事業用自動車を導入するメリットはあるのでしょうか?ここでは、事業用自動車を導入するメリット、デメリット、導入時の要件などについて詳しく解説します。事業用自動車の導入は、節税対策と業務効率化などが期待できます。この記事を通じて、事業用自動車導入の全体像について把握し、効果的な運用を実現できるようにお手伝いします。
目次
事業用自動車とは?自家用車との違い
自動車は、プライベートで使用する自家用車と事業で使用する事業用自動車の2種類に分けられます。
荷物を運ぶトラック、目的地まで人を運ぶタクシーやバスなど、利益を得るために行っている事業で使う自動車が、事業用自動車に該当します。事業用自動車への理解を深めるために、自家用車との違いについて詳しく解説します。
使用目的
事業用自動車は、主にビジネスで目的で使用します。商品や人を運ぶなど、利益を得るための営業活動に密接に関連しており、営業ナンバー、緑ナンバー、青ナンバーと呼ばれることがあります。
例を挙げると、トラック運送業や引越し業者、タクシー、路線バスなどで使われる車のことです。これに対して、自家用車は日常生活における移動手段、通勤、買い物、レジャーなどが主な用途です。個人が所有している車、企業が自社商品を運ぶトラック、営業車などが該当します。
ナンバープレート
事業用自動車には、その用途を示す特定のナンバープレートが割り当てられるため、車両が業務用であることが明示されます。ナンバーの表示は、事業用自動車が軽自動車の場合が黒地に黄色の文字、普通車の場合は緑地に白字です。
一方で自家用車は軽自動車が黄色地に黒色が一般的で、普通車が白地に緑色の文字です。ナンバープレートによる自家用車と事業用自動車の区別は、法的規制や税制上の違いにも関連しています。
自動車保険料
事業用自動車は、不特定多数の人が運転する可能性、走行距離の多さや使用頻度の高さが考慮されます。そのため、業務中の事故や賠償責任をカバーすることに特化した保険プランへの加入を求められます。
一方で、自家用車の保険は、個人使用を前提とした一般的な保険プランに加入できます。事業用自動車は、自家用車と比べて事故を起こすリスクが高いことから、保険料も高額となりがちです。
重量税
重量税は、自家用車と比べて事業用自動車の方が安くなることが多いです。事業用自動車は、商業用途に特化した車両の性質を反映することから、車両の用途や重量に応じて異なる税率が適用されるからです。一方で、自家用車は一般的な重量税の範囲内で課税されます。
車検周期
事業用自動車は、使用頻度や安全基準に応じて、自家用やよりも短い車検周期が設定されています。これは、事業用自動車を頻繁に使用すること、高い安全基準が要求されるためです。
新車購入後に1回目、その2年後に2回目、それ以降は1年後ごとが、事業用自動車の車検周期です。一方で、自家用車の車検周期は、新車購入後に1回目、その3年後に2回目、それ以降は2年ごとの車検が定められています。
点検と整備
事業用自動車は、ビジネスでの運用において安全性を保証するために法的な定期点検と整備が義務付けられている場合が多いです。
定期的な点検とは、国土交通省が定めた項目を点検し、必要に応じて整備を行うことで、法定点検とも呼ばれています。事業用自動車と自家用車では、定期点検と整備の周期や点検項目の数が異なります。
事業用自動車を導入するメリット
事業用自動車を導入することで得られるメリットは多々あります。ここでは、主な導入メリットについて詳しく解説します。
節税対策
事業用自動車の導入は、節税対策につながります。車両の購入費用、維持管理費、運行経費などは事業経費として計上できるため、税負担の軽減に貢献します。
特に、高価な車両や大量の車両を使用するビジネスでは、自動車関連の経費が大きな節税効果を生む可能性が高いです。また、自動車を所有することでかかる重量税と自動車税も、自家用車と比べて安くなります。
たとえば、最大積載量2トンの車の場合、自家用車の自動車税が11,500円であるのに対して、事業用自動車は9,000円です。重量税についても、車両総重量5トン(積載2トン)の車を例に挙げると、自家用車が20,500円であるのに対して、事業用車両は13,000円です。
自動車税も自動車税も毎年負担する税金であることから、少しでも税金の負担が減ることで、浮いた費用を有効に使えます。
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社会的信用度の向上
事業用自動車を導入することは、企業の社会的信用度を向上させる効果が期待できます。たとえば、大企業と取引をするとき、金融機関から融資を受けるときに事業用自動車の許可証の提示を求められることがあります。
また、専用のロゴやデザインが施された車両を営業活動に使うことで、社外に対してブランドイメージを定着させる効果も期待できるのです。顧客や取引先からの信頼を得やすくなり、ビジネスチャンスの拡大につながります。
営業規模の拡大
事業用自動車を使用することで、営業活動の範囲拡大に活用できます。たとえば、ドライバーを雇用するのに求人広告を掲載する、ホームページの作成や積極的な営業活動をするときなど、事業用自動車の許可証があることで堂々と活動できるのです。
業務の効率化
事業用自動車の購入により、業務の効率化が期待できます。まず、物資や商品、従業員の移動などが迅速に行えるようになり、時間の節約につながります。また、外部のサービスに依頼するよりも、自社で車両を保有、適切に運用した方がコスト削減になる可能性が高いです。
事業の拡大や変化に臨機応変に対応できるため、事業の成長や発展に貢献してくれます。自社で車両を保有することによって、業務のニーズに応じて柔軟な運用が可能となるからです。
社員の満足度向上
事業用自動車の導入は、社員の満足度向上にも貢献します。事業用自動車を導入する場合、社会保険、労災、雇用保険への加入が義務付けられているからです。
社員のモチベーション向上や働きやすい環境作りにも貢献し、結果として企業全体の生産性の向上につながります。
また、近年は、ワークライフバランスを重視する傾向が高く、福利厚生や社会保険の有無などをチェックしたうえで勤務先を選ぶケースが多いです。福利厚生や社会保険制度を整えることで、優秀な人材の獲得も期待できるでしょう。
使わなくなった車を個人買取できる
事業用自動車として購入した車が不要になったとき、個人での買取が可能です。個人買取により、車の買取業者との交渉、オークションへの出品といった手間が省けるだけではありません。法人から、個人に資産を移転できるため、節税効果も期待できます。
ただし、適正価格とかけ離れた金額で取引をすると、税負担が増えるリスクがあることに注意が必要です。適切に取引をするためにも、買取業者に査定を依頼し、適正価格での取引に努めましょう。
事業用自動車を導入するデメリット
メリットも多い事業用自動車ですが、デメリットもあります。デメリットもよく理解したうえで、事業用自動車の導入を検討しましょう。
初期費用がかかる
経費として計上できるものの、事業用自動車を導入する際は、高額な初期費用がかかります。新車や中古車を購入する場合、車両そのもののコストに加えて、登録費用、税金、ナンバープレートの取得費用などが必要です。
また、事業用の車両であるため、特定の業務に適合するためのカスタマイズが必要な場合もあり、追加の費用が発生することもあります。
車検の負担増
事業用自動車は、安全基準を満たすために定期的な点検と車検が必要です。自家用車と比べて、点検と車検の周期が短く、コストと時間の増大につながります。
特に大型車や特殊車両の場合、車検費用は高額になる傾向があり、事業の運営コストを増加させる要因となり得ます。
任意の自動車保険の負担増
事業用自動車には、一般の自家用車と比べて高額な自動車保険料がかかります。事業活動におけるさまざまなリスクに対する保証が求められるからです。また、事業自動車が加入できる保険の種類が限られており、代理店型の自動車保険がメインとなるため保険料が割高です。
複数の車両を保有するビジネスでは、これらの保険費用が著しく事業の運営コストを押し上げる要因となるかもしれません。
事業用自動車を導入する要件と流れ
事業用自動車を導入する場合、円滑に手続きを進めるためにも登録要件や、手続きのおおよその流れについて理解しておくと役立ちます。ここでは、事業用自動車を導入する要件と流れについて詳しく解説します。
許可証の有無を確認する
事業用自動車を登録するときは、名義人が事業の種類に応じて適切な許可を得ていることが条件です。
トラックなどの貨物運送事業用車
- 一般貨物自動車運送事業
- 特定貨物自動車運送事業
- 貨物軽自動車運送事業(軽自動車)
バスやタクシーなど旅客事業用車
- 一般乗合旅客自動車運送事業
- 一般貸切旅客自動車運送事業
- 一般乗用旅客自動車運送事業
上記の許可を得ていれば、必要書類を陸運支局に提出し、審査が通れば事業用自動車として登録できます。しかし、許可を取得していない場合は、運輸局に運送事業者としての許可を得なくてはいけません。
要件を確認する
事業用自動車を導入する際に、要件を満たしているかを確認します。主な要件は以下の通りです。
- 最低6人(運転手5人、運行管理者1人)以上の社員がいること
- 事業に使用するトラック、バンの数(最低5台~)
また、事業用自動車として、輸送能力や燃費など、事業の性質、運用の要件に合った車両を選定します。
運輸局への申請
許可証の有無、申請要件を満たしていることを確認できたら、運輸局に申請手続きを行います。新車もしくは中古車を購入して事業用自動車として登録するだけでなく、自家用車を事業用自動車として変更することも可能です。
事業用自動車導入の注意事項
事業用自動車を導入するメリットの一つが節税効果です。誤った認識で車の購入や手続きを進めてしまうと、期待する効果が得られないことがあります。ここでは、事業用自動車を導入するときの注意点について解説します。
経費として計上できない車種がある
事業用自動車を購入する際、すべての車種が経費計上できるわけではありません。事業用自動車として登録したい車が、業務において必要かどうかが問われるからです。
事業用と認められる車種は限定されており、たとえば、高級車を運送会社が業務に使用する場合、業務に適さない車種と判断されるでしょう。しかし、高級車の使用が取引を有利に進めると判断された場合、高級車でも経費への計上が認められることもあります。
事業用自動車の導入を検討する前に、経費計上が可能な車種について税理士に確認し、計画的に選定することが重要です。これにより、税務上の不利益を避け、事業経費の最適化を実現しましょう。
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新車と中古車による減価償却の対応の違い
決算時に行う減価償却処理が、新車と中古車で異なる点に注意しましょう。新車の法定耐用年数は、普通車が6年、軽自動車が4年とされています。中古車の場合は、法律で定められた計算方法を用いて、耐用年数を計算します。
契約のタイミングを見計らう
高い節税効果を期待するなら、自動車の契約タイミングにも注意が必要です。車の減価償却は1カ月単位とされています。そのため、企業の決算月に車を契約してしまうと、1カ月分のみがその年度の減価償却の対象となるからです。
決算の翌月に車を契約することにより、減価償却による節税効果を最大化できます。ただし、事業用自動車の必要性に応じて、購入に適したタイミングが異なります。契約時により良い時期を見極める判断基準の一つとして、覚えておきましょう。
事業用自動車の導入で業務効率化と節税対策につなげよう
事業用自動車を購入することにより、得られるメリットについて詳しく解説しました。事業用自動車の導入により、高い節税効果、業務の効率化など、さまざまなメリットが期待できます。
しかし、導入の要件、車種の選定など注意するべき点がいくつかあります。事業用自動車のメリットを税金対策や業務に活用できるなら、導入を前向きに検討してみましょう。