「頑張って働いてもお金が貯まらない」と、お金の残し方に悩む個人事業主の方は多いのではないでしょうか?相当の売上があっても、手元にお金が残らないのは、利益率が悪い、納税額が多いなどさまざまな理由が考えられます。この記事では、お金が貯まらない原因、節税を含めて個人事業主がお金を残すための対策について解説します。
目次
個人事業主が手元にお金を残せない原因

売上はあるのに手元にお金が残らないと悩む個人事業主は、まずはその原因を把握することが先決です。ここでは、個人事業主がお金を残せない主な原因について説明します。
事業の利益率が悪い
利益率が低いと、売上が高くても手元資金が少なくなります。売上を出すためには、仕入れや広告宣伝費、人件費などさまざまな費用がかかっています。
売上から経費を引いた額が利益ですが、売上が伸びても必要経費が高額となれば、手元に残るお金は少ないです。
さらに、売上から経費を引いた利益から複数の税金を支払います。適切な節税対策をしていなければ、支払う税金も高くなり、残るお金はますます少なくなるでしょう。経費の無駄を見直すなど、利益率を高めるための対策が求められます。
収入が安定していない
毎月安定した収入を得ることが難しい個人事業主もいます。収入が安定しないと、年間の売上額が低くなりやすいです。売上が低いだけでなく、経費や税金を差し引くと手元に資金が残りにくいでしょう。
毎月決まった量の業務を請け負っていない限り、時期によって収入に変動があります。特に、繁忙期と閑散期の差が大きいケースは要注意です。赤字の月が発生することもあり、資金不足を招く原因となるからです。
事業計画を立てる、経費を見直すなど、収入を安定させるための対策を取ることで売上の安定化を目指しましょう。
知識不足で節税対策ができていない
税金に関する知識不足で、妥当な節税対策ができていないと必要以上に税金を納めることにつながります。納税額を少なくするには、合法的な方法で課税所得をできる限り減らすことです。
例えば、事業活動のためにかかった費用は経費にできますが、経費にできるものとできないものを理解していないと計上漏れやミスが起こり得ます。
また、控除額が大きくなる青色申告特別控除、小規模企業共済といった節税につながる対策を知らなければ、税金を多く納めることになるでしょう。
税金や節税につながるさまざまな制度を理解することが、合法的に税負担を軽減し、お金を残すことに結び付きます。
適切な記帳ができていない
日々のお金の動きを把握するための正しい記帳ができていないと、手元にお金が残りにくくなります。また、帳簿の内容が正確でなければ、納税額も誤る危険性が高いです。
事業だけでなく、経理や庶務などの事務作業を一人でこなさなくてはいけない場合、毎日帳簿を付けることが難しいかもしれません。
帳簿付けを後回しにすると、記帳の基になる領収書や納品書などを紛失するリスクが高く、経費の計上漏れやミスが発生しやすいです。
経費を計上できなければ課税所得が増えて、必要以上に税金を多く支払わなくてはいけません。正しく記帳できていないと、お金が残らないだけでなく資金が不足する危険性も高めてしまいます。
資金繰りを管理できていない
資金繰りを管理できなければ、お金が残らないだけでなく資金不足に陥る危険性が高いです。資金繰りを適切に管理することで、お金が出入りするタイミングを把握し、資金の枯渇を防げるからです。
例えば、取引先からの入金よりも、仕入れや経費の支払いが先となる場合、一時的な資金の不足を予測できます。そこで、取引先からの入金を早めてもらうなどの対策を取り、資金ショートを食い止めるのです。
資金繰りでお金の流れを管理するためには、正しい記帳が前提です。記帳内容が正確でなければ、正しいお金の流れを把握できず、資金が足りなくなる恐れがあります。正確な記帳に基づく資金繰り表を用いた管理が求められます。
自己管理が苦手
自己管理が苦手な個人事業主は、お金が残りにくいです。個人事業主は、利益として得たお金をある程度自由に使えます。
自己管理ができないと、支出や貯蓄に対する意識も薄れがちで、お金を計画的に使えないケースが多いです。例えば、コンビニでお菓子や飲み物を頻繁に買うなど、少額の買い物を繰り返す機会が多いと、出費の増加に結び付きます。
また、欲しいものがあるとよく考えずに買ってしまうなど、計画的にお金を使えない個人事業主はお金が残りにくいです。
お金の使い方に対する意識を変えなければ、正しい記帳や節税対策を実行しても、手元資金を増やせないでしょう。仕事だけでなく、プライベートでの出費を細かく記録し、支出内容や実際の金額を把握することが大切です。
経費を活用した個人事業主のお金の残し方

納税額を抑えることで、手元に残るお金を増やせます。売上から経費を引いた課税所得を基に納税額を計算するため、経費を適切に計上することで課税所得を減らします。
経費にできるものを把握する
まずは何が経費にできるのかを正しく把握することが大切です。経費にできるものを計上しないと、課税所得が増えて納税額も多くなるからです。経費とは、事業のために必要な下記の出費などが該当します。
- 仕入れ
- 外注費
- 通信費
- 交通費
- 広告宣伝費
- 消耗品費
事業と関連がある支出が経費となるため、私的な飲食や旅行は経費になりません。経費にできない出費を計上してしまうと、申告ミスによるペナルティを課されるため要注意です。
また、次のように経費にできる税金もあります。
- 印紙税
- 個人事業税
- 固定資産税
- 自動車税
- 登録免許税
上記の税金は、租税公課という勘定科目を用いて経費として計上可能です。例えば、車を事業と私用で兼用している場合は、家事按分で事業分の税金のみを経費にできます。
家事按分で経費を増やす
自宅や車など、業務とプライベートを兼ねて使用している部分については、家事按分で経費にできます。
下記の費用は家事按分で経費にできる一例です。例えば、自宅の一室を事務所として使用している場合など、適切な按分により経費にできます。
- 家賃
- 通信費
- 電気代
- ガス代
- 水道代
事業で使った経費を計算する際の按分率は、法律で決まっているわけではありません。しかし、正しい按分が求められるため、家事按分をする際には事業用である根拠を示せるようにしておくことが大切です。
経費を増やすために事業用の割合を増やして計算してしまうと、経費として認められないことがあります。妥当な按分率に基づいて、経費を計算しましょう。
少額減価償却資産の特例を活用する
30万円未満の固定資産について、一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」の活用により、課税所得を減らせます。
原則、10万円以上の固定資産については、耐用年数に応じた減価償却費の計上で、数年間で経費にします。
しかし、個人事業主や中小企業に向けた特例を利用すれば、一括で経費にできるため節税効果が高いです。ただし、青色申告をしていることなどが特例利用の条件となるため、白色申告をしている個人事業主は対象外です。
少額減価償却資産の特例は、税制改正によって何度か延長されています。税制が変わることもあるため、常に最新の情報を取得することが大切です。
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
短期前払費用の特例を活用する
特定の条件を満たす前払費用について、費用の支払いがあった期の経費として計上できる短期前払費用の特例を活用できます。短期前払費用の特例の適用時には、次の条件を満たさなくてはいけません。
- 支払い日から1年以内にサービスの提供を受けること
- その費用を事業年度の終了日までに実際に支払っていること
- 継続的にサービスの提供を受けていること
- 毎年同じ方法で経理処理を行っていること
また、すべての費用が特例の対象とはなりません。例えば、CMの広告料や弁護士への顧問料などは、特例の対象外です。特例を適用する際は、対象となる費用とならない費用を判断し、正しい計上を心がけましょう。
参考:国税庁 No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合
資金繰りの改善によるお金の残し方
資金繰りを安定させることは、より多くのお金を残すことに結び付きます。資金繰りを改善させるためのさまざまな方法について、詳しく説明します。
事業用と私用のお金を分けて管理する
事業用と私用の銀行口座やクレジットカードなどを兼用している場合は、分けましょう。銀行口座やクレジットカードの明細を見ても、事業と私用のお金の出入りが混在しているため、それぞれのお金の管理が曖昧になりやすいからです。
例えば、事業で使えるお金がどの程度あるのか、生活費としていくらかかっているのかといったことを直ちに把握できません。
事業用と私用を兼用していると、本来は事業用として使おうとした資金を誤って生活費に使うことも起こり得ます。事業と私用のお金を正しく管理できないと、出費を把握できず使い過ぎにつながる危険性が高いです。
また、口座やクレジットカードを分ける場合、事業で得た利益を事業資金と生活費に明確に区別することを求められます。給与のように毎月一定額をプライベートの口座に移すなどして、お金を分けて管理することで使い過ぎを防げるでしょう。
毎月の固定費を見直す
無駄な経費を削減することは、より多くのお金を残すのに効果的です。特に、固定費は一度削減できると、長期的に効果が持続します。例えば、以下の費用で削減できるものがあれば、検討してみましょう。
- 通信費
- レンタルサーバー代
- 家賃
- サブスクリプション契約
毎月定額を支払う出費について調べてみると、契約当初よりも使用頻度が低くなっているサービスが見つかることがあります。また、同一のサービスでも、より低価格で提供している会社に乗り換えることで経費の削減が可能です。
毎月削減できる費用がわずかでも、年単位で見ると大きな費用削減につながります。固定費は、定期的な見直しが必要です。ビジネス環境や状況の変化によって、ほとんど使わなくなったサービスを契約し続けているケースがあるからです。
資金計画を立てる
資金繰りを安定させるためには、資金計画を立てることも大切です。月間、年間で資金繰り表を作成しておくと、お金の流れを把握でき、必要な対策を取れるからです。
例えば、設備の購入や税金の支払いなど、大きな出費の予定を資金計画に入れておくと、必要な資金を前もって準備できます。
また、赤字や資金不足の兆候を早期に把握できるため、資金調達など資金不足の対策を検討できます。
節税対策を活用したお金の残し方

税金の支払いは、手元資金を少なくする原因の一つです。合法的なやり方で節税対策を活用できれば、お金を多く残せます。
青色申告控除の活用
白色申告よりも手間がかかりますが、節税効果を高めるなら青色申告を選択しましょう。青色申告の控除額は、確定申告のやり方で決まります。最大の控除額を適用するには、複式簿記での記帳と貸借対照表・損益計算書の添付、e-Tax又は優良な電子帳簿による保存の要件などを満たさなくてはいけません。
また、青色申告の選択により赤字を最長3年繰り越せます。赤字を繰り越せると、翌期以降が黒字でも、赤字と相殺できるため節税に結び付きます。
小規模企業共済やiDeCoへの加入
課税所得の減少と将来の備えを両立できる小規模企業共済やiDeCoへの加入で、節税できます。
個人事業主は退職金がありません。小規模企業共済は、小規模企業や個人事業主のための退職金制度です。また、iDeCoは、個人向けの年金制度です。どちらも、掛金を全額所得控除できるため、高い節税効果が期待できます。
所得控除を適用する
適用可能な所得控除の活用により、課税所得を減らします。所得控除には次のような種類があります。
- ふるさと納税
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 扶養控除
- 医療費控除
控除については、それぞれ適用条件と上限額が定められており、内容が変わることもあります。控除を活用する際には、必ず最新の情報を確認し正しく適用しましょう。
使い方を見直すことによるお金の残し方
お金が貯まるように、使い方を見直すことも効果的です。ここでは、お金を貯めるための対策について紹介します。
貯蓄を習慣化する
毎月、売上が入金されてから、生活費、貯蓄、事業の運転資金に分けることで、お金が貯まる仕組みを作れます。
お金があるとつい使ってしまう人は、自動積立などを利用して強制的な貯蓄を習慣化することで、お金が貯まりやすくなるでしょう。個人事業主の収入は変動しやすいため、無計画にお金を使ってしまうと生活費や事業資金が枯渇します。
毎月定額を貯蓄に回すことで、自由に使えるお金を制限し使い過ぎを防ぎましょう。
収入が増えても生活水準を上げない
収入が増えても、今まで通りの生活水準を維持しましょう。収入が増えると高額なものを購入したり、旅行に出かけたりと贅沢をしがちです。
収入が上がるにつれて生活水準を上げてしまうと、収入が下がったときに簡単に下げられなくなるものです。
また、収入増に伴って税金や社会保険料の額も増えます。社会保険料や税金を支払うと、想像以上に手元にお金が残らないこともあるため、お金の使い過ぎには要注意です。
個人事業主は会社員のように売上から税金や社会保険料を天引きされません。所得税などは確定申告後に納税しますが、思いのほか高額な場合、支払いが厳しくなることも起こり得ます。
一度生活水準を上げてしまうと、下げるのは困難です。収入の増加に伴い生活水準を上げるのではなく、現状をできる限り維持することが長期的な資産形成に役立ちます。
効率的に資産を増やす
銀行口座にお金を預けるよりも、新NISAなどを活用することで効率よく資産を増やしましょう。原則、小規模企業共済やiDeCoは、60歳まで引き出せません。
しかし新NISAは、一定額までの投資が非課税で利用でき、いつでも引き出せます。業務やプライベートで急にお金が必要になったときにも役立ちます。
個人事業主からの法人化でお金を残す

状況によっては、法人化がお金をより多く残すのに効果的な場合があります。ここでは、法人化でお金が残る理由と法人化に適したタイミングについて説明します。
法人化で節税効果が高まる
法人化によって税率と経費の範囲が広がることが、高い節税効果につながります。課税所得が一定額を超えると、所得税率よりも法人税率の方が低くなるからです。
また、法人は個人事業主よりも経費の幅が広く、計上できる経費が増えて課税所得を減らせます。
法人化を検討する目安
できるだけ多くのお金を残すためには、適切なタイミングで法人化を実現することが重要です。タイミングを誤ると、却って出費を増やすことになるからです。特に、下記のタイミングでの法人化が適していると言われています。
- 課税所得が800万円を超えたら
- 融資を受ける予定がある
- 事業を拡大する
- 取引相手の条件に法人であることを求められる
- 社会的な信用度の高さが求められる
など、法人化により減税や売上増が見込めるときは、前向きに法人化を検討しましょう。自身で法人化に適したタイミングが分からないときは、専門家に相談することで有益なアドバイスが得られます。
個人事業主に適したお金の残し方で資産を形成しよう
お金が貯まらない個人事業主は、さまざまな原因が考えられます。適切なお金の残し方を把握し、実行することで資産を形成できます。また、状況次第では、法人化も資産形成に役立つ選択肢の一つです。ただし、法人化によって出費が増えることもあるため、適切な時期を見極めることが大切です。









