事業や企業の経営や経理において、「経費」と「投資」は日常的に使われる言葉です。しかし、実際に「経費」と「投資」がどのように異なるか、ご存知でしょうか?経費と投資は会計処理が異なることから、会社の財務状況を正確に把握するためには、両者の違いを理解しておかなくてはなりません。中でも、設備投資については投資金額が大きくなる傾向があるため、正しい会計上の取り扱いを知っておく必要があります。本記事では、「経費」と「投資」の違いから、各会計処理や減価償却についての知識、そして設備投資を行う際の判断の方法と基準について、詳しく解説します。
目次
経費と投資の違いとは
事業活動において、お金を支出する際は「投資」と「経費」に大別されます。しかし、会計処理においては、両者は異なる扱いがなされます。ここでは、投資と経費の違いを改めて確認し、それぞれがどのような支出として扱われるのか、正しく理解しましょう。
経費と投資の違い
経費と投資の違いは大きく3つあります。
- 支出の目的
- 効果が現れるまでの期間
- 会計上の取り扱い
上記の違いをまとめると、以下の通りです。
| 経費 | 投資 | |
|---|---|---|
1.支出の目的 | 事業を継続するために必要な費用 | 将来の利益獲得や企業価値向上を目的とした支出 |
2.効果が現れる期間 | 【短期的】 短期で効果が現れる。 | 【長期的】 複数の会計期間にわたって現れる。 |
3.会計上の取り扱い | 支出した期間に全額を「費用」として計上される。 | 支出した年に全額を「費用」とせず、「資産」として計上する。 効果の及ぶ期間にわたって費用化する。 |
このように、経費は短期目標としてかかる事業の運営費用なのに対し、投資は長期的な目標としてかかる費用を支出した場合に用います。
経費とは
経費とは、事業を運営するために日常的に発生する短期的な費用を指します。例えば、従業員の給与、オフィスの家賃、水道光熱費、消耗品の購入費、旅費交通費などが経費にあたります。
経費は、企業が収益を獲得するために直接的あるいは間接的に必要な支出であり、短期的に効果が現れるものとして捉えられています。会計処理においては、原則として支出した会計期間にて、その全額分を「費用」として計上する仕組みです。
投資とは
投資とは、企業が将来の収益増加のために必要な活動や、競争力を強化することを目的に支出したものであり、比較的長期間にわたる支出を指します。具体的には、土地や建物、機械装置などの有形固定資産や、ソフトウェア、特許権といった無形固定資産の取得などが該当します。
投資によって得られる効果は長い将来にわたるため、一般的に、会計上では支出額を一度に「費用」とせず、「資産」として貸借対照表に計上する仕組みです。そして、その資産が使用される期間に応じ、「費用」として少しずつ配分されていきます。
設備投資とは
設備投資とは、企業が事業を継続・拡大していくために、設備などで必要となる固定資産に投資することです。具体的な例としては、大きく以下の2つに分かれています。
- 【有形固定資産】土地、建物、機械装置、車両、備品など
- 【無形固定資産】ソフトウェア、商標権、特許権など
いずれにしても、将来の収益獲得や生産性の向上を目指して行う支出であり、数十年にわたる長期的な視点で行うことであり、どの企業も定期的に必要なるでしょう。その上、多額の資金を伴うことも多いため、会計上でも大きな影響を与えます。
ただし、設備投資の中には、年季が経つにつれ価値が下がっていく「減価償却」といった概念もあります。ここでは、設備投資の目的や減価償却による価値の変化について、しっかりと理解しておきましょう。
設備投資を行う目的
設備投資は、企業が事業発展して競争力を高めるために、長期的かつ持続可能な成長を見込んで投資を行うことが目的です。各設備投資の具体的な目的は企業や事業内容によって異なりますが、具体例としては、以下の通りです。
- 生産能力の拡大や新製品開発のための新規設備の導入
- 老朽化した設備の更新による生産性の維持や向上
- 省エネルギー化や自動化による人件費削減やコスト削減
- 新たな事業分野への進出のための設備・車両・備品の購入やリース代
- 新規の店舗の出店・移転にかかる土地や建物の購入
長期的な目線での発展や売上の拡大などを目指した先行投資であることから、設備投資の投資額が大きくなる傾向にあります。
設備投資と減価償却費の関係
設備投資によって取得した建物や機械装置などの固定資産のほとんどは、時間の経過とともに価値が減少していきます。年々下がっていく価値の減少を「費用」として認識するための会計処理が「減価償却」です。
設備投資の金額は、各資産の耐用年数に応じた長期間の「資産」として捉え、減価償却を通じて、耐用年数にわたって費用配分されます。そのため、会計処理上においては、設備投資の支出時に全額を「費用」として計上しません。
資産である設備投資が使用できる期間にわたり、「減価償却費」として計上していきます。長期にわたって「資産」が「減価償却」されていくといった処理がなされます。
設備投資が財務に与える影響
設備投資は、将来の収益獲得のための長期的な目線での先行投資となることから、多額の初期費用を支払うことが多いため、企業の財務状況に大きな影響を与えます。財務状況には、以下のように影響していきます。
| 書類 | 主な記載内容 |
|---|---|
貸借対照表 |
|
キャッシュフロー計算書 |
|
損益計算書 |
|
設備投資は将来的な収益の増加に繋がる一方で、高額な投資になるため、現金や資産が一時的にマイナスとなる可能性もあります。特に、取得時はキャッシュフローへの影響が大きいです。そのため、計画性や将来性の低い設備投資は資金繰りを悪化させるケースもあるため、慎重に検討しましょう。
設備投資における減価償却費の計算方法と節税効果

設備投資を行った際には、取得した資産の減価償却費を計算し、正しく会計処理を行う必要があります。減価償却費の計算方法には、主に以下の2つの方法があります。
- 定額法
- 定率法
それぞれ特徴が異なりますので、減価償却の税務上のメリットとともに確認していきましょう。
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法には、主に定額法と定率法の2種類があります。以下で違いを確認していきましょう。
| 定額法 | 定率法 | |
|---|---|---|
特徴 | 資産の取得価額に一定の償却率を乗じて、毎期同じ金額を減価償却費として計上する方法 | 期首の未償却残高に一定の償却率を乗じて計算する方法 |
計算方法 | 毎期同じ金額を減価償却費として計上 | 取得当初の減価償却費が多く、年々減少していく |
メリット |
|
|
これらの計算にあたっては、資産の種類に応じた法定耐用年数を使用し、勘定科目ごとに適切に処理を行います。
減価償却の変更については、税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することで変更できます。届出の提出をしていない場合は、法定償却方法が適用される仕様です。法定償却方法は個人と法人、資産などによって異なります。
参考:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)(国税庁HP)
減価償却による節税効果
減価償却費は税務上の「損金」や「経費」として認められています。そのため、減価償却費を計上することで課税所得を減らせるため、企業は法人税や所得税の負担が軽減できます。中でも、定率法を選択した場合は、取得当初に多くの減価償却費を計上できるため、早期の節税効果が期待できます。
そのほか、以下のような制度を活用することで、節税効果に繋がるケースもありますので、上手く活用しましょう。
- 中小企業投資促進税制:中小企業向けの税制優遇措置。取得価額の一部を特別償却として追加で費用計上できる制度。
ただし、減価償却はあくまで費用を前倒しで計上する側面が強いため、企業としては財務状況への影響を鑑みて処理する傾向にあります。そのため、総合的な費用額は基本的に変わらない点に留意しましょう。
参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)(国税庁HP)
設備投資をすべきかの判断について

設備投資は企業の将来を左右する、重要な意思決定です。設備投資には、以下のような大きなリスクが伴います。
- 長期目線での投資のため、回収までに長い期間がかかる
- 設備投資には多額の資金を投じるケースが多い
このようなことから、企業にとっては長期間にわたる大きな経済的リスクが伴うため、投資の妥当性を慎重に評価しなくてはなりません。そこで、企業が設備投資をすべきかどうかを判断する際には、いくつかの基準がありますので、こちらでご紹介します。
投資判断の方法
設備投資を実行するかどうかの意思決定の際には、数字を用いた客観的な指標を用いた投資判断が重要です。そこで、投資判断の基準となる4つの方法をご紹介します。
- 【正味現在価値法(NPV法)】
投資によって得られる将来のキャッシュフローの合計額と投資額を比較する方法です。キャッシュフローがプラスになれば投資価値があると捉えます。 - 【内部収益率法(IRR)】
投資によって得られる将来のキャッシュフローの割引現在価値と初期投資額を比較する方法です。計算式を用いて、IRRが7%を超えた場合は投資価値があると判断することもできます。 - 【回収期間法】
投資額を回収するまでの期間を計算する方法です。回収までの期間が短いほどよいと判断します。 - 【投資利益率法(ROI法)】
投資額に対する利益率を計算します。「ROI=利益額÷設備投資額×100」の計算式を用い、利益率であるROIが高いほど、投資価値があると判断します。
設備投資においては、キャッシュフローを重視した評価が重要とされていることから、主に「1.正味現在価値法(NPV法)」「2.内部収益率法(IRR)」の2つを用いるのが一般的です。
一方で、「3.回収期間法」や「4.投資利益法(ROI法)」を活用すると、投資の採算性が確認できます。
- 設備投資で設定した目標利益率や回収期間がどれほど満たせるかの確認
- 複数の投資案がある場合はどの案が最も有利かを判断する指標
このような場合にも、活用できます。
また、IT関連の設備投資においては、単にコスト削減だけでなく、生産性向上や新たなビジネス機会の創出といった効果も考慮した多角的な判断が求められるケースもあります。投資内容によって判断方法の選び方や基準数値が異なるため、できるだけ複数の指標をもとに判断するのがおすすめです。
設備投資の意思決定の判断基準
設備投資の意思決定における判断基準は、客観的な指標となる投資判断の方法と併せて、各企業の財務状況や経営戦略、そして市場環境に基づいて決定します。判断基準の具体例としては、以下のようなものです。
- 設備投資をして投資の費用対効果が出るかどうかの見通し
- 設備投資が資金繰りに大きな影響を与えかねないため、投資後にも資金調達ができるかどうか
- 企業の財務状況が危うくならないか
- 設備導入後、設備の運用や現在の設備との連携が整えられるかどうか
- 設備の信頼性や長期的に安心して使えるものかどうか
投資の目的を明確にし、期待される効果と投資によるリスクを十分に分析してから判断する必要があります。そのため、各企業の状況に見合った判断基準を設けたうえで、最終的な意思決定を行うことが、投資の成功に繋がります。
まとめ
経費と投資は、企業活動における支出を会計処理の観点から分類されているものですが、どちらも企業が支出として支払うものです。経費は短期的な費用、投資は将来の利益に向けた長期的な支出であり、中でも「設備投資」は企業が投資する代表例です。
中小企業においては、資金繰りなどに影響を及ぼす可能性もあるため、将来のキャッシュフロー予測や採算性評価などの客観的な指標を用いて慎重に検討する必要があります。適切な投資判断と会計処理は、企業の持続的な発展に繋がることから、専門家と相談して決めていくことをおすすめします。








