個人事業主が確定申告をする際には、国民年金の扱いや控除についてきちんと理解しておく必要があります。確定申告では支払った金額を正確に記録する必要があり、適切な控除を受けることで税金を節約できるためです。この記事では、個人事業主の確定申告における国民年金の記入方法や、控除の範囲について説明します。
目次
個人事業主が確定申告する際の年金の勘定科目
勘定科目とは、取引による金銭の流れを帳簿に記載する際、目的や用途ごとに分類した見出しのことです。勘定科目を目安に仕訳することで、誰が帳簿に記載をしても取引内容など金銭の流れを明確にできます。
確定申告する際に年金は、事業と無関係のプライベートな支出であるため「事業主貸」の勘定科目に該当します。事業主貸とは、経費として計上できない支出などに用いる勘定科目です。
個人事業主が確定申告を行う際、年金がプライベートな口座から引き落としされていれば仕訳は不要です。しかし、事業のために開設している口座からの引き落としであれば仕訳対象です。
個人事業主の国民年金は控除対象になるのか
個人事業主の国民年金は、全額が社会保険料の控除対象です。確定申告では所得から1年間に支払った保険料が控除されます。
また、国民年金だけでなく、厚生年金健康保険・国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療保険などの保険料も社会保険料の控除対象に含まれます。
納税額は所得から保険料が控除されるかどうかで大きく変わるため、確定申告の際にはしっかりと控除を活用しましょう。
個人事業主が国民年金で控除できる額
社会保険料控除は、個人事業主ならば確定申告を行った際に、会社員も家族の国民年金保険料を支払っている場合に年末調整でやはり社会保険料控除を受けられます。
社会保険料控除を始めとした所得控除を差し引いたものは「課税所得金額」と言います。課税所得金額に税率をかけることで、所得税を算出できます。
- (所得- 所得控除)×税率=所得税額
1年間にわたって支払った国民年金の保険料は、その全額が所得控除の対象となるため、基本的に全額が社会保険料控除として差し引かれます。
個人事業主が国民年金の控除を受けるための必要書類
国民年金の控除を受けるためには、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を用意する必要があります。証明書はハガキ、もしくはA4サイズの書類として封書で、年金事務所から毎年11月頃に送付されます。
ハガキの場合は受け取った人が紙をめくれるようになっており、中を開くとそこに控除証明書の内容が記載されています。
参考:令和5年 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(ハガキ)の見方|日本年金機構
この「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の左側下方に「納付済額」「見込額」「合計額」と書かれた3つの項目があります。
確定申告を行う際には、第二表「社会保険料控除」の欄に、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書に記載された合計額を、ほかの社会保険に支払った保険料とともに記入します。
確定申告書の第一表「社会保険料控除」の欄には、国民年金のほか健康保健など、社会保険料全体の合計額を書き込みます。
もしも社会保険料(国民年金保険料)控除証明書を紛失した場合には、年金事務所に再発行を依頼しましょう。
個人事業主における国民年金での節税ポイント
個人事業主が国民年金を納める際には、次のようなポイントを押さえることで節税可能です。節税をしたいと考えている方は参考にしてみてください。
子どもや妻の国民年金をまとめて所得控除する
国民年金での節税に、国民年金を支払っている子どもや妻の分をまとめて所得控除を受ける方法があります。
まとめて所得控除を受けられる対象は、納税者本人、その妻などの配偶者、学生や無職の子どもといった生計をともにしている家族です。
日本年金機構から家族へと社会保険料控除証明書が届くので、それをもとに家族分の国民年金保険料を所得控除に追加すれば節税できます。
2年前納制度を活用する
国民年金保険料の「2年前納制度」とは、その名称通り、2年度分の保険料をまとめて前納する制度です。2年度分をまとめて納めることで、毎月保険料を支払う場合と比べると15,000円程度の割引を受けられます。
その割引額は年度ごとに異なるため、確認が必要な場合は日本年金機構の公式ホームページにアクセスしてみてください。
また、2年前納は口座振替・現金・クレジットカードなどの納付方法によっても割引額が変動します。比較すると、現金やクレジットカードよりも口座振替のほうが割引額は多めです。
さらには、2年前納以外に6か月前納や1年前納も可能なため、経済状況によって納付方法を選べるのも制度の特徴です。
確定申告する際の所得控除は、その年に支払った国民年金保険料の全額が対象です。その年に2年前納を行えば2年分の保険料が全てが控除されます。
iDeCoを活用する
「iDeCo(イデコ)」は、「個人型確定拠出年金」の私的年金制度の一種です。国民年金や厚生年金とは異なり加入は任意で、公的年金とは別に給付を受けられるため実質的に上乗せ可能です。
iDeCoは個人が掛け金を出し、自分で選んだ金融商品を運用して資産を積み立てます。公的年金との大きな違いは、iDeCoで選んだ金融商品の運用方法とその成果によって受け取り額が変動することです。その年金は通常60歳以降に受け取れます。
また、iDeCoでは支払った掛金が全て所得控除の対象となるため、金額が多いほど税金が軽くなるという特徴があります。年金受け取りの場合には公的年金等控除が、一時金なら退職所得控除も受けられます。さらには、通常は利息や運用益から差し引かれる税金もありません。
このようにiDeCoは節税効果の大きい制度ですが、資産の運用方法とその成果によってはメリットだけでなくデメリットも生じるため注意しましょう。
確定申告も必要で、申告の際には第一表の社会保険料控除ではなく、そのすぐ下の欄にある「小規模企業共済等掛金控除」へと記入します。
参考:iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
個人事業主の確定申告で注意するポイント
個人事業主が確定申告を行う際には、いくつか注意点があります。具体的にどのような注意点があるのか、以下から確認していきましょう。
年金を事業用口座から払ったら仕訳をする
国民年金の保険料は個人事業の経費にはなりません。そのため、国民年金をプライベートの口座から支払っている場合、帳簿づけの仕訳は不要です。しかし、事業用口座から個人の国民年金を支払っているのなら仕訳は必要です。
仕訳をしたからと言って事業用口座から支払われた保険料を経費として計上はできませんが、帳簿は正しく記載しなければいけません。事業では金銭の流れを明確にし、口座残高と帳簿も一致していることが重要です。
年金受給者であっても確定申告が必要なケースがある
通常、年金受給者は確定申告が不要です。年金はあらかじめ税金や社会保険料が天引きされた状態で支給されているためです。
しかし、次の項目のどちらか一方に当てはまっている場合には、年金受給者であっても確定申告を行いましょう。
- 公的年金などによる収入が年間で400万円を超える場合
- 公的年金などに関連する雑所得以外の所得が年間で20万円を超える場合
雑所得以外の所得には、給与所得・不動産所得・事業所得などが該当します。
自力での申告が難しい場合には税理士に相談する
個人事業主の確定申告は、年金の勘定科目や控除の活用、年金受給者であるかどうかを含めて、その内容は複雑になりがちです。もちろん自力で確定申告を行っている場合もあるでしょう。
しかし、万一内容に不備があれば、改めて申告書を作成し、確定申告期限までに再提出しなくてはならないというリスクが生じます。その際、提出期限に遅れると延滞税が発生したり、修正申告に加算税が課される場合もあります。
また、控除をしっかり活用しないと、本来はもっと抑えられるはずの税金が高くなってしまうことも考えられます。自力で申告書作成が難しいようであれば、正確な確定申告を行うためにも信頼できる税理士へ1度相談してみてください。
個人事業主の確定申告なら小谷野税理士法人へ
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日本品質保証機構によるISO9001の認証も受けた品質保証体制により、正確な申告書の作成をお約束します。