株式会社の設立を検討する際、資本金について悩む方が多いのではないでしょうか。どの程度用意すれば良いのかを決める上では、資本金の目的や業界ごとの平均を把握することが推奨されます。なお2006年の会社法改正により、現在は1円からの設立が可能です。1円で設立しても良いですが、その裏にはさまざまなデメリットが潜んでいます。この記事では起業を検討する方へ、資本金の詳細やデメリット、設立後の減資・増資について解説します。
目次
株式会社設立の資本金は法律上1円からでも可能

2006年5月に施行された新会社法によって、従来の最低資本金制度が撤廃されました。改正前は株式会社で最低1,000万円、有限会社で300万円の資本金が必要でしたが、改正後は会社形態を問わず1円での設立が可能です。法改正によって以前と比べてはるかに少ない自己資金で起業できるようになりました。
ただし、1円という資本金額はあくまで法律上の最低金額です。そのため、事業を円滑に進める上では1円での設立が必ずしも最適解とは限りません。適切な資本金を決めるためには、事業内容や将来の展望を考慮して慎重に検討する必要があります。
資本金を1円にするのは危険?設立前に知っておきたい6つのデメリット
法律上は1円で会社設立が可能ですが、実際に1円で起業することには、いくつかのデメリットが伴います。思いがけないトラブルを防ぐためにも、これから紹介する6つのデメリットを押さえ、資本金の額は慎重に設定しましょう。
デメリット1:会社の社会的信用度が低くなる恐れがある
資本金の額が1円の場合、社会的信用度が低いと判断され、提携したい企業と契約できなくなるリスクがあります。
資本金は会社の備えや事業規模を示す指標の1つに分類される項目で、取引先は契約前に会社の信用度を測る目安として参考にすることがあります。資本金が1円という極端に低い金額だった場合、取引先から「支払い能力に不安がある」等と判断され、取引を敬遠されてしまうのです。
特に、大企業との取引を検討中の場合、一定の信用度を確保し円滑な関係構築につなげるためには、ある程度の資本金を用意することが望ましいです。
デメリット2:金融機関からの融資審査で不利になる可能性がある
金融機関から融資を受ける場合、資本金の額が審査結果に影響を及ぼす可能性があります。資本金の額が少ないことで、経営者の準備が不十分、あるいは信用度が低いと判断されるためです。
特に日本政策金融公庫の創業融資では自己資金の要件が定められており、影響を与える可能性が高いです。業界の平均的な資本金の額と比べて著しく低い場合、事業への本気度を疑われてしまうでしょう。将来的に融資を受ける場合は、審査で不利にならない程度の資本金を用意しておくことが推奨されます。
競合他社がどの程度の資本金を設定しているのかを把握した上で決めたいときは、業界に関する知識が豊富な専門家に相談するのがおすすめです。業界でも平均的な資本金を設定し企業力を確保したい方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
デメリット3:事業開始直後に資金ショートを起こすリスクがある
事業開始直後に資金ショートを起こす可能性もあります。その理由は、資本金が極端に少ないために、事業を運営していくための元手がないからです。
設立直後は取引先数も少なく、軌道に乗るまで収入がない期間がありますが、それでも事業所の家賃や従業員の給与は毎月固定で発生します。売上が伸び、安定するまでの資金として資本金を備えておかなければ、運転資金が賄えず、資金が底をついてしまうでしょう。
このような事態を資金ショートと呼び、資本金が極端に少ないことで起こり得るデメリットの1つです。必要な手続きを経ることで資本金を減らすことはできますが、容易な作業ではありません。資本金は、設立当初に事業を安定させるための十分な資金として備えることが事業成功のポイントと言えるでしょう。
デメリット4:事業用銀行口座が作れない
1円またはあまりにも低い資本金だった場合、事業用銀行口座が作れない可能性もあります。近年ではマネーロンダリングをはじめとした銀行口座を使った犯罪が多発しており、犯罪抑止を目的に銀行口座の開設審査を厳しくしています。そのため、1円の資本金で銀行口座を作ろうとした場合、犯罪に使われやすいペーパーカンパニーと疑われ、開設を断られる可能性があるのです。
正当な理由を伝えても、1度疑われてしまえば口座開設は困難です。事業用口座の作成を検討する場合も、平均的な資本金の用意は必須と言えるでしょう。
デメリット5:事業に必要となる許認可が取れない
建設業や派遣業等の事業を始める場合は、一定以上の資本金が許認可を得る条件になっています。例えば一般労働者派遣事業許可だと、基準資産額から負債総額を除いた金額が2,000万円×事業所数以上等、いくつかの条件があります。許認可が必要な事業を検討しているのであれば、条件について事前に調べ、達成できる資本金を用意する必要があるでしょう。
デメリット6:役員報酬について税務調査で指摘される可能性がある
税務調査で指摘される可能性がある点もデメリットです。例えば資本金が1円の会社が、設立直後で売上がないにもかかわらず高額な役員報酬を支払っているとしましょう。唐突に行われる税務調査では、企業のお金の実態を把握するべく、状況と照らし合わせて違和感のあるお金の使い方について指摘することがあります。
この場合、役員報酬となっている原資について詳細な説明を求められます。役員報酬が損金と認められない場合、法人の所得が増え法人などに影響し、経営の圧迫へとつながるでしょう。
中小企業における平均的な資本金額

出典:単一・複数(2区分)別会社企業数、事業所数及び常用雇用者数-全国、都道府県 | 統計表・グラフ表示
2021年時点の総務省および経済産業省の調査によれば、全産業の資本金が最高値のものは300万円~500万円でした。次に1,000万円~3,000万円未満で、店舗や設備投資等の原価がかかる業種ほど、資本金が高いようです。
業種によって資本金の額は違うものの、中小企業の資本金平均額は300万円~500万円であると考えて良いでしょう。
自己資金等によっては、平均的な資本金を満たせないこともあるでしょう。そのようなときは、創業融資等を活用して設備投資を行い、自己資金を資本金に回す方法が効果的です。小谷野会計事務所では創業融資や補助金・助成金に精通した税理士が多数在籍しています。
資本金の額で納税額が変わる?知っておきたい税金との関係

資金ショート等のデメリットを考慮すると、業界の平均的な資本金を用意するのが望ましいでしょう。では逆に、資本金の額が高いとどのような結果があるのでしょうか。結論からお話しすると、資本金が高額だと、納税額が高くなるリスクが潜んでいます。
資本金1,000万円未満で消費税が最大2年間免除に
新たに設立された法人のうち、資本金の額が1,000万円以下である場合、原則として設立後、第2期目までの消費税の納税が免除されます。起業前から一定の取引先を確保している場合、心配はありませんが、取引先が確保できていない方にとってはメリットと言えるでしょう。
ただし例外も存在し、設立1期目の上半期の課税売上高と給与支払額のいずれも1,000万円を超えた場合、第2期からは課税事業者となります。つまり、資本金が1,000万円以下であっても、消費税の納税義務が発生する可能性があるということです。
またインボイス制度の導入に伴い、免税事業者であっても適格請求書発行事業者として登録した場合も、消費税の納税義務が発生します。
参考:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
法人住民税の均等割は資本金の額によって変動する
資本金の額が一定を超えている場合、法人住民税の均等割が割増になる可能性もあります。
資本金等額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 (50人以上の従業員がいる場合) | 市町村民税均等割 (50人以下の従業員がいる場合) |
|---|---|---|---|
1,000万円以下 | 20,000円 | 12万円 | 50,000円 |
1,000万円超~1億円以下 | 50,000円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超~10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円~50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円以上 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
法人住民税は、法人の所得に応じて課される「法人税割」と、会社の規模に応じて定額が課される「均等割」で構成されています。このうち均等割は、会社が赤字であっても納税義務が生じる税金です。税額は、資本金の額と従業員数に応じて複数の区分に分けられており、資本金が大きくなるほど税額も高くなります。
上表のように、資本金額が1,000万円以下であれば、都道府県民税均等割で20,000円ですが、1,000万円を超えると30,000円も増えることが分かります。従業員数に応じて市町村民税均等割も増える傾向にあるため、各種税金の仕組みを理解した上で資本金を設定しましょう。
法人設立時の登録免許税は資本金額で決まる
株式会社を設立する上では法務局での設立登記が必要です。その際、登録免許税を納付しますが、納税額は資本金の額によって決まります。株式会社等の設立登記における税率は、資本金の額に対して1,000分の7です。仮に、計算結果が15万円に満たない場合、最低税額である15万円が適用されます。細かな数字を挙げると、資本金の額が約2,142万円までは、登録免許税は一律で15万円ということです。
余裕を持って資本金を3,000万円にした場合、3,000万円×1,000分7であるため、登録免許税は21万円となり、納税額が増えます。設立時の初期費用をなるべく抑えたいのであれば、登録免許税の計算方法を考慮すると良いでしょう。
会社設立後に資本金の額を変更(増資・減資)することも可能

資本金は、設立時の金額で固定されるわけではなく、事業状況に応じて後から変更可能です。資本金を増やすことを「増資」、減らすことを「減資」と呼び、ここではそれぞれの概要と変更方法について解説します。
増資|企業が新たに株式を発行する
増資とは、企業が株式を新たに発行し資本金を増やすことで、事業拡大のための資金調達や財務基盤の強化を目的に行われます。。また、増資を行う場合は株主総会の特別決議の実施と、法務局での各種手続き・納税が必要です。
減資|株主にお金を渡すか社内で別の項目に振り替える
減資とは、企業の資本金を減らす手続きのことで、累積赤字の補填や過大資本の是正、節税を目的に行われます。株主に払い戻しを行う実質上の減資と、払い戻しをしない形式上の減資の2つが存在します。減資の場合も、手続きには株主総会の特別決議を開催しなければなりません。また、増資同様、法務局での変更登記手続きと登録免許税として一律30,000円が発生するので注意しましょう。
まとめ
株式会社の資本金は法律上1円から設立可能です。しかし、会社のや資金繰り、融資の可否に大きく影響するため、金額設定は慎重に行う必要があります。
設立後に資本金の額を変更することも可能ですが、所定の手続きと費用を要します。設立前に自社に最適な資本金について専門家からアドバイスを受けたい方は、ぜひ小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。







