に関する証明書(社会保険料控除の場合は社会保険料納付書、障害者控除の場合は障害者手帳など)
提出期限は、会社によって異なりますが、一般的には12月上旬から中旬にかけてです。会社から指示があったら、期限内に書類を提出しましょう。
源泉控除対象配偶者の欄の書き方
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の中には、源泉控除対象配偶者の欄があります。この欄には、配偶者の氏名・生年月日・所得金額・控除の種類を記入します。控除の種類は、配偶者控除の場合は「1」、配偶者特別控除の場合は「2」を記入します。
配偶者の所得金額の計算方法
配偶者の所得金額は、配偶者が受け取った給与や報酬などの総額から、必要経費などを差し引いた金額です。必要経費とは所得を得るために支払った費用のことで、たとえば交通費や通信費などが該当します。
配偶者の所得金額の計算方法は、以下のとおりです。
- 給与所得の場合:給与所得の金額から必要経費(給与所得控除)を差し引いた金額
- 報酬所得の場合:報酬所得の金額から必要経費(報酬所得控除)を差し引いた金額
- 事業所得の場合:事業所得の金額から必要経費(青色申告特別控除または実際の経費)を差し引いた金額
- 不動産所得の場合:不動産所得の金額から必要経費(不動産所得控除)を差し引いた金額
- 配当所得の場合:配当所得の金額から必要経費(配当所得控除)を差し引いた金額
- 利子所得の場合:利子所得の金額から必要経費(利子所得控除)を差し引いた金額
所得の種類によって計算方法が異なるため、きちんと覚えておくと安心です。
配偶者控除・配偶者特別控除の判定方法
配偶者の所得金額を計算したら、配偶者控除か配偶者特別控除のどちらが適用されるかを判定します。
配偶者の所得金額が48万円以下の場合は、配偶者控除が適用されます。
配偶者の所得金額が48万円を超えても所得が95万円以下の場合、配偶者特別控除が適用されます。
配偶者の所得金額が95万円を超える場合、どちらの控除も適用されません。
103万円の壁・106万円の壁・150万円の壁・201万円の壁について
扶養控除の対象者や配偶者の収入が一定額を超えると、扶養控除の金額が減ったり、社会保険料が増えたりすることがあります。これを「年収の壁」と呼びます。
年収の壁は、「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」の4つのポイントにあります。それぞれの年収の壁がどのように発生するのか、簡単に説明します。
- 103万円の壁:扶養控除の対象者や配偶者の収入が103万円を超えると、扶養控除の金額が減り、所得税や住民税が増えます。
- 106万円と130万円の壁:扶養控除の対象者や配偶者の収入が106万円や130万円を超えると、社会保険料の扶養から外れる可能性があります。
- 150万円の壁:配偶者の収入が150万円を超えると、配偶者特別控除の金額が減少し、所得税や住民税が増えます。
年収の壁によって、税金や社会保険料の負担が増えると、手取り収入が減ることがあります。そのため、扶養控除の対象者や配偶者の働き方や収入に影響を与えることに注意しましょう。
扶養控除に関することでもっと詳しく知りたいことや相談したいことがあれば、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。
源泉控除対象配偶者を理解して、正しく節税しよう
この記事では、源泉控除対象配偶者について詳しく解説しました。源泉控除対象配偶者に関する疑問や不安を解消し、正しく税金を節約できるようになったでしょうか。
源泉控除対象配偶者を利用すると税金の負担を軽減できますが、一方で注意すべきポイントもあります。また、年末調整の際には、必要な書類を期限内に提出することが重要です。
源泉控除対象配偶者に関する疑問や不安を解消し、正しく税金を節約できるようになりましょう。源泉控除対象配偶者や年末調整に関することでもっと詳しく知りたいことや相談したいことがあれば、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。