個人番号の導入に伴い、法人にも法人番号が導入されました。この法人番号はただの識別番号ではなく、活用することでさまざまなメリットが得られる番号です。法人番号の特徴やメリット、活用方法を知っておくと今後の事業運営にも役立ちます。この記事では、法人番号の詳細や法人番号を活用するメリットを詳しく解説します。
目次
法人番号とは
法人番号は、数字12桁からなる法人や会社などの識別番号である「会社法人等番号」の頭に、チェックデジットと呼ばれる検査数字1桁を加えたものです。要するに、会社法人等番号は12桁なのに対し、法人番号は13桁ということです。
1法人につき1つだけ指定される法人番号は、会社の設立登記が完了した数日後に登記上の本店所在地に届く書面の「法人番号指定通知書」に記載されています。
また、法人番号が指定された法人は、基本3情報と呼ばれる情報の内容が国税庁の「法人番号公表サイト」にて公表されるため、法人番号指定通知書だけでなく国税庁の法人番号公表サイトでも確認することができます。
法人番号は個人に付与されるマイナンバーとは異なり、利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用できるものです。12桁の会社法人等番号は主に不動産登記や商業登記の申請時や、登記事項証明書の取得の際に使用するのに対し、法人番号は主に税金関係や保険に関する手続きで使用されます。
チェックデジットについて
チェックデジットとは法人番号13桁のうち、頭の1桁部分の検査用数字のことを指します。このチェックデジットは法人番号の「誤入力」「誤読」「偽造」を防止するために付加されており、特定のアルゴリズムをコードに適用して算出する数字です。
このチェックデジットには決められた計算方法があるため、チェックデジット以降の12桁(会社法人等番号)がわかれば、誰でも計算をしてチェックデジットを出すことができます。
<チェックデジットの計算方法> |
①【最下位から偶数桁の和】×2+【最下位から奇数桁の和】=★ 例:121212121212の場合、最下位から偶数桁は1の部分、奇数桁は2の部分。 ②★÷9=◇余り◆ ③9−◆=◎ ◎がチェックデジットです。 |
法人番号がないケース
法人番号指定の対象となる企業や団体がある一方で、法人番号の対象にならない団体もあります。
設立登記のない法人、人格のない社団等、民法上の組合、有限責任事業組合、個人事業者がこれにあたります。ただし、人格のない社団等に関しては、報酬等の支払調書の提出義務者となる場合(税務署に届出や申告をしている場合)は対象となるので注意しましょう。
法人税の納税義務がない人格のない社団等には、労働組合やマンションの管理組合、学校のPTAや同好会、法人ではない学術団体などがあり、法人ではないが法人同様の活動をしている団体のことをいいます。
また、法人番号は1法人につき1つのみ指定されるものであるため、本社・本店以外に事業所や支店などがある場合でも、事業所や支店に法人番号は付与されません。
法人番号をつける目的
法人番号には、税や保険に関わる行政手続きの効率化だけでなく、公平で公正な社会の実現や国民の利便性の向上などといった目的があります。
法人番号が使用される以前は、法人の住所や法人名の情報が散り散りに管理されていたため、行政機関で法人を特定したり、事務処理したりする際に膨大な時間がかかっていました。しかし、法人番号の使用によって法人情報の連携や共有が可能となり、法人情報の管理をよりスムーズに行えるようになりました。
個人番号の場合はマイナンバーカードの紛失時や番号の漏洩時など、不正に利用される恐れがある場合に限り、これまで使用していた番号を破棄して新しい番号に変更することができます。それに対し法人番号は、1度番号が指定されたら所在地や商号に変更があったとしても変更されることはありません。
参考:法人番号|府中市役所
基本3情報について
法人番号の大きな特徴は、法人の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号の基本3情報と呼ばれる情報が公表されることです。先述した人格のない社団等に関しては、代表者などが情報の公表に同意した場合のみ公表されます。
この基本3情報が公表されることで、誰でも簡単に自社だけでなく取引先の法人番号や法人等の情報を調べることができるようになりました。
これによって、今まで以上に自社の取引に関わる法人情報の集約や管理、照合の作業がスムーズになるだけでなく、新規の取引先や今後の営業先などの最新の情報をいち早く把握できるため、事業の効率化に繋がることが期待できます。
法人番号を使うメリット
法人番号の導入は、これまではどうしても時間を要していた行政手続きの効率化や、新しく取引先を開拓したい時に役立つなど、事業者にとってもさまざまなメリットがあります。
すでに会社を経営している方も、これから起業しようとお考えの方も、法人番号の活用方法について知っておくと今後の会社運営を効率的に進めることができます。
行政手続きがスムーズになる
これまでは各行政が法人の情報を共有し連携して業務を処理するまでに膨大な時間がかかっていました。しかし、法人番号を利用することで行政側も法人情報の連携を取ることができるようになり、さまざまな手続きに多大な時間を要することなく行えるようになりました。
法人番号は法人税申告や法定調書、社会保険関係、扶養控除申告書などの手続きの際に利用するため、行政側だけのメリットだけでなく、法人側にも行政手続きがスムーズに進むといったメリットになるでしょう。
業務の効率化が図れる
法人番号は利用範囲の制約がないため、自社の情報システムを用いて法人番号をコード化し、社内データとして管理することができます。
法人番号が導入される前までは、同じ企業内でも各部署毎に顧客IDをつけて取引先データの管理や集計をしていた会社も多く、部署をまたいで取引先データを利用したい場合などにデータの照合に手間と時間を要する場面が見受けられていました。
しかし、法人番号が導入されたことで取引先のコードが共有されるようになり、データの名寄せや連携作業などが効率的に行えるようになりました。これによって会計業務での集計作業においても効率化を図ることが期待できます。
法人情報が簡単に確認できる
法人番号に紐付いた法人情報は「国税庁法人番号公表サイト」で誰でも簡単に検索し確認することができます。検索方法は二通りで、法人の名称や所在地から法人番号を調べる方法と、13桁の法人番号から企業情報(基本3情報)を調べる方法があります。
法人番号を調べる際は、都道府県や市区町村だけでなく、法人種別や検索対象除外法人を検索対象に含めるかどうかなどの検索条件を詳しく設定することによって、検索結果をより絞り込むことができます。
新規営業先の開拓に活用できる
法人番号検索サイトでは法人番号指定年月日を指定して検索することができるため、新しく法人登録をした企業をすぐに見つけることができます。新しく法人登録をした企業の情報は、今後の自社の取引に繋げるか否かの判断材料にもなるため、新規営業先の開拓にも活用できます。
会社法人等番号とは
会社法人番号とは、12桁の数字からなる法人の識別番号のことをいい、新しく会社を設立し登記する際に付与されます。会社法人番号は会社の所在地や資本金、商号などの基本情報が記載されている登記簿謄本(履歴事項全部証明書)に記載されています。
会社法人番号は主に登記簿情報を管理するために割り振られている番号で、登記事項証明書を取得する際や、不動産登記や商業登記などの申請時に添付書類を省略するためなどに使用します。
法人番号と会社法人等番号の違い
会社法人等番号は法務局が管轄している法人や会社を識別するための番号です。一方で法人番号は国税庁が管理している番号で、主に税務関係や社会保険などの手続きに使用されます。あくまでも法人番号の目的は、法人情報の管理を円滑に行うことや行政手続きの効率化です。
法人番号と会社法人等番号は似ているように思えますが、管轄する行政機関や使用する用途が異なるということを覚えておくとよいでしょう。
個人事業主、フリーランスにも法人番号は必要?
個人事業主やフリーランスの場合は、法人番号が付与されることはありません。しかし、適格請求書(インボイス)を発行する適格請求書発行事業者の場合は、インボイス制度に登録する際に法人番号が必要となるので、どうしたらいいのかわからないという個人事業主の方もいるでしょう。
確かに、個人事業主やフリーランス、法人番号がない団体の場合でも、課税事業者と取引をしている場合は適格請求書を発行するためにインボイス制度に登録しなくてはなりません。
インボイス制度に登録の際、法人の場合は法人番号の前にTを付けた形がインボイス制度の登録番号となります。一方、個人事業者やフリーランス、人格のない社団等の法人番号を持たない団体の場合には、登録時に法人番号や個人番号と重複しない13桁の番号が登録者どとに割り振られますので、必要な場合は安心してインボイス制度に登録しましょう。
法人番号を活用し効率的な会社運営を!
法人番号についてのメリットや概要、活用方法を知ることで、さまざまな手続きの効率化が図れるだけでなく、新規の営業先開拓や企業内での取引先管理の円滑化にも繋がります。
法人番号が導入されてからまだ10年程度しか経っていませんが、今後も多様な税制改正が行われることが予想されます。それに伴い、法人番号の重要性も高まることが見込まれるので、これから法人成りを検討している個人事業主の方は、この法人番号の目的や活用方法について知っておくと良いでしょう。