借入金には節税効果があるのでしょうか?借入金自体を経費にはできませんが、借入金に伴う利息、借入金で資産を購入した際の減価償却費などを費用として計上できることから節税効果が見込めます。この記事では、借入金で節税効果が得られる仕組み、節税効果を高めるポイントと注意点、借入金を活用した節税対策で留意しておきたい点について詳しく説明します。
目次
借入金と税金の基本

まずは借入金と課税の仕組みを正しく理解することが重要です。借入金に節税効果があると言われるのは、利息や借入金で購入した固定資産の減価償却費などを経費計上できるからです。
そもそも借入金そのものには税金はかからず、経費としても計上できません。借入金が手元にある資金であるものの、いずれ返済しなくてはいけないものだからです。
ただし、借入金返済時に支払う利息は、経費計上が可能なため節税に結び付きます。とはいえ、借入金をしなければ利息を支払う必要がないため、利息自体が無駄な出費となり得ます。
借入金をすることは節税対策にはなりますが、節税目的のための利用は十分な検証が欠かせません。
借入金に節税効果があると言われる理由
借入金に節税効果があると言われるのは、法人税や所得税、相続税などを減税できる可能性があるからです。ここでは、借入金の節税効果について説明します。
借入金の利息を経費計上できる
法人や個人事業主は借入金がある場合、元本は経費にできませんが返済時に支払う利息を経費にできるため課税所得を減らせます。
給与所得者が借入金をしている場合は、借入金があっても利息分を経費にできません。代わりに給与の収入額に応じて適用できる給与所得額控除を利用できます。また、住宅ローンを組んで住宅を購入した場合は、住宅ローン控除が適用可能です。
ただし、給与所得者が副業で不動産投資などをしている場合は、利息分を経費にできる場合があります。借入金で取得した不動産で収入を得ているなら、借入金の返済利息必要経費に該当するからです。また、不動産の減価償却費も費用計上できます。
減価償却費を計上できる
借入をして事業に必要な建物や設備などの資産を購入した場合、減価償却費を費用計上することで、法人税、所得税や住民税の減税が見込めます。給与所得者が副業で必要な資産を借入金で購入したときも、減価償却費を経費計上できます。
減価償却費は、利息のように実際に資金の流出がありません。また、減価償却費の額によっては高い節税効果が期待できるため、資産の維持に役立つのです。
減価償却費は比較的長期間にわたる節税効果が期待できます。資産ごとに耐用年数が決められているため、適切な耐用年数で毎年減価償却費を計上し、課税所得を減らします。
ただし、事業への必要性や返済額などを考慮し、妥当な額を借入することがポイントです。適切な資金計画に基づいた借入金による資産の購入でなければ、資金繰りの悪化を招くでしょう。
相続税の負担を軽減できる
相続が発生したときに、借入金の残高は相続財産から控除対象となるため、借入金は相続税対策にも効果的です。
相続税の課税対象となる場合、多くの人ができる限り相続税額を減らしたいと考えるでしょう。借入金で課税対象となる資産を減らすことは、相続税額を軽減し効率よく資産を残すことに結び付きます。
ただし、借入金をした理由や金額について詳しく説明できるように記録を残しておくことが重要です。相続税の申告に不備や誤りがあると、税務署から指摘を受けたり、税務調査の対象となったりするからです。
税務署から問い合わせがあった際に、例えば、金融機関との契約書など借入金をした理由、借入金額、利率などを証明できる書類を明示することで、借入金の正当性を証明できるでしょう。
役員借入金で税金や保険料を軽減できる
役員が法人に対して自己資金を貸し付けることも、減税に効果的です。例えば、資本や開業資金が足りないとき、役員個人の資金を会社に貸し付けて資金を調達できます。
役員からお金を借りたときは、役員へ返済しますが、借入金の返済として処理するため、役員の所得には該当しません。よって、税金や社会保険料の対象とはならないことから、節税効果が期待と言えます。
役員報酬として支払った場合は給与扱いとなるため、課税と社会保険の対象となりますが、借入金とすることで税負担を軽減できます。
減価償却費で節税効果を高めるポイントと注意点

借入金で購入した設備や不動産などの減価償却費は、期間や金額によっては高い節税効果が期待できる費用です。ここでは、減価償却費で効果的な節税対策を実現するためのポイントと注意点を解説します。
耐用年数は短めが減税に効果的
減価償却費は購入した資産の耐用年数によって決まりますが、耐用年数はできるだけ短い方が節税効果が高まります。より多くの費用を計上し課税所得を減らせるからです。
ただし、他の資産との合算には注意が必要です。例えば、不動産と不動産に含まれている内装や電気設備などを合算した場合、耐用年数が長い方に合わせて減価償却しなくてはいけません。
一般的に、不動産は耐用年数が長め、電気設備などは耐用年数が短めです。合算してしまうと、年度当たりの減価償却費が減少し節税効果が薄れることがあります。
また、耐用年数については耐用年数省令の別表などで定められており、恣意に短縮できない点に要注意です。短縮を希望する場合は、「耐用年数の短縮の承認」など、特別な承認が必要です。
減価償却方法は節税効果で決める
減価償却費を計算する方法として、定額法と定率法がありますが、節税効果を得たい時期や程度によって計算方法を決めましょう。
資産を購入した年度の節税効果を高めたいなら定率法、耐用年数の範囲内で毎年一定額を節税したいなら定額法が適しています。
原則、法人は定率法、個人事業主は定額法で減価償却をするとされていますが、計算方法を変更しても問題ありません。減価償却費の計算方法を変更するときは、事業年度開始前に税務署に申請書を提出します。
参考:国税庁 C1-38 減価償却資産の償却方法の変更の承認の申請
購入のタイミングを考慮する
借入金でどのような資産をいつのタイミングで購入するかも、節税効果に影響を与えます。例えば、減価償却費をできるだけ多く計上し減税につなげたいなら、年度初めの購入が適しています。
事業年度の途中で資産を購入した場合、減価償却費を月割りで計算しなくてはいけないからです。例えば、会計年度が4月~3月の場合、4月に資産を取得することで他の月に購入するよりも減価償却費を多く計上できます。
資産の購入は、減価償却費だけでなく消費税の仕入税額控除にも影響します。資産を取得した年度に仕入れ税額控除を適用できるからです。例えば予想以上に売り上げが多かった年度中に資産を購入することで、該当年度の仕入れ税額控除を増やし減税できます。
相続税対策に借入金を活用するポイントと注意点
借入金は相続税の減税にも効果を発揮します。ここでは、借入金を活用した相続税対策のポイントと注意点について詳しく説明します。
債務控除を適用する
借入金で相続税の節税効果を期待するなら、相続人ではなく被相続人が借入金をすることが前提です。債務控除とは、被相続人から財産を相続するときに相続した財産のうち、プラスの資産からマイナスの財産を差し引ける制度です。
借入金も債務控除の対象で、次のような借入金の使い道が多くみられます。
- 保険商品を購入する
- 土地やマンションを購入する
- アパートやマンションを建設する
上記のように、借入金で不動産や保険商品の購入をしているケースが多いです。また、葬儀にかかった費用、被相続人に対して請求される家賃や入院費などの未払い費用も債務控除の対象です。
減価償却費の組み合わせで節税効果を高める
債務控除による節税だけでなく、減価償却費の計上で相続税의節税効果を高められるでしょう。借入金で事業用の不動産を建設、購入した場合、一般的に不動産の評価額は現預金よりも低い評価額になるからです。
贈与とみなされるケースに注意
借入金でも、利息なしの借入金や家族間の貸し借りなどは贈与とみなされてしまい、贈与税として課税される事例があります。
例えば、金融機関からローンを組んだときは、借り入れた金額と金利に応じた利息を支払います。借入金には利息がつくものだとみなされるため、利息のない借入は贈与と認定される可能性が高いのです。
また、親子や夫婦、兄弟といった家族や親族間の貸し借りは、貸出条件などが曖昧となりやすいことから、贈与とみなされるケースが多いです。家族間で貸し借りをする際には、事前に契約書を用意する、利息を支払う、定期的に返済をするなどの対策が求められます。
借入金の注意点①資金繰りへの影響

借入金は節税効果を高めるのに活用できる資金調達方法ですが、場合によっては個人、法人共に資金繰りを圧迫させる要因になり得ます。ここでは、借入金を節税対策で活用する際に資金繰りを悪化させないための注意点を解説します。
事業への必要性を判断する
事業に必要な資金であるかを十分に検証したうえで、借入をするか否かを決めましょう。借入金によって一定の節税効果が期待できますが、事業への必要性が低いものに対して資金を投入することは、無駄なコストだからです。
借入をした場合、利子を含めて定期的な返済が必要で、資金の圧迫や不足の原因となり得ます。借入金の必要性は、事業に欠かせないものであるか否か、節税効果、資金繰りへの影響など複数の要素を考慮して決めましょう。
金利を比較検討する
借入金は、利用する金融機関や商品によって金利が異なるため、金利を比較検討することも大切です。高額な金利は高い利息を支払うことになり、資金を減少させるからです。
借入金の支払利息は経費として計上できるため、課税所得を減らせます。しかし、節税効果を検証したときに、それほど高い効果が得られなければ、より金利の低い金融機関や商品を選ぶことが資金繰りの安定につながります。
借入金額を検討する
返済可能な金額を借り入れることが大切です。節税のために過度に借入をしてしまうと、返済が苦しくなり法人は経営難、個人は自己破産などのリスクが高まります。
毎月の収支の状態を確認し、利息を含めて無理なく返済できる額を設定することです。また、個人で借入をする場合は、例えば、家賃収入から経費を差し引き、利息と共に返済できるか否かを検討しなくてはいけません。
妥当な借入金額が分からないときは、税理士に相談してみましょう。節税対策と併せて、効果的な借入額を提案してくれます。
返済期間を考慮する
借入金の返済期間は資金繰りに影響のない範囲で設定しましょう。利息を減らせるなどの理由で、借入金をできるだけ早く返済したいと考えるかもしれません。
確かに、短期間での返済は借入金と利息の総額を減らす効果があるものの、資金の流出を増やしてしまうため資金不足が起こりやすいのです。借入金額と同様に、資金繰りに影響のない範囲で返済期間を決めましょう。
借入金の注意点②自己資本比率の低下による影響
借入金額の増加に伴い、自己資本比率が低下することにも注意が必要です。ここでは、自己資本比率が低下することによる経営や財務への影響について説明します。
資金調達に不利となる
自己資本比率が低下すると、安定した経営や事業拡大に必要な資金調達時に不利となり、財務や経営に悪影響となり得ます。自己資本比率とは資産の総額における自己資本の割合のことで、企業の財務、経営の健全性や安全性を判断する基準の一つです。自己資本比率が高いほど、返済不要な資金が多く財務や経営が安定しているとみなされます。
しかし、借入金額が増えると必然的に自己資本比率が下がり、取引先や金融機関などから倒産リスクがある企業と判断されることがあるのです。自己資本比率は以下の計算式で導き出します。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100 |
自己資本比率が低いと経営や財務を危険視され、金融機関から必要な資金を調達できなかったり、調達できても利率が高かったりします。
経営や財務の安定性に悪影響
経営や税務の安定性に悪影響を与えることから、適正な自己資本比率を保つことが大切です。借入金によって適切な自己資本比率を保てなくなることは、経営や財務の安定性に悪影響を与える要因となり得ます。
適切な自己資本比率は業種、企業の規模や状況によって異なります。例えば、製造業などは設備などの固定資産が多くなるため、自己資本比率の目安は20%です。一方、卸売業など固定資産が少なく、売掛金や在庫が多い業種は15%が目安です。
適切な自己資本比率を保てるような借入金を行うことが望ましいです。自社に適した借入金の額がわからないときは、顧問税理士に相談してみましょう。
借入金による節税効果を期待するなら事前の検証が重要
借入金によって所得税や法人税、相続税などさまざまな税金における節税効果が期待できます。ただし、借入金は利子と併せて返済することから、妥当な額を借りること、事業に必須であるかなど、さまざまな要素を考慮しなくてはいけません。節税効果を高めるための手段として借入金を検討しているなら、他の節税手段も含めて税理士に相談してみましょう。








