2023年10月よりインボイス制度が施行されたことで、免税事業者の一部が課税事業者へとなりました。そのため、消費税の納税義務が発生しており、2024年(令和6年)確定申告から正しく納付しなければいけません。本記事では個人事業主の消費税の扱いについて解説します。
目次
消費税とは?
消費税とは商品の購入やサービスの提供などを受けた際に課せられる税金のことです。負担するのは「一般消費者」であり、消費税を預かっている「事業者」が納税を行います。「税を負担する人」と「納税をする人」が異なる「間接税」であるのが、消費税の1つの特性です。
参考:消費税のしくみ|国税庁
個人事業主の消費税納付のタイミングは?
個人事業主は、基準期間の売上高が1,000万円を超えた場合に課税されます。例えば、令和5年の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、令和7年より課税事業者として消費税の納税義務が発生します。
逆に課税売上高が1,000万円以下未満の場合は、消費税を納税しなくても問題ありません。また、特定期間(課税期間の前年の1月1日から6月30日まで)における課税売上高が1,000万を超過した場合は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下未満であっても消費税の納税義務が発生します。
消費税の課税対象と非課税対象の取引とは?
消費税は一般的な消費が伴うほとんどすべての取引において発生します。一方で、以下の取引においては発生しません。
- 土地の譲渡、貸付けなど
- 有価証券、支払手段の譲渡など
- 利子、保証料、保険料など
- 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
- 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
- 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
- 外国為替業務
- 社会保険医療など
- 介護保険サービス・社会福祉事業など
- お産費用など
- 社葬
- 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
- 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
- 教科用図書の譲渡
- 住宅の貸付け
税の性格や社会政策的配慮などから非課税対象の取引は定められています。
インボイス制度下で個人事業主が消費税納付を免除されるには
インボイス制度とは基準期間の課税売上高に関わらず、課税取引業者であれば消費税を納付しなければいけない制度です。一方で、消費税納付が免除されるケースもあります。
消費税を負担する必要がない個人事業主
適格請求書発行事業者に登録をすると、消費税の納付を行わなければいけません。しかし、適格請求書発行事業者に登録しておらず、基準期間の課税売上高が1,000万円以下(特定期間における課税売上高が1,000万円以下)の場合は、個人事業主側では消費税を負担する必要はありません。
消費税の納税義務がある個人事業主
消費税の負担がないケースがある一方、以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、消費税の納税義務があります。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える
- 特定期間における課税売上高が1,000万円を超える
- 適格請求書発行事業者に登録をしている
インボイス登録しないことで起こるデメリットは?
敢えてインボイス登録をしないことで、消費税の納税を避けようと考えている個人事業主は少なくないでしょう。しかし、インボイス登録をしないことで、以下のようなデメリットが起こる可能性があります。
値下げや取引停止の可能性
インボイス登録をしないと免税事業者である仕入れ先から適格請求書を受け取ることができません。そのため、買い手が消費税を負担する必要があります。
今まで通りの取引を続けていると、取引先の負担が大きくなってしまうため、値下げ交渉をされる可能性があるでしょう。場合によっては取引が停止する可能性もあるかもしれません。
新規獲得が難しい場合も
企業としては消費税の負担を少なくするために、インボイス未登録の事業者との取引を避けるケースが増える可能性があります。結果として、新規案件を獲得する際に、インボイス未登録であることが不利に作用してしまうかもしれません。
個人事業主の消費税計算方法
個人事業主が納付する消費税は、原則となる計算方法の他に税負担を少なくするための計算方法があります。具体的な内容について確認していきましょう。
本則課税の計算式
消費税の原則となる計算方法は、本則課税と呼ばれています。以下の計算式で算出します。
売上時に預かった消費税 − 仕入れの際に支払った消費税 = 納付する消費税 |
売上時に預かった消費税と仕入時に支払った消費税をすべて把握しておかなくてはいけません。そのため、課税事業者にとっては負担が大きい計算方法です。
簡易課税の計算式
簡易課税制度は課税売上高を使って消費税の計算を行います。下記の表のみなし仕入れ率を使用します。
事業区分 | みなし仕入率 |
第1種事業(卸売業) | 90% |
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る) | 80% |
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) | 70% |
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業) | 60% |
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く) | 50% |
第6種事業(不動産業) | 40% |
計算式は以下の通りです。
売上時に預かった消費税 × (100%−みなし仕入れ率) = 納付する消費税 |
例えば、卸売業であれば預かった消費税の1割を納付することになります。比較的簡単に計算ができる一方で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者が、事前に届出書を提出している場合のみ利用可能な方法であるため注意しましょう。
2割特例の計算式
2割特例とはインボイス制度によって課税事業者になった場合に適用できる経過措置であり、預かった消費税のうち2割を納税する方式です。計算式は簡易課税制度と大きく変わりません。
売上時に預かった消費税 × 20% = 納付する消費税 |
簡易課税制度とは異なり、事業区分によって税率が変わらないのが特徴です。そのため、多くの事業者にとっては、2割特例を利用した方がメリットが大きいです。一方で、卸売業者の場合は、簡易課税制度を利用した方が節税効果は高いため、それぞれの制度をしっかり理解しておくことが大切です。
個人事業主が消費税を節税するポイント
個人事業主が消費税を節税するためには、以下のポイントを抑えておくことが大切です。
インボイスの経過措置を活用
インボイス登録によって免税事業者が課税事業者になった場合は、インボイスの経過措置を活用しましょう。先ほど紹介した2割特例は、インボイスによって課税事業者になった場合に適用できます。
他にも少額の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入れ額の上乗せが可能です。これらを活用すれば、高い節税効果が見込めるでしょう。
経費の適切な計上
消費税は仕入れの際に発生した消費税が多ければ多いほど、納税額が少なくなります。そのため、消費税を節税するためには、経費を適切に計上して課税仕入れを明確にしておくことが大切です。
納税方法の選択
先ほど紹介した「本則課税」「簡易課税」「2割特例」の計算方法のうち、最も自分にとってメリットが大きいものを選択しましょう。一度決めた計算方法は原則として変更できません。そのため、消費税の計算方法は慎重に検討する必要があります。
個人事業主の節税に関する相談ならぜひ「小野谷税理士法人」にご相談ください。
個人事業主が顧問税理士をつけるメリット
個人事業主の方は、顧問税理士をつけることで消費税を楽に納付できます。
以下より、顧問税理士をつけるメリットについて解説します。
補助金・助成金申請が楽になる
補助金や助成金の申請は、手続きが面倒なケースが少なくありません。時間が取られてしまうため、仕事の合間に申請するのは難しい場合もあります。顧問税理士がいれば、手続きをすべて行ってくれるため、ほとんど負担はかかりません。
節税効果があがる
個人事業主は消費税以外にも所得税や住民税、事業税などを納付しなければいけません。税による負担は想像している以上に大きいため、少しでも節税を行うことが大切です。
しかし、効果的な節税を実現するためには、高度な知識が必要です。顧問税理士を雇うことで、知識が少ない方でも高い節税効果が見込めるでしょう。
税務知識がつく
顧問税理士に税に関する業務を対応してもらう中で、自身も税に関する知識を身につけることができます。ビジネスを進めるうえで、税金に関する知識は非常に重要です。知識が得られるのも顧問税理士を利用するメリットといえるでしょう。
税務調査対応で心強い
事業をおこなっている以上、税務調査が行われる可能性はゼロではありません。その場合に顧問税理士がいれば、誤った対応をする心配がなくなります。税務調査は経験がなく、正しい対応ができないケースも少なくありません。顧問税理士の存在は大きく役に立つでしょう。
個人事業主が確実な消費税納税をするには税理士が心強い味方に
個人事業主が消費税納税を確実に行ううえで、税理士は心強い味方になります。インボイス制度や消費税についてわからないことが多い方は、ぜひ顧問税理士の契約を検討してみてください。