会社の形態には、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類があります。株式会社は日常生活の中でよく耳にしますが、その他の会社形態はあまりなじみがないのではないでしょうか?そこで今回は、このうち合同会社について、略称やどのような会社形態であるかを中心に、詳しく紹介します。
目次
合同会社の略称
合同会社の日本語の略称は、「(同)」です。具体的な例でしめすと、以下のようになります。
- 正式名称:ABC合同会社
- 日本語略称:ABC(同)
合同会社の英語の略称
合同会社の正式名称を英語では、「Limited Liability Company」と呼びます。英語での略称は、それぞれの頭文字を利用して、「LLC」です。具体的な例でしめすと、以下のようになります。
- 正式名称:ABC Limited Liability Company
- 英語略称:ABC LLC
合同会社のカタカナの略称
銀行振込みの際の口座名称では、カタカナの略称がよく使われます。合同会社のカタカナの略称は、「(ド)」です。具体的な例でしめすと、以下のようになります。
- 正式名称:ABC合同会社
- カタカナ略称:ABC(ド)
注意が必要なほかの会社形態の略称とは?
ここでは、合同会社以外の会社形態の略称について紹介します。よく間違いやすいため、注意が必要です。
合資会社の略称は(資)
合資会社の略称は、(資)です。合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員によって構成される会社です。無限責任社員とは、会社債権者に対して無限の連帯責任を負う社員(出資者)であり、有限責任社員は会社債権者に対して責任の限度額が出資額に限定されている社員(出資者)を指します。
合名会社の略称は(名)
合名会社の略称は、(名)です。合名会社とは、無限責任社員のみで構成される会社です。そのため、社員(出資者)は会社債権者に対して無限の連帯責任を負うことになります。
株式会社の略称は(株)
株式会社の略称は、(株)です。この略称は、日常生活の中でもよくみかける略称ですので、ご存じの人が多いでしょう。
有限会社の略称は(有)
平成18年5月の会社法施行前までは、有限会社と呼ばれる会社形態の設立が認められていました。現在は、有限会社を新たに設立することはできなくなりましたが、会社法施行前に設立された有限会社は一定の期間は、そのまま有限会社の商号を継続利用することできます。
有限会社とは、有限責任社員だけで構成されている会社であり、略称は(有)です。
合同会社とは
つぎに、合同会社とはどのような会社形態であるのか、一般的な会社形態である株式会社との違いから詳しく解説します。
株式会社との違い
株式会社は、出資者である株主と実際に会社の経営を行っていく取締役の役割が切り離されています。一方、合同会社は出資者が会社の経営も行っていく点が大きな違いです。
その他にも、株式会社は役員・役職の任期は10年であり、決算公告が必要となっていますが、合同会社では役員・役職の任期はなく、決算公告は不要といったような、さまざまな違いがあります。
合同会社の特徴
つぎに合同会社の特徴について解説します。特徴としては以下の3点があります。
- 出資者の有限責任
- 法人格の存在
- 強い定款自治
それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。
出資者の有限責任
合同会社は、有限責任社員(出資者)だけで構成される会社です。そのため、出資者は会社債権者に対して自分が出資した額を限度とする弁済責任だけを負い、出資額を超過する債務については、弁済責任を負う必要はありません。
また、合同会社では出資の履行によって社員となることから、社員になった時点ですでに出資義務は履行済みです。そのため、会社債権者は会社の財産から弁済を受けられなかったとしても、社員個人に対して弁済を要求することはできません。
有限責任社員(出資者)の出資額だけでは、会社債権者に全額弁済できないときには、会社の資産を売却し、その売却額で弁済します(つまり倒産となります)。
法人格の存在
法人格とは、法人の権利能力のことです。簡単に言うと、法人でも個人と同じく銀行口座開設・契約・売買・訴訟などができる能力のことです。
合同会社には法人格があるため、会社として権利取得・義務履行が可能です。
強い定款自治
定款とは、会社の憲法とも呼ばれており、会社自身が作成した会社が守るべきルールのことです。たとえば、商号や本店の所在地、株券の発行などのルールが記載されています。
定款自治とは、自らが定めた定款に沿って、自主的に運営をしていくことを指します。つまり強い定款自治とは、会社を運営するにあたってその自由度が高いという意味になります。
合同会社設立の手順
つぎに、合同会社を設立するための手順を紹介します。手順としては、以下の6点があります。
- 法人の基本情報を決定する
- 定款の作成
- 出資金の払い込み
- 法人登記の必要書類作成
- 法人登記と必要手続き
- 登記後の手続き
それぞれの手順について、詳細をみていきましょう。
法人の基本情報を決定する
最初にすべきことは、法人の基本情報を決定することです。基本情報とは、「商号」「事業目的」「本店所在地」「資本金」「発起人の氏名・住所」などを指します。
これらの項目は、会社の憲法ともいえる定款でも、必須な記載項目でありいずれも重要な情報です。商号については、会社名の前後に「合同会社」をつける必要があるため、注意しましょう。
事業目的は、設立した会社が行う事業内容を指します。定款に記載されていない事業内容を行うことはできませんので、将来的に行う事業についても忘れずに決めておきましょう。
定款の作成
法人の基本情報が決定したら、決定内容を元に定款の作成を行います。前述のとおり、定款は会社の基本ルールをまとめたものであり、会社にとってもっとも重要な書類です。内容をよく吟味して作成しましょう。
なお、作成方法としては紙と電子定款のどちらかの形態で作成します。電子定款の場合は、収入印紙代が不要となるため、コストを抑えることができます。
出資金の払い込み
つぎに銀行口座に出資金を払い込みします。法人用の口座は、登記が完了しないと開設できないため、通常は発起人の個人用口座に出資金を払い込むことになります。
なお、登記をするにあたっては、出資金の「払込があったことを証する書面(以下、払込証明書)」が必要になります。払込証明書を作成するためには、払い込みが行われた銀行口座の通帳コピーが必要です。そのため、銀行口座のコピーを忘れずに準備しておきましょう。
法人登記の必要書類作成
法人登記を行うためには、さまざまな書類を作成・準備しないといけません。必要な書類は具体的には、以下の6点です。
- 合同会社設立登記申請書
- 定款
- 代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面
- 代表社員の就任承諾書
- 払込証明書
- 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
その他にも、場合によって必要となる書類もあります。そのため、詳細は下記出典元の情報を参照ください。
法人登記と必要手続き
法人登記の書類の準備が終わったら、法人登記申請を行います。申請方法には、書面(持参・郵送)またはオンラインがあります。書面の場合には、設立する会社の本店所在地を管轄する登記所に提出します。
オンラインの場合には、法務局のホームページから申請を行います。
登記後の手続き
登記が完了した後には、下記の4つの手続きを行う必要があります。
- 税務について税務署に届出をする
- 地方税について地方自治体に届出をする
- 社会保険について年金事務所に届出をする
- 労働保険関係について各所へ届出をする
税務については、会社の本店所在地を管轄する税務署に届出を行います。具体的には、法人設立届出書・給与支払事務所等の開設届出書などを、決められた期間内に届出をする必要があります。
地方税については、本店所在地がある都道府県・市区町村へ、法人設立届出書などの書類を届け出ます。
社会保険には、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」があります。健康保険・厚生年金保険新規適用届などの書類を届け出ます。なお、社会保険の書類の提出は短期間のうちに実施する必要があるため、注意が必要です。
労働保険関係には、「労災保険」「雇用保険」の加入手続きが必要です。労災保険は本店所在地を管轄する労働基準監督署に届け出を行います。雇用保険は本店所在地を管轄するハローワークで手続きを行います。
個人事業主から合同会社を設立するタイミング
つぎに、個人事業主から合同会社を設立するタイミングについて、解説します。タイミングとして最適な時期は、「売上高が1,000万円となったとき」または「所得高が600万円となったとき」です。
売上高1,000万円
売上高であれば、1,000万円を超したタイミングが会社を設立するよいタイミングです。理由としては、売上高1,000万円を超えると法人の方が個人事業主より、税負担が軽くなるためです。
具体的には、会社を設立することにより、消費税の負担が軽減されます。個人事業主も法人も売上高1,000万円を超えると、その2年後から消費税の課税事業者となり、消費税を納付することになります。
しかし、法人であれば会社設立後から2年間は、消費税の納付が免除されます。つまり売上高1,000万円を超えると、個人事業主はその2年後から消費税を納付しなければなりませんが、法人化するとさらに2年間(個人事業主と比べると合計4年間)消費税の納付が免除されるわけです。
なお、令和5年10月よりインボイス制度が導入されたことにより、発注元の要請によって売上高1,000万円以下の個人事業主でも、消費税の課税事業者を選択せざるを得ないケースがあります。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間内に課税事業者となると、「2割特例」が適用されるため、消費税の納税額が軽減されます。そのため、売上高1,000万円未満であっても、早めに法人成りすることも考えてみる必要があるでしょう。
所得額800万円
所得額であれば、800万円を超えたタイミングが、合同会社を設立する目安といわれています。個人事業主の所得税額と、合同会社の法人税額が逆転する金額帯が、およそ800万円といわれているためです。
有限会社から合同会社に変更するには?
有限会社から合同会社への会社形態の変更方法について、ここでは紹介します。手順としては、以下の4点となります。
- 法務局で商号と目的の調査を行う(社名を新たに変更する場合のみ)
- 定款の変更
- 有限会社解散登記の申請
- 合同会社設立登記の申請
実際に会社形態を変更する場合には、商業登記(司法書士)や会社設立(税理士)などの専門家に相談して手続きを行うことをおすすめします。なお、略称は有限会社の(有)から、合同会社の(同)に変更となるので、注意しましょう。
合同会社から株式会社に変更するには
合同会社として会社を設立後、資金調達のしやすさや社会的信用度の向上のため、株式会社に会社形態を変更することも少なくありません。合同会社から株式会社に会社形態を変更するための主な手続きとしては、下記の4点となります。
- 組織変更の公告
- 株式会社の設立登記
- 組織変更の登記申請
- 税務署、市区町村、年金事務所等に変更の届出を行う
なお、略称は合同会社の(同)から、株式会社の(株)に変更となります。また、合同会社から株式会社に会社形態を変更するにあたっては、煩雑な手続きが必要となりますので、専門家に相談の上手続きを行うことをおすすめします。
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まとめ
今回は会社形態のひとつである合同会社について、その略称や会社設立手順および合同会社を設立するにあたって適したタイミングなどについて解説してきました。
合同会社の略称は(同)、会社設立にあたっては定款の作成・出資金の払い込み・法人登記が必要であること。また、合同会社を設立するタイミングとしては、売上高1,000万円・所得高600万円が目安になることが分かりました。
これから合同会社の設立を考えている人は、今回の記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。