月次決算とは、企業が毎月の財政状態や経営成績を把握するために、1ヶ月単位で行う決算業務のことです。月次決算は年次決算とは異なり、法律で義務付けられているものではありません。ただ、毎月決算を行うことで、会社の損益や資産、負債の状況が可視化され、タイムリーな経営判断にも役立つため、多くの企業が任意で実施しています。本記事では、月次決算のメリットや実施の手順、月次決算を円滑に進めるポイントについて、ご紹介します。
目次
月決算(月次決算)とは

月次決算とは、企業が1ヶ月ごとに行う決算業務のことです。事業年度末に行う年次決算とは別に行うもののため、法的な義務ではなく、企業が任意で実施します。
月次決算を行う目的は、会社の損益や財産の状況を月ごとに記録して数字として可視化させることで、経営の現状をタイムリーに判断可能にするためです。単月、四半期ごとの変化や細かい分析も容易になり、年間を通じた経営状況の予測精度も高まります。
また、事務的な面においても、毎月決算を行うと経理業務の負担が分散でき、年次決算時の作業を効率化できることから、多くの企業が月次決算に取り組んでいます。
月決算(月次決算)を行う3つのメリット
月次決算は年次決算とは異なり、法的な義務ではないものの、近年では多くの企業が実施している会計業務と言えます。多くの企業が月次決算に取り組む理由として、以下のようなメリットがあるからです。
- 経営状況をタイムリーに判断できる
- 年間の決算業務を効率化できる
- 金融機関からの信用が高まり、資金調達がスムーズになる
詳しく見ていきましょう。
経営状況をタイムリーに判断できる
1年に1回のみ実施される年次決算に比べ、毎月実施する月次決算は、企業の経営状況をタイムリーかつ具体的な数字で把握できるのがメリットです。月次決算を導入すると、以下のような効果が得られるため、企業の経営判断や意思決定の迅速化にも役立ちます。
毎月の会社の損益・資産・負債の状況を可視化できる
単月や四半期ごとの経営状況の変化を把握やすい
状況判断がリアルタイムになることで適切な経営判断に繋げやすい
決算処理を年次決算のみで済ませてしまうと、年度末の1年間の事業経営の結果のみで経営状況を判断しなくてはなりません。そのため、経営判断の遅れだけでなく、状況変化の原因追究も遅れてしまう可能性があります。
例えば、経費の増減理由を分析する際に、月次で分析すると「今月は展示会があったため、新規の案件が増えた」などの具体的な原因を追求できます。年次に比べて細かい分析を行えることから、経営陣は現状に合った最新の情報を取得でき、時流に合わせて経営しやすい点もメリットです。
月次決算により、リアルタイムな情報や月単位の綿密な分析に基づいた事業計画の進捗も把握できるため、必要に応じた経営の軌道修正や新たな経営戦略を策定する際にも役立ちます。
年間決算の業務を効率化できる
月次決算を導入すると、年次決算時に集中しがちな経理業務の負担を分散でき、決算業務を平準化できます。月次決算では、主に仮払金や仮受金といった仮勘定を整理しておくケースが多いです。
決算業務において、四半期決算や中間決算のように数ヶ月分をまとめて行うと、一時的な支出処理で行った仮勘定の内容を突き止めるのに時間がかかります。一方で、月次決算で毎月処理をしていれば、正確な内容の把握と整理ができるでしょう。
月次決算の実施によって、年次決算時における会計処理の手間や負担を解消し、年次決算時の経理担当者の業務を減らせます。さらに、会計処理に誤りがある場合も早期発見による、迅速な修正が可能です。結果的に、企業の会計処理の透明性を高めることにも繋がります。
金融機関からの信用が高まり、資金調達がスムーズになる
作成した月次決算は、銀行などの金融機関から融資の審査資料としても活用できます。融資の審査には、事業計画書や資金繰り表、試算表などの書類に加えて決算書についても、金融機関から提出が求められる重要な書類です。
そこで、年次決算書だけでなく月次決算書も併せて提出することで、金融機関は以下のように企業を判断します。
- 企業の最新かつタイムリーな経営状況が確認できる
- 仮勘定や不明金が少なくなるため、企業の会計処理の透明性が高いとみなされ、企業会計の信用度が上がる
- 月次決算を継続的に実施している企業であること自体が、自社の財務状況を正確に管理できている証拠とみなされる
金融機関にとって、月次決算書は対象企業の財務状況を判断する重要書類であり、会計の透明度や企業の信用度にも繋がることから、融資判断に影響力があります。そのため、月次決算の実施は融資判断をスムーズに進めたい企業におすすめの融資対策です。
月決算(月次決算)の実施手順

月次決算を実施する場合は、年次決算と同様の手順で進められるため、比較的容易に取り組めます。大まかな流れとしては、以下の通りです。
- 決算整理を行う
- 月次財務諸表を作成する
- 経営層に報告する
上記の手順を計画的に進めていきましょう。ここからは、それぞれの手順を詳しく解説していきます。
決算整理を実施する
月次決算における決算整理は、基本的に年次決算と同様の手順で行います。ただし、月次決算の場合は、年次決算よりも簡易的に取りまとめることも多いです。基本的には以下の2点を押さえて実施します。
- 会計期間の終了日をひと区切りとして決算整理を行う
- 1ヶ月の正確な収益と費用を把握する
さらに、信頼性の高い月次決算書を作成するには、以下の5つの項目を含めて作成することをおすすめします。
- 現金預金残高の確認
- 月次棚卸の確定
- 仮勘定の整理
- 経過勘定の計上
- 主な年間費用を月割りで計上
上記の5つを詳しく見ていきましょう。
現金・預金残高の確認
月次決算を行う際には、現金や預金の残高が帳簿と一致しているかを確認します。
- 現金:金庫にある現金を直接数える。帳簿の残高との差異がないかを必ず確認する。
- 預金:銀行の通帳を記帳する。インターネットバンキングにおいても、取引履歴を確認し、預金と帳簿の残高を必ず照合する。
万が一、残高が一致しない場合は、原因を特定しましょう。月次決算の段階で適切な修正仕訳を行っておくと、会計処理の精度が上がります。正確な現金・預金残高を把握することで、当月の資金繰りが明確になるため、まずは帳簿との整合性を確認しましょう。
月次棚卸の確定
在庫の管理などが必要な企業の場合は、月次棚卸を行いましょう。月次棚卸とは、毎月末時点での商品や製品、原材料などの在庫を数えた上で、帳簿に記載された数量・金額と一致させ、確定させるための作業です。当月に販売された商品の売上原価や利益を計算できる場合は、できるだけ計算しておくことをおすすめします。
棚卸の実施方法には、実際に在庫を数える「実地棚卸」と、帳簿上のデータで確認する「帳簿棚卸」の2つの方法があります。どちらを活用するかは企業によって異なりますが、毎月行う月次決算においては、より業務負担が少ない方を活用するケースも多いです。
仮勘定の整理
取引の内容や金額が一時的に不明となってしまった仮払金や仮受金などの仮勘定項目を、適切な勘定科目へと振り替えて整理しましょう。
- 仮払金:領収書や請求書を確認し、使途の特定ができたら適切な費用科目へ振り替える。
- 仮受金:入金元に確認して内容を特定し、適切な収益科目へ振り替える。
未整理の仮勘定が残っていると、財務諸表の正確性が損なわれます。また、年次決算時にまとめての処理となると、原因を特定するのに時間と手間がかかるため、毎月きちんと整理しておくのがおすすめです。
経過勘定の計上
経過勘定がある場合は、月次決算にて費用と収益に計上しておきましょう。経過勘定とは、現金の収支があった時期と、収益や費用を計上する時期にズレが生じた場合に、ズレを調整するために使う勘定科目です。
具体的には、以下の4種類が経過勘定に該当します。
| 対価 | サービス | 計上 | |
|---|---|---|---|
| 1.前払費用 | 支払い済み | 受けていない | 費用 |
| 2.未払費用 | 未払い | 受けている | |
| 3.未収収益 | 受け取っていない | 提供済み | 収益 |
| 4.前受収益 | 受け取り済み | 提供していない |
例として、家賃や保険料、借入金の利息などの継続的に発生する費用や収益も該当します。当月に支払いや受取が行われていなくても、当月に発生したと見なされる分を計上する作業です。
年間にかかる主な費用を月割りで計上
月次決算を行う際は、年間にかかる費用を一括で計上するのではなく、毎月発生する費用として、月割りで計上するのがおすすめです。
例としては、以下のような費用を月割りで平準化して計上します。
- 減価償却費:建物や機械などの固定資産の取得費用を、各耐用年数に応じて費用として配分する。
- 引当金:貸倒引当金や退職給付引当金などの、将来発生する可能性のある費用や損失に備えて計上する。
- 納税充当金:法人税などの税金に備えて計上する。
特に、発生する可能性が高く、かつ負担が大きい多額の費用については、月次決算にて毎月計上するのがおすすめです。年次決算にて年間で処理するよりも、より計画的で実態に即した経営成績を可視化できるメリットがあります。
月次財務諸表の作成
決算整理が完了したら、決算整理の結果に基づいた月次財務諸表を作成しましょう。年次決算とは異なり、月次決算では法的に定められた形式はありません。一般的には、以下の3つの書類が作成されています。
- 貸借対照表:企業の財政状態を示すため
- 損益計算書:経営成績を示すため
- 資金繰り表:資金の流れを示すため
その他、予算実績対比表、前年同月対比表、部門別損益計算書、売掛金・買掛金残高一覧表、在庫一覧表、売上高推移表などが併せて作成されるケースもあります。さらに、経営判断に必要な情報に応じた資料の追加作成など、各企業に必要な数値の集計や分析を行うとよいでしょう。
月次事業状況 of 報告
月次財務諸表が完成したら、企業の経営陣に報告します。具体的な報告資料としては、以下のような資料が用いられます。
- 月次損益計算書
- 貸借対照表
- 予算実績対比表
- 部門別損益計算書
- 資金繰り表
- 前年同月実績との比較資料
さらに事業報告では、上記の資料に加え、以下のような分析や考察内容を含めて行い、より精度の高い経営改善へと繋げましょう。
- 前月や前年との対比や予算との比較
- 特異な増減があった場合の要因の分析を行う
- 今後の経営にどのような影響を与えるのか考察する
月次報告を上手く活用することで、経営陣が経営の現状を把握できるため、速やかに経営改善や意思決定が行える点も、月次報告を実施するメリットです。
月決算(月次決算)を円滑に進めるためのポイント

月次決算を行う場合、毎月の会計業務に決算が組み込まれるため、期日までに集計するための必要書類なども多くなります。そこで、よりスムーズに月次決算を進めるためのポイントをご紹介します。
社内外へ必要書類の提出期日の厳守を徹底する
月次決算を作成するための必要書類の提出期日を決めて、必ず提出してもらいましょう。書類集めは経理部門のみならず、各部署や取引先からの必要書類も含まれます。月次決算の主な提出書類には、請求書、領収書、納品書、経費精算書類などが該当します。
期日を徹底するためには、以下の指導を心がけましょう。
- 事前に各部署へ締め日や書類提出のスケジュールを明確に周知徹底する
- 従業員全員が期日厳守の意識を持つように促す
- 外部の取引先に対しても、請求書などの提出期日について協力を仰ぐ
必要書類の提出が遅れると、月次決算全体の作業も滞るため、正確な月次決算が作成できず、経営判断の遅れにも直結します。経理部門だけでなく、期日を意識した取り組みが月次決算の早期化に繋がることを企業全体で共有しましょう。
月次決算スケジュールを社内で共有する
社内においては、経理部門内だけでなく、全体 for 月次決算の目的と具体的なスケジュールを共有しておきましょう。あらかじめ月次決算のための業務を連携できるよう、必要な情報を社内で共有できる環境にしておくことで、月次決算に関する事務負担を減らせます。
そこで、まずは月次決算の締め日を明確に設定しましょう。続いて、締め日から処理に必要な日程を逆算し、各業務の提出期限を決めます。例として、以下の情報を決定した上で、各部署と共有します。
- 提出先
- 担当者
- 経費精算の締め日
- 請求書発行の締め日
- 各種書類の提出期限
可能であれば、上記をカレンダー形式で共有し、進捗状況を可視化するのもおすすめです。社内全体でスケジュールなどを共有することで、突発的な問題が発生した場合でも、迅速に対応できる体制を整えられるのが理想です。
クラウドシステムを活用する
近年では、月次決算の効率と正確性を向上させるために、クラウド会計システムや経費精算システムなどを活用する企業も増えています。クラウドシステムの導入で、主に以下のような機能や恩恵が受けられます。
| 会計処理面 |
|
|---|---|
| 情報共有面 |
|
社内での情報共有も容易になり、さらにはクラウドシステムによるAIの活用で手入力によるミスも減るため、経理担当者の業務負担が大幅に減らせるのがメリットです。クラウドシステムを上手く活用すれば、月次決算の作成を正確かつスピードアップできます。
まとめ
法律で義務付けられた年次決算とは異なり、月次決算は企業が任意で実施します。実施の有無や内容、作成する報告書も企業によって異なるため、自社に合わせた報告書を取り入れている企業も多いです。
メリットとしては、企業の経営陣は毎月の財政状態や経営成績をタイムリーに把握できるため、経営戦略をスムーズに立てられます。また、会計処理の透明性や信用が高まるため、金融機関からの資金調達にも有利に働くケースもあります。
さらに、クラウドシステムの導入やAIの活用など、ITツールを利用して手軽に資料を作成するのもおすすめです。月次決算の実施で、より効率的な会計管理と、タイムリーな分析に基づいて時流に即した経営戦略を目指しましょう。





