確定申告で青色申告をしたいけれど、事業に追われて時間がない、青色申告の申請方法がわからないと悩んでいませんか?申請書類に要件が定められている青色申告は、税理士への依頼がおすすめです。税理士に依頼した場合の費用やメリット・デメリットを解説します。
目次
確定申告における青色申告とは
フリーランスや個人事業主は、1年間に得た所得をもとに所得税を計算し自ら納税しなければなりません。その一連の手続きを「確定申告」といい、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
白色申告は、事前申し込みが不要で簡易帳簿による記録でよく、誰でも利用できる申告方法である一方で、税制上の優遇措置はありません。
これに対し青色申告ができるのは、事業所得、不動産所得、山林所得のある場合のみです。事前に青色申告承認申請書を税務署に提出しなければならないものの、複式簿記に基づいた記帳等の条件を満たせば、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。
ほかにも、青色事業専従者給与、減価償却の特例、赤字の3年繰り越しが可能、簡易帳簿であっても10万円の青色申告特別控除が受けられるなどさまざまなメリットがあります。
以前は、白色申告の場合事業所得が300万円以下であれば帳簿を付ける義務がなかったため、所得が少ない場合は便利で簡単な白色申告を選択する方が多くいました。しかし、2014年以降白色申告でも記帳および帳簿類の保存が義務付けられたため、現在は白色申告のメリットはあまりありません。
所得金額にかかわらず、多少手間がかかったとしてもメリットの多い青色申告をおすすめします。
参考:「青色申告制度」国税庁
青色申告を税理士に依頼する場合の費用
青色申告を税理士に依頼する方法は、「確定申告書の作成だけを依頼する」パターンと「仕訳等の帳簿の作成から確定申告書の作成を丸投げする」パターンがあります。
確定申告書の作成だけを依頼する場合、帳簿は自分で作成しておきましょう。帳簿が正しいことを前提に申告書を作成するので、おおよそ数万程度が相場です。税理士によっては、帳簿の精査の必要性から確定申告書の作成だけでは請け負っていない場合もありますので注意しましょう。
帳簿の作成から確定申告書の作成までを丸投げする場合、税理士報酬は年間売り上げによって異なります。年間売上金額がおおよそ500万円未満であれば10万円程度、500万円~1,000万円未満で15万円程度、1,000万円以上で20万円程度が相場です。
申告期間だけではなく毎月の仕訳や記帳代行を含む顧問契約を結ぶと、月々の顧問料は約2.5万円~4万円が目安です。
具体的な料金は税理士に直接相談して見積もりを取り、比較検討をしましょう。税理士にどこまで依頼したいのかをはっきりさせ、料金だけでなくサービス内容や実績、人柄なども考慮して選びましょう。
青色申告を税理士に依頼するメリット
確定申告に慣れている人なら、毎年の手続きも苦労なく行えるかもしれません。しかし、確定申告を税理士に依頼すれば、初めて申告する人はもちろん毎年自分で申告していた人にもメリットがあります。どのような利点があるのか具体的に解説します。
経理処理の手間・時間を削減できる
事業を営みながら経理事務を行うことに負担を感じている人も多いでしょう。簿記や税務の知識が少ないと、調べながらの作業になり膨大な時間と労力がかかります。
税理士に申告手続きを依頼すれば、記帳や申告書の作成にかける時間が不要となり、本来の業務を行えるというメリットがあります。また、規模や個別の状況に合った制度を適用してくれるため、自分で調べる手間なく節税効果をあげてくれるでしょう。
ペナルティのリスクを軽減できる
個人事業主やフリーランスなど自分で確定申告を行った方が、仕訳間違いや経費の計上ミスをするケースがあります。こうしたミスが意図的でないにせよ、ペナルティが課されることがあるため確定申告は正確に行うことが必須です。
税理士に依頼すれば、税務の専門家として期日までに確実に、そして正確な確定申告を行ってくれるのでペナルティのリスクを軽減できます。
確定申告を何から始めたらよいかわからない場合や、本業が忙しいとき、個人事業主から法人化を考えている場合、本業以外のイレギュラーな所得がある年など、税理士に確定申告を依頼することで正確な申告を行ってくれるので安心です。
加えて税理士の署名が入った確定申告書はその正確性が担保されているため、税務署や他社からの信頼も厚く、税務調査が入りにくくなるというメリットもあります。
青色申告を税理士に依頼するかの判断基準
自分が税理士に依頼した方がよいのかわからない、と悩んでいませんか?以下の場合には、税理士に確定申告を依頼した方がメリットがあるでしょう。
ほとんど確定申告の準備ができていない
確定申告は青色申告も白色申告も、例年3月15日が申告・納税期限と決まっています。これを過ぎると65万円および55万円の青色申告特別控除が受けられなかったり、場合によっては延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されることがあります。
事業が忙しく普段から帳簿を付けられていない場合や、必要な書類が作成できていない場合には、税理士に一任することも検討しましょう。税理士からの求めに応じて書類を提出するだけで、期限内に確実で正確に申告書を作成してくれるので安心です。
帳簿の作成からすべてを丸投げした場合でも、作成した確定申告書について税理士から説明をしてもらえば、自分の事業の状態や会計について理解を深められることもできます。
自力での仕訳処理が難しい
売上や費用の発生などを帳簿に記入することを「仕訳処理」といい、事業に伴う全てのお金の動きを帳簿に記録しておかなければなりません。出張時に給油した場合の処理方法、ミーティングをしたカフェの料金、自宅を事務所としている場合の家賃、在宅勤務の電気代など、売上以外のこまごまとした費用なども記載する必要があります。
簿記や会計の知識がないと、取引ひとつとっても記入方法や仕訳方法を理解するには、とても難しく時間がかかってしまいます。
税理士は専門家として適切に処理してくれるので、仕訳処理の方法がわからない方は税理士に依頼するとよいでしょう。
税理士に依頼しても赤字経営にならない
税理士に依頼すると、費用がかかります。上記で述べたように、確定申告書作成のみの場合の費用は数万円、帳簿の作成から確定申告書の作成まで依頼する場合は10万円~20万円かかります。
さまざまな理由により、所得金額が減少して赤字になることもあるでしょう。赤字経営は銀行からの融資が受けにくくなり、手元に現金がないため運転資金が枯渇し恒常的な赤字になってしまうこともあります。税理士に確定申告を依頼したら赤字になった、とあっては元も子もありません。事業主として、赤字経営は避けるのが基本です。
とはいうものの、税理士に確定申告を依頼した場合顧問契約であれ確定申告の代行だけであれ、事業に関連していれば税理士費用は経費として計上できます。さらに青色申告をすることで赤字の繰越控除を行うことができるので、赤字であっても青色申告をした方がよいという意見もあります。
所得金額が少ない場合は、申告書の作成のみを依頼するか自力で申告書を作成するのか、今後の事業展開を考えて一度税理士に相談するとよいでしょう。
青色申告を税理士に依頼する際の注意点
青色申告を税理士に依頼する際に、いくつか注意しておきたいポイントがあります。注意点もしっかり理解してから検討しましょう。
確定申告時期は依頼が出来ない場合がある
税理士が担当しているクライアントによって差異はありますが、確定申告の時期である2月~3月は、税理士が最も忙しい時期と言われています。通常業務に加え、確定申告の依頼が殺到するからです。
書類の不備や申告の遅延によるペナルティを防ぐため、多くの個人事業主やフリーランスの人たちが税理士に依頼します。税理士も請け負える数には限界があり申告書類の作成にも時間がかかるため、繁忙期最中には新しく依頼を受けられない場合があります。税理士に確定申告の依頼をしたい場合は、できれば年内に問い合わせするとよいでしょう。
また、税理士に依頼する費用を少しでも安くしたい場合は、閑散期の5月~11月ごろに問い合わせてみましょう。金額交渉ができるかもしれません。
収益額によっては自分で対応しないと赤字のリスクがある
上述のように、税理士に確定申告の代行を依頼すると確定申告を丸投げできるというメリットがある一方で、青色申告の場合5万円程度~20万円程度の費用がかかります。所得金額によっては、税理士への報酬によって赤字になるリスクがあります。
事業が赤字の場合、青色申告で繰越控除が受けられるとはいえ、手持ち資金が減ることで事業にかける運転資金が確保できず恒常的に赤字が続くこともあります。
所得金額が少ない場合は自分で確定申告を行うことも視野に入れ、普段から帳簿の作成に携わっておくとよいでしょう。
青色申告は税理士への依頼がベスト
確定申告は自分でも行えますが、税理士に依頼すれば手間をかけずに正確な申告をしてくれます。特に帳簿や条件が定められている青色申告をする場合には、税理士へ依頼すると安心です。
費用はかかりますが、青色申告のメリットを最大限に受けられるので、個人事業主やフリーランスにとってとても心強い存在となるでしょう。
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