確定申告が間違いだらけとなるのは、計算間違いや控除の適用漏れ、申告忘れなど複数のミスが重なったことが主な原因です。正しい申告をサポートしてくれる会計ソフトもありますが、税務知識が求められる場面が多々あるため、ミスが起こりやすいのです。この記事では、確定申告で起こりやすいミスと適切な対処法、間違いを防ぐための対策まで解説します。
目次
確定申告が間違いだらけになりやすい理由

確定申告が間違いだらけになりやすい主な理由は、日本の税制が複雑であること、収入や控除の種類に応じたルールに従わないといけないからです。
ガイドラインやインターネットの情報を参考にし、正しく申告したつもりでも、誰もが確定申告で間違いをする可能性があります。
例えば、節税に役立つ控除は種類が多いだけでなく、控除ごとに適用条件が異なります。さらに、控除の適用の際には細かいルールに従う必要があるため、見落としや計算ミスが起こりやすいのです。
また、経費を計算する際にも、領収書や納品書など根拠となる書類が必要です。しかし、必要書類が揃っていなかったり、整理できていなかったりすると入力漏れや計算ミスを招きます。
確定申告に慣れていない、税務や会計の知識が浅いと、確定申告で間違いが起こりやすいため要注意です。
確定申告でよくある間違い
確定申告ではさまざまなミスが起こりやすいですが特に多いのが、複数の収入がある場合の申告漏れと控除を適用する際のミスです。ここでは、確定申告で起こりやすい間違いについて紹介します。
収入の申告漏れ
収入の申告漏れは、確定申告で起こりやすいミスの一つであり、特に副業や一時所得の漏れが多い傾向が見られます。
会社員は給与から源泉徴収されていますが、副業の所得が年間で20万円を超えていれば確定申告が必要です。
他にも、申告を忘れやすい収入の一例を以下に紹介します。
- 副業のアルバイトで得た給与(年間20万円以上の収入)
- 不動産、株の売却益
- ネットオークションやフリマで得た収益
- 仮想通貨の売却益
- 一時所得(生命保険会社からの満期金や一時金)
- 公営競技での高額な払戻金
- 非永住者以外の居住者が海外で得た所得
上記の収入については、申告漏れが起こりやすいです。まずは、自分が確定申告をする必要があるのか否か、申告が必要な収入を適切に見極めましょう。
医療費控除の適用ミス
1年間で支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に適用できるのが、医療費控除です。所得が200万円以上の場合は年間10万円超、所得が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%超の医療費がかかったときに適用できます。
年間の所得によって計算方法が異なること、控除対象と対象にならない医療費との区別が難しいことから、確定申告で間違いが起こりやすい控除の一つです。
医療費控除の対象となるのは、原則病院やクリニックで支払った診療や治療、入院にかかった費用であるため、次のような費用は対象となりません。
- 健康診断にかかる費用(人間ドックを含む)
- 予防注射の費用
- 美容整形の費用
- 通院にかかった費用(マイカー等)
- 里帰り出産をするためにかかった交通費
- 自己都合で生じた差額ベッド代
しかし、下記のように保険適用外の治療も対象となることがあります。
- 妊婦検診や出産にかかる費用
- インプラントの治療費
- 歯科治療における保険適用外の詰め物(セラミックなど)
- レーシックの手術代
- 歯科矯正にかかる費用
- 通院にかかる費用(公共交通機関を使った場合)
- 緊急時のタクシー利用費
例えば、インプラントのような保険適用外の治療の場合、医療費控除の対象外と捉えがちですが、実際は控除を適用できることがあります。
控除の対象となるのに控除が漏れていたり、控除の対象とならないものを含めて控除額を計算したりといったミスが目立ちます。
保険料控除の計算や適用ミス
生命保険や地震保険、医療保険などに加入している場合、保険料控除を適用可能ですが、計算ミスや控除の適用漏れが起こりやすいです。
保険料控除では、保険の種類や加入時期に応じた計算式に当てはめて控除額を算出しますが、計算方法を誤ると控除額の間違いを招きます。
生命保険料控除の計算式は、旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)と新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)で、控除額が異なります。
例えば、平成22年に契約した生命保険の年間の保険料が50,000円だった場合、旧契約の計算式である「支払保険料等×1/2+12,500円」を用いなくてはいけません。
しかし、誤って新契約「支払保険料等×1/4+20,000円」で計算すると、正しくない控除額が算出されます。
また、保険の名義を理由に控除の適用を忘れることがあります。例えば、配偶者名義の生命保険料の支払などで適用漏れが起こりやすいです。
納税者本人が生計を共にする家族の保険料を支払った場合も保険料控除の対象ですが、自分の名義ではないことから控除の適用を忘れがちです。
扶養控除や配偶者控除のミス
扶養控除の適用条件を満たしていないのに、扶養控除を適用して申告することがあります。他にも、配偶者控除と配偶者特別控除を二重で適用する間違いもあります。
扶養控除は要件不備で誤って適用してしまうことがあり、配偶者控除と配偶者特別控除を同一年分に併用するミスも見られます。
配偶者控除は配偶者の合計所得が年分ごとの基準内(令和6年分まで48万円以下、令和7年分から58万円以下)で、かつ本人の合計所得が1,000万円以下であることが条件です。
配偶者は扶養控除の対象外で、70歳以上は配偶者控除で「老人控除対象配偶者」となります。年分ごとの要件を確認してください。
住宅ローン控除の記載ミス
新たに住宅を購入した人を対象とした控除制度ですが、計算や記載ミスが起こりやすいです。
住宅ローン控除を適用するためには、金融機関から交付された「借入金の年末残高証明書」の内容を申告書に正しく記載しなくてはいけません。
住宅ローン控除の計算は、取得年度などによって異なりますが下記計算式を用います。
年末の住宅ローン残高×控除率(0.7%) |
控除額の計算を誤ってしまうと、正しい控除額を導き出せず、申告の間違いにつながります。
参考:国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
税務署が間違いに気づくタイミング

税務署が確定申告の間違いに気づくタイミングは、ミスの内容によって異なります。税務署が、申告内容について詳しく確認した際にミスや疑わしい点が見つかった場合は、確定申告書類提出後の早い段階で指摘されることが多いです。
例えば、添付書類と収入金額が異なる、計算ミスといった確定申告書類や添付書類から確認できるミスについては、早期に間違いに気づくでしょう。
一方で、収入の計上漏れや控除の適用忘れについては、間違いに気づくまで時間がかかります。例えば、生命保険会社から受け取った一時金を計上しなかった場合、生命保険会社に税務調査に入ったことで計上漏れが見つかることがあります。
申告してから直ちに間違いを指摘されないかもしれません。しかし、申告内容と関連する企業や個人事業主が提出した支払調書や税務調査などで、ミスや漏れが見つかることがあります。
申告後数カ月から1年以上後など、確定申告からしばらく時間が経ってから、指摘を受けるケースもあるため注意が必要です。
税務署から連絡が来る可能性
間違いがあった確定申告について、税務署から連絡がくる可能性は正しい納税額によって異なります。原則、必要以上に税金を納めている場合、税務署から連絡が来ないことがほとんどです。
一方、本来納めるべき税額よりも少ない過少申告をしていた場合は、税務署から連絡が来る可能性が高いです。
控除の適用漏れなどで必要以上に税金を納めていても、税務署から指摘されなければ、税金の過払いに気づかないでしょう。正しい納税の実現と、払う必要のない税金を納めないためにも、適切に確定申告をすることが大切です。
税務署が確定申告の間違いを指摘する手段
確定申告で間違いが見つかったとき、納税者に対する連絡方法は間違いの内容によって異なります。まず、確定申告書類や添付書類から確認できる単純な計算ミスや誤りは、電話もしくは書面で納税者に通知するケースが多いです。
しかし、収入の計上漏れ、不正な経費計上など悪質性が高いと判断される場合は、税務調査が入る確率を高めます。特に、卑劣な手口で税逃れをしている疑いが強い場合、事前連絡なしで税務調査に入ることもあり得ます。
税務署から確定申告の間違いについて連絡を受けたときは、できるだけ速やかに対処することが大切です。
間違いだらけで確定申告をしたときの適切な対応
確定申告後に申告書類の間違いに気づいた場合、自ら訂正、修正申告をするのが望ましいです。ここでは、確定申告でミスが起こった際の適切な対処法について解説します。
確定申告期限内では訂正申告
確定申告の期限内に間違いに気づいた場合は、税金の払いすぎも過少申告も、早めに訂正申告をしましょう。
訂正申告は、通常の確定申告で使う書類に正しい数値を記入したものを、管轄の税務署に提出します。確定申告の期限内に行う訂正申告は、定められた期間内に限って何度でも修正可能です。しかし、修正をする手間を考慮すると、一度で正しい申告をするのが理想です。
訂正申告をする場合、e-Taxで最初の申告をした場合は「申告・申請書等一覧」から「修正データ」を選択します。正しい内容に変更してから、最初のデータとは異なるファイル名で保存し、送信します。
税務署への持ち込み、郵送で確定申告書類を提出した場合は、正しい内容で作成した申告書の余白に赤色で「訂正申告」と記入し、以前に提出した間違いだらけの申告書のコピーと併せて提出しましょう。
以前に提出した添付書類を再度提出する必要はありませんが、訂正申告で新たに控除を適用した場合は添付書類が必要です。
ただし、間違いのあった確定申告が還付申告で、還付金が支払い済みの場合は要注意です。還付金が減額される、納税が必要な場合があるからです。納税額の調整が必要となったときは、管轄の税務署に対処法を確認しましょう。
確定申告期限後は修正申告
確定申告期限が過ぎてから、確定申告の間違いに気づいた場合は修正申告をしましょう。特に、正しい納税額よりも少なく税金を納めていた場合は、ペナルティの対象となるため早めに対処することです。
修正申告も、訂正申告と同様に専用の用紙はなく、通常の確定申告で使う申告書に正しい内容を記載します。管轄の税務署に修正した申告書を持ち込む、郵送する場合は、国税庁のサイトから書類をダウンロードして記入するか、「確定申告書作成コーナー」から作成可能です。
修正申告で間違いが多発すると、状況を悪化させることにつながります。間違えないように、正しい内容で申告することが大切です。
税金を払いすぎていた場合は更正の請求
税金を過払いしていることが、確定申告期限後に発覚した場合は、更正の請求をしましょう。更正の請求書に必要事項を記入して、税務署に提出します。
更正の請求書の内容が認められると、納めすぎた税金が還付されます。更正の請求書は過去5年以内の申告が対象となるため、5年以上前の申告で納めすぎた税金は戻ってきません。
期限内であれば過払い分の税金が戻る可能性が高いため、過去5年分の確定申告書類をチェックし、税金の払いすぎがないかを確認してみましょう。
参考:国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
間違いだらけの確定申告を放置する危険性

提出済みの確定申告が間違いだらけだったとき、そのまま放置すると相応のリスクを負います。特に、納めなくてはいけない税額よりも実際の納税額が少なかった場合、ペナルティを課されるからです。
期限内に確定申告をしていなかった場合は無申告加算税、悪質性の高い過少申告とみなされると重加算税の対象となり得ます。さらに、税金を納めなかった日数に応じて延滞税が加算されます。
| 罰則の種類 | 罰則の内容 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 申告額と正しい税額の差額の5% 新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、超過分は10% |
| 無申告加算税 | 納付すべき税金に加えて下記税率の無申告加算税が課される ■期限後に自主的に申告した場合 納付すべき税金の5% ■税務調査の事前通知後に申告した場合 納付すべき税金の50万円までは10% 納付すべき税金の50万円超300万円以下の部分は15% 納付すべき税金の300万円を超える部分は25% (税務調査後に期限後申告をした場合) 納付すべき税金の50万円までは15% 納付すべき税金の50万円超300万円以下の部分は20% 納付すべき税金の300万円を超える部分は30% |
| 重加算税 | 申告額と正しい税額の差額の35% |
確定申告の間違いに気づいたときは、できるだけ早く訂正申告や修正申告をすることでペナルティを最小限に抑えましょう。
間違いだらけの確定申告にならないための対策
間違いだらけの確定申告は、ペナルティを受けたり、税金を払いすぎたりすることにつながります。また、間違いが見つかったときの訂正や修正申告の手間もかかるため、できるだけ正確に確定申告をするための対策を紹介します。
収入の申告漏れを確認する
確定申告の間違いで多いのが、収入の申告漏れです。特に、副業や臨時の収入などは申告から漏れやすい傾向が見られます。
収入の申告漏れは脱税行為とみなされて、重いペナルティを課される要因です。不定期もしくは副業で得た収入、収入を得るためにかかった経費は、こまめに記録を付けておくことが正しい申告につながります。
控除の適用条件を確認する
課税所得を減らすのに効果的な控除について、適用条件をしっかりと確認したうえで適用可能か否かを判断しましょう。特に、次の控除は適用時に間違いが起こりやすいです。
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 生命保険料控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 住宅ローン控除
適用条件や計算方法を正しく理解しないと、適用ミスや漏れを引き引き起こします。適用条件を確認しても理解が難しい場合は、税務署に問い合わせてみましょう。
日々正確な記帳を心がける
正しい確定申告をするためにも、基になる記帳を正確に行うことが大切です。日々のお金の動きを正確に記帳していれば、申告ミスや漏れを防げる可能性が高いからです。
正しく記帳するための対策として、会計ソフトの活用を検討してみましょう。経理担当者が不在である、一人ですべての事務作業をこなしている企業や個人事業主は、記帳に充てる時間を確保するのが困難です。
銀行の入出金やクレジットカードの利用明細から自動的に仕訳をしてくれる機能を備えた会計ソフトを導入すれば、漏れやミスが起こりにくいでしょう。
専門家の指導や助言を受ける
税務や会計のプロである税理士のチェックやアドバイスを受けることも、正確な記帳に結び付きます。何度も自分で記帳や確定申告書類をチェックしても、ミスや漏れに気が付かないことがあるからです。税務や会計の専門家が確認することで、より正確な確定申告を実現できます。
また、過去の申告内容を税理士に確認してもらうことで、過少申告や税金の過払いに気づき、正しい納税をサポートしてもらえます。他にも、個々の状況に適した節税対策など、税務や会計の幅広いサポートを受けられるでしょう。
間違いだらけの確定申告は速やかな修正が必要
複雑な税制、収入や控除の種類が多く適用条件も異なることなどが、確定申告を間違いだらけにする主な原因です。しかし、正しい申告と納税が求められているため、確定申告を誤ったときは早めの修正が求められます。正確な記帳を心がけるのはもちろん、専門家のアドバイスやサポートを受けるなどして、確定申告で間違えないようにすることが大切です。








