融資と借入はどちらも金融機関からお金を借りる行為を指す言葉ですが、用途や金額などが異なります。本記事ではそれぞれのメリット・デメリット、審査方法の違いなどについても詳しく解説するので、ぜひ特徴を押さえた上で的確に利用しましょう。
目次
融資と借入の違いとは
融資と借入は、どちらも個人や法人が金融機関からお金を借りることを表す言葉です。返済義務があり利息を払う必要がある点も共通しています。最大の違いは融資の用途は「事業用」に限られているのに対して、借入は「個人用・事業用」と幅広いことです。
融資は事業支援として行われるため、開業資金や設備投資などで使用することを借りる段階から決められます。一方、借入の場合は事業用・個人用どちらとしても使用できます。借入プランによっては生活費の補充や物品の購入など使用内容を問わないケースもあります。
また、融資は限度額が大きく、審査に受かれば年収を超える金額も利用可能です。日本政策金融金庫の新規事業育成資金には、融資限度額7億2,000万円という高額な融資制度もあります。
それに対して、消費所金融などの貸金業者からの借入は年収の三分の一以上の借入が原則禁止です。
出典:貸金業法のキホン|金融庁
融資のメリット
融資とはお金を貸す金融機関側の言葉で、お金を借りる立場は「融資を受ける」と言います。
ここでは融資の主なメリットについて解説します。
多額の資金を一度に手にできる
融資を受ける最大のメリットは、多額の資金を一度に手にできることです。
仕入れに必要な資金を一度に全額準備できなくても、長期的な返済であれば可能ということはよく起こります。主に銀行や信用金庫といった金融機関から受けることが多いため、大きな金額を借りたい場合は融資のほうが借入よりも適しています。
多額の資金を投入することで、事業の危機を解決したり利益を大きく育てたりしたい場合に特に効果的です。
資金提供者に干渉されない
融資以外の資金援助には出資や投資などがあり、どちらも原則として返済義務がありません。
その代わりに資金提供者から株式の売買差益や、配当・優待、さらに経営へ参加する権利などを求められることがあります。特に出資は経営トラブルが起こりやすいため、契約前の取り決めやリスクマネジメントをよく練っておく必要があるでしょう。
また、出資には原則返済義務はないとはいえ、それを理解していない資金提供者も一定数いることは事実です。議決権を渡したくない場合は、株式の三分の二以上を自分で保有するといった対策も必要になります。
一方、融資の場合は資金提供者が重視しているのは定期的な返済のみであり、原則的には経営に干渉する権利はありません。
第三者に介入されずに経営できることは融資のメリットと言えるでしょう。
融資のデメリット
融資は効率的な資金調達ができる一方、高額を借りることの責任やリスクも付きまといます。
返済義務がある
融資とは金融機関が利息によって利益を得るためのビジネスの一環です。そのため融資には当然返済義務があり、返済期限内に全額回収するまで利息は続きます。利息をつけて返済することになるので、借入金額である元本よりも高額になります。
出資や投資の場合は事業で利益が出た場合に分配を行いますが、資金や利息の返済義務はありません。
倒産した場合、投資家は利益を得られないこともあります。ですが、融資の場合は仮に事業が倒産しても返済義務は残るため、資金計画には細心の注意が必要です。
審査が厳しく申請準備が大変
融資の際に金融機関が最も重視するのは、元本と利息を回収できるかどうかです。融資額が高額になることが一般的なため、融資する相手の返済能力や信用調査なども厳しく行います。
審査の結果希望額の一部しか融資されなかったり、融資そのものを受けられなかったりするケースもあります。そのため借入に比べると審査の申請準備や審査期間も長い傾向があります。
融資の審査は、下記の流れで行われることが一般的です。
- 融資担当者との事前相談
- 申請書類の準備
- 審査申込み
- 面談
- 実地確認
- 審査結果の通知
必要な書類は融資の内容によって異なりますが、全員に共通する書類もあります。
- 借入申込書
- 事業計画書
- 預金通帳(最近6ヶ月分以上)
- 運転免許証/パスポート
- 支払い明細書
- 賃貸借契約書(店舗/自宅)
上記以外にも条件によって必要になる書類は下記の通りです。
【不動産を所有している場合】
固定資産税の領収書もしくは固定資産税課税証明書
【事業開始から1年以内】
創業計画書/水道光熱費等の支払いの証明書類/源泉徴収票または確定申告書2年分
【事業開始から1年以上】
企業概要書/納税証明書/試算表(発注書・見積書・業務委託契約書でも可)
自己資金を準備する必要がある
融資は原則として自己資金がゼロの状態では受けることができません。
自己資金の平均はプランによって異なりますが、希望融資額の3割が最低額の目安と言われています。
日本政策金融公庫の2023年度新規開業実態調査によると、開業時の資金調達額は平均1,180万円です。そのうち金融機関等からの借入が768万円で、平均調達額の約65.1%を占めています。
自己資金は平均280万円で23.8%なので、融資の可能性を上げるためにはやはり3割程度の準備が必要です。
借入のメリット
借入とは個人や企業が金融機関からお金を借りて生活費を補充したり、事業用として使ったりすることです。融資とは異なるその利便性について押さえておきましょう。
スピーディーに借りられる
借入は金額が融資よりも低いため、審査にもそれほど時間がかかりません。少額のカードローンの場合は、最短で即日借入が可能なケースもあります。
融資とは異なり用途が限られていないため、日常生活で急に小口の資金が必要になったときにも便利です。
審査が簡単
大半の金融機関では借入の際にも審査がありますが、融資に比べると申請書類が少なく審査期間も短いことが一般的です。
下記はどの金融機関でも共通して求められる書類です。それ以外にも金融機関によって異なる書類が加わることがあります。
- 借入申込書
- 預金通帳(最近6ヶ月分以上)
- 運転免許証/パスポート
- 支払い明細書
【法人の場合】
事業計画書/納税証明書/試算表/借入状況一覧/確定申告書
借入のデメリット
借入は簡易で利便性ならではの注意点もあります。
自己管理力が必要
借入は個人でもスピーディーにお金を借りられるため、利用の際には自己管理能力が求められます。
特にカードローンは、自動車ローンや住宅ローンのように用途を限定せず利用できるため便利ですが、そのぶん返済が滞りやすいというリスクがあります。あまり頻繁に使うと金銭感覚が狂ってしまう場合もあるので注意しましょう。
近年は法令によって、借入限度額が設けられたため多重債務に陥るケースは減りました。しかし、それでもリスクの大きさを自分自身で常に認識しながら返済する必要はあります。
年収の三分の一が限度額
リーマンショックの影響もあり、複数業者から多額の借金を抱える多重債務者の増加が社会問題になりました。それを防止するために、平成22年6月以降は個人が貸金業者からの借入を行う際の借入限度額は「年収の3分の1以下」と定められました。この決まりを総量規制と言います。
引用:貸金業法のキホン|金融庁
例えば年収600万円の場合の借入限度額は200万円以下です。総量規制では借入金額全体が対象になるため、すでに1社から150万円借入している場合、残りの限度額は50万円になります。
一部の例外はありますが、貸金業者のカードローンの場合は必ず総量規制が適用されるため、それ以上の金額を借りようと考えている人は注意してください。
出典:貸金業法Q&A|金融庁
出典:貸金業法|e-GOV
専門家のサポートも視野に
融資と借り入れはどちらも金融機関からお金を借りる行為ですが、用途やメリット・デメリットなどが大きく異なります。
特に融資の場合は申請準備に時間と手間がかかるので、手早く行うためには専門家のサポートもおすすめです。各金融機関に求められる申請内容に精通している場合は、融資の可能性や融資額を上げる可能性も高まります。
借入の場合も、専門家のサポートのもとで自分に合った借入額を確認して返済計画を立てることで、安心かつ確実な返済ができるでしょう。