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会社設立の基礎知識

個人事業主でも退職金を受け取れる?3つの方法と退職金を受け取る注意点を解説!

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個人事業主の退職金のイメージ

個人事業主として働く場合、会社員と違って退職金や年金などの福利厚生がありません。しかし、個人事業主でも退職金を準備することは可能です。退職金は老後の生活費や緊急時の資金として役立ちますし、税制上の優遇措置もあります。この記事では、個人事業主にとって退職金が必要な理由と、退職金を準備できる制度の特徴、退職金制度の選び方について解説します。

個人事業主にとって退職金は必要?

個人事業主の退職金のイメージ

個人事業主であっても、退職金は必要です。退職金は老後の収入源となるものの一つです。個人事業主の平均年金額は低く、必要な老後資金には届かない場合も多いです。退職金を準備することで、老後の生活を安心して送れるでしょう。

個人事業主の老後の収入源となるもの

個人事業主の老後の収入源となるものは、主に以下の3つです。

  • 年金:

国民年金や厚生年金などの公的年金制度に加入している場合、定年後に年金を受け取れます。しかし、個人事業主の場合、年金の加入率や納付率が低く、年金額も少ない傾向にあります。

  • 貯蓄:

個人事業主の場合、自分で貯蓄を積み立てる必要があります。貯蓄は老後の生活費や緊急時の資金として使えますが、貯蓄には金利が付かない上に、インフレの影響を受けます。また、貯蓄は所得税や相続税の対象となります。

  • 退職金:

退職金とは、個人事業主が事業を廃止する際に受け取れる一時金のことです。退職金は、貯蓄と違って税制上の優遇措置があります。また、退職金を運用することで、収入を増やすことにつながります。

個人事業主の平均年金額と必要な老後資金

厚生年金保険は被雇用者用の年金制度であるため、個人事業主は基本的に加入できません。会社員や公務員を退職した際に厚生年金保険の資格を喪失し、個人事業主として国民年金に加入することになります。

個人事業主の平均年金額は、どのくらいなのでしょうか?厚生労働省の統計によると、令和5年度の平均年金額は、以下の通りです。

  • 国民年金:月額6万6,250円(年額約80万円)
  • 厚生年金:月額22万4,482円(年額約270万円)

これに対して、必要な老後資金は、どのくらいなのでしょうか?厚生労働省の調査によると、老後に必要な資金は以下の通りです。

  • 夫婦世帯:月額23万5,120円(年額282万円)
  • 単身世帯:月額15万5,046円(年額186万円)

このように、個人事業主の平均年金額は、必要な老後資金には届きません。年金だけでは、老後の生活を賄うことは難しいでしょう。退職金を準備することで、年金と合わせて老後の収入を補うことが期待できます。

参考:日本年金機構|令和5年4月分からの年金額等について

個人事業主が退職金を準備するメリット

個人事業主の退職金のイメージ

個人事業主が退職金を準備するメリットは、以下の3つです。

老後の収入を増やす

退職金は、年金と合わせて老後の収入を増やすことが期待できます。退職金を運用することで、金利や配当などの収入を得られるでしょう。また、退職金は一時金として受け取ることも可能です。一時金は、老後の大きな支出にも備えられます。

税金を節約する

退職金は、税制上の優遇措置があります。退職金を準備する制度によって異なりますが、一般的には以下の税金を節約できます。

  • 所得税

退職金を準備する制度に加入すると、掛金などが所得控除の対象となります。これにより、所得税の負担を軽減できます。また、退職金を受け取る際にも、一定の控除や非課税枠があります。これにより、所得税の負担を抑えられます。

  • 相続税

退職金を準備する制度に加入すると、退職金の一定額(500万円×法定相続人の数)が相続税の課税対象から除外されます。これにより、相続税の負担を減らせます。

リスクを分散する

退職金は個人事業主のリスクを分散することが期待できます。個人事業主の場合、事業の収入が不安定だったり、事業が失敗したりする可能性があります。そのため、退職金を準備することで、事業のリスクに対する備えとなります。また、退職金を運用する際には、複数の資産に分散投資することで、市場の変動に対するリスクを低減できます。

個人事業主に人気の退職金制度「小規模企業共済制度」

個人事業主や中小企業の経営者にとって、老後の生活資金は自分で用意しなければなりませんが、自分で退職金を積み立てるのはなかなか難しいものです。そこで、おすすめしたいのが「小規模企業共済制度」です。この制度は、国が運営する退職金制度で、掛金を支払うと税金が節税できるだけでなく、廃業や退職時には共済金として受け取れます。ここでは、小規模企業共済制度のメリットや注意点について解説します。

小規模企業共済制度とは?

小規模企業共済制度とは、主に従業員の数が20人以下(一部業種では5人以下)の個人事業主や会社の役員が加入できる制度です。現在は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しており、約162万人が加入しています。

小規模企業共済制度の最大の特徴は「掛金の全額が所得控除の対象となること」です。つまり、掛金を支払うと、その分だけ所得税や住民税が減額されます。

小規模企業共済制度のメリット

小規模企業共済制度には、以下の4つのメリットがあります。

節税効果が高い

小規模企業共済制度の掛金は、全額が所得控除の対象となります。所得控除とは、所得税や住民税の計算の際に、所得金額から差し引ける金額のことです。つまり、掛金を支払うとその分だけ課税される所得が減り、税金が節約できるのです。

掛金の自由度が高い

小規模企業共済制度の掛金は、月額1,000円から7万円までの範囲内で自由に選べます。また、加入後も自由に増減や掛け止めが可能です。掛け止めとは、一時的に掛金の支払いを止めることです。掛け止めをした場合でも、掛金の累積額は減りませんが、掛け止め期間中は貸付や共済金の受給ができません。

掛金の自由度が高いということは、自分の経済状況や将来の見通しに合わせて、柔軟に掛金を調整できるということです。たとえば、収入が減ったときは掛金を減らしたり、掛け止めしたりできますし、収入が増えたときは掛金を増やしたりできます。

貸付制度が利用できる

小規模企業共済制度に加入していると、掛金の累積額の一定割合まで、低金利で貸付を受けられます。貸付の金利は、年0.9%から1.5%と、市場の金利よりもかなり低く設定されています。貸付の目的は、事業資金や住宅購入資金など、自由に決められます。

貸付制度を利用すると、事業の拡大や資産形成に役立ちます。また、貸付を返済すると、その分だけ掛金の累積額が増えるため、将来の共済金の受給額も増えます。

共済金が受け取れる

小規模企業共済制度に加入していると、廃業や退職時には、掛金に応じた共済金を受け取れます。つまり、共済金が退職金のような役割を果たすのです。共済金の受給額は、掛金の累積額や加入期間によって異なりますが、平均して約1,116万円となっています。

共済金の受取りは、一括や分割の選択ができます。一括受取りを選択すると退職所得として課税されますが、退職所得控除や基礎控除などが適用されるため、税負担は軽減されます。分割受取りを選択すると雑所得として課税されますが、分割回数に応じて控除額が増えるため、税負担はさらに軽減されます。

参考:独立行政法人 中小企業基盤整備機構|小規模企業共済 現況

参考:独立行政法人 中小企業基盤整備機構|小規模企業共済 制度の概要

個人事業主が退職金を準備できる小規模企業共済制度以外の制度

個人事業主の退職金のイメージ

小規模企業共済制度は個人事業主が退職金を準備するために有効な制度ですが、加入できない場合やそれだけでは不十分な場合もあるかもしれません。そこで、小規模企業共済制度以外にも、個人事業主が退職金を準備できる制度を3つ紹介します。

つみたてNISA

つみたてNISAとは、毎年360万円までの資産形成型金融商品を、1800万円まで非課税で積み立てられる制度です。2024年から制度が改正されたばかりで、老後の資産形成や子どもの教育資金など、長期的な目標に向けて資産を増やすことを目的としています。

つみたてNISAのメリットは、以下の通りです。

  • 非課税

配当や売却益などの所得が1800万円まで非課税です。通常の投資では、20%の税金がかかりますが、つみたてNISAでは節税できます。

  • 複利効果

非課税で得た所得を再投資できます。これにより、複利効果が発生し、資産がより大きく増える可能性があります。

  • 少額から始められる

月々1,000円から積み立てられます。また、積み立てる金額や商品を自由に変更することも可能です。
つみたてNISAのデメリットは、以下の通りです。

  • 非課税期間の制限

1800万円までは非課税ですが、それ以降は課税対象です。非課税期間中に資産を引き出すと、通常の税金がかかります。そのため、長期的に資産を運用することが前提となります。

  • リスクの存在

投資信託やETFなどの金融商品は市場の変動によって価格が上下します。そのため、元本割れや損失のリスクがあります。つみたてNISAは、長期的に見ればリスクが低減されるという考え方に基づいていますが、必ずしも資産が増えるとは限りません。

  • 手数料の負担

金融機関や証券会社などの口座に手数料がかかる場合があります。また、金融商品にも手数料がかかります。

個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)

iDeCoとは、個人型確定拠出年金という制度の通称で、公的年金とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。iDeCoでは、加入者が自分で掛金の額や運用商品を選び、掛金と運用益との合計額をもとに給付を受け取れます。iDeCoの掛金は、所得税や住民税が非課税になり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることが可能です。

iDeCoのメリットは、以下の通りです。

  • 税制優遇

掛金は所得控除の対象となり、所得税や住民税、運用益が非課税となります。給付時には所得税がかかりますが、税率は低くなります。

  • 自由な運用

掛金は、投資信託やETFなどの資産形成型金融商品に運用できます。運用商品は、自分の目標やリスク許容度に合わせて自由に選べます。また、運用商品の変更も可能です。

  • ポータビリティ

iDeCoの資産は、離職時にも持ち運びができます。企業型DCに加入している場合は、iDeCoの資産を企業型DCに移換できます。また、企業型DCの資産をiDeCoに移換することも可能です。

iDeCoのデメリットは、以下の通りです。

  • 非課税期間の制限

iDeCoの掛金は、60歳になるまで非課税ですが、それ以降は課税対象です。また、非課税期間中に資産を引き出すと、通常の税金がかかります。つまり、長期的に資産を運用することが前提となります。

  • リスクの存在

iDeCoの掛金は、投資信託やETFなどの金融商品に運用しますが、これらの商品は市場の変動によって価格が上下します。そのため、元本割れや損失のリスクがあります。iDeCoは、長期的に見ればリスクが低減されるという考え方に基づいていますが、必ずしも資産が増えるとは限りません。

  • 手数料の負担

iDeCoでは、金融機関や証券会社などの口座を開設する必要がありますが、これらの口座には手数料がかかる場合があります。また、投資信託やETFなどの金融商品にも手数料がかかります。

国民年金基金

国民年金基金とは、国民年金法の規定に基づく公的な年金で、国民年金(老齢基礎年金)とセットで、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。

国民年金基金は、国民年金や厚生年金に加入している会社員等の給与所得者と、国民年金だけにしか加入していない自営業者などの国民年金の第1号被保険者とでは、将来受け取る年金額に大きな差が生じることを解消するための上乗せ年金です。

国民年金基金のメリットは、以下の通りです。

  • 年金額の増加

国民年金基金に加入することで、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして年金を受け取れます。国民年金基金の年金額は、掛金の額や加入期間によって異なります。掛金は最大で月額約6万8,000円(iDeCoと合わせて)の上乗せが可能です。

  • 税制優遇

国民年金基金の掛金は、所得税や住民税の所得控除の対象となります。また、国民年金基金の年金は、所得税の社会保険料控除の対象となります。これにより、税負担を軽減できます。

  • 運用の安定性

国民年金基金の掛金は、国民年金基金連合会が運用します。国民年金基金連合会は、安全性と収益性を考慮した運用方針を定め、国債や株式などの金融商品に分散投資を行います。これにより、運用の安定性を高めることにつながります。

国民年金基金のデメリットは、以下の通りです。

  • 掛金の負担

国民年金基金に加入することで、国民年金の保険料に加えて、国民年金基金の掛金を納付する必要があります。国民年金基金の掛金は最大6万8,000円ですが、掛金の額が多いほど、年金額が増えるという仕組みです。

  • 受給要件の制限

国民年金基金の年金を受け取るには、一定の要件を満たす必要があります。国民年金基金の年金は、原則として65歳に到達した場合に受給できますが、60歳時点で国民年金の通算加入者等期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が段階的に引き延ばされます。

  • リスクの存在

国民年金基金の掛金は、国民年金基金連合会が運用しますが、運用にはリスクが伴います。市場の変動によって、運用益が減少する可能性がない訳ではありません。国民年金基金連合会は、運用リスクを最小限に抑えるために、長期的な視点で分散投資を行っていますが、積立不足やインフレなどのリスクも存在します。

個人事業主の退職金制度の選び方

個人事業主の退職金のイメージ

退職金の受け取り方は、制度によって異なります。小規模企業共済制度は一時金として、iDeCoや国民年金基金は年金として、つみたてNISAは退職金を積立投資信託として、退職金を受け取れます。

退職金の税金の扱いも、制度によって異なります。一時金は一定の控除や非課税枠、年金は所得税の源泉徴収があり、積立投資信託は分配金や譲渡益が最大1,800万円まで非課税となります。また、消費税や住民税などの他の税金も考慮する必要があります。

退職金の受け取り方と税金の扱いを比較すると、以下の通りです。

 

小規模企業共済制度

つみたてNISA

iDeCo

国民年金基金

受け取り方

一時金

積立投資信託

年金

年金

税金

一定の控除や非課税枠がある

分配金や譲渡益が1,800万円まで非課税になる

所得税の源泉徴収がある

所得税の源泉徴収がある

退職金の受け取り方と税金の扱いを考慮して、自分の老後の生活スタイルや資金計画に合わせ、最適なものを選びましょう。受け取り方や税金の詳細については、税理士などの専門家に相談することがおすすめです。

まとめ

この記事では、個人事業主にとって退職金が必要な理由と、退職金を準備できる制度の特徴、選び方について解説しました。退職金は、個人事業主の老後の収入源となるものの一つです。退職金を準備することで、老後の生活を安心して送れるでしょう。また、退職金は税制上の優遇措置やリスク分散の効果もあります。

退職金を準備するには、小規模企業共済制度やつみたてNISA、iDeCo、国民年金基金などの制度に加入することが有効です。これらの制度の中から、自分の事業規模や収入、リスク許容度、退職金の受け取り方などに合わせて、最適なものを選びましょう。

退職金は、個人事業主にとって大切な資産です。退職金を準備し、活用することで、老後の生活を豊かにすることが期待できます。退職金に関する詳細な情報や相談は、専門家に依頼することがおすすめです。個人事業主の退職金について詳しく知りたい方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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