小規模事業者は、売上向上や資金繰り、人材確保やデジタル化の遅れなど、さまざまな経営課題が存在します。経営課題を解決し、事業を継続・発展させるためには、自社の状況を正確に把握し、適切な対策を講じる必要があるでしょう。この記事では、小規模事業者が直面する経営上の問題や解決策、活用できる支援制度などについて、詳しく解説します。
目次
小規模事業者と中小企業の現状

小規模事業者と中小企業は、国内の経済を支えています。
しかし、小規模事業者と中小企業は、経済の悪化や少子高齢化、人口減少などの影響を受けています。その結果、多くの中小企業や小規模事業者が廃業や統合しており、数が減少しているのが現状です。
特に地方では、後継者不足や人手不足が深刻化しています。中小企業や小規模事業者の減少が、地域経済へ影響を及ぼしています。今後の経営戦略を立てる上で、中小企業や小規模事業者の現状を理解する必要があるでしょう。
小規模事業者が直面する経営上の問題
小規模事業者が直面する経営上の問題は多岐にわたります。この章では、小規模事業者における経営の課題について、具体的にご紹介します。
売上を増やす難しさ
小規模事業者が事業を継続し成長させるためには、売上を増やす必要があります。売上を増やすには、市場や顧客のニーズ、競合の動向を常に把握する難しさがあるでしょう。特に、マーケティングの知識が不足している場合、売上に繋がる戦略を立てにくいと考えられます。
小規模事業者が売上を増やすためには、新しい顧客の獲得に向けた商品の改良や開発、新たな市場への参入に向けた販売方法の工夫などが効果的です。
特に、SNSを利用した宣伝は、小規模事業者の知名度を高められるほか、商品の魅力や特徴を幅広い世代へ伝えやすいでしょう。 地道な取り組みが、事業の継続や発展に繋がるのではないでしょうか。
費用の削減
企業の利益は、売上から事業にかかる費用を差し引いた金額です。そのため、小規模事業者が事業を維持するためには、事業にかかる費用を削減するのも大切です。
例えば、備品や光熱費、交通費などの経費だけでなく、人件費や固定費など、費用を見直してみましょう。無駄な費用を削減した場合、その分利益が増加するでしょう。見直すべき費用は、具体的には以下の通りです。
- オフィスの賃料、光熱費
- 通信費(Wi-Fiなど)
- 消耗品にまつわる費用(事務用品など)
小規模事業者が費用の削減を目指す場合、利益を上げるために必要な費用と削減すべき費用の見極めが重要です。 まずは、事業でどのような費用が発生しているかを正確に把握し、削減目標を設定してみてください。
資金繰りの問題
小規模事業者にとって、資金繰りは発生しやすい経営課題です。小規模事業者は売上が変動しやすく、資金が不足する可能性があるためです。
特に、事業拡大のための設備投資や、新たな事業のための初期費用など、まとまった資金を確保すべき場面で、資金繰りの問題に直面しやすいでしょう。例えば、新たな設備としてPCを導入する場合、安価な製品でも1台約3万円から、スペックを重視する場合は10万円以上はかかるでしょう。
小規模事業者が安定した事業を継続するためには、日々の資金の流れを正確に把握し、将来必要となる資金を見越した計画的な資金調達を行うのが大切です。
適切な人材の確保と育成
小規模事業者は、大企業に比べて採用活動にかけるコストや人員が限られるため、優秀な人材の獲得が難しいと考えられます。また、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少も、事業における人材の確保の難しさに繋がっているでしょう。
小規模事業者が事業を継続・発展させるためには、人材の確保と定着が重要です。優秀な人材の確保に繋げるため、自社が求める人物像を明確にし、面接や会社説明会の際に働く魅力を資料や職場見学を通じて伝えていきましょう。
例えば、残業時間の少なさや職場の風通しの良さ、和気あいあいとした雰囲気などは、働く上での魅力となります。また、従業員の定着率を高めるため、育成制度や働きやすい環境づくりも行う必要があるでしょう。
業務効率の改善
小規模事業者は少人数で事業を運営している場合も多いため、業務効率の改善は重要な課題です。
効率の悪い作業は生産性が低下し、長時間労働や人為的なミスに繋がる可能性があるでしょう。特に、従業員間の情報共有が不十分な場合、業務が停滞しやすくなります。 業務効率化を実現するには、業務の流れを見直し、無駄な手順を排除するとともに、ITツールの活用を検討するのがおすすめです。
例えば、従業員一人ひとりの勤怠を管理する際は、勤怠管理システムが適しています。勤怠データを自動で集計・確認できるほか、有給休暇の残数や残業時間も算出してくれるため、労務の業務効率化に繋がるはずです。
また、企業内のルールや業務上のマニュアルを共有する際は、チャットツールの導入がおすすめです。進行しているプロジェクトやチームごとにチャットグループを作成でき、資料も共有できるため、コミュニケーションが円滑になり業務がスムーズに進むでしょう。
ITツールの導入は費用削減に繋がるほか、従業員の負担を軽減し、満足度の高い職場環境にも繋がるのではないでしょうか。
技術力や開発力の向上
小規模事業者が大手企業を含む市場競争で生き残るためには、事業における技術力や開発力の向上が必須です。
小規模事業者は資金や人材が限られているため、新たな技術力や開発力を獲得するのは難しいでしょう。
技術力や開発力の遅れは、競合他社との差別化が図りにくくなり、事業の成長を妨げる要因です。小規模事業者は、外部機関との連携や補助金制度を活用し、限られた資金や人員の中で技術力・開発力を向上する必要があります。
自社ブランドの浸透
顧客に自社の商品やサービスを選んでもらうためには、自社のブランドイメージを確立し、広く浸透させる必要があるでしょう。
しかし、小規模事業者は大手企業に比べて知名度が低く、広告宣伝にかけられる費用も限られています。そのため、顧客へ向けた効果的なブランディングが難しいのが現状です。また、自社の強みや魅力の伝え方のノウハウが不足している点も課題と言えます。
自社ブランドの浸透が遅れると、新規顧客の獲得は難しく、事業の継続や成長に影響を及ぼします。小規模事業者は、SNSの活用や地域イベントへの参加など、低予算で実行できるブランディング活動を積極的に行ってみてはいかがでしょうか。
SNSを活用する場合、自社商品のプレゼントキャンペーンや割引情報などを積極的に投稿すれば、フォロワーの獲得や拡散に繋がりやすいためおすすめです。
営業力や販売力の強化
企業の営業力や販売力は、売上に直接繋がります。小規模事業者で営業担当が不足していたり、効果的な営業手法や販売戦略が確立されていなかったりする場合、売上に繋がりにくいでしょう。
小規模事業者の営業力や販売力の不足は、売上目標の達成を困難にし、事業の継続に影響を与えます。小規模事業者は、従業員の営業力向上に向けた研修や、外部の営業代行サービスの活用などを検討してみてください。
顧客満足度の向上
リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の紹介には、顧客満足度の向上が必要です。しかし、小規模事業者では、顧客の声を聞く機会が少なかったり、顧客の意見をサービス改善に繋げる体制が整っていなかったりする場合があるでしょう。また、従業員の顧客対応スキルのばらつきも、顧客満足度に影響を与えてしまいます。
顧客満足度の低下は、顧客離れを招き、長期的な売上減少に繋がる可能性があります。顧客満足度を向上させるためには、顧客アンケートの実施や、顧客管理システムの導入などの取り組みを継続的に行うのが重要です。
後継者の不足と技術の継承
経営者の高齢化が進む中、後継者不足は多くの小規模事業者にとって課題となっています。特に、親族内に後継者がいない場合や、従業員への事業承継が難しい場合、企業の継続自体が困難になる可能性があるでしょう。
後継者に事業承継をする際は時間と計画が必要なため、早期からの準備が必須です。小規模事業者は、親族内承継や従業員承継、企業の合併や買収など、自社に合う事業承継の方法を模索していきましょう。
多様な働き方への対応
現代では、働き方改革や従業員の価値観の変化により、多様な働き方への対応が求められています。
しかし、小規模事業者は資金や人員が限られているため、テレワークやフレックスタイム制度などの導入が難しい場合があります。また、人員の不足は、短時間勤務や育児・介護休業など、従業員の事情に配慮した柔軟な働き方に対応するのが難しいでしょう。
多様な働き方への対応の遅れは、優秀な人材の離職や採用難に繋がり、事業運営に影響を及ぼします。小規模事業者は事業継続のため、従業員の要望を把握し、可能な範囲で柔軟な働き方を取り入れてはいかがでしょうか。
自社の経営課題を特定する方法

自社の経営課題を正確に把握できれば、適切な解決策を迅速に見つけられます。経営課題を特定するためには、さまざまな側面から自社の現状を分析する必要があるでしょう。この記事では、自社の経営課題を特定する具体的な方法について、詳しくご紹介します。
資金状況を明確にする
自社の経営課題を特定する際は、まず資金状況を明確にするのがおすすめです。売上や経費、利益などの資金状況を詳細に把握すれば、具体的な資金繰りの課題が見えてきます。例えば、売上の伸びが見られなかったり、売上があるにも関わらず利益が少なかったりする場合は要注意です。 特に、過去数年間の財務データを比較すると、収益の増減や特定の費用の増加傾向などを掴めるはずです。
また、資金状況を明確化し、収支バランスを把握すれば、資金繰りの問題を早期に発見できるでしょう。自社の財務状況を客観的な視点から分析し、効果的な対策を講じてはいかがでしょうか。
業務の流れを把握する
現在の業務の流れを詳細に把握すると、業務効率に関する課題を特定できるでしょう。各業務の手順を可視化し、無駄な作業を洗い出せば、改善の糸口が見えてくるはずです。
例えば、特定の業務に時間がかかりすぎていないか、情報共有がスムーズに行われているかなどを分析します。また、業務手順書を作成したり、従業員へのヒアリングを行ったりすると、業務における非効率な部分を具体的に特定できます。
業務の流れを把握し、業務効率化を図れば、生産性向上に直結し、他の経営課題の解決にも繋がる可能性があるでしょう。
組織の状態を分析する
自社の人材や組織に関する課題を特定するためには、組織の状態をさまざまな角度から分析する必要があります。従業員のモチベーションや部署間の連携状況などを把握すれば、職場環境やコミュニケーションに関する課題が見えてくるはずです。
組織の状態を分析するためには、従業員満足度調査や上司による個別面談などを実施し、現場の声を拾うのが大切です。 組織の状態を分析し、人材の定着や育成、チームワークの向上に向けた課題を特定すれば、事業を継続する基盤が作れるのではないでしょうか。
従業員の成果を評価する
従業員が働く上での懸念点をきちんと把握できれば、自社の経営課題を特定できます。仮に、自社の売上が伸びなかったり、業務が滞っていたりする場合、そもそも従業員の成果をきちんと評価できていない可能性があるでしょう。従業員の成果を適切に評価すれば、従業員の成長意欲を高められます。
従業員への評価が曖昧であったり、成果が正当に評価されていなかったりする場合、従業員のモチベーションが低下してしまいます。その結果、離職率が高まるかもしれません。
自社の評価制度を見直す場合、明確な評価基準に基づいた人事評価制度を導入するのがおすすめです。従業員の強みや弱み、スキルアップの必要性などが明確化し、評価結果を個別のフィードバックに繋げられるでしょう。フィードバックを通じて、従業員へ主体的な課題解決を促せば、組織全体の改善にも繋がるでしょう。
小規模事業者における経営課題への対策
小規模事業者が抱えるさまざまな経営課題を解決するには、それぞれの課題に応じた具体的な対策を講じる必要があります。この章では、小規模事業者が抱える経営課題への具体的な対策について、詳しくご紹介します。
事業計画を立てる
事業計画は、自社の現状の課題をどのように克服するか、具体的な戦略や行動計画を盛り込んだものです。小規模事業者が経営課題を解決し、事業を成功へ導くためには、具体的な事業計画を立てる必要があるでしょう。
事業計画を立てると、事業の方向性や目標が明確になるため、従業員全員が同じ方向に向かって取り組む意識を高められます。また、外部からの資金調達や支援制度の活用を検討する際にも、説得力のある事業計画が求められます。
事業計画は、定期的に自社の現状を分析し、課題に応じて見直しを行うのも大切です。
計画に沿った資金調達
小規模事業者が新たな設備や人材を確保したり、事業拡大や課題解決に向けた取り組みを行ったりする際は、まとまった資金が必要です。自己資金だけでは限界がある場合、金融機関からの借入や補助金・助成金の活用を検討しましょう。
具体的には、日本政策金融公庫のマル経融資や、事業再構築補助金、IT導入補助金などが挙げられます。
さまざまな支援制度を活用すれば、計画に沿った資金調達ができるはずです。検討の際は、複数の資金調達方法を比較し、自社の状況に合った最適な方法を選択してみましょう。
費用削減
小規模事業者が経営状況を改善するためには、計画的な費用削減が大切です。経営において無駄な出費がないかを定期的に見直し、削減可能な項目を見つけましょう。
例えば、オフィスの賃料や光熱費、通信費などの固定費や、交通費や広告宣伝費などの変動費が挙げられます。固定費や変動費は、契約内容を見直したり、利用状況に合ったプランを選び直したりすると、費用削減に繋げられるでしょう。
人事評価制度の見直し
企業に人材を定着させ、従業員の育成や組織力を強化するためには、人事評価制度の見直しが効果的です。人事評価制度が曖昧だと、従業員のモチベーション低下や不公平感に繋がり、離職率が高まる可能性があるでしょう。
人事評価制度を見直す際は、評価項目を明確にし、従業員の成果や貢献度を正当に評価できる仕組みを構築するのがおすすめです。評価を給与や賞与に反映させたり、従業員のキャリアパスへ繋げると、従業員の成長意欲を高められます。 具体的な人事評価項目・基準は以下を参考にしてください。
- 会社への貢献度
- 勤務中の態度
- 業務達成度
- コミュニケーションスキル など
また、従業員が自身の目標設定をする機会を設けると、主体的な業務への取り組みを促せます。公平な人事評価制度は、従業員の満足度向上と組織全体の活性化に繋がるでしょう。
働きやすい環境づくり
人材確保や従業員の定着率向上には、働きやすい環境づくりが必須です。働きやすい環境は、従業員のモチベーションと生産性の向上に繋がるでしょう。
具体的には、残業削減や有給休暇の取得促進などが挙げられます。また、フレックスタイム制度や短時間勤務制度の導入も、従業員の事情に合わせた柔軟な働き方を実現できます。
さらに、従業員間のコミュニケーションを促進するための社内イベントや相談窓口の設置なども、働きやすい雰囲気を作るために重要です。日頃から従業員の意見を聞き、働く上での困りごとを改善する姿勢が、働きやすい環境づくりに繋がるのではないでしょうか。
ITツールの導入検討
業務効率化や生産性向上には、ITツールの導入がおすすめです。
具体的には、会計ソフトや顧客管理システム(CRM)、勤怠管理システムやWeb会議システムなどが挙げられます。
ITツールの導入には費用がかかるため、まずは一つの業務から導入を始めてみましょう。業務効率化や生産性向上の効果を実感できたら、導入範囲を広げてみてください。
外部への業務委託
小規模事業者は人員が限られている場合も多いため、業務効率化を図る方法として、外部組織への業務委託もおすすめです。例えば、専門的な知識やスキルが必要な業務や、社内負担が大きい業務を委託すれば、従業員は自身の業務に集中できるでしょう。
外部組織への業務委託は、業務効率と生産性の向上に繋がります。また、専門的な知識やスキルを持った業者に委託すると、質の高い業務を実現できます。
業務委託を検討する場合、委託する業務範囲や費用などについて、事前にしっかりと検討してみましょう。
採用活動の見直し
人材不足に悩む小規模事業者は、採用活動を見直してみましょう。
例えば、従来の求人媒体への掲載だけでなく、SNSを活用した情報発信や、会社説明会の実施、インターンシップの受け入れなどが挙げられます。
特に小規模事業者の場合、知名度は大手企業に劣るため、自社の強みや他社との差別化ポイントを明確に伝えるのが重要です。また、従業員からの紹介を通じた採用も、人件費を抑えつつ、優秀な人材を採用できる可能性があるでしょう。
小規模事業者が利用できる支援制度

近年では、国や自治体、商工会・商工会議所など、さまざまな機関が多様な支援制度を設けています。小規模事業者の経営課題を解決するため、積極的に活用するのがおすすめです。この章では、小規模事業者が利用できる支援制度について、詳しくご紹介します。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
日本政策金融公庫は、小規模事業者の商工業者を対象に、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)を行っています。
マル経融資は、必要資金の融資を無担保・無保証人で受けられるのが特徴です。融資限度額は2,000万円、返済期間は10年以内です。
融資の際は、商工会・商工会議所または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている必要があります。該当する小規模事業者は、事業の継続や発展のため、融資を検討してみてはいかがでしょうか。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者へ向けて、ITツールの導入を支援する制度です。IT導入補助金を希望する場合、国内で法人登記を済ませているのが条件です。申請の際は、中小企業・小規模事業者のITツール導入を支援する「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組む必要があります。
また、IT導入補助金を通じて導入できるソフトウェアやサービスは、補助金HPに公開されているもののみのため注意しましょう。
IT導入補助金の申請枠は、通常枠やインボイス枠、セキュリティ対策推進枠などいくつかの種類があります。自社の課題に合った申請枠を選び、積極的に活用してみましょう。
参考:IT導入補助金制度概要
小規模事業者の経営課題は解決できる!
この記事では、小規模事業者が直面する経営上の問題や解決策、活用できる支援制度などについて、詳しく解説しました。小規模事業者の経営課題は多岐に渡りますが、適切な対応策を講じれば、迅速に解決できるはずです。
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