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会社設立の基礎知識

個人投資家が法人設立するメリットは?節税の観点からも詳しく解説

更新日:2024.5.4

物価高や新NISAの推進など、お金に関するテーマが注目される中、個人の投資家として収益を得ている方も増えてきました。投資が順調に進み、所得が増加した際に考慮すべきなのが個人投資の法人化です。投資家が起業することで、特に税制面では多くのメリットを得られます。投資家の納める税金は収入によっては、多額になりやすく、資産運用を行うなかでは大きな負担です。しかし、個人投資家の税金の負担は法人化によって軽減できる場合があります。本記事では、個人投資家として収益を得ている方へ向けて、法人化するメリットを解説します。

投資家の現状

投資家のタイプは主に「個人投資家」「機関投資家」「外国人投資家」の3つに分けられます。個人投資家は文字通り個人で投資をしている人たちです。

機関投資家は個人の顧客などから資金の預託を受けた上で、運用・管理を行っている法人投資家です。そして外国人投資家は、日本の証券市場に投資している外国籍の投資家のことです。

日本取引所グループ(JPX)が発表した2022年度の株式分布状況調査によると、2023年3月末の個人株主は延べ6,982万人であり、前年度より521万人増加して過去最高を更新していて、9年連続で増加傾向にあります。

増加の理由は「少額投資非課税制度(NISA)の活用が定着してきた」と東証担当者は見解を述べています。

参考:調査レポート | 日本取引所グループ

参考:個人株主、9年連続で増加 株上昇、投資家の裾野拡大 – 産経ニュース

個人投資家における法人設立のメリット

投資家が法人を設立することで、次のようなメリットを得られます。

節税効果への期待

投資家が会社を設立し法人化する理由としてまず挙げられるのが節税です。

個人にかかる所得税と法人にかかる法人税とでは異なる仕組みを持っており、法人税のほうが所得税より高い節税効果を得られます。

所得税は個人の所得に課税されます。一方の法人税は会社に対して課される税金で、次の計算式によって算出されています。

  • 法人税額=課税所得×税率-税額控除額

「課税所得」は所得税のかかる対象で、法人が事業で得た収益から原材料費・人件費・減価償却費などの費用を差し引いたものです。

また、「税額控除額」は、課税所得に税率をかけて算出された所得税額から直接控除が行われています。そのため高い節税効果を期待できるのが特徴です。

税金の仕組みの違いから、利益が一定額を超えると所得税よりも法人税のほうが低く抑えられます。所得税の税率は900万円を超えた場合33%です。

そのため個人事業主としての利益が900万円を超える前に法人化するのが賢明と言えるでしょう。

ただし、会社を設立すると法人税だけでなく、法人事業税・法人住民税なども課されます。節税だけに目を向けるのではなく、個人事業主と法人とでどちらのほうがメリットが大きいかを慎重に比較しなくてはなりません。

会社設立の初期費用や運営コストなどを含め、重々考慮した上で起業しましょう。

法人と個人事業主が納める税金にはそれぞれ次のような種類があります。

法人が納める税金の種類

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 事業所税
  • 消費税・地方消費税

個人事業主が納める税金の種類

  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 住民税
  • 個人事業税
  • 消費税・地方消費税

法人税とは法人が得た所得に対して課される税を指します。つまり会社版の所得税のようなもので国税に該当します。

事業税は地方税です。事業を行う個人には個人事業税が、法人には法人事業税が、それぞれの所得・収入に応じて課せられます。

住民税・法人住民税も地方税にあたります。また、事業税と事業所税は言葉がよく似ていますが異なる税制のため注意しましょう。

  • 法人事業税:法人が事業で利用する公共サービスや施設の費用を一部負担するための地方税です。所得に対する税率をかけて算出されているので所得がなければ発生しません。
  • 法人住民税:法人に課税される住民税で、法人事業税と同様に法人が行政サービスを利用する費用を一部負担する地方税です。
  • 事業所税:一定規模の法人、もしくは個人に課される地方税で、事業税とは異なり一部の自治体で納税義務が発生します。主に政令指定都市や人口30万人以上の都市などが課している税金です。

経費として計上できる範囲が広くなる

法人は個人事業主に比べ、経費として計上できる範囲が広がります。一般的に法人は利益を生み出すことを目的としているため、必要な費用は全て経費として計上できます。

経費が増加することで、課税対象となる法人の所得からその分が差し引かれ、おのずと会社が納める税金も抑えられます。個人投資家が法人を設立した場合には、経費として計上できる範囲を正確に把握しておくことで適切な節税を行えます。

とはいえ、事業とは無関係な個人の衣類やバッグを経費として計上することはできません。たとえば、自動車も、事業のために使うのであれば購入費の減価償却や、ガソリン代・駐車代などの費用も経費に計上できます。

しかし、実際はプライベートで使用しているのに経費として計上すると不正請求に該当してしまいます。故意の不正請求には罰則が与えられることもあるため注意しましょう。

ほかには、会社設立にかかった登録免許税や発起人の報酬費用などの創業費、新たに営業を行うため作った印鑑や名刺、広告宣伝費などの開業費も経費にできます。

法人を設立すると経費に計上可能なもの

法人を設立した場合、次のような費用も経費として計上できます。

  • 保険料:健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険などの社会保険の会社負担分を経費扱いできます。加えて生命保険料の掛け金から上限が取り払われます。
  • 住宅費:会社名義で不動産物件を借り、社宅扱いで経営者へと貸し出すことで、家賃の80%程を経費として計上可能です。また、同様に会社名義で住宅を購入し、社宅とすることで借入金の利息や税金、修繕費などを経費にできます。

家族に給与を支給できる

法人の場合は投資家本人の報酬はもちろんのこと、事業を手伝う家族に給与を支給し、それを経費として計上可能です。

一方、個人投資家は原則的に、事業主のもとで働く家族への給与を経費として計上できません。経費とするためには一定の要件を満たす必要があります。本人の給与や退職金も経費にはなりません。

また、法人化で役員報酬を経費にすることも可能です。投資家本人に対する役員報酬以外にも、家族が役員に就くことで経費の適用範囲を広げられます。

役員報酬には個人の所得税が課せられるため納税の際には注意が必要ですが、給与所得控除を受けられることも同時に覚えておきましょう。

相続税の負担軽減になる

役員報酬によって財産をあらかじめ家族分散しておけば、将来、万が一のことがあった際に相続税の負担が軽減されます。投資家が多様な財産を個人名義で保有していると、相続人はそれらを個別に相続することとなり逆に負担が増えます。

保有する財産を法人名義に変更しておけば、相続人は法人を承継することで円滑に相続を行えます。

賠償範囲の制限

会社を経営する以上、損失のリスクはゼロとは限りません。投資会社であれば株価が暴落した際には事業に大きな損失が生じます。しかし、仮に大きな損失が生じても、法人であれば経営者である投資家の被る損害は会社に出資した範囲にとどめられます。

法人の資産と個人の財産は分離されているため、経営者は出資金を失うことはあっても個人の財産を損害にあてずに済みます。ただし、経営者個人が会社で借り入れた金銭の保証人になっている場合は、上記のケースに該当しないため注意しましょう。

なお、個人事業主が投資で損失を受けた場合、巨額であれば自己破産に陥ってしまうケースもあります。万が一の賠償範囲に制限があるのは、法人ならではのメリットと言えます。

赤字が出ても10年間は繰り越せる

個人投資家と法人とでは損失が出た際にも異なる点があります。

個人投資家が損失が出した場合、白色申告では赤字を繰り越すことはできません。しかし、青色申告ならば翌年以降の3年間は繰り越しが可能です。

法人の場合、青色申告をしていればさらに長期間、10年間の繰り越しが許されています。ただし、2018年4月1日前に始めた事業での損失は、10年ではなく9年の繰り越しとなるので注意しましょう。

このように、より長期間にわたり赤字を繰り越せる点は投資家にとって大きなメリットです。なぜなら暴落が起こると、そのショックから相場が回復するまでに長い期間を要する場合もあるです。

投資家が暴落に巻き込まれても、損失の繰越控除の期間が10年と長ければ、時間をかけて暴落の影響から立ち直りやすいでしょうす。

信用度の向上

法人を設立することで、個人投資家のときよりも信用度が向上します。会社を登記すると基本情報が公示されて登記簿謄本で存在を証明でき、社会的な信用が高まります。

また、法人は決算書も他者に開示する場合があります。会社の経理処理は、個人事業主よりも厳しい規定に基づいています。そのため法人の財務状況は決算書を通じて詳細に把握できます。

法人は個人より信頼性があると判断されやすいため取引や金融機関とのやり取りも円滑に進められます。

個人投資家における法人設立のデメリット

個人投資家が法人化する際には、メリットだけでなくデメリットも十分に納得した上で検討しましょう。

法人設立のためにコストが発生する

法人を設立するためには時間に対しても費用に対しても一定のコストが発生します。会社の設立から運用に関する手続きに関しては個人事業主よりも法人のほうが負担は大きいと言えるでしょう。

会社設立のためには具体的に次のような費用が必要です。

【会社を設立するために発生する費用】

  • 定款認証印紙代:40,000円(電子定款:0円)
  • 定款認証手数料:資本金100万円未満・30,000円/資本金100万円~300万円未満・40,000円/資本金300万以上・50,000円
  • 謄本手数料:2,000円
  • 登録免許税:150,000円(もしくは資本金額×0.7%を比較し高いほう)

社会保険に必ず加入しなければならない

会社を設立すると、経営者が投資家一人であっても社会保険に加入しなければなりません。会社の利益が出ていないときも、社会保険料は発生します。

対して、投資家が個人事業主の場合は従業員が5人に満たない限り社会保険に加入する義務はありません。

事務処理の増加

法人を設立すると、貸借対照表や損益計算書といったさまざまな決算書類を作成し、提出する義務が生じます。決算書をもとに決算申告を行うことで、法人の納める税金が確定します。

【決算申告の提出書類】

  • 決算書:貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)などを含む決算に関わる書類
  • 勘定科目内訳明細書:貸借対照表や損益計算書など決算書の勘定科目の内訳を記載した書類
  • 法人事業概況説明書:法人名・納税場所・事業内容・従業員数などの会社の状況を提出する書類
  • 各種確定申告書:法人税・法人事業税・法人住民税・消費税などの税額計算を行う書類

決算書の内容

  • 貸借対照表(バランスシート):負債を含め、決算日時点の会社の総資産を表した書類
  • 損益計算書(PL):会社の収益と、かかった費用を比較して、その差額から利益を求めた書類
  • キャッシュ・フロー計算書:会社における資金の出入りを示した書類

一方、個人投資家は確定申告を行うだけで済み、法人に比べ煩雑な事務処理などは発生しません。

個人投資家が法人を設立するタイミング

投資家として、ある程度の安定した収入を得ているのであれば、法人化を視野に入れましょう。前述したように所得が一定額以上の場合、法人税率のほうが低くなるためです。

投資商品はさまざまでキャピタルゲイン課税のように、税率が20.315%で済む商品ばかりではありません。55%の最高税率の対象になる投資の方が多いでしょう。

所得税の税率が33%となるのは900万円を超えてからですが、一般的にはその前、所得700万円以上が法人化の目安と言われています。

ただし、会社を設立する場合は費用のほかにも登録免許税など個人には課せられなかった税金が発生します。

法人化を検討する際には、まずそもそも設立の段階でどの程度の費用がかかるのかを把握したうえで事前に準備をし、知識を備えておきましょう。

個人投資家が設立する会社の種類

個人投資家が法人化するにあたって、知っておかなければならないのが設立する会社の種類です。種類ごとに目的には違いが見られます。

また、設立する際には、手続きやそれに伴う費用、資本金の準備が必要です。投資を行う目的を考慮しつつ、設立する会社の種類を選びましょう。

投資会社

投資会社ではほかの個人投資家などから集めた資金を専門家が運用し、その利益を出資額に応じて分配しています。そのため、投資会社を経営するには豊富な経験や知識が求められます。

税制面では、法人税法に基づき、投資会社での所得金額が増加すると法人税は所得税に比べて税率が低くなります。

資産管理会社

不動産や株式といった資産を保有している個人投資家が、名称の通り、基本的に資産の管理のみを行っています。そのため「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

法人である以上は起業する際に定款の作成や登記手続きも必要であり、設立方法は一般の会社と全く同じです。税制面も投資会社と同様に、所得金額に応じ、法人税の税率は所得税よりも抑えられます。

専門家への相談と代行の依頼で法人化をスムーズに

個人投資家が法人化を目指して会社を設立すると、税制面を始めとした複数のメリットを得られます。ただし、その一方でデメリットも存在します。特に会社設立の手続きについては、費用的なコストよりもむしろ時間や手間が課題となりがちです。

本来の業務である投資を続けながら会社を設立するとなると、発起人の負担は計り知れなません。また、法人化するためには専門知識が求められます。こうしたことからも投資家が法人化を考えるならば専門家の手を借りるという手段が賢明ではないでしょうか。

特に税制面は複雑であることから、会社設立前も設立後も税理士に見解を求めることで起業をスムーズに運べるでしょう。

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この記事の監修者

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今野 靖丈

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