会社設立には事業を行うための資本金が必要です。しかし、その額は定められておらず、企業する発起人が決めなくてはなりません。
そのため、会社を設立するためには資本金をいくら用意すべきなのか、悩む方も多いのではないでしょうか。
ここでは資本金額を決定する際には目安となる資本金の平均額について説明します。
目次
会社設立時の資本金における平均金額はいくら?
創業したばかりの会社には、当然ながらまだ売り上げが発生していません。
現在は株式会社・合同会社ともに資本金1円から設立可能ですが、安定した売り上げを得られるまでは資本金をもとに経営を行う必要があります。
また、資本金は会社の規模を表す指標にもなるため、与信調査(信用調査)や銀行からの借り入れ限度額にも影響を与えます。
では、実際に会社を設立する場合、資本金はいくらぐらいが適切なのでしょう。
会社の規模や設立時の状況によって資本金はそれぞれ異なり、平均値を求めることは難しい面もありますが、政府の統計からおおよその傾向を確認できます。
中小企業は300万~500万円が3割以上
総務省統計局が整備し、運用管理を独立行政法人統計センターが行っている「政府統計の総合窓口」を参考に、中小企業における資本金の平均を探ってみましょう。
2021年時点の資本金に関する統計では、全体の割合に対し、資本金「300万~500万円」が3割以上を占めています。
次いで多いのが「1,000万~3,000万円未満」であり、こちらも3割に迫っています。3番目には、「500万~1,000万円未満」を資本金とする会社が多いことが明らかにされています。
中小企業における資本金の平均は、会社の規模などにより二極化の傾向にあることがわかります。また、こうしたことから、データで3割以上を占めている「300万~500万円」程度の資本金が少なくとも必要です。
中小企業全体のおよそ10%は300万円未満
「300万~500万円」程の資本金を用意している中小企業が多い一方で、さらに低い額を資本金としている中小企業も少なくはありません。
中小企業全体の約10%は300万円未満を資本金としています。
資本金は一度会社の資金として払い込むと、経営者が個人的に利用できなくなります。
会社経営が軌道に乗るまでは売り上げも安定しないことが考えられるため、当面の生活費確保に資本金を低い額に抑える場合もあります。
会社設立時の資本金はいくらから高いといえるのか
資本金は高ければいいというわけではなく、その会社に適した額であることが重要です。
では、会社設立時の資本金は、いくらからが高いといえるのかをここでは説明します。
業種や業態、従業員数によって異なる
会社設立時の資本金は業種・業態、従業員数などによってそれぞれ異なっています。
たとえば設備投資や仕入れにコストがかかる業種では、資本金にその分の費用も含まれていなくてはなりません。そのため資本金額も高い傾向にあります。
また、従業員数が多いと支払う人件費も増えるため資本金の額もおのずと上がります。
目安は1,000万円
前述したように国内における資本金は「300万~500万円」と「1,000万~3,000万円未満」がそれぞれ3割ほどを占めています。
こうしたことからも資本金の平均は低くて300万円、高くて3,000万円と言えます。
また、税制面からすると、1,000万円が資本金の目安です。
ただし、資本金が1,000万円以上あって高いから会社が順風満帆であるとは限りません。たとえ1,000万円未満であっても安定した経営は十分に可能です。
会社設立時の資本金の決め方について
会社を設立する際、何を目安に資本金を決めるべきかを説明します。
なお、会社設立出の資本金の決め方については、小谷野税理士法人の「会社設立時の資本金とは?その意義や設定方法と法的な注意点を解説」も、ぜひ参考にしてみてください。
初期費用を考慮する
会社設立時にはさまざまな手続きと設備投資への費用がかかります。資本金を決める際には創業時の初期費用がいくらかかるかをしっかりと算出し、反映させる必要があります。
会社を設立する際の初期費用には、会社設立費用と設備経費のほか、事務所や店舗の家賃にかかる敷金や礼金などが含まれます。
ランニングコストを考慮する
創業したばかりの会社には売り上げがないため、およそ3か月から6か月の間は資本金をもとに経営が行われます。
そのため資本金は、売り上げが出るまでにかかるランニングコストを含めて考えましょう。
また、経営は必ずしも最初から上手く行くとは限りません。創業後、経営が軌道に乗るまで時間がかかる場合もあります。
資本金を決める際にはランニングコストを十分に考慮しましょう。
許認可を受けるための基準を考慮する
業種によっては、会社設立にあたり許認可が必要です。また、その許認可を受けるために、最低限は用意しなくてはならない資本金額が決まっています。
たとえば、人材紹介業は500万円、労働者派遣事業は2,000万円。一般建設業は500万円、特定建設業には2,000万円の資本金が求められています。
税金を考慮する
資本金をいくらにするか決める際には税金も考慮しましょう。たとえば、資本金が1,000万円未満の場合には節税が可能です。
資本金1,000万円未満の場合、会社を設立してから最大2年間は消費税の納付が免除されます。
また、法人税において一定の金額を納税する均等割でも、資本金1,000万円以上の場合は180,000円、1,000万以下の場合は70,000円と大きな違いがあります。
会社設立時の資本金における注意点
会社を設立し資本金を決定する際には、次のような事柄に注意しましょう。
資本金の額は必ずしも高く設定する必要はない
資本金が少ないと銀行や取引先からの評価が低くなりがちです。とはいえ、資本金の額を必要以上に高く設定する必要はありません。
資本金が高いと、それだけ多くの税金がかかってきます。たとえば、会社を設立した際に発生する登録免許税は、資本金の額によって変動する場合があります。
【株式会社】
- 資本金額×税率7%
- 上記の税が150,000円に満たないときは申請件数1件につき150,000円
【合同会社】
- 資本金額×税率7%
- 上記の税が60,000円に満たないときは申請件数1件につき60,000円
資本金の額を決める際には必ずそこにかかる税金を確かめておきましょう。
資本金の額によって認証の手数料も変動する
会社を設立するためには、その社の基本情報や規則などを記載した定款を作成し、公証役場で認証を受けなければなりません。
この定款の認証にかかる手数料は資本金の額によって変動します。
- 資本金額100万円未満:30,000円
- 資本金額100万円以上300万円未満:40,000円
- 資本金額300万円以上:50,000円
なお、定款に「資本金○万円以上」という最低額の記載をすると、認証手数料は全て50,000円となりますので注意が必要です。
会社設立時の資本金で悩んだら「税理士」に相談してみよう
資本金が平均に届いていないと不安に思われるかもしれませんが、事業ごとに適正な資本金額は異なります。業種・業態・従業員数に合った資本金額を設定することがとても重要です。
ただし、資本金の額に関わる税制には複雑なものもあります。資本金の額でお悩みの際には、税理士に相談してみてください。
小谷野税理士法人の会社設立サービスでは、創業のサポートはもちろん、登記や税金対策、資本金への疑問についても丁寧に対応しています。