株式会社の設立登記が完了した後の次のステップは、税務署や年金事務所など各行政機関への届出です。これらの手続きには期限があり、税務や社会保険に関する専門知識も求められるため、多くの経営者が専門家への代行を検討します。この記事では、会社設立後に必要な手続きの内容や依頼できる専門家の種類と費用の相場、さらに依頼するメリットと注意点を解説します。
目次
会社設立後に必要な手続き一覧!専門家に代行を依頼できる項目とは

会社を設立した後は、事業を開始するための様々な行政手続きが必要です。税金関係、社会保険、労働保険など提出先も多岐にわたり、それぞれに提出期限が定められています。必要な届出先は以下の通りです。
- 税務署
- 都道府県事務所・市町村役場
- 年金事務所
- 労働基準監督署・ハローワーク
ここでは、上記を順に解説します。
税務署への届出
会社設立後、最初に必要となるのが税務署への届出です。
法人設立届出書や青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、消費税課税事業者選択届出書などを提出します。
- 法人設立届出書:設立の日から2ヵ月以内
- 青色申告承認申請書:設立から3ヵ月後か、最初の事業年度終了日のいずれか早い方
役員や従業員に給与を支払う場合は「給与支払事務所等の開設届出書」、消費税の課税事業者を選択する場合は「消費税課税事業者選択届出書」など、会社の状況に応じた追加書類も必要です。
都道府県税事務所・市町村役場への届出
都道府県税事務所・市町村役場へは、法人設立設置届出書を提出します。
法人住民税・法人事業税の手続きを行うため、地方税を管轄する都道府県税事務所と市町村役場にも届出が必要です。
会社の定款のコピーや登記事項証明書(登記簿謄本)など、必要な添付書類も事前に確認して準備を進めましょう。
年金事務所への届出
健康保険・厚生年金保険 新規適用届や被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届などを提出します。
法人は、社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届:会社設立日から5日以内
- 被保険者資格取得届:資格取得日(従業員が雇用された日など)から5日以内
- 健康保険被扶養者(異動)届:異動が生じた日(追加・削除などの事実発生日)から5日以内
いずれも期限をすぎると手続きが遅れるだけでなく、延滞金が発生する可能性もあるため、早めに対応しましょう。
労働基準監督署・ハローワークへの届出
労働保険関係成立届や労働保険概算保険料申告書、雇用保険適用事業所設置届などを提出します。
従業員を1人でも雇用した場合、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入手続きが必要です。
【労働基準監督署】
- 労働保険関係成立届:従業員を雇用した日の属する月の翌日10日まで
- 労働保険概算保険料申告書:成立日から50日以内
【ハローワーク(公共職業安定所)】
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届(従業員ごと)
(※それぞれ雇用した日の翌日から10日以内に提出)
会社設立後の手続きは誰に頼む?専門家ごとの代行業務と費用相場

会社設立後は、税務・社会保険・労働保険・登記・許認可など、多岐にわたる行政手続きを進める必要があります。すべてを自力で行うことも可能ですが、内容は専門的で期限も短いため、多くの経営者が専門家への代行を検討することも推奨します。
ここでは、依頼できる専門家ごとの業務範囲と費用相場をまとめました。
税理士:税務手続き全般(30,000〜50,000円)
税理士は、会社設立後に必要となる税務関連の手続きをまとめて代行します。
【主な代行業務】
- 法人設立届出書
- 青色申告承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 消費税関連の届出(課税事業者選択届など)
上記の作成・提出の代行を行います。
これらの手続きは、税額計算や節税対策に直接影響するため、専門知識を持つ税理士に任せるメリットは大きいでしょう。
【費用相場】
- 単発の手続き代行:30,000〜50,000円程度
- 顧問契約を結ぶ場合:無料や割引になるケースが多い
設立後も税務相談が必要になるため、顧問契約とセットで依頼する企業が多く見られます。
社会保険労務士:社会保険・労働保険の手続き(50,000〜10万円)
社会保険労務士(社労士)は、人事・労務・社会保険の専門家として、複雑な保険手続きを代行します。
【主な代行業務】
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 被保険者資格取得届
- 労働保険関係成立届
- 労働保険 概算保険料申告書
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
上記の作成・提出の代行が一般的です。
【費用相場】
- 社会保険・労働保険の新規適用手続き一式:50,000〜10万円
- 顧問契約を結ぶ場合:無料や割引になるケースもある
従業員を雇う予定がある会社は、早めに社労士へ相談すると安心です。
司法書士:会社の登記事項に関する手続き(10,000〜50,000円+実費)
司法書士は登記手続きの専門家です。行政機関への届出よりも、会社の根幹に関わる登記変更手続きを主に代行します。
【主な代行業務】
- 役員変更登記
- 本店移転登記
- 増資(募集株式の発行)の登記
- 会社目的変更の登記
登記は法務局への申請と専門的な書類作成が必要なため、司法書士に依頼するケースが多くみられます。
【費用相場】
- 役員変更登記:10,000〜30,000円+登録免許税
- 本店移転登記:20,000〜50,000円+登録免許税
依頼内容により、費用の幅が大きくなる点に注意しましょう。
行政書士:事業に必要な許認可の申請手続き(数万円〜数十万円)
行政書士は、役所に提出する書類作成の専門家であり、特に「許可・認可・免許」取得を代行します。
【主な代行業務】
- 建設業許可
- 飲食店営業許可
- 古物商許可
- 宅地建物取引業免許 など
特定の事業を始めるために行政からの許可や認可、免許が必要な場合に申請をサポートします。許認可は種類ごとに要件が異なり、必要書類も膨大なため、行政書士に依頼するケースが一般的です。
【費用相場】
- 簡易な許可:30,000〜10万円
- 専門的・大規模な許可:20万円〜50万円
許認可の有無が不明な場合でも、相談から対応してくれます。
会社設立後の手続きを代行依頼する3つのメリット

会社設立後の行政手続きは種類が多く、内容も専門的で、想像以上に時間と労力を必要とします。特に創業期の経営者は、資金調達や営業活動、人材採用など、注力すべき業務を多く抱えているでしょう。
そのため、専門家への代行依頼は、費用を払ってでも利用する価値があるサービスと言えるのです。ここでは、手続き代行を依頼する具体的な主な3つのメリットを解説します。
本来の事業活動に集中する時間を確保できる
会社設立後の各種届出には、慣れない書類作成や複数の行政機関へ足を運ぶ必要があるなど、多くの時間と労力がかかります。さらに、多くの窓口は平日日中のみの対応です。
これらの手続きを専門家に任せることで、経営者は「営業活動・商品開発・マーケティング」といった、会社の利益に直結する業務に集中できます。創業期の限られた時間を「売上につながる業務」に充てられることこそ、代行を依頼する一番のメリットと言えるでしょう。
書類作成のミスや申請漏れによるリスクを防げる
設立後の手続きには、提出期限が厳格に定められているものがほとんどです。特に「青色申告承認申請書」は、期限を過ぎると初年度の青色申告制度を適用できず、大きな節税メリットを失います。
専門知識がないまま手続きを進めると、書類の記載漏れや添付書類不足、申請期限切れなどのリスクが常につきまといます。専門家であれば、最新の法令や様式に精通しているため、手続きミスによるリスクを限りなくゼロに近づけることが可能です。
確実かつスムーズに会社経営をスタートさせるのなら、専門家へ依頼するのが安心です。
節税対策や資金繰りに関する専門的な助言を受けられる
代行依頼は、単に届出を済ませるだけではありません。特に税理士に依頼した場合、将来の経営を見据えた専門的な助言を得られる点がメリットです。
例えば、以下のような実務的なアドバイスが得られます。
- 最適な役員報酬の金額設定
- 合法的な節税対策
- 日本政策金融公庫など創業融資に関する情報提供
- 補助金・助成金の活用方法
こうした専門家の知見は、創業期の経営における重要な判断材料となり、事業の安定化に貢献するでしょう。
会社設立後の手続き代行を依頼する前に知っておきたい注意点
会社設立後の手続き代行を依頼する際は、メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットとなりうる側面も把握しておくことが大切です。自社にとって代行依頼が本当に最適な選択肢なのか、慎重に判断しましょう。
専門家への依頼には一定の費用がかかる
専門家に手続き代行を依頼すると、当然ながら報酬としての費用が発生します。創業期は事業資金に余裕がないことも多く、このコストを負担に感じる場合もあるでしょう。自分で手続きを行えば、この費用は不要です。
ただし、自力で進める場合でも、書類の準備や役所への移動にかかる時間、交通費といった「目に見えないコスト」は発生します。専門家に支払う費用と、自分で対応した場合の時間的・人的コストを比較し、どちらが自社にとって合理的かを総合的に判断しましょう。
信頼できる依頼先を探す手間と時間が必要になる
手続き代行を依頼する専門家は、将来的に顧問として長く関わるパートナーとなる可能性があります。そのため、誰にでも任せれば良いというわけではありません。以下を確認しながら、複数の候補を比較検討するのが大切です。
- 自社の業界やビジネスモデルに詳しいか
- コミュニケーションは取りやすいか
- 料金体系やサービス内容は明確か
インターネットでの情報収集や知人からの紹介、初回面談など、依頼先選びには手間と時間が必要です。安易に依頼先を決めてしまうと、のちにコミュニケーション不足や認識のズレが生じる恐れもあるため、パートナー選びは慎重に行いましょう。
まとめ
会社設立後には、税務署や年金事務所など、多くの行政機関への届出が必要です。各種届出書の作成には専門的な知識が必要かつ、厳密な提出期限が設定されています。こうした手続きを税理士や社会保険労務士といった専門家に代行依頼することで、手間やミスのリスクを大幅に削減できます。
代行を依頼すれば費用は発生しますが、経営者は本来の事業に専念でき、申請漏れなどのリスクを回避できるのです。自社の状況やリソースを踏まえ、手続きを自社で行うべきか、専門家に任せるべきかを総合的に判断しましょう。
必要に応じて外部の専門家を活用することは、円滑な事業運営につながります。








