企業を安定して成長させるには、「経営課題」と「事業課題」の違いについての理解が大切です。経営課題と事業課題は似ているようで、実は対象とする範囲やアプローチが異なります。特に、経営者や経営層を目指す方にとっては、戦略を考えるうえでの土台となる知識です。この記事では、経営課題と事業課題の違いを整理したうえで、企業が直面しやすい経営課題の例を紹介します。あわせて、課題を見つけて解決のための考え方も解説します。
目次
経営課題と事業課題の違いとは

経営課題と事業課題は、対象の範囲や目的が異なるテーマです。経営課題は、企業全体の俯瞰により浮かび上がる、本質的で長期的なテーマであり、事業課題は、特定の事業や現場レベルにおける具体的な目標や問題を指します。
経営課題とは
経営課題とは、企業の「理想」と「現状」とのギャップから生まれる、全社的なテーマです。単なる目先の課題ではなく、会社の成長や存続に深く関わる問題です。
例えば、売上の伸び悩みや人材不足、ブランド力の低下などの課題が挙げられます。
さらに、市場の変化にどう適応するか、競争力をどう高めるかといった視点も含まれます。
経営課題は、経営陣の意思決定に直結します。放置すると、企業価値の低下や信頼の喪失を招く恐れがあるため、早めの対応が必要です。
事業課題とは
事業課題は、特定の部門やプロジェクトに関わる、現場レベルの問題や目標を指し、経営課題を解決するための、事業の現場での「行動レベルの課題」と言えます。製品の開発スピードを上げたい、販売チャネルを広げたいといった課題が該当します。
他にも、コストの見直しやマーケティング戦略の再設計などが代表的です。事業課題は、現場の社員や担当部署が中心となって取り組みます。
経営課題は企業全体の課題であるのに対し、事業課題は特定の事業部門の課題であり、視点の高さや抽象度が異なります。
企業が直面しやすい経営課題
企業は成長を目指す中で、多くの経営課題に直面します。ここでは、多くの企業が共通して抱える代表的な経営課題と、それぞれの企業規模に応じた課題についてみていきましょう。
企業が抱える主な経営課題
企業が抱える経営課題は多岐にわたりますが、多くの企業に共通するのが、「人材の強化」「収益性の向上」「売上やシェアの拡大」などです。 具体的に掘り下げて解説します。
人材の確保・育成
人材の確保と育成は、多くの企業が悩む深刻なテーマです。 少子高齢化によって労働力人口が減少し、採用競争も激化しています。 特に中小企業では従業員数が限られるため、優秀な人材の獲得と定着が競争力に直結します。
人材の確保と育成における課題をどう乗り越えるかが、企業の未来を左右すると言えるでしょう。
収益性の向上
コストの見直しや利益率の改善は、どの企業にも欠かせません。 不安定な経済環境の中で利益を確保するには、柔軟な戦略が必要です。
近年では、デジタル化や技術革新への対応も重要性を増しています。AIやloTの技術を活用すれば、業務の効率化や生産性の向上が可能であり、競争優位性の確保につながります。AIやIoTなどを活用した新たな事業モデルの構築も検討しましょう。
ブランド力・営業力の強化
企業の経営課題として、ブランド力や営業力の強化、顧客満足度の向上なども挙げられます。ブランド力や営業力が弱ければ、商品やサービスが良くても、顧客の信頼が得られず購入に至らない可能性があります。顧客満足度を高める施策がなければ、リピーターや口コミ効果を逃してしまい、売上の基盤が不安定でしょう。
物流や業務の効率化に取り組む企業も増えてきました。グローバル化や消費者ニーズの多様化が急速に進む市場において、変化やニーズに対応できる物流システムや業務フローを確立できれば、競争優位性が高まるでしょう。
企業規模ごとの経営課題
経営課題は、企業の規模によって異なります。自社の立ち位置を踏まえた戦略の立案が大切です。
大手企業の経営課題
大企業では、グローバル市場での競争が激しくなっています。特に、新興国の市場開拓や競争相手の増加の影響から、グローバルな視点での競争力を維持するための戦略を考える必要があります。
組織が大きいがゆえの文化の硬さも課題となりやすいのが特徴です。大企業では、意思決定のスピードが遅く、変化に対応するのが難しいケースが多いです。 解決策としては、多様な人材の活用や、オープンイノベーションの推進が考えられます。 多様な人材の活用により、革新的なアイデアを生み出し、企業内外の協力を促進できます。 また、外部の技術やアイデアを取り入れるオープンイノベーションは、競争力を高める有効な手段です。
また、トップダウン型から脱却と、柔軟な組織づくりの推進も重要です。例えば、部門間の連携を強化するために、クロスファンクショナルチームの導入や、社員の意見を反映した意思決定をおこない、企業全体の柔軟性向上を目指します。
中堅企業の経営課題
中堅企業では、成長期にある企業が多く、事業拡大が主要なテーマです。事業の拡大においては、人材育成や戦略的パートナーとの連携、ブランドの構築も欠かせません。例えば、人材育成では、リーダーシップ研修や業務に即したスキルアッププログラムの実施が効果的です。 戦略的パートナーとの連携では、他企業との提携やアライアンスを強化し、リソースや市場の共有を図ります。 ブランド構築に関しては、ターゲット市場に向けたブランディング戦略や、価値提案の明確化が重要です。
あわせて、デジタル化の波にも適応し、時代に合った変革が必要です。 具体例としては、業務プロセスのデジタル化や、オンラインプラットフォームの活用が挙げられ、効率的な業務運営や、新たな顧客層の獲得が可能です。
多くの中小企業が直面するのは経営資源の不足による課題です。 人手不足や資金繰り、技術力の確保といった、事業基盤の強化が最優先であるケースが多いでしょう。 人手不足に対応するためには、業務のアウトソーシングや自動化の導入が有効です。 資金繰りには助成金や融資の活用、技術力の確保にはパートナー企業との連携や外部研修も検討しましょう。
経営課題を見つける方法

企業の成長にとって、自社の状況の分析と、経営課題の見える化が重要です。 ここでは、経営課題の発見に役立つ2つの具体的な方法を解説します。
経営状況を可視化する
経営課題の特定のために、まずは自社の経営状況の可視化を行いましょう。 可視化によって、曖昧だった問題を具体的な課題として把握できます。
特に「資金の流れ」「社員の成績」「組織の状態」「業務フロー」の4点に注目します。
まず、資金の流れを把握するには、キャッシュフロー計算書などの活用が有効です。
キャッシュフロー計算書は、一定期間における現金の流入と流出を把握し、企業の現金の健全性を評価するものです。 資金繰り表は、主に短期的な資金管理に重点を置いており、月ごとに必要な支払いと収入の予定を記載し、資金不足や過剰投資などの兆しを早期に捉えるために使われます。
キャッシュフロー計算書で長期的な経営の現金流れを確認し、資金繰り表で日常的な資金管理をおこないます。
次に、社員のパフォーマンスも重要な指標です。 個人の成果だけでなく、全体の生産性や育成面の課題も見えてきます。
組織の状態を可視化すれば、人員配置の偏りや連携不足などの問題点が分かります。 組織の可視化には、組織図の作成や業務ヒアリング、アンケートなどが有効です。
また、業務フローの見直しも必要です。 無駄な工程や属人化が起きていないか、定期的に確認しましょう。 業務フローの点検を放置すると、コスト増や生産性の低下に繋がりかねません。 定期的な業務フローの可視化と改善を習慣づけましょう。
外部環境と内部環境を分析する
内部と外部、両方の視点からの分析により、本質的な経営課題が見えてきます。 社内外の環境を分析するには「フレームワーク」の活用が効果的です。 代表的なものとして、SWOT分析や3C分析、PEST分析などがあります。
SWOT分析
自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威を整理するフレームワークです。 まず、強みと弱みを整理し自社内部のリソースや能力を分析します。 競争優位性を築く要因を発見できます。 その後、機会と脅威を外部環境の視点から評価します。 市場の動向や競合の動き、法律や規制の変化などが該当します。 例えば、従業員のスキルや技術力が強みであり、市場の成熟度が脅威であるといったように、具体的な要素をリストアップし、それぞれをどのように活かすかを検討しましょう。
3C分析
顧客・競合・自社の3つを比較する手法です。 まず、顧客のニーズや問題点を深掘りし、ターゲット層を明確にします。 次に、競合の強みや弱みを把握し、自社とどのように差別化できるかを考えます。 最後に、自社のリソースや戦略が市場にどのように適応しているかを評価しましょう。 分析を行う際は、顧客調査や競合調査を実施し、実データに基づいた比較が重要です。
PEST分析
政治・経済・社会・技術といった外部要因を分析する方法です。 具体的には、政治的な規制や政策、経済の動向(インフレや不況など)、社会的なトレンド(人口動態やライフスタイルの変化)、技術革新(AIやIoTの進展など)を調査します。 企業が将来直面する可能性のあるリスクや機会を予測し、長期的な視点での戦略立案に活用できます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業の内部プロセスを詳細に分析し、価値を生む活動とそうでない活動を特定する方法です。 原材料の調達から製品の販売、アフターサービスに至るまで、各プロセスを一つずつ見直します。 どの活動がコストを発生させているのか、どの活動が付加価値を生んでいるのかを把握し、無駄なコストを削減する方法を考えます。 例えば、製造工程での無駄な手順を見直すことで、コスト削減や生産性向上を実現できる可能性があります。
経営課題を解決するためのアプローチ

経営課題の特定だけでは、企業の成長には繋がりません。 課題に対する解決策と実行が重要です。 ここでは、経営課題を解決するための具体的なアプローチについて解説します。
人材の確保・育成
人材不足が課題の場合、採用強化に加え、業務フローの効率化や社員のスキル向上への投資が必要です。 また、給与や働き方の見直しによって、定着率を高める工夫も効果的です。 人材育成には、評価制度の見直しやキャリア設計の明確化が重要で、目標設定と進捗を社員と共有し、組織全体のパフォーマンスを向上させます。
コスト削減
コスト削減に取り組むには、人件費の調整に加え、業務プロセスの効率化やITツールの活用が有効です。 さらに、物流コストや仕入れ価格の見直しを行い、各部門の協力を得ながら企業全体で取り組むことが必要です。
ブランド力の向上
ブランド力の向上には、ブランドの背景にあるストーリーの強化や顧客体験の向上が効果的です。 また、マーケティング戦略を再設計し、CSR活動の推進や目標管理制度(MBO)の導入も有効な手段です。 目標管理制度(MBO)は、社員の目標を組織全体の目標と一致させ、社員個人のパフォーマンスを評価し、報酬や昇進に結びつける仕組みです。 組織全体で目標を共有し、ブランド価値の向上を目指します。
IT導入
IT導入は経営改善に欠かせません。 業務の自動化や可視化を通じて、生産性向上やコスト削減が期待できます。 特に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、反復的な定型業務を自動化するツールです。 生産性を高め、コスト削減を実現できます。
多様な解決方法を検討する
課題を俯瞰して捉える「システム思考」も、根本的な解決に役立ちます。 システム思考は、問題を単独の要素ではなく、全体のシステムや相互関係の中で捉えるアプローチです。 問題を解決する際に、その場しのぎの対応を避け、課題の背後にある構造やプロセスを分析することが重要です。
また、第三者の専門家に相談するのも一つの手段です。 経営コンサルタントからの客観的な意見により、新たな視点が得られるでしょう。
まとめ
経営課題は企業全体の方向性を左右するテーマで、事業課題は現場に近い具体的な問題です。 企業は収益向上、人材確保、IT導入など多岐にわたる課題に直面しています。 経営課題の解決には、まず経営状況の見える化と環境分析が重要です。 課題を特定した後、柔軟に複数の解決策を比較し、実行に移しましょう。 分析と実行の積み重ねが、企業の持続的成長につながります。








