税務調査において、売上計上漏れは厳しくチェックされる項目の1つです。単純な計上漏れや会計ミスであっても、疑われた場合は税務調査が行われ、場合によっては重加算税などの重い追徴課税のペナルティが課されます。本記事では、税務調査でどのように売上計上漏れが発覚するのか、指摘されやすい具体的なパターン、そして日常的な税務調査対策などについて解説します。
目次
税務調査で売上計上漏れが厳しくチェックされる理由

税務調査において、売上計上漏れ(期ズレ)が厳しく見られる理由は、売上が過少申告されることで、納税額が減少して脱税に繋がることを防ぐためです。税務署は国の財政基盤である税収を確保する役割を担っていることから、税収確保の根幹を揺るがす売上計上漏れに対して敏感です。
法人や個人事業主の場合、売上は利益計算の起点となることから、売上に誤りや不正があると、税金に多額の影響を及ぼします。税務調査官は売上が正しく計上されているかを多角的かつ入念に確認し、金銭の流動を細かく追求してくることを忘れてはなりません。
税務調査官が売上計上漏れを発見する方法
税務調査官は、事業者が提出した確定申告書や帳簿書類だけを判断材料にすることや、内容を鵜呑みにはしません。国税庁は私たちが想像する以上の多様な情報網とネットワークを駆使し、長年の経験に基づく独自の調査手法を駆使して調査しています。そこで、税務調査官が隠れた売上計上漏れの発見に活用する調査の例をご紹介します。
支払調書との不一致から売上計上漏れが発覚する
企業や個人事業主が報酬・料金・契約金などを支払ったことを税務署に報告する「支払調書」があります。報酬などが発生した際、原則として事業者が税務署に提出する書類が支払調書です。代表的な例として、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などが支払調書に該当します。
支払調書は「法定調書」の一種で、所得税法や相続税法などの税法の規定により、税務署への提出が義務づけられている約60種類ある資料です。また、給与や報酬のみでなく、生命保険や不動産、年金、さらには配当に関する支払調書も存在します。
事業者からの支払調書の情報は、税務署にてデータベースで管理されており、事業者が申告した売上金額と照合できる仕組みです。支払調書に記載された金額と、受け手側が申告した売上額に乖離があると、以下のように捉えられて調査対象となる可能性があります。
- 売上の一部を意図的に除外している
- 売上の計上を忘れている金銭取引がある
- 企業や事業者が会計処理をミスしている
支払調書との照合は、売上計上漏れを発見するための調査手法の1つであり、税務調査で真っ先に疑われる内容です。
取引先への裏付け調査(反面調査)で発覚する
「裏付け調査」とも呼ばれる反面調査とは、申告内容の裏付けを取るために、当該事業者の取引先に対して行われる調査のことです。例えば、調査対象の企業が取引業者への売上を申告していない場合、税務調査官は取引業者へ訪問し、帳簿や請求書の控えなどを確認します。申告されていない取引の事実が確認された場合は、売上計上漏れの証拠として取り扱います。
反面調査は、特定の取引先からの売上を隠蔽しているケースを発見する上で有効な調査方法です。そのため、納税者にとっては拒否することが難しい強力な調査権限に基づいて行われています。
売上計上漏れの代表的な発覚のきっかけとして、支払調書の不一致や裏付け調査を挙げましたが、国税庁は一般人では把握できないあらゆる情報を入手して発見しています。そのため、「知る限りの対策をすれば売上計上漏れが発覚しない」ということではありません。売上計上漏れや税務調査への不安がある方は、ぜひお気軽に小谷野税理士法人にご相談ください。
税務調査で指摘されやすい売上計上漏れの5つのパターン

売上計上漏れには、意図的なものから単純な会計ミスまで、あらゆるケースが存在することを税務調査官は知っています。しかし、税務調査で指摘されやすい内容には一定の傾向が見られます。そこで、指摘を受けやすい代表的な5つのパターンを具体的に解説しますので、自社の会計処理に当てはまる点がないか、確認してみましょう。
飲食店などで起こりやすい現金売上の一部除外
現金商売の飲食店や小売店で起こりやすい売上計上漏れは、現金売上の一部を除外するパターンです。手口としては、日々の売上の一部をレジに通さず、そのまま現金を抜き取り、申告から除外するといった手口です。以下のような点から、計上漏れの指摘を受けます。
- 税務調査官が事前に店舗を内偵調査し、客数や客単価から売上規模を把握している
- 仕入れた材料の量や、同業他社の売上データとの比較などから、申告されている売上が不自然に少ない
上記の通り、帳簿上の数字だけでなく、事業の実態から矛盾点を突き、現金売上の除外を指摘されます。
特定の取引先からの入金分を申告から除外する
よくある手口として、複数の取引先がある中で、特定の数社からの売上だけを意図的に申告から除外しているケースです。中でも、相手先が個人の場合や、請求書を発行しない口約束の取引などで発生することが多いです。
- 取引先の反面調査
- 事業用の預金口座だけでなく代表者個人の口座を含めた入金履歴の確認
たとえ個人取引や1つの取引先だけを隠していたとしても、特定業者との売上除外は高確率で発覚するため、税務署の調査網から逃れることは困難だと認識しておきましょう。
決算日をまたいで売上計上時期を意図的にずらす
意図的に「期ズレ」を起こして翌年度に会計処理をするといった手口も多く見られます。決算日直前に発生した売上を、意図的に翌期の売上として計上することで、当期の利益を圧縮しようとする行為は「期ズレ」と呼ばれ、売上計上漏れに悪用するといった手口です。
税法では、『原則として、売上は商品を引き渡した日やサービスを提供した日に計上すべき』と定められており、入金日基準ではありません。そのため、税務調査官は決算期末前後の請求書や納品書、契約書の日付を精査し、本来当期に計上すべき売上が翌期に回されていないかを確認します。
意図的な期ズレは、悪質な利益操作とみなされ、厳しい指摘を受ける対象です。意図的でなかった場合でも、期ズレに気づいた際には、過少申告加算税や延滞税などの追加徴税になる可能性もあるため、できるだけ早めに税務署に報告しましょう。
個人名義など事業用以外の口座への入金を申告しない
事業で得た売上を、法人の事業用口座ではなく、代表者やその家族の個人名義の口座に入金させ、申告から除外するといった手口もあります。「事業用口座しか調査されないだろう」という安易な考えから行われがちな手法です。
しかし、事業に関連する不自然な入金が個人口座にあれば、税務署が「調査の必要がある」と判断し、個人の預金口座の開示を求めて調べることが可能です。発覚した場合は、売上隠しを裏付ける有力な証拠として扱われるため、事業用以外の口座への入金には注意しましょう。
ネットオークションやフリマアプリなどの売上を申告しない
近年、インターネットを利用した副業が広まっていますが、ネットオークションやフリマアプリでの売上を申告していないケースも増加しています。通信販売のみでなく、ネットオークションなどの売上も、継続的に事業として行っている場合、申告の対象です。
インターネットを通じた販売業者の中にも、申告漏れや無申告の業者が年々増えていることから、税務署は細かくチェックして目を光らせています。さらに、プラットフォームを運営する事業者に対しても税務調査を行い、個々の利用者の取引データをまとめて入手して調査する場合もあります。業者の情報をもとに個人の申告内容と照合するため、「少額だからバレないだろう」という考えが通用しない点に注意しましょう。
参考:インターネット取引を行っている者の調査状況|国税庁HP
売上漏れが発覚した場合に課される3種類の追徴課税
売上計上漏れなどの申告漏れが発覚すると、本来納めるべきだった税金(本税)を追加で納付する「修正申告」をしなくてはなりません。修正申告後に納付する税には、不適正な申告を行ったことへのペナルティとして、該当する附帯税(追徴課税)が本税に上乗せされる場合もあります。どのような種類の追徴課税があるのか、以下で確認しましょう。
申告額が少なかった場合に課される「過少申告加算税」
過少申告加算税は、確定申告で提出した納税額が本来納めるべき額より少なかった場合に課されるペナルティです。ただし、会計の計算ミスや解釈の違いなど、意図的ではない申告漏れが対象となることから、過少申告加算税の追加分の税率は低めの設定です。
過少申告加算税は、増差税額(本来支払うはずの税額と過少申告した税額の差)に対して原則10%を乗じます。ただし、増差税額が多い場合、追加の税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている部分には15%の税率が乗じられます。
以下の表をご確認ください。
| 税額区分 | 50万円以下 | 50万円超 | |
|---|---|---|---|
| 原則の税率 | 10% | 15% | |
| 更生等 予知前 | 調査通知後 | 5% | 10% |
| 調査通知前 | 不適用 | ||
更生とは、修正申告または期限後申告を指し、税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は課されません。万が一、会計ミスなどで過少申告をしていることに気づいた場合は、すぐに税務署にて自主的に修正申告を行いましょう。修正申告をする際にご不安がある方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。
意図的な隠蔽と判断された場合に課される重い「重加算税」
重加算税は、売上を意図的に除外したり、架空の経費を計上するなど、事実を仮装・隠蔽して納税を免れようとした場合に課されます。過少申告加算税のような、意図的でない会計ミスとは取り扱いが異なり、重大なペナルティといった扱いです。以下は重加算税が課される可能性のある取り扱いの例です。
- 隠蔽又は仮装に該当する場合:二重帳簿の作成、帳簿書類の改ざんなど
- 使途不明金及び使途秘匿金の取扱い
- 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合:経費の繰上計上をしている場合において、該当の経費が翌事業年度に支出されていたことが確認されたとき
- 不正に繰戻し還付を受けた場合
上記のようなことが行われたと判断された場合、過少申告加算税などに代わって、重加算税という高い税率が適用されます。そして、短期間に隠蔽や仮装を繰り返して重加算税などを徴収されている場合は10%が追加される加重措置もあります。各税率は以下の表の通りです。
| 重加算税に代わる場合の税率 | 過去5年以内にて無申告加算税、または重加算税を徴収されたことがある場合の税率(加重措置) | |
|---|---|---|
| 過少申告加算税に代わって支払う | 35% | 45% |
| 無申告加算税に代わって支払う | 40% | 50% |
さらに、重加算税の対象となった場合は、税務署が調査できる期間も通常の3年や5年から7年へと延長されるため、調査へのリスクが高まるので注意しましょう。
参考:法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁HP
本来の納税期限を過ぎたことに対する「延滞税」
延滞税は、本来の納税期限(法定納期限)までに税金が納付されなかった場合に、遅延した日数に応じて課される利息に相当するペナルティです。税務調査による修正申告で追加の税額が発生した場合、税額に対して法定納期限の翌日から実際に納付される日までの期間分の延滞税がかかります。
延滞税の税率は年によって変動しますが、納付期限から2ヶ月を経過すると税率が上がります。そのため、指摘を受けた場合は速やかに納税を済ませましょう。
税務調査で売上漏れを指摘されないための日頃からの対策

税務調査は、適正な申告と納税を行っている事業者にとっては、過度に恐れる必要はありません。ただし、税務署から売上計上漏れなどの指摘を受けないためには、日常的に正確な会計処理を徹底することや、証拠となる書類をきちんと整理・保存しておくことが大事です。
そこで、税務調査に備えるための具体的な対策を解説します。
現金や預金の入出金を日々正確に記録する
特に現金商売の事業者は、日々の現金の動きを正確に帳簿に記録し、実際の現金残高と一致させることを徹底しましょう。
- 現金出納帳を作成し、レジの締め作業を毎日行い、記録を残す
- 金庫などが別にある場合は、月末など定期的に確認し、現金出納帳などと現金が合っているか確認を行い、記録する
- 法人・個人事業主を問わず、事業用の預金口座とプライベートの口座を明確に分ける
- 事業に関するすべての取引を事業用口座を経由するように管理する
事業にまつわる金銭の流れを固定化、かつ明瞭にすることで、売上計上漏れを防ぐことに繋がります。また、定期的に現金の確認を行っていたことを記録しておくことで、万が一の税務調査の際にも「日頃から管理を徹底している企業」といった印象を与えられます。
売上計上基準を設けて期ズレを防ぐ
いつの時点で売上を計上するかという「売上計上基準」を社内で明確に定めておきましょう。売上の計上に関する基準日を社内全体で共有しておくことで、意図せぬ「期ズレ」を防げます。あらかじめ、以下のような計上について決めておくと安心です。
- 商品を出荷した時点での計上(出荷基準)
- 取引先が検収を完了した時点での計上(検収基準)
- 決算期末の取引の計上
業界の慣行にもよりますが、基準が設けられていない場合は、自社のビジネスモデルに合った基準を設け、決定した計上ルールをすべての取引で一貫して適用しましょう。社内で決定したルールに則って正確に計上処理をすることで、計上時期に関するミスを防げるでしょう。
万が一売上計上漏れを指摘された場合の正しい対応方法
日頃から厳重に注意していても、ミスや認識の違いによるものから、税務調査で売上計上漏れを指摘される可能性はあります。しかし、税務調査官からの指摘を受けた場合は、指摘後の対応も判断材料とされるため、不誠実な態度を取らずに冷静かつ適切に対応しなくてはなりません。そこで、指摘後の正しい対応と修正申告の流れを解説します。
指摘内容を真摯に受け止め、速やかに修正申告を行う
税務調査官から売上計上漏れの事実を示され、指摘が明らかに自社の誤りであった場合は、真摯に受け入れることが重要です。指摘に対して感情的に対応することや、むやみに反論を続けることは、税務調査官に悪質な隠蔽を疑われる可能性があります。
そこで、指摘に対して事実であることを認めた上で、速やかに修正申告を行いましょう。追加の税額と附帯税を納付する姿勢を見せることが、調査を早期に終結させるための最善策です。また、迅速な納税は、延滞税の増加を防ぐことにも繋がります。
意図的ではなかったことを示す客観的な資料を提示する
売上計上漏れが意図的な隠蔽ではなく、単純なミスや経理担当者の知識不足によるものだった場合は、意図的でなく会計ミスであった旨を主張しましょう。重加算税が課されるかどうかの判定には、「仮装・隠蔽の意図があったか」が判断基準となります。
ただし、税務調査官に「単なる会計処理のミスだ」と口頭で伝えるだけでは不十分です。そこで、以下の点を意識して、説明できるようにしておきましょう。
- なぜそのようなミスが起きたのかを合理的に説明する
- ミスが意図的ではなかったことを裏付けるメールの履歴や社内文書などの客観的な資料を提示できるようにする
- 意図的ではなかったことの信憑性を高めるための資料を準備する
- 日常的な会計処理を示す資料(会計帳簿、領収証の保管など)を用意する
意図的でない旨を合理的に説明するためには、適切に処理してきたことを証明する帳簿などの会計に関する資料が必要です。会計資料の保管が適切か不安を感じる方は、日頃から税理士に相談し、税務調査への対策をしておくことが大切です。ぜひ、お気軽にご連絡ください。
税務の専門家である税理士に相談して対応を任せる
税務調査の連絡が来たら、速やかに顧問税理士に相談しましょう。税理士は税法の専門家であり、税務調査のプロセスや税務調査官の指摘のポイントを熟知しています。そのため、税務調査においては、企業や事業者に代わって以下のような対応が可能です。
- 調査の立ち会いで納税者の代理として税務調査官と対等な交渉
- 不当な指摘に対しては法的な根拠に基づいた反論と対応
- 指摘事項が事実であった場合の修正申告書の作成
納税者にとって最も有利な条件で調査が終結するよう尽力してもらえるため、精神的な負担も軽くなります。日常的な税務調査対策や会計処理などを税理士に確認してもらいたいとお考えの方は、ぜひご連絡くださいませ。
まとめ
税務調査において、売上計上漏れは最も重要な調査項目です。「意図的に行われた売上の除外」と判断された場合、重加算税という重いペナルティが課されます。
税務調査官は支払調書との照合や反面調査など、あらゆる手段と情報を使って売上計上漏れを発見します。指摘を避けるためには、日常的に現金管理の徹底や会計記録の保管、自社の売上計上ルールを遵守するなどして、正確で適切な会計処理をしていくことが大切です。
税務署からの指摘を受けた場合は、速やかに専門家である税理士に相談し、できるだけ誠実に対応することで、税務リスクを減らしましょう。









