「税理士は法人の税務専門家」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、税金や税務調査など個人事業主のお金の悩みにも幅広く対応しています。この記事では、個人事業主が税理士に相談できる内容を具体的に紹介し、税理士に依頼するメリット・デメリットや費用の目安、税理士では対応できない業務までわかりやすく解説しています。ぜひ最後までお読みください。
目次
税理士に個人が相談できる具体的な内容

税理士に相談できる内容は、確定申告や相続税から、不動産売却時の税金、税務調査の対応まで多岐にわたります。税金に関する手続きは専門知識を要するため、税理士に任せることで正確かつスムーズに問題を解決できるでしょう。
確定申告の手続きや書類作成の代行
個人事業主やフリーランスにとって、確定申告は負担になりがちです。税理士には記帳から決算書・確定申告書の作成・提出まで一貫して任せられます。
また、最大65万円の特別控除が受けられる青色申告は複式簿記での記帳が必要です。青色申告は専門知識が求められ、初心者には容易ではありません。
さらに税理士に依頼することで、確定申告にかかる時間を削減できるため、本来の事業や営業活動に集中できます。
副業で得た所得の税金に関する相談
副業をする会社員が増えています。副業による所得が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。
確定申告の際「副業収入がどの所得区分に当たるのか」「どこまで経費として計上できるのか」などの判断は、専門知識がないと難しいかもしれません。しかし、税理士に相談することで、個々の状況に合わせたアドバイスを受けられます。
相続税の申告や生前の節税対策
相続税の申告は、亡くなった方の財産を正確に評価し、複雑な計算を経て申告書を作成する必要があるため、専門性が高い分野です。土地や非上場株式などの財産評価は難しく、特例制度を活用せずにいると納税額が大きく変わることもあります。
よって、税理士に依頼することで、こうした手続きをスムーズに進めることが可能です。また、生前贈与や不動産の活用などを通じて、将来の相続税を軽減するためのサポートを受けられる可能性があります。
不動産を売却した際の税金計算
土地や建物などの不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、利益には所得税と住民税が課税されます。譲渡所得の計算は、売却価格から取得費や売却にかかった費用を差し引いて算出しますが、取得費が不明な場合や減価償却の計算が必要な場合はより複雑です。
また、マイホームを売却した際に利用できる3,000万円特別控除など、税負担を軽減できる特例も存在します。税理士に相談することで、これらの制度を適切に活用し、正確な税金計算を行うことができます。
税務調査が入った際の立ち会いと交渉
税務調査は、帳簿や領収書などをもとに申告内容が正しいかどうかを調査します。税理士に依頼することで、事前準備から当日の立ち会い、税務署職員との交渉まで、一貫したサポートを受けることが可能です。
専門家が入ることで、法的根拠に基づいた冷静な対応ができ、過度な追及や不当な指摘を防げるでしょう。
資金繰りや経営に関するアドバイス
個人事業主にとって税理士は、経営全般を相談できるパートナーにもなり得ます。税理士は毎月の試算表や決算書などをもとに、客観的な視点で資金繰りの改善や経営状況の分析を行います。
その結果、売上の推移や経費を分析し、無駄なコストの削減策を提案したり、事業計画づくりをサポートしたりしてくれるでしょう。数字に基づいたアドバイスが得られる点も、税理士に相談するメリットです。
個人事業主が税理士に依頼するメリット4つ

個人事業主にとって税理士は単なる税務の代行者ではなく、事業の成長を支える大切なパートナーです。ここでは税務の専門家に業務を依頼するメリットを見ていきましょう。
経理業務から解放され本業に集中できる
個人事業主は、業務を1人でこなすケースが多く、日々の記帳や領収書整理などの経理作業に多くの時間を取られがちです。よって、税理士に記帳代行や確定申告を依頼すれば、煩雑な作業から解放され、空いた時間を商品開発や営業活動などに充てられます。
結果として、時間とエネルギーを効率的に使い、事業の成長スピードを加速させることが可能です。
正確な帳簿付けで申告ミスを防げる
税法や会計ルールは非常に複雑で、改正も頻繁です。専門知識がないまま帳簿付けや確定申告を行うと、計算ミスや経費計上漏れを起こすリスクがあります。
もし申告内容に誤りがあれば、税務調査で指摘を受け、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるかもしれません。よって税理士に依頼することで、正確な会計処理を行ってもらえるため、ミスを未然に防ぐことができます。
最新の税制に基づいた効果的な節税が可能になる
節税には、税法で認められている控除や特例を活用することが大切です。しかし、税制は毎年のように改正されるため、事業に有利な制度を選ぶのは容易ではありません。
一方、税理士は最新の情報を日々収集・分析しています。
よって、例えば以下のような提案が可能です。
- 青色申告特別控除の適用
- 小規模企業共済や経営セーフティ共済(倒産防止共済)の活用
- 必要経費の適正な見直し
専門家の知見を活かすことで、余計な税負担を避けられるでしょう。
融資や資金繰りの相談で経営が安定する
事業を継続・拡大していくうえで、金融機関からの融資は欠かせません。融資審査では、事業の将来性や返済能力を示す決算書や事業計画書が重視されます。
税理士が作成した決算書は数字が正確で内容も明確なため、金融機関からの信用をより得られるでしょう。よって、融資審査を有利に進められ、安定した資金繰りと事業運営につながります。
個人事業主が税理士に依頼するデメリット2つ

税理士に依頼することは多くのメリットをもたらしますが、一方でデメリットもあります。
ここでは税務の専門家に業務を依頼するデメリットを見ていきましょう。
顧問契約による固定費用が発生する
最も大きなデメリットは費用がかかることで、顧問契約を結ぶ場合は一定の顧問料を支払わなければなりません。個人事業主向けの顧問料は月額20,000円前後が相場ですが、事業の売上や依頼する内容によっては、それ以上になることもあります。
よって、売上が安定していない時期には、無理のない固定費を設定することをおすすめします。
経理の丸投げはできず資料準備は自分で行う必要がある
税理士に経理を依頼しても、全ての作業を丸投げできるわけではありません。正確な会計処理を行うためには、元となる証憑書類や取引データを依頼者自身が用意する必要があります。
よって、請求書や入金が分かる通帳のコピー、仕入れ・経費の領収書やレシート類などは定期的に税理士へ提出しましょう。
税理士への依頼を検討すべき個人の特徴
税理士への依頼は、全ての個人事業主にとって必須とは言えません。しかし、税理士のサポートが事業の成長やトラブル防止に役立つ場合があります。ここでは、税理士への依頼を検討すべきケースを見ていきましょう。
年間売上が1,000万円を超えている個人事業主
基準期間の年間売上高が1,000万円を超えると、2年後は消費税の課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が発生します。消費税の計算は、売上にかかる消費税から仕入れや経費にかかる税金を差し引く仕組みです。
さらに、インボイス制度の導入により、仕入税額控除の要件が厳格化され、経理処理は一層煩雑になりました。よって、税務処理を正確に行うためには、税理士のサポートが欠かせません。
経理や確定申告の知識に不安がある人
簿記や税法の知識が乏しいまま確定申告を行うと、経費の計上漏れや控除の見落としが発生しやすくなります。その結果、本来より多くの税金を納めてしまうかもしれません。一方、誤った経費計上によって追徴課税を受けるリスクもあります。
経理や確定申告に少しでも不安を感じる場合は、税理士に相談することをおすすめします。
日々の業務が忙しく経理作業の時間が取れない人
事業が成長し、本業が忙しくなるほど、経理や事務作業に割ける時間は限られるでしょう。領収書の整理や帳簿付けを後回しにしてしまい、確定申告の時期に急いで処理する方もいるかもしれません。
しかし、こうした状況では作業の精度が落ちてミスが起きやすくなります。税理士に経理業務をアウトソーシングすることで、煩雑な作業から解放され、本業により集中できるでしょう。
これから事業を始める予定の開業準備者
起業準備の段階で税理士に相談することも有効です。開業時には、例えば以下のような手続きが必要です。
- 個人事業主として始めるか、法人を設立するかの選択
- 開業届・青色申告承認申請書など税務署への各種届出
- 資金調達に必要な事業計画書の作成
税理士に相談することで、事業計画に合わせた事業形態の選択や手続きに関するアドバイスを受けられます。
注意!税理士では対応できない業務の例
税理士は税務の専門家ですが、全ての手続きに対応できるわけではありません。それぞれの専門家が独占的に行える業務が法律で定められています。ここでは、税理士の業務範囲外となる業務を見ていきましょう。
司法書士の領域である不動産登記手続き
税理士は相続税の申告や不動産売却時の譲渡所得の計算など、税に関する相談や手続きは対応できますが、登記申請の代理はできません。
所有権移転登記などの登記手続きは、司法書士の独占業務です。相続や売買によって不動産の所有者が変わった場合、法務局で登記を行う必要があります。
弁護士が専門とする税法以外の法律問題
税理士は税法のエキスパートですが、法律トラブルには対応できません。例えば、遺産分割のトラブルが生じた場合、交渉・調停・訴訟など法的な紛争解決は弁護士の専門業務です。
また、税務調査の結果に不服があり訴訟を起こす税務訴訟においても、法廷で代理人となれるのは弁護士のみです。さらに契約書のリーガルチェックや、取引先とのトラブル対応などの法律相談も弁護士が担当します。
社会保険労務士が扱う社会保険や労務の手続き
従業員を雇用する場合、社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険・労災保険)への加入が必要です。また、毎月の給与計算や勤怠管理、就業規則の作成などの労務管理も発生します。
これらの社会保険・労働保険に関する手続きや労務管理の相談は、社会保険労務士(社労士)の専門業務です。
まとめ
税理士は、個人の確定申告や副業による所得、相続、不動産売却など、さまざまな税金の悩みに対応できる専門家です。特に個人事業主にとっては、リスク回避、節税、融資による経営の安定化など、事業を長く支えてくれる心強いパートナーとなります。
専門家の力をうまく活用すれば、安心して事業に専念でき、仕事の効率も高まります。結果として事業がより安定し、さらなるステージへと成長していくでしょう。









